ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第32回 Champagne de VENOGE@「キャッチ The 生産者」

2009-03-22 10:40:58 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年3月11日)

第32回  Julien Martin  <Champagne de VENOGE>

シャンパーニュ訪問の第3回目となる今回は、
エペルネにある “シャンパーニュ・ドゥ・ヴノージュ”社の輸出マネージャー、
ジュリアン・マーティンさんが登場します。



<Julien Martin>(ジュリアン・マーティン)
シャンパーニュ・ドゥ・ヴノージュの輸出マネージャー。
ランスでワインビジネスに携わった後、4年前にドゥ・ヴノージュ社に入社。
親しみやすい笑顔の、癒し系ジェントルマン 。


名門揃いのシャンパーニュ通りへ
ジュリアン・マーティンさんとの最初の出会いは2006年3 月。彼が来日し、滞在期間はわずか3日間でしたが、興味深いテイスティング会を開いてくれました(注*)。
そんなわけで、シャンパーニュに行くからにはドゥ・ヴノージュ社を訪問し、今度こそ彼の話をじっくりと聞かねば!です。

そして2006年の初冬、エペルネのシャンパーニュ通りにある“ドゥ・ヴノージュ”社のオフィスでジュリアンさんが出迎えてくれました。




エペルネのシャンパーニュ通りは、その名が表すように、名だたるシャンパンメーカーがずらりと軒を並べています。街としてはランスの方が格段に大きいのですが、シャンパーニュ委員会の本部もあるエペルネはシャンパーニュの心臓部といっていいでしょう。

1837年創立ドゥ・ヴノージュ社は、元々はこの通りでも2番目に大きな敷地(最大はモエ・エ・シャンドン社)にあったそうですが、1998年にボワゼル・シャノワーヌ・シャンパーニュ(BCC)グループ(ボワゼル、シャノワーヌ、アレクサンドル・ボネ、フィリポナ、ランソンなどを抱える)の傘下に入ったため、現在の場所に移ってきました。

通りに面した門を入ると、右手に同グループのボワゼル、左にドゥ・ヴノージュのオフィスがあり、正面には醸造所があります。



“コルドン・ブルー”の由来
ドゥ・ヴノージュの代表銘柄は “コルドン・ブルー”(Cordon Bleu)
フランス語で“青いリボン”という意味で、これは、ドゥ・ヴノージュ家がスイス出身であることから、スイスのレマン湖に注ぐヴノージュ川の水の青さを青いリボンになぞらえて、名づけています。

この青いリボンは、1578年にフランスで結成された“精霊騎士団”にも関係しています。彼らは青いリボンで十字架を下げていましたが、彼らの晩餐の食卓が豪華で素晴らしかったことから、青いリボンは素晴らしい料理人を意味するようになり、1895年にはパリにその名を付けた名門料理学校“ル・コルドン・ブルー”が誕生しています。

“青いリボン”は、昔も今もまさにガストロノミーの象徴というわけです。

(注*)
このときのテイスティング会の模様は、ソムリエ協会機関誌(『sommelier』90号)をご覧ください。



ドゥ・ヴノージュ社のオフィスには古い書物のようなものがたくさんありました。
「これらは何?」と尋ねると、
「これこそがドゥ・ヴノージュの歴史が詰まった宝物さ」と、自慢げなジュリアンさん。



ボロボロの表紙のそれらを開くと、素晴らしいエチケットのコレクションが目に飛び込んできました。100年以上も前に使われていたものもあります。
ドゥ・ヴノージュ社の代名詞“コルドン・ブルー”も、ずいぶんとデザインが変わっています。


Q.“コルドン・ブルー”はいつ頃誕生したのですか?
A.名前が誕生したのは1851年で、シャンパーニュとしてリリースしたのは1864年です。
ほら、今はマム社のブランド名にもなっている“コルドン・ルージュ”(赤いリボン)は、ドゥ・ヴノージュでもつくっていたんですよ。



ほかに“コルドン・ブラン”(白いリボン)もあるし、面白いところでは、
“ドン・ペリニヨン”もあるんです。驚きでしょう?



モエ・エ・シャンドン社の“ドン・ペリニヨン”がリリースされたのは1937年ですが、当社ではそれより以前の1892年に出していたわけです。



Q.ドゥ・ヴノージュ社のワインメーキングについて教えて下さい。
A.まず、果汁は最初にプレスしたキュヴェしか使いません第一次発酵は100%ステンレスタンクで行います。

その際、ひとつの村のひとつのセパージュごとに仕込みますので(例:アンボネ村のピノ・ノワールはひとつのタンク)、21のタンクができます。

ブレンドは1月から2月にかけて行い、大きなタンクに移して酵母を添加し、ボトルに移して二次発酵を行います。

Q.このフラスコ型のボトルは“グラン・ヴァン・デ・プランス”に使われているはずだと思うのですが、透明なバージョンもあるのですか?(“グラン・ヴァン~”のボトルは緑褐色)
A.これは新しいキュヴェで、“Louis XV”(ルイ・キャーンズ)(かつてのフランス王“ルイ15世”の意味)です。



グラン・ヴァン・デ・プランスはシャルドネ100%のブラン・ド・ブランでしたが、ルイ15世はシャルドネとピノ・ノワール各50%のシャンパーニュです。10年間瓶で熟成を行い、1995年ヴィンテージを初めてリリースします。
日本には、2007年3月のFOODEX JAPAN (幕張)で披露する予定です。

Q.なぜ「ルイ15世」という名前が付いているのですか?
A.1728年5月25日、ルイ15世はシャンパーニュのワインだけにボトルの使用を許可しました。その頃は、ワインを運ぶのはもちろん、売るときにもボトルは使われていませんでしたが(樽が使われていた)、唯一シャンパーニュだけが認められたのです。このことは、シャンパーニュのワインだけが瓶内で発酵する間に泡を閉じ込めることができるようになったことにつながります。そうした意味から、ルイ15世の名を冠しました。

Q.Louis XVは10年という長期の熟成をしているということですが、通常、瓶熟成期間はどのくらいですか??
A.当社では、ノン・ヴィンテージものは最低3年、ミレジメものは最低5年瓶熟成を行っています。

