ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

意外な発見!ブルゴーニュのジョゼフ・ドルーアン

2017-04-20 10:00:00 | ワイン&酒
先週、仏ブルゴーニュの「メゾン・ジョゼフ・ドルーアン社」より、社長のフレデリック・ドルーアン氏が来日し、プレゼンテーションセミナーを行ないました。

「ジョゼフ・ドルーアン」は、1880年にブルゴーニュのボーヌに設立されたワイン生産者です。


Frédéric Drouhin  President -Maison Jóseph Drouhin

フレデリック氏は、創始者のジョゼフ、祖父モーリス、父ロベールに続くドルーアン家の4世代目になります。

2人の兄、一人の姉がいる4人きょうだい(1961~1968年生まれ)の末っ子でありながら、「兄さん、姉さんたちは自分たちの好きなことをする。だから、社長はキミがよろしくね~♪」と任されたといいます(笑)

長兄のフィリップは栽培を、長女のヴェロニクは醸造を、次兄のローランはアメリカ市場の販売担当と、4人で分担しながら現在のジョゼフ・ドルーアンを運営しています。
世間一般から見ると、長兄のフィリップが社長に収まりそうですが、上のきょうだいが末っ子社長をバックアップするのは、実はパワーバランス的には理にかなっているかもしれませんね。

もう十数年前にもなりますが、ボーヌの本社を訪問したこともありますし、折に触れて何度も飲んできていますので、ジョゼフ・ドルーアンのことはよくわかっているつもりでいました。
それでも、改めて話を聞くと、新たな発見がたくさんありました。




現在、ジョゼフ・ドルーアン社では80haの畑を所有していますが、その半分はシャブリにあります。
シャブリは、ブルゴーニュ北部にある地区で、白ワインの銘醸地として知られています。

フレデリックによると、シャブリ地区は、フィロキセラ禍(19世紀後半)の前には3万haもの畑があったのに、フィロキセラの被害で500haまで畑が減ったといいます。
こうした状況を、祖父モーリスと父ロベールはこのまま捨てておけないと考え、シャブリ地区の地質図を見ながら、少しずつ畑を買い付けていったそうです。

そんなわけで、ジョゼフ・ドルーアンでは、4つのグラン・クリュと6つのプルミエクリュを含む40haの畑をシャブリに所有しています。

ジョゼフ・ドルーアンはボーヌの印象が強かったですが、所有畑の半分がシャブリと知り、驚きました。

ちょっと古い時代の日本のレストランのワインリストでは、フランスの白ワインといえばシャブリがオンリストされているのが当たり前でしたが、今はコート・ドールの白ワインや、ニューワールドの白ワインに押されているでしょうか。
でも、現代のシャブリは、ずいぶんと変わってきています。

個人的にはミネラリーな白ワインが好きで、もちろんシャブリも好きで、飲む機会もそこそこあり、その魅力がもっと広く伝わるといいなあと、いつも思っています。



ジョゼフ・ドルーアンで、もうひとつ注目したいのは、30年前からオーガニックに取り組み始め、20年前からビオディナミに移行しているということです。

今は、オーガニックやビオディナミは流行のひとつですが、30年前はそうではなく、
「土地を守っていかねば、という強い思いから始めました」とフレデリックさんは言います。

彼らの父ロベールさんが、
「新しい病気に立ち向かうのに新しい薬を使い、畑はたしかにキレイになったけれど、ワインは前よりおいしくなくなった」と言ったのを聞き、「それなら農薬をやめよう、前に戻ろう」と決意したそうです。

その30年前の1987年、彼らはアメリカのオレゴン州に進出します。
キッカケは、有名なパリ審判(1976年、アメリカのワインがボルドーワインに勝利)だそうで、ロベールさんは、アメリカで何が起きてる?向こうに行ってみなければ!と、まずはオレゴンに出かけました。

1987年に500haの畑を取得し、現在は、オレゴンに11000ha(うち7200haがピノ・ノワール)を所有しています。

[参考]
オレゴンの土地に育ったブルゴーニュのワイン@ドルーアン
http://blog.goo.ne.jp/may_w/e/60eb940728285c3cbb5d9968bae4bab0

