ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

最新ボルドーワインはシンプル&若手を要チェック

2021-06-17 18:26:26 | ワイン&酒

フランスを代表するワイン産地「ボルドー」

日本でのボルドーワインのイメージは、シャトー・マルゴーやムートンといった超高級格付けワインで超高価!&伝統的、シャトーのオーナーは貴族然とした老練なムッシューとか?

 

たしかに、そういう面もありますが、今のボルドーワインは、ここ5,6年くらいでずいぶんと変わってきています。

 

私が5年前にボルドーに現地取材に行った時に、若い生産者にたくさん出会いました。

家族代々の家業を継いでいる若手もいましたが、醸造学校の同級生同士で結婚し、自分たちの新しいワイナリーを立ち上げようとしている若いカップル(実家はボルドーのワイナリーや栽培者)もいました。

ボルドー以外の土地からやってきて、自分で新たに起業した女性もいました。

 

彼ら、彼女らを見て、

ボルドーは、若い世代のフレッシュなバイタリティーを感じられるワイン産地なのだと実感させられました。

 

若手生産者の活躍は近年はどこのワイン産地でも見られますが、貴族然とした古めかしいイメージのあったボルドーでは、ほかのどの産地の若手よりも「旧スタイル脱却」意識が強いように思います。

 

 

昨年12月にボルドーとオンラインでつないで行なわれたセミナーでも、若手生産者が登場し、モダンで型にはまらないスタイルのボルドーワインを紹介してくれました。

 

そのひとり、David Siozard(ダヴィッド・シオザール)

 

家族経営のVignobles Siozardの次世代です。

偶然にも、私が5年前にボルドー取材をした際、ワイナリーを訪問させてもらいました。

 

今回、ダヴィッドが紹介してくれたワインが、こちらです。

 

IPSUM 2018 Vignobles Siozard  (France, AOC Bordeaux)

 

メルロ100%の赤ワインで、SO2無添加

実際に飲んでみると、甘いフルーツの香りが新鮮で、味わいもみずみずしいフルーツが心地よく、ピュア。ストレスなくスーッと飲める赤ワインだと思います。

タンニンは若々しく、酸もで、フルーツの甘みと、デリケートで軽やかなバランス。シンプルだけど、なめらかで、非常に好ましいスタイルでした。

手をかけた料理よりも、素材を活かしたシンプルな料理が合いそう。

夏なら軽~く冷やして、アペリティフ的に、チーズやハムなどをつまみながら飲むのもオススメ。

 

ダヴィッドが言うには、

メルロはボルドーのエンブレム的品種なので、メルロのハツラツとした魅力をそのまま発揮できるように単一品種のみで仕込んだそうです。

摘みたての果実をそのままかじったような、喉の渇きをいやしてくれる、シンプルでおいしい、素直に楽しめるワイン、果実感とみずみずしさを楽しめるワインで、後味にもみずみずしさを感じるのは、ミネラル感があるから、と言います。

 

食事と合わせて楽しんでほしい、というダヴィッドのオスススメの組み合わせは、焼き鳥鉄板焼き

ワインのジューシー感が合いそうです

 

 

IPSUMーイプサムは5つの各品種をそれぞれ単一で仕込んでいるシリーズです。

以前にワイナリーを訪問した際にも、試飲ルームで飲んでいました。

 

ワイン名の「IPSUM(イプサム)」はラテン語で、本来の、自分自身の、という意味。

ラベルデザインもモダンで、ボルドーっぽくないですよね?

 

ダヴィッドが常に考えているのは、マーケットに順応するためには何をつくるべきか?ということ。

 

 

 

Vignobles Siozard では60haのブドウ畑を所有し、2つのワイナリーを運営し、10のブドウ品種を栽培し、9つのAOCワインを造っているとのこと。

イプサムのような、マーケット重視のモダンなワインだけでなく、伝統的スタイルのボルドーワインも生産しています。

 

イプサムはSO2無添加で、サステーナブル認証の「Terra Vitis」を2016年に、フランスの環境認証「HEV」を2017年に取得しているワインです。

また、ワイナリーとしてもオーガニックに移行中といいます。

 

 

ダヴィッドのワイナリーのように、

サステーナブル関連の認証を取得しているボルドーのブドウ畑は65%以上で、

SO2無添加、ヴィーガン、環境コンシャスなワインがボルドーで台頭しています。

 

気候変動の影響はボルドーでももちろんあります。

収穫に最適な時期を見直したり、冷涼なエリアを選択したり、晩生タイプの台木を選んだりするようになっています。

その一方で、醸造は人の手をかけることを避ける方向に進み、過度な抽出や樽の使用を減らし、土着酵母を優先するようになってきています。

 

「よりシンプルに、より豊かに」が、今のボルドーワインの傾向です。

 

すでにリポートしましたが、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロといったボルドー主要品種だけでなく、補助的品種のワインにも注目が集まっていますし(下記URL参照)、今年に入り、新たな6品種が承認されたというニュースもあります(これも下記参照)。

 

 

ボルドーのメドック格付け高位シャトーは、もちろん素晴らしいですが、お値段を考えても、普段飲みできるワインではありません。

では、何を飲むべきか?

 

今のボルドーワインは、

正統派だけでない、モダンで、よりシンプルな、より豊かな、環境コンシャスな、多様性のあるワインです。

 

「ボルドーはコストパフォーマンスの高い地域」とダヴィッドが言っていましたが、デイリーに楽しめる魅力的なワインが、ボルドーにはたくさんあることを、ぜひ知ってください。

 

 

ボルドーの甘口貴腐ワイン「ソーテルヌ」をカジュアルに飲むのもいいですね~

画像はダヴィッドのワイナリーでのショットです。

 

旧来のイメージは横に置いといて、若い世代が活躍する現代のボルドーワインを気軽に味わってみることをオススメします

 

[参考]

ローカルブドウ品種のワインー仏ボルドーの例

https://blog.goo.ne.jp/may_w/e/5b35c55b5c901db2825e80d02351a5a2

 

ボルドーワインのブドウに新たな6品種が承認

https://blog.goo.ne.jp/may_w/e/e856032cda9ef6cd6cecf363499d4485

 

ボルドーの若手とともにボルドーワインの近未来像を考える

https://blog.goo.ne.jp/may_w/e/cfbe9051d64ec03d08c96ca2663d7852

 

【ボルドー取材記】本場ボルドーワインの魅力的な生産者たち(&GP)

https://www.goodspress.jp/reports/65161/4/

 

 


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