ドサージュの量がごくわずかの極辛口“Cuvee 20ANS Extra-Brut 1983”の瓶熟成期間は20年です。これは非常に長熟タイプのシャンパーニュです(ピノ・ノワール60%、シャルドネとピノ・ムニエ各20%)




Q.赤ワインもつくっているのですか?
A.“コトー・シャンプノワ ラ・フォレ”(Coteaux Champenois “La Foret”)で、ピノ・ノワール100%のスティルワインです。



元々シャンパーニュの地でつくられていたのは赤ワインで、ルイ15世の時代にはこの赤ワインが好まれていたことを忘れないようにつくっています。ピノ・ノワールはリセ村のものを使っています。

Q.聞くところによると、シャンパーニュをデカンタージュして飲むことがあるそうですが?
A.はい、古いヴィンテージのシャンパーニュを飲むときに、アロマを開かせるためにデカンタージュすることがあります。




地下のセラーの壁は厚さ50cmのチョーク層で、長さは1.2km。
温度は1年中12~13℃に保たれています


<テイスティングしたシャンパーニュ>

Cordon Bleu Brut Select
ピノ・ノワール50%、シャルドネとピノ・ムニエが各25%。
フレッシュで、ヘビーになりすぎないシャンパーニュです。

「ピノ・ノワールを使うことによって、ワインにボディを与えています。アペリティフに向きますが、軽い魚料理、日本の寿司などにも合うと思いますし、ランチタイムに飲むのにぴったりです」(ジュリアンさん)


Rose Brut
ピノ・ノワール60%、シャルドネとピノ・ムニエ各20%。
きれいなばら色で、酸とボディがしっかりとし、果実の豊かさがあり、スティルワインぽいシャンパーニュです。

「赤い果実のニュアンスのあるエレガントなロゼで、アペリティフにおすすめです。エチケットの女性はイボンヌです(1869年生まれのドゥ・ヴノージュ家の娘。マン伯爵と結婚し、パリの社交界にシャンパーニュ・ドゥ・ヴノージュの名前を広めた)」(ジュリアンさん)



左から Cordon Bleu Blanc de Blancs Millesime 1996、 
Cordon Bleu Brut Select、Blanc de Noirs Brut、Rose Brut


Blanc de Noirs Brut
ピノ・ノワール80%、ピノ・ムニエ20% 。
とても複雑なアロマで、ナッツ、ノワゼット、バターといったものを感じ、味わいもしっかり。エチケットの男性は、イボンヌの夫であるマン伯爵。

「非常に貧しい土地のぶどうを使っていますが、力強いシャンパーニュです。ゲーム(狩猟した鳥獣類)、鹿肉のトリュフソース、フォアグラのソテーに小さいたまねぎを添えたものなどに合わせたいですね」(ジュリアンさん)

 
Cordon Bleu Blanc de Blancs Millesime 1996
シャルドネ100%。
非常にいい酸味を持っていて、ミネラル感がしっかりあり、しかも丸い感じがあります。

「フィネス、エレガンスを持つシャンパーニュで、非常に長熟なタイプです。セラーで20年から25年は持つと思います。魚料理、牛肉、山羊のチーズなどがおすすめマリアージュです。一般的に、白ワインはチーズとの相性がいいことを覚えておくといいですよ」(ジュリアンさん)



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インタビューを終えて


今回の訪問では、ドゥ・ヴノージュ社の社長 Gilles de la Bassetiere(ジル・ド・ラ・バスティエール)氏にも会うことができました。まだ30代と若いモデルのようなイケメン社長で(写真を撮り忘れたのが残念!)、日本の大学(慶応大学)に通っていたこともあり(住んでいたのは池袋だったとか)、日本語も少し話します。

そんなわけで、ジルさんは、日本はとても好きな国だと言い、日本の話に花が咲きました。私たち日本人にとっても、シャンパン会社のトップに日本通がいるということは親しみを感じます。ジルさんのように、国際感覚を持った若い世代の経営者は、これから先どんどん登場すると思われます。

ドゥ・ヴノージュの名は日本ではまだなじみが少ないかもしれませんが、ぜひ覚えておきたいシャンパンハウスです。



本文中で紹介した“Louis XV 1995”ですが、実はいち早く飲ませていただきました。

以前、シャルドネ100%のグラン・ヴァン・デ・プランス1992を飲んだときに、ずいぶんと若々しくてフレッシュだと感じたので、それよりも3年若いLouis XVはどうだろうかと、開ける前から胸が躍って仕方ありませんでした。



果たして、Louis XVはとてもまろやかでコクがあり、味わいに熟成感があります。泡は穏やかで全体的にしっとりと落ち着き、個人的にとても好きなタイプのシャンパーニュで、ノド越しを味わうより、じっくりとシャンパーニュの旨さを楽しみたい人向けです。

しかも、美しいデカンタに入り、ガラスの栓が別添えされているので、飲んだ後にデカンタとして使えるという嬉しいオマケもあります。

こんな素晴らしいシャンパーニュが、いよいよ日本に上陸します!

この3月に幕張で開かれる“FOODEX 2007”で紹介すると言っていましたが、ジュリアンさんは、私との約束通りに、Louis XVを携えて日本に来てくれるでしょうか 。



取材協力:富士貿易株式会社
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第31回 Billecart-Salmon@「キャッチ The 生産者」

2009-03-22 10:34:13 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年2月11日)

第31回  Claudia Meigneu  <Billecart-Salmon>

さて、今回も引き続きシャンパーニュからのレポートです。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のマレイユ・シュル・アイ村にある
“ビルカール・サルモン” を、スタッフのクラウディアさんに案内していただきました。



<Claudia Meigneu>(クラウディア・メニュー)
笑顔がチャーミングなクラウディアさんは、ビルカール・サルモンの窓口ともいえる存在。
訪問希望者の受け入れをはじめ、ツアー案内やテイスティングなど、さまざまな対応を行っています。英語もOKです 。


