ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

大橋MWが語るブルゴーニュワインの現状

2018-02-13 17:23:24 | ワイン&酒
先週、ワインの権威ある世界的資格であるマスターオブワイン(MW)を保有する大橋健一氏によるセミナーが、都内で開催されました。

今回のテーマは、「アルベール・ビショー マスタークラス」

アルベール・ビショーは、フランスのブルゴーニュ地方の大手ワイン生産者で、自社畑のブドウで造るドメーヌワインのほか、他からの買いブドウなどでワイン造りを行なうネゴシアンとしても知られています。
また、他のドメーヌの買収なども行なっており、有名なところでは、シャブリ地区の「ロン・デ・パキ」、ニュイ・サン・ジョルジュの「ドメーヌ・デュ・クロ・フランタン」があります。



大橋健一 MW

大橋MWはアルベール・ビショー社のジャパンアンバサダーに就任しています。



今回のセミナーのアジェンダ


最初の話題は、“ブルゴーニュの現状”です。

いわゆる“ドメーヌ”と呼ばれる生産者数は 3901で、アルベール・ビショー社のようなネゴシアンは288コーペラティブ(協同組合)は16です。



この中で、協同組合数は減少傾向にあり、他の2つは増えています。

協同組合は、瓶詰めしない(できない)栽培農家が収穫したブドウを持ち込むところですが、これがブルゴーニュのブドウ生産量の約半分になります。
この協同組合が減り、他が増えているということは、ブドウを持ちこまず、自分でワインを瓶詰めする人が増えてきた、ということです。

また、近年はブルゴーニュの不作続きでワインが高騰し、それに伴ってブドウ畑の価格も高騰してきたことで、ドメーヌが、自社畑を購入するのではなく、ブドウを買ってワインを造ろうというネゴシアン業にも参入し、ネゴシアン部門のあるドメーヌも出てきました。
さらに、大手ネゴシアンによるドメーヌの買収も増えてきています。




ブルゴーニュワインの価格が高騰しているのは、2011年より続く自然災害が大きな原因です。
地球温暖化の影響で、干ばつ、大洪水、雹…と、世界のワイン産地は大きな被害を受けてきていますが、ブルゴーニュも生産量激減となる災害が続いています。

気候変動により、これまでになかったブドウ木の病気被害も出てきました。



自然災害以外では、中国のブルゴーニュワイン需要があります。
中国はボルドーワインを好んできましたが、ブルゴーニュにも目を付け始めました。
生産量が減って売るワインがないにもかかわらず、需要過多という状況ですから、価格高騰は避けられません。

こうした状況を理解した上で、ブルゴーニュワインの価値、価格を見てほしい、と大橋MWは言います。




ブルゴーニュの現状として、大橋MWはワインスタイルの変化も指摘しています。

“ミネラリーで より軽いスタイル”です。

これはブルゴーニュに限らず、他のワイン産地でも見られる傾向ですよね。
アルコール度数も低くなっています。
とはいえ、濃厚でパワフルなものをコンセプトとしている生産者もいますから、生産者次第です。

軽快な発泡ワイン「クレマン・ド・ブルゴーニュ」も非常に人気で、ブルゴーニュ以外の産地でも、クレマンの人気は高く、特に国内需要が増えているそうです。
かつてのフランスでは、スパークリングワインといえばシャンパーニュが一番、とされていましたが、今は地元の泡モノの人気が高まっています。


続いてのポイントは、原産地呼称(アペラシオン)の新設です。



AOC Bourgogne Cote d’Or (AOCブルゴーニュ・コート・ドール)

AOC Vezelay (AOCヴェズレイ)

2017年に上記2つのアペラシオンが新設されました。
※2017年ヴィンテージから名乗れます

これについて私も調べましたので、内容を記載します。

ブルゴーニュの地域名ワインとして、AOC Boourgogne (Blanc / Rouge)がありますが、
このAOCを名乗れるのは、コート・ドール地区だけでなく、シャブリ地区やボジョレ地区、マコネ地区など、広義のブルゴーニュ地方のブドウを使ったワインも含まれていました。

“AOCブルゴーニュ・コート・ドール”は、コート・ドール地区のみ、正確にはCôte de Beaune と Côte de Nuitsの40の村限定になります。
よりブドウの産地が明確化された、ということです。

Vezelay は、ヨンヌ県のChablis(シャブリ)=Grand Auxerrois(グラン・オーセロワ)エリアの中にあるテロワールのひとつでしたが、2017年11月にAOC Vezsleyの新設が承認されました。
白ワインのみで、総面積70haのAOCです。


Pouilly-Fuissé 1er Les Cras
南部マコネ地区の“AOCプイィ・フュイッセ”の中で、1級畑が新設される、ということですが、まだブルゴーニュ委員会のサイトには載っていないので、こちらは承認待ちなのかもしれません。

AOC新設や1級昇格となると、これまでの価格から値上がりが予定されそうですね。

また、ブルゴーニュでは、著名ドメーヌの買収話が出てきたりと、価格に影響の出そうな話が色々とありそうです。




セミナーでは、アルベール・ビショーが買収したドメーヌのワインにも触れましたが、長くなりそうなので、また別の記事として紹介したいと思います。



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