ドルーアン・オレゴンから新しい畑「ローズロック」のワインが新発売
http://blog.goo.ne.jp/may_w/e/926d039a78f94840e9ec56f674ada664



ドルーアン・オレゴンについてはそこそこ知られていると思いますが、ブルゴーニュでの契約栽培のことはあまり知られていないかもしれません。

ジョゼフ・ドルーアン社では、優良な契約農家とのパートナーシップがいくつかあり、それを特別なラベルで出しているワインもあります。

例えば、モンラッシェの「マルキ・ド・ラギッシュ家」とは3代にわたって契約を継続しており、ジョゼフ・ドルーアンのワインのエチケットラベルに、「マルキ・ド・ラギッシュ」の名前を記載しています。

「ラギッシュ家は、1393年から続く男爵家で、誇りを持ってブドウ栽培を行なっている。名門ラギッシュ家とドルーアンの2つの名前を並べることで、シナジー効果をはかっている」とフレデリックさんは言います。




300年前に建てられた慈善病院が前身の「ドメーヌ・デ・オスピス・ド・ベルヴィル」も同様で、こちらとも長期的なパートナーシップを組んでいます。

ドメーヌ・デ・オスピス・ド・ベルヴィルはボージョレ地区の3つのクリュ(フルーリー、ブルイイ、モルゴン)に畑を所有しており、ジョゼフ・ドルーアンでは、「ドメーヌ・デ・オスピス・ド・ベルヴィル」の名前を記載した特別ラベルのボージョレワインをリリースしています。

Morgon 2015 を試飲しましたが、豊かな果実味と、ほどよい収れん味のあるタンニンのストラクチャーのバランスが心地よく、バランスよく飲めるワインでした。これで、参考小売価格3000円(税抜)。これは魅力的!



魅力的といえば、ブルゴーニュ101番目のAOCであるコトー・ブルギニヨン(2011年に認可)を、ジョゼフ・ドルーアンでも発売し始めています。


コトー・ブルギニヨン 2014

ジョセフ・ドルーアンのコトー・ブルギニヨン赤は、ガメイが2/3、ピノ・ノワールが1/3という構成で(買いブドウ)、すべて除梗し、醸造期間は短く、フルーティーでシンプルに飲めるワインに仕上げています。

若者層に飲んでもらいたいため、価格を抑え、参考小売価格2400円(税抜)。
エチケットデザインも、若い層を意識したグラフィックデザインにしているそうです。

実際に飲んでみると、ピュアで、まっすぐで、フルーティーでおいしい!
だんだんとフルーツの甘みが出てきて、とても飲みやすい。
若者だけではなく、ワインを飲みなれた人にもオススメです。

[参考]
ブルゴーニュの新AOCコトー・ブルギニョン
http://blog.goo.ne.jp/may_w/e/8c244dbd9b408cca2585a32c7978883a

AOCコトー・ブルギニョンの定義
http://blog.goo.ne.jp/may_w/e/8f34b75eb5a3db212818c12597820f9d



ジョゼフ・ドルーアンというと、オレゴンに進出しているとはいえ、老舗の名門なので、ブルゴーニュに関しては保守的なところも多いのでは?と思いきや、実に色々なことに取り組んでいることに驚かされました。

ネゴシアンとしても有名ですが、80haもの自社畑をシャブリ(40ha)とコート・ドール(40ha)に所有し、家族経営でワインづくりに携わっていることが、彼らの誇りです。


ジョゼフ・ドルーアンの代名詞的ワイン “ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ”

よく知っているつもりでいましたが、今回、改めてフレデリックさんの話を聞き、ジョゼフ・ドルーアン社への認識が変わりました。

5世代目になるフレデリックさんたち4きょうだいの子供たちも成長しつつあるということですので、将来も期待したいですね。




フレデリックさん、ありがとうございました!


余談ですが、彼らの長兄フィリップさん(長身のイケメン)は独身だそうで、
「誰かお嫁さんに来ませんか?」と、フレデリックさんが勧誘していました(笑)
ドルーアン家に嫁ぎたい方、チャンスです

(輸入元:三国ワイン株式会社)

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