マレイユ・シュル・アイ村へ
エペルネの中心地から北東方向に進み、街中を抜けて東に折れると、日本の田園地帯を思わせるような、なんとものどかな地方道に出ます。右手には太陽の光を反射してキラキラ光るマルヌ川の運河がゆったりと流れ、初冬というのに、車窓に差し込む陽射しもポカポカと暖かです。
この東西に流れるマルヌ川の北側にマレイユ・シュル・アイ村があり、その奥には小高い丘が連なり、斜面から麓にブドウが広がっています。



Billecart-Salmon
  ―7代の歴史を持つ家族経営のシャンパンハウス―

17世紀にまで遡るビルカール家ですが、ニコラ・フランソワ・ビルカールと妻のエリザベス・サルモンがシャンパンハウスを興したのは1818年のことでした。
それ以来7代にわたってマレイユ・シュル・アイ村に居を構え、シャンパーニュをつくり続けています。

現当主はフランソワ・ローラン・ビルカール氏で、弟のアントワーヌ氏がフランソワの右腕となり、ビルカール・サルモンを盛り立てています。

自社畑は10.2haですが、他に35のクリュ、合計140haのエリアからブドウを購入しています。そのうち90%は素晴らしい畑が集中するエペルネ周辺20kmのエリアのものです。

年間生産量は約120万本と中規模。
ちなみに、あのモエ・エ・シャンドン社は年間3000万本ですから、規模の違いがお分かりいただけるでしょう。





花のある季節ならどんなにか美しいことか・・・
と思われる見事なフランス庭園 を抜け、まずはオフィスから道を1本挟んだ醸造所へ。


美しいフランス庭園


樹齢200年のホースチェスナット(マロニエ)


Q.シャンパーニュづくりにおけるビルカール・サルモンのこだわりは?
A.まず、“keeping only Cuvee”、つまり、最初に搾るキュヴェしか使用しないことです。

シャンパーニュの場合、4000kgのブドウからまず2050リットルのキュヴェ(Tete de Cuvee)を搾り、そこからさらに“プルミエール・タイユ”と呼ばれる500リットルの搾汁を得ることができますが、ビルカール・サルモンでは、最初の2050リットルの部分しか使いません。

Q.温度管理はどうしていますか?
A.フレッシュさを保つために、12~13℃という低めの温度で3週間かけて発酵を行います。温度はタンクごとにコンピュータで管理し、セラーマスターが毎日チェックします。


右は各タンクの温度を管理するパネル。各々温度表示されてます。

Q.リザーヴ・ワインの使用比率は?
A.約25%です。ブレンド作業は、だいたい1月から6、7月頃にかけて行っていま 」

Q.瓶熟成の期間はどうなっていますか?
A.法律上ではノン・ヴィンテージもの(NV)で15ヶ月以上、ミレジメもの(収穫年記載のもの)で3年以上の瓶熟期間が必要ですが、当メゾンでは、NVは3~4年、ミレジメは8~10年瓶熟させます。この期間は年によっても異なります。



Q.動瓶(ルミアージュ)は手作業ですか?
A.今は機械(ジャイロパレット)があるので便利になりましたが、ミレジムシャンパーニュや、特殊な形をしているボトルは動瓶のバスケットに入りませんので、職人の手によって行います。

手作業の場合は毎日同じ職人が同じラインを担当し、3ヶ月かけて行っています。


ジャイロパレット用のバスケット

Q.貴社のラインナップは?
A.シャンパーニュで9のキュヴェを生産しています。赤ワインも醸造していますが、ロゼシャンパーニュのブレンド用のみに使い、スティルワインの“コトー・シャンプノワ”としてはリリースしていません。

Q.自慢のキュヴェはありますか?
A.醸造所の裏の畑のブドウからつくられる、ピノ・ノワール100%の“クロ・サン・ティレール”(Clos Saint-Hilaire)です。1964年にブドウを植え、1995年ヴィンテージを初めてリリースしました。
わずか1haの単一畑ですが、スロープがいいボディをワインに与え、素晴らしい品質のものができます。この単一畑の個性をしっかりと出すために、門出のリキュールは1gたりとも加えません。ドサージュは0gの、ノン・ノゼです。リリース後20年は楽しめるシャンパーニュだと思います。

Q.クロ・サン・ティレールの生産量はどのくらいですか?
A.年によっても違いますが、だいたい3500本から7500本の間です。今までリリースした年は1995、1996、1998、1999、2000、2002年です。毎年つくれるとは限りません。

Q.ドサージュの量にはこだわりがあるのでしょうか?
A.当社のラインナップの中には、ひとつだけ甘口(ドゥミ・セック)がありますが、それ以外はすべて辛口です。ミレジメものは3~4g、NVは10~12gを目安としています。

Q.主な輸出先は?
A.アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、日本、香港などです。同じアジアでも中国市場はまだまだ難しいですね。




<テイスティングしたシャンパーニュ>

Brut Reserve NV
ピノ・ムニエ40%、ピノ・ノワールとシャルドネは年によって30~35%ずつのブレンドとなるようですが(基本的にはピノ・ムニエ50%、シャルドネ30%、ピノ・ノワール20%とのこと)、1945年以来変わらないスタイルを持つ、ビルカール・サルモンのクラシカルキュヴェ。
コンセプトは“ハーモニーとバランス”

非常に口当たりがよく飲みやすいシャンパーニュで、「アペリティフなどはもちろん、どんなシチュエーションでも気軽に楽しんでください」と、クラウディアさん。


Brut Blanc de Blancs 1998
シャルドネで有名なコート・デ・ブラン地区のグラン・クリュ畑(Avize、Cramant、Mesnil-sur-Oger)のシャルドネを使ってつくられています。Avizeは力強さを、Cramantはフィネスを、Mesnil-sur-Ogerはストラクチャーと長い寿命を与えます。
コンセプトは“生き生きとしてデリケート”

酸がキリリと素晴らしく、ボディはしっかりしているのに、繊細さも持ち合わせています。

クラウディアさんのおすすめマリアージュは、オイスターや魚料理、クリーミーなソースをかけたものなど。

Cuvee Elisabeth Salmon Rose 1998
濃いオニオンカラーを持つ美しいロゼ。これはロゼのプレスティージュで、創設者夫人の名(エリザベス・サルモン)を冠し、1988年に誕生しました。まずシャルドネとピノ・ノワールから白ワインをつくり、マレイユ・シュル・アイ村のピノ・ノワールでつくった赤ワインを少量(8%ほど)加えてロゼ色に仕上げます。
コンセプトは“力強さと複雑さ”

口に含むとものすごいブリュット!酸がとても豊かですが、全体の印象が華やかで、非常にバランスの良いシャンパーニュです。

10~15年ほど寝かせておくことができ、白身の肉料理(チキンなど)からデザート、赤い果皮のフルーツにまで幅広く合わせることができるとのこと。


 
左から、Brut Reserve、Blanc de Blancs 1998、Cuvee Elisabeth Salmon 1998

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インタビューを終えて


マレイユ・シュル・アイ村の畑の格付けはプルミエ・クリュ。グラン・クリュとして有名なアイ村のほんの少し東に位置し、アイ村同様、東西に流れるマルヌ川がブドウにとって非常に良い条件を作り出しています。

テイスティングルームでは、アントワーヌさんともご一緒しました。非常にインテリジェンスを感じさせる、存在感のある人物で、かなりの“切れ者”と見受けられました。彼はすでに次期社長の席が決まっています。

「そうそう、来月に日本に行きますから、よろしく!」

と言って別れた彼と、本当にすぐに東京で再会できましたが、その時はロゼをしっかりと味わわせていただきました。


東京で再会した時のアントワーヌさん


実は、ロゼシャンパーニュこそがビルカール・サルモンのオリジンともいえるもので、NVのコレクションシリーズの中でも、唯一ロゼだけが特別なボトルに入れられています。

ロゼシャンパーニュのつくり方には、7代に渡る秘訣があるとのこと。シャルドネとピノ・ムニエとピノ・ノワールの3種からつくられますが、ピノ・ノワールからつくられた赤ワインを少量加えてロゼ色にします。

そして、ロゼのプレスティージュ“キュヴェ・エリザベス・サルモン”は、口に含むと、複雑で落ち着いた旨味がジワ~っとしみ込みます。しっかりと飲みごたえのあるボディで、どこか妖艶な雰囲気も漂うほど。
大切な夜に飲みたい、そんな印象を改めて感じました。

ビルカール・サルモンのコンセプトは “フィネス”、“バランス”、“エレガンス”



2年ほど前に新しくつくられた、「BとS」をデザインしたロゴマークもこのコンセプトをよく表していて、これを用いたパッケージ(右の写真参照)はとてもスタイリッシュでファッショナブル!

また、2006年の7月には、英国の『デカンター』誌によるNVシャンパン118本のブラインドテイスティングでBrut Reserveが1位の座に輝くという快挙を成し遂げ、このところのビルカール・サルモンの躍進ぶりには素晴らしいものがあります。

これはアントワーヌさんの力によるものが大きいと思われます。その彼がこれからのビルカール・サルモンを統率していくのですから、これはもう目が離せそうもありません。



取材協力:三国ワイン株式会社

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第30回 Gosset-Brabant@「キャッチ The 生産者」

2009-03-15 10:25:47 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年1月11日)

第30回  Christian Gosset  <Gosset-Brabant>

今回から数回にわたり、2006年の後半に現地訪問した生産者を紹介していきたいと思います。
トップバッターは、フランスのシャンパーニュ生産者、“ゴセ・ブラバン”クリスチャン・ゴセ 氏 です。



<Christian Gosset>(クリスチャン・ゴセ)
1964年生まれ。ゴセ・ブラバンの3代目。1985年からワインビジネスの世界へ。ブルゴーニュのドメーヌでの研修や、ワイナリー経営のマネージメントを学んだ後、ゴセ・ブラバンへ。
現在はゼネラルマネージャーとして手腕を発揮中。


アイ村で再会

ゴセ・ブラバンはシャンパーニュのヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区にあるアイ村(Ay)のシャンパーニュ生産者で、現在はミッシェルとクリスチャン兄弟が運営しています。

弟のクリスチャンとは2006年7月に彼が来日した際に会っていたので、シャンパーニュに行く時があれば、ぜひクリスチャンを訪問せねば!と思っていました。

梅雨明けの蒸し暑い東京で出会ったクリスチャンと、初冬のアイ村で再会です。

ゴセ家は1584年からブドウ栽培に携わっていましたが、自分のところでワイン生産をするようになったのは(生産者元詰め、いわゆる“レコルタン・マニュピュラン”(RM))、クリスチャンの祖父ガブリエル・ゴセ氏の代から(1930年代)です。

ガブリエル氏の妻(クリスチャンの祖母)の旧姓が“Brabant”(ブラバン)だったため、ゴセ夫妻の新しいシャンパーニュは“Gosset-Brabant”(ゴセ・ブラバン)と名づけられました。

現在のゴセ・ブラバンは、兄のミッシェルが栽培と醸造を、弟のクリスチャンがマネージメントを担当し、兄弟が力を合わせて祖父母の意志を引き継いでいます。

アヴィーズの醸造学校で4年間学んだ兄のミッシェルは、まじめな職人気質で、ちょっとシャイ。


ガブリエル氏の姿は、ラベルやコルクに描かれた人物像で確認ができます。



まずは畑が見たい!という私の希望で、クリスチャンの運転する車に乗り、アイの畑へ。
畑は小高い丘がいくつも連なり、ずいぶん高いところにも畑が見られます。



Q.この畑は主にどの方向を向いていますか?
A.この斜面は南西向きですが、丘陵ですから、斜面によってさまざまな方向を向いています。東や北を向いている畑もありますよ。

Q.なぜ北向きの斜面にもブドウを植えているのですか?
A.北向きの畑から収穫されたブドウには酸味が乗るからです。これが、シャンパーニュをつくる際にちょうどよくバランスを取ってくれます。

Q.植えているブドウ品種は?
A.アイはピノ・ノワールが主体です。我々はシャンパーニュに9.6haの畑を所有していますが、その65%がピノ・ノワールで、シャルドネが15%、ピノ・ムニエが20%です。 樹齢は平均25年です。

Q.グラン・クリュ畑はありますか?
A.アイの5.6haのピノ・ノワールと、コート・デ・ブラン地区のシュイイ(Chouilly)のシャルドネ0.5haにグラン・クリュ畑を所有しています。



夕方、太陽が沈みかけて山の陰になる畑がある中、ずっと高い位置にある畑にはまだ太陽が当たっています(下の写真)。
なるほど、山の上の畑は日射にも恵まれるわけですね。



この丘陵地帯の畑を下り、今度はまったく別の、クリスチャンが“特別な畑”と呼ぶブドウ畑に連れて行ってもらいました。

Q.“特別な畑”というのはどういう意味ですか?
A.ブドウの樹の下の地面に雑草がたくさん生えているでしょ?これはわざとこうしています。除草剤とか、ケミカルなものをできるだけ使わないでブドウをつくりたいと思っているからです。

Q.ビオディナミですか?
A.ビオディナミを採用している友人はたくさんいるけれど、うちは今のところはビオディナミにするつもりはありません。なにかあった時の充分な対処ができませんから。



Q.ところで、2006年のシャンパーニュはどんな年でしたか?
A.8月は暑くて乾燥していました。その後の9月もとても良く、だからといって“楽な年”とは言えませんでしたね。例えば、2002年はどの地区も良かったけれど、2006年は場所によって差があります。ベストな場所では、量は多くありませんが、凝縮したブドウが収穫できました。

Q.ゴセ・ブラバンでは、ワインづくりに樽は使わないのですか?
A.ええ、ステンレスタンクしか使いません。というのも、シャンパーニュはブレンドによってつくり上げるワインだからです。ブレンドするそれぞれのジュースをクリアに保つためにはステンレスタンクが最適だと思っています。


ステンレスタンクがずらりと並ぶ醸造所内

Q.リザーヴワイン(注*1)はどうしていますか?
A.大手では2年、3年前のもの・・・と、大量にリザーヴワインをストックしておきますが、うちは小さな生産者ですから、1年前のワインをリザーヴワインとして取っておくだけで間に合ってしまいます。

Q.あれ?ラベルのデザインが変わりましたよね?
A.もっとゴセ・ブラバンのアイデンティティを表現し、わかりやすくするために変更しました。これだと、消費者に一目でゴセ・ブラバンのシャンパーニュだとわかってもらえると思ったからです。
紙質もナチュラルなものに変え、色とデザインはデザイナーと相談しながら18ヶ月かけて決めました。

Q.リニューアル後のラインナップはどうなっていますか?
A.シャンパーニュは "Cuvee Gabriel Grand Cru Millesime 1998”、“Cuvee de ”の4アイテムです。



Q.ゴセ・ブラバンのワインメーキングのコンセプトは?
A.“ワインメーカー”というよりも、まず“ワイングローワー”(グローワーは“栽培者”の意味)でありたいと思っています。つまり、良いワインのために、まずは良いブドウを選ぶことに力を注ぎたいです。
できるだけ樹齢の高い(30年以上)樹を選び、セラーではブドウのテイストを保つことを目指せば、ワインに何も手を加える必要はなく、自然に良いものができます。
その中で、“アイ村のテイスト(Tast of Ay)”を出していけたら、と思っています。

(注*1)
リザーヴワイン:前の年(もしくはそれ以前)につくってストックしておいたワインのこと。ノン・ヴィンテージ・シャンパーニュの場合、そのシャンパンハウスの個性を表現するためには、このリザーヴワインの存在が不可欠。アッサンブラージュの際にブレンドされ、ストック年数やブレンド比率はメーカーによってさまざま。


<テイスティングしたシャンパーニュ>

Tradition Premier Cru
フルーティでチャーミング。シャンパーニュというと身構えてしまいがちだけど、これは気軽に開けて楽しみたくなる、そんなシャンパーニュ。



「料理と合わせるのなら、複雑でなく、ファット(脂肪分たっぷり)でない、シンプルなものがいいですね。さっぱりした魚料理、ジャンボン・ペルシェ(ハム類)、サーモンのリエット(ペースト)、そして日本の料理にも合うと思います」(クリスチャン)

Mareuil sur Ay(ボディ、フレッシュさ、酸が特徴)、Avenay Val d’Or(赤のスティルワイン産地で、古いピノ・ノワールの樹がある)、Dizy(東向きの畑、ミネラリティ、ワインによいボディを与える)の3つのプルミエ・クリュの畑からのブドウ(ピノ・ノワール70%、シャルドネ20%、ピノ・ムニエ10%)を使用。最低18ヶ月はセラーで熟成させ、リザーヴワインの使用率は30%。ドサージュ(瓶詰め時に加える甘いリキュール)の量は、Brutは10g/リットル、Demi-Secには40g/リットル。


Rose Premier Cru
鮮やかなバラ色が美しく、さくらんぼの香りとチャーミングな酸味が魅力的。フレッシュさとボディのバランスが取れ、そこに複雑さも加わり、そのまま楽しむのはもちろん、料理との相性も良さそうなロゼ。



「森の香りがいっぱい感じられませんか?香りと味わいのバランスが非常にいいシャンパーニュです。スモークサーモン、野菜や魚介の入ったテリーヌ、ツナを使った料理に。刺身にも合いそうですね。あまり火を入れすぎないクラフティ(クレープ生地の中にプリン液のようなものを流し、果物を散らして焼いたお菓子)などにも合うと思います」(クリスチャン)

Tradition Premier Cruと同じ3つのプルミエ・クリュの畑からのブドウ(ピノ・ノワール80%、シャルドネ10%、ピノ・ムニエ10%)を使用。最低18ヶ月はセラーで熟成させ、リザーヴワインの使用率は30%。Avenay Val d’Orの畑の樹齢の高
いピノ・ノワールでつくった赤ワインを10~12%加え、ロゼとしている。ドサージュは10g/リットル。


Cuvee de Reserve Grand Cru
白や黄色のフルーツのニュアンスがあり、ボディはしっかり。ミネラル感もあり、満足度の高いグラン・クリュ。



「アニスの香りも感じます。ミネラル感はテロワールから来ています。アイはボディのあるワインになりますが、土壌やスロープの傾斜角度、面などの条件でキャラクターも変わってきます。合わせるのなら魚料理、白身の肉料理に。キッシュなどもいいですし、天ぷら、寿司、刺身にもどうでしょう?」(クリスチャン)

AyとChouillyのグラン・クリュの畑からのブドウ(ピノ・ノワール80%、シャルドネ20%)を使用。平均樹齢は25年。一番絞りのみを使用。最低30ヶ月セラー内で熟成させ、リザーヴワインの使用率は25%。ドサージュは8g/リットル。


Cuvee Gabriel Grand Cru Millesime 1998
余韻が非常に長く、1本前のグラン・クリュよりもさらに複雑味があり、落ち着いています。さすがです。



「かなり複雑な味わいのシャンパーニュですから、料理はブルゴーニュの白ワインに合わせるようなタイプのものをオススメします。ラングスティン(オマール海老)、白身の肉にソースをかけたものとかですね。バターソースもいいですし、ちょっとスパイシーなソース、サフランが入ったソースもいいと思います」(クリスチャン)

その年の出来でつくるかどうかを決めていて、1998年以降は1999、2002、2004年を生産。ただし生産量は少なく、1998年で5000本。アイのグラン・クリュ畑からのブドウ(ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%)を使用。1998年のシャルドネはアイのものだが、2002年はChouillyの畑のシャルドネを使用(年によって使う畑が異なるそう)。ピノ・ノワールの平均樹齢は35年。最低48ヶ月セラー内で熟成させ、ドサージュは6g/リットル。


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インタビューを終えて

シャンパーニュの最大の特徴は、複数年のワインをアッサンブラージュしてつくるノン・ヴィンテージ(NV)シャンパーニュにあります。

価格は最もお手頃ながら、その生産者の個性を明確に表現する看板商品といえるでしょう。消費者はこの個性を手がかりにして贔屓のシャンパンハウスを見つけることができるというわけです。

しかし、毎年同じ味わいのワインを生産し続けていくことは至難の技です。他の生産地では、出来の良くなかった年は「天候が悪かったから仕方ないさ」と片付けることができても、シャンパーニュではそうは問屋が卸してくれません。どんなに不作の年でも、きっちりと“いつものうちの味”を表現するワインをつくらなければならないのですから。

大手生産者(ブドウを購入してワインづくりを行うところが多く、“ネゴシアンマニピュラン”(NM)と呼ばれる)は、潤沢な資本力のおかげで充分な量のリザーヴワインのストックが可能で、毎年安定してワインづくりができるといえるでしょう。

しかし、小規模なRM生産者の場合、不作の年には充分な量のブドウが得られない上、リザーヴワインのストックも限られているので、“いつものうちの味”を維持していく苦労は並大抵のことではありません。よほど強い信念と意志がないと、シャンパーニュでRMなんてやっていけそうにないかも・・・、と思うのは私だけではないはず。

ゴセ・ブラバンは、このところ雑誌でもよく取り上げられ、ブームにさえなっている感のあるRM生産者です。ブルゴーニュでいうところの“ドメーヌ”同様、自分の手で育てたブドウでワインづくりを行うため、その生産者独特のコンセプトや個性が出やすく、その個性がRMの最大の魅力といえます。

ただ流行だからと追い求めるのではなく、彼らの信念や意志を充分に理解し、シャンパーニュづくりの苦労と努力も一緒に味わってあげたいものです。



取材協力:トーメンフーズ株式会社(現在は豊通食料株式会社に社名変更)

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第29回 PIERRE SPARR@「キャッチ The 生産者」

2009-03-15 10:23:12 | キャッチ The 生産者
  (更新日:2006年12月11日)

第29回  Bernard Sparr  <PIERRE SPARR et ses Fils S.A>

ルイ14世の時代から仏アルザスでワインづくりを続けている ピエール・スパー社 から、明るく陽気な9代目、ベルナールさんが来日しました。



<Bernard Sparr>(ベルナール・スパー)
43歳。スパー家の9代目で、営業担当。
営業研修のため渡米し、ニューヨークのデパートで働いていたという経験あり。
TVのレポーターだった奥様と9年前に結婚。


アルザスで長い歴史を持つファミリーワイナリー

スパー家は1680年から続く古い一族で、ベルナールさんで9代目。
現在は、ベルナールさんの父と父の兄(伯父)がピエール・スパー社を経営し(彼らが8代目)、伯父の息子でありベルナールさんの従兄弟にあたるピエールさんがワインメーカーを務めています。
当のベルナールさんは営業担当と、まさに一族フル登場のワイナリーなのです。



アルザス地方

アルザスはフランス東北部に位置し、ライン川を隔てた対岸はもう隣国ドイツ。
こうした地理的状況にあるため、アルザス地方はドイツに属していた時代もありました。
気候は冷涼で、ブドウ品種もドイツ系が多く、ボトルの形もドイツのモーゼルやラインガウのようにスラリとスリムという特徴を持っています。

つくられているのは圧倒的に白ワインが多く、ブドウ品種がラベルに表記されるため、フランスワインの中ではわかりやすく、最も初心者にやさしいワインといえるかもしれません。



Q.ピエール・スパー社のラインナップを教えてください。
A.当社では、アルザスのグラン・クリュ畑から生まれる最上級のワインから、ブレンドワイン、赤ワイン、スパークリングワイン、貴腐ワインと、幅広く生産しています。

Q.アルザスのスパークリングは“クレマン・ダルザス”(Cremant d’Alsace)が有名ですね?
A.はい、クレマンもありますが、“マルキ・ド・ペルラード”というスパークリングワインも生産しています(Marquis de Perlade Brut Blanc de Blancs NV)。

これは、ラングドックからのシャルドネ40%と、アルザスのピノ・ブラン40%、ロワールのシュナン・ブラン20%をブレンドしたヴァン・ムスーで、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵を行っています。

Q.こうしたスパークリングワインには、どんな料理が合いますか?
A.まずはアペリティフに飲んでいただくのがいいと思いますが、たいていの料理と相性がいいですよ。ただし、あまりスパイシーすぎる料理(エスニック系の辛いもの)じゃない方がいいですね。

Q.赤ワインはどんなタイプのものをつくっていますか?
A.ピノ・ノワールからは赤のスティルワインを生産しています。
赤ワインじゃないですが、ピノ・ノワール100%のロゼのクレマンもあります。色もきれいですし、ドライタイプですが果実味があり、特に女性に人気です。


たしかに、このロゼのクレマンは実に色がキレイ!

Q.アルザスには、いくつかの品種を混醸する“エデルツヴィッカー”がありますが、貴社の“アルザス・ワン”もエデルツヴィッカーですか?
A.いいえ、違います。エデルツヴィッカーは低いクラスのローエンドワインですが、当社の“アルザス・ワン”(Alsace One)は、「ブレンドをすることでより美味しいものをつくろう」というコンセプトを持つハイクオリティーワインです。良い品質のブドウだけを使っているのが自慢です。

リースリング、ピノ・ブラン、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリの5品種をブレンドし、シュル・リー製法で仕上げています。


スパー社の自信作、“アルザス・ワン”

Q.それぞれのアルザス品種のワインに合う料理について教えてください。
A.ブドウ品種による味わいの違いもありますが、一般的なAOCワインとグラン・クリュワインといった、クラスによる味わいの違いもかなり大きいものがあります。

アルコール度数、酸度などの違いもありますし、長熟のポテンシャルの違いもありますから、品種だけでなく、こうしたクラスの違いも考慮するといいですね。

Q.アルザスでは、白ワインを肉料理に合わせたりすることもありますか?
A.ごく普通にあります。例えば当社の“トケイ・ピノ・グリ・レゼルヴ2003”などは、白身の肉(鶏や豚)やゲーム(鳥獣類)にもよく合いますし、チーズに関してはほぼ全部カバーできると思います。

Q.日本食とアルザスワインとの相性はいかがでしょうか?
A.日本には何度も来ていますが、寿司、刺身、天ぷらが大好きです。こうした日本食もアルザスワインに合うと思います。タイやベトナムの食べ物、ケイジャン料理、中華料理などとの組み合わせもおすすめです。

アルザスならではの食べ物では、個人的には“オニオンタルト”が大好物です。キッシュと似ていますが別物ですので、アルザスにいらしたら、ぜひオニオンタルトを召し上がってみてくださいね。

Q.海外販売網はどうなっていますか?
A.世界45カ国に輸出しています。第1位はアメリカで、ベルギー、カナダ、スウェーデン、イタリア、フィンランド・・・と続きます。ヨーロッパが80%とやはり多く、アジアはまだ2%です。我々のアルザスワインを、日本のみなさんにもっと飲んでいただきたいですね!



<テイスティングしたワイン>

ヴァン・ムスー(スパークリングワイン)



Marquis de Perlade Brut Blanc de Blancs NV
Cremant d’Alsace Brut Reserve NV
Cremant d’Alsace Brut Rose NV

いずれも軽快な口当たりですが、ほどよい飲みごたえがあります。
特にロゼは果実味が豊かで見た目もキレイ!

3点とも2000円台(インポーター希望価格)ということを考えると、気軽にスパークリングワインを楽しみたい時の良いパートナーになってくれそうです。


ヴァン・ブラン(白ワイン)



Alsace One 2004
Riesling 2004
Gewurztraminer Reserve 2004
Tokay Pinot Gris Reserve 2003

どれも個性豊かですが、
バランスがよく、昼から楽しみたい気分にさせてくれるのはアルザス・ワン。
クリスピーで爽やかな果実味を楽しめるのはリースリング。
エレガントかつアロマティックで、華やかな気分にさせてくれるのはゲヴュルツ。
飲みごたえではトケイ・ピノ・グリ、でしょうか。

いずれのワインも、エレガントな果実味と凛とした酸味が底辺にあり、伝統ある生産地ならではの気品が備わっています。
いつの時代も安心して楽しめる、それがピエール・スパーの最大の特徴といえます。

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インタビューを終えて

“いい大人なのに、超陽気で、少年みたい!” というのが、ベルナールさんの印象。

というのも、インタビューを受けながらも、歌を口ずさみ(オー・シャンゼリゼとかetc…)、果ては踊っちゃいそうな様子だったからです。
ここまで明るい人に出会ったのは初めてのことで、ベルナールさんは、
まさに“歌って踊れる、ピエール・スパーのセールスマン”

ピエール・スパーは320年を超える歴史あるワイナリーということから、ちょっと近寄りがたい雰囲気があるかも・・・、と身構えそうになりますが、ベルナールさんに会えば、そんな先入観は吹っ飛んでしまいます。

たしかに、ワインには歴史の重みがありますが、ベルナールさんを見れば、
「なあんだ、もっと気楽に考えていいんじゃない」と思うこと請け合いです。



また、スパーはワインのラインナップも幅広く、気軽に試せるものから揃っている
今のこの季節の私の個人的なオススメは、“お鍋”とアルザスワインのマリアージュのも嬉しいポイント。

ヴァン・ダルザス(Vin d’Alsace)クラスのワインと、水炊きや薄めのお出汁のお鍋(たらチリとか塩ちゃんことかetc…)の組み合わせなら、グラスもお鍋もどんどん進むこと間違いなし!

爽やかな季節に爽やかなアルザスワイン、というのももちろん素晴らしい組み合わせですが、寒い季節のアツアツのお鍋とアルザスワインのマリアージュは、ぜひ冬の間に楽しまないとね!


取材協力:大榮産業株式会社

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第28回 NASU WINE@「キャッチ The 生産者」

2009-03-08 10:05:36 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年11月11日)

第28回  渡邊 嘉也  <NASU WINE>

今回は久しぶりに日本の生産者の登場です。
それも、“こんなところで?”(失礼)、と思うほど意外や意外の北関東のワイナリーを、残暑厳しく真夏を思わせる9月に訪問してきました。



<渡邊 嘉也>(わたなべ よしなり)
NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)現当主。
国立醸造試験場を経て、25歳の時に(1993年)渡仏。
ボルドー大学で醸造を学び、シャトー・ロングヴィル・ピション・コンテス・ド・ラランドをはじめ、同グループのシャトーでワインメーカーを務める。
2002年、帰国。
NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)の当主になる。


観光地“那須”にワイナリー発見!

