ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

豪州クイーンズランドのワイン「シロメィ」

2014-07-23 10:24:30 | ワイン&酒
オーストラリアの クイーンズランド州 から、SIRROMET シロメィ・ワインズの醸造責任者である アダム・チャップマン氏 が初来日し、プレゼンテーションを行いました。




クイーンズランド は豪州の北東部に位置する州で、州都はブリスベン。
有名な観光地ゴールド・コーストやケアンズもクイーンズランド州にあります。
面積は豪州第2位の広さを誇り、ひとつの州なのに、総面積は日本の4.5倍!

南北に2100kmと長く(日本は北海道の北端から九州南端まで約2000km)、北部(ケアンズなど)は熱帯雨林性気候、南部(ブリスベンやゴールドコーストなど)は温暖な亜熱帯気候となっています。
ということから、ブドウ栽培には暑すぎるのでは?という懸念がありますが、アダムさんの話を聞いて納得しました。

それは、シロメイのブドウ畑がある Granit Belt グラニット・ベルトという栽培地区が標高1000m前後の高地にあるということ。
ここは、豪州の中で最も高所のブドウ栽培地域だとか。

つまり、グラニット・ベルトはクイーンズランド州で最も気温が低い冷涼な地域 であり、かつ降雨量も少ないため、ブドウ栽培には最適な気候条件が揃っています。

また、グラニット=花崗岩・ベルトという名が表すように、古い花崗岩土壌が一帯に広がり、花崗岩は水はけが良いですから、これもブドウ栽培にはもってこいの好条件。

位置的には、グラニット・ベルトはブリスベンとゴールドコーストの間にあります。
ここにブドウが植えられたのは1870年代と、歴史は長いですが、かつては地元消費のカジュアルなワインが中心だったようです。

商業的に本腰を入れてワインづくりを行なうようになったのは、ここ10年ほどのことで、アダムさんが醸造責任者を務めるシロメイの設立が2000年ですから、グラニット・ベルトが名声を得るようになった時期とシロメイのスタートはちょうど重なります。
州のワイン協会 Queensland Wine Industry Associationが創設されたのも2001年。
この頃がクイーンズランドのワイン産業の転換点といえるでしょう。



現在、グラニット・ベルトには約50のワイナリーがあります。
小さいブティックワイナリーが多い中、250haの畑を所有するシロメィは地域最大規模を誇ります。


SIRROMET 醸造責任者のアダム・チャップマンさん

豪州を代表する実業家テリー・エドワード・モーリス氏が設立したシロメィに、アダムさんはスタート時の2000年から醸造責任者として働いています。
フランスで修行したアダムさんは、豪州の他のワイナリーを経て、33歳の若さでシロメィの醸造責任者に抜擢されました。
以来、アダムさんは、醸造だけでなく、植樹、栽培から醸造まですべての最高責任者としてシロメィを率いています。

アダムさんの信条は、
「すでにあるものと同じものではなく、シロメィならではのワインをつくりたい」

アダムさんの手腕もあるのでしょう、2013年、シロメィは ワイン評論家ジェームズ・ハリデー氏による5つ星ワイナリー(FIVE STAR WINERY)に認定される、という素晴らしい結果を出しました。

それは、どんなワインなんでしょう?
今回、アダムさんが紹介してくれた中から、私が気になったものをいくつかピックアップすると…


SIRROMET 820 ABOVE Vineyard Selection VERDELHO 2013 (QLD, Granit Belt)

ヴェルディーリョ は、ポルトガルのマデイラ島でもっとも多く栽培されている品種。
酸がキリリ!果実味もキッチリ凝縮した、オークなしの辛口白ワインで、これは好み!
「果実の本当のよさを出したいから残糖ゼロにしている」と、アダムさんの談。

アダムさんは初めての来日ですっかり和食に興味をもったようで、このワインには、シトラス、メロン 、柑橘のイメージがあるので、寿司や刺身に合う、と提案。

ワインの酸味は食事とのマリアージュにとても大事なもの。
アダムさんは、酸が中程度から高いワインの方が食事との相性を引き出してくれる、と言います。


右)SIRROMET Signature Collection 2011 Sparkling Red (QLD, Granit Belt)

