2021年7月2日、ワイン関係者にとって衝撃的な法律がロシアで成立しました。
すでにネットニュースなどで流れていますので、目にした方も多いかと思いますが、
ロシア産スパークリングワインだけがシャンパンと名乗れる
フランスのシャンパーニュは「スパークリングワイン」としてロシアでは販売される
というものです。
その土地でつくられたものだけが、その土地の名前のついた原産地名称を名乗れる、というのが現代の世界の常識です。
それに反するロシアの決定(プーチン大統領による)はビックリ!
数年前、モスクワのシェレメチボ空港で乗り換えをした際に、空港ラウンジでスパークリングワインを見つけ、飲みました。
ロシア語のラベルのついたスパークリングワインで、生産地はロシアです。
ラベルをよく見ると、「Russian Champagne」と書かれています。
え?この表示、ダメなんじゃ?と疑問に思ったので、写真に撮ってきました。
ちなみに、ラベルにある「Шампанское」は「シャンパンスコエ」と読みます。
ロシアでは、スパークリングワイン=シャンパンスコエ、なんですね。
なら、そのまま「シャンパンスコエ」でいいと思うのですが…
空港内の免税店で売られていたこちらのロシア産スパークリングワインは、
「Russian Sparkling Wine」とラベルに書かれていました(常識あり!)
数年前で、1本9ユーロくらいだったような?
世界貿易機関(WTO)の「原産地名称の保護及び国際登録に関するリスボン協定」(Lisbon Agreement for the Protection of Appellations of Origin and their International Registration)(1958年10月31日)で国際登録された原産地名称のうち、WTO の加盟国かつリスボン協定の同盟国のぶどう酒又は蒸留酒に係る原産地名称の中に、フランスの「Champagne」があります。
念のために同協定の原産地呼称リスト(AOリスト)を調べると、「(AO 231) CHAMPAGNE」(1967年12月20日)がちゃんとあることを確認しました。
日本の特許庁が1995年に公示した公報「商標法第 4 条第 1 項第 17 号に規定する世界貿易機関の加盟国のぶどう酒又は蒸留酒の産地を表示する標章」の中で、
リスボン協定では、原産地名称が「国、地方又は土地の地理上の名称であって、生産物の品質及び特徴が自然的要因及び人的要因を含む地理上の環境に専ら又は本質的に由来する生産物についてその国、地方、又は土地から生ずる生産物を表示するために用いるもの(第 2 条(1)の仮訳)」と定義され、原産国での保護を各同盟国による保護の条件としている。
と書かれていました。
シャンパーニュがフランスのシャンパーニュ地方伝統のワインであり、シャブリはフランスのブルゴーニュ地方の白ワインであり(昭和の時代には「カリフォルニアシャブリ」なるものが普通に見られました)、ポートワインはポルトガルのポルトのワインであり(日本でも「〇〇ポート」というワインがかつてありました)、今は、そうした多くの原産地の名称が保護されています。
なのに、フランスのシャンパーニュのワインはロシア市場で「スパークリングワイン」という名前でないと販売できない、というのは、時代に逆行する決定です。
しかし、ロシア市場にハイソ顧客を抱えるモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは、モエ・エ・シャンドンをはじめとしたグループのシャンパーニュをロシア向けのラベルに張り替える作業に入ったそうで…
この件に関して、シャンパーニュ委員会に見解を問い合わせています。
同委員会からリリースを出す、と、ひとまず返事あり。
リリースが届きましたら、紹介したいと思いますので、しばしお待ちください。
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