栃木県那須塩原市といえば、皇室の那須御用邸を抱え、避暑地としてはもちろん、新緑や紅葉の時期には人気の観光地。
そこに、明治の頃から120年以上も続くワイナリーがあっただなんて・・・。
しかも現当主の渡邊嘉也さんは、ボルドーの著名シャトーの第一線でワインメーカーとして活躍していたというのだから驚きです!



NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)
1882年 初代、渡邊謙次が現在の地を開拓
1884年 西那須野町遅沢に「下野葡萄酒株式会社」を創業し、醸造所を設立。
1903年 現在の場所(那須塩原市共墾社)に醸造所移転
2002年 現当主として初めて収穫、醸造を行う
2003年 欧州ブドウ品種を植樹




Q.なぜボルドーへ?家業を継ぐための研修として?
A.昔は、実家のワイナリーは潰してもいいと思っていました(笑)。だいたい、時代が違います。ここでワインをつくっても良いものができないし、日本はワインを生産する場所じゃないと思っていましたから。

Q.では、なぜ実家を継ぐことに?
A.父が亡くなったからです。潰してもいいと思っていましたけど、ブドウ園もワイナリーも歴史あるものですし、それをなくしてしまうのは、やはり忍びないと思いました。

渡邊の家はかつて壬生藩の家老をしていて、この地には開拓のために入り、多くの土地を開拓しました。ここの地名の“共墾社(きょうこんしゃ)”という名前の名付け親も、実は祖父なんです。

そんなわけで、父が亡くなった2001年はボルドーと那須を行き来していましたが、2002年には那須に戻ろうという決心をしました。

Q.すると、あなたが那須で最初に手がけたヴィンテージは?
A.2002年のワインです。その後、03年、04年とリリースし、今は05年が樽に入っている状態です。

Q.この地でのあなたのワインづくりのコンセプトは ?
A.まず “飲みやすい酒質のものをめざす” ということです。
みんなに喜んでもらえるワインであればいいかな、と思っています。

ただ、日本であっても日本でないようなワインをつくりたいと思っています。

というのも、日本とヨーロッパのワインづくりは根本的に違いますから。
ヨーロッパのようなワインをつくることは、今までの日本の中ではムリでした。

Q.ヨーロッパと日本では何が違うのですか?
A.ボルドーも雨が多い点は日本と共通していますが、きちんとブドウづくりがされ、素晴らしいワインが生まれている点が違います。

現在のフランスでは、薬剤の散布などの規制はかなり厳しくなってきていますが、“このタイミングでこれを使う”ということがピンポイントで実施できていることが良い結果を生み出していると思います。

日本の、特に個人経営のワイナリーでは人手も足りず、機械化をするには畑は狭く、投資負担も膨大になってしまいます。手作業では限界があるし、時間もかかり、ボルドーのような合理的なことができません。
よって、良いものを数多くつくることができず、それが日本での問題だと私は思います。外国のようなワインメーキングを日本で行うのは難しいですね。

Q.それでも那須でワインをつくり続けている理由は?
A.どんなブドウをつくればどんなワインになるのか、ボルドーでの経験から明確にわかっています。どこまでブドウから引き出せるのかは、ブドウを見て、食べた段階でわかります。

たしかに今は、天候や病気などの影響で安定して良いブドウが得られませんが、年を重ねて木に抵抗力が付けば・・・。
とりあえず、行けるだけ行こう。そんな気持ちでやっています。

でも、ボルドーにもう一度帰ろうとも思っているんです。客の希望通りのオリジナルオーダーワインをつくるなんてのも楽しいじゃないですか?(笑)

Q.手がけている品種は?
A.畑は約4haあり、白はナイアガラ、ホワイト・アリー、甲州、ポートランド、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、赤はベリーA、キャンベル、スチューベン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、巨峰(生食用)です。

昔からあるブドウの樹齢は約40~50年ほどで、欧州品種は2003年に植えました。

1粒の濃さのあるブドウ、グミみたいに歯ごたえのあるブドウをめざしています。


ナイアガラ                    ベリーA

Q.このあたりの気候や土壌はブドウ栽培に向いているのですか?
A.標高は300mほどで、朝晩は涼しい環境にあります。が、雨が非常に多く、それが問題です。
土壌は石が多いので、カベルネなどには非常に向いているかと思います。

Q.ボルドーではどんな仕事をしていましたか?
A.ポイヤックの2級格付け、シャトー・ロングヴィル・ピション・コンテス・ド・ラランドのワインメーカーとして働いていました。また、ピション・ラランドが1997年に取得したシャトー・ベルナドットの立ち上げにも携わりましたしシャトー・ヴァランドローにも1年いて、2000年ヴィンテージの醸造を行いました。
その他にも、いくつものシャトー(ピション・ラランドのグループシャトー:シトラン、シャス・スプリーンなど)を経験しています。

Q.今後の予定は?
A.父の時代にはハウスで栽培していましたが、2年前にそれを取り払いました。
次は棚を取り払い、垣根仕立てに絞り込んでいきたいと思っています。

ですが、何よりも、毎年安定してブドウが収穫できるようにしたいと思っています。2005年は悪い年でしたが、2006年はそれにも増して悪い年で、6月から7月はずっと雨が降り続きました。そのせいで病気が出て、ほとんどダメになってしまった畑もあります。とはいえ、ナイアガラやキャンベルは無事でしたので、多少の仕込みはできますが・・・

Q.NASU WINE」をどのように販売していきますか?
A.うちのワインは観光地のお土産用ワインではありません。それなりの価格もします。現在はワイナリーでの直売が中心で、他にちょこちょこっと置いてもらっているくらいで、ほとんど販売網がない状態です。まずは首都圏の信頼のおける酒屋さんに取り扱っていただき、いいお客さんに買っていただきたいと思っています。


ナイアガラ種:ものすごーく太い棚の枝!


<テイスティングしたワイン>

マスカット・