豪州ならではの、赤のスパークリングワインです。
シラーズを使ったものが多いですが、これはプティ・ヴェルド100%
海苔?的な独特の風味があり、ワインが濃厚!少し甘く、スパイシーさが口いっぱいに広がります。
プティ・ヴェルドから来る色の濃さも魅力です。

白&ロゼ泡だけでなく、赤スパークリングも含め、よく冷やすこと、とアダムさん。
この赤スパークリングもよく冷えていましたが、タンニンのギシギシ感は皆無で、軽やかで心地よい収れん味が最後にキュッと感じられました。

赤スパークリングを飲むシチュエーションは、いつも悩みの種ですが、
和牛の鉄板焼き(日本で食べてお気に入りになったそう)、ダック、クリスマスのターキー、肉ならあまり力強くないものが、アダムさんのオススメ。
もちろん、そのまま飲んでもよく、食前酒として、フルーツと一緒に、スイーツと一緒にと、実は意外と幅広く楽しめそうですよ。

左)SIRROMET Private Collection Sun Wine 2006
Chambourcin(シャンブルサン)という黒ブドウ品種を使った酒精強化ワインで、ワインの色は赤。発酵途中でアルコールを加えて酒精強化します。アルコール度数21.9%。
干しブドウの風味、強い甘さがあり、これは完璧にデザート向き。




テイスティング終了後、アダムさんにいくつか質問してみました。

まずは、環境への配慮について。
水の再利用システム、ソーラーパネルの設置(800枚)など、最新設備を備える一方で、プレスした後のブドウ果皮や牛糞をコンポストとして利用したり、海藻を溶かし込んだ液体を畑に散布したり、ケミカルなものをなるべく避け、地球にやさしいワインづくりを行なうように心がけている、とのことでした。

現在の豪州のワイントレンドを尋ねると、定番のシャルドネはもちろん今も好まれているけれど、例えば、イタリア品種のヴェルメンティーノやフィアーノなど、これまでとはちょっと違った新しいものに飛びつく傾向があるそうです。
日本で好まれているスパークリングワインへの傾倒はなく、欧州で人気のロゼワインに関しては、夏の時期に飲む程度ということで、新しいものに触手が動くものの、保守的な面も健在?

なお、シロメィでは、畑を細分化して小区画での仕込みを行ない、同じシャルドネでも、土地ごと、区画ごとの個性を追求したワインをつくっています。
例えば、下記のシャルドネ。


左)Le Sauvage 2009 Chardonnay 右)Signature Collection 2011 Chardonnay

どちらも、Seven Scenes vineyard(畑)のブドウを使っていますが、区画が違います。
また、“Le Sauvage”シリーズは天然酵母で発酵させています。
樽はどちらも同じフレンチオークで、使用率も100%。年の違い、酵母の違いもあると思いますが、味わいの傾向が明らかに違いました。



面白い試みでは、グルジアのアンフォラ(甕)による古くからのワインづくりにヒントを得、卵型のタンクで特別な区画のシャルドネを仕込み始めたそうです。
「新しいワイン技術を支えにした、古いスタイルのワインづくりだ」と、アダムさん。
卵型タンクは1台60万円ですって!
ワインが出来上がってきたら、ぜひとも飲んでみたいものです。


現在、シロメィの 輸出比率は25%。生産量がそれほど大きくないので、多くの国に手広く輸出していくのではなく、アジア太平洋地域を中心に展開しており、今後もその方針は変わらないそうです。

アダムさんは、初めて訪れた日本のことをとても気に入ったようで、日本にはぜひ力を入れていきたい!と言っていましたから、今後はシロメィのワインと出合えるチャンスが増えるかもしれませんね。


問い合わせ先:クイーンズランドビジネスセンター (東京都港区)
          http://qbconline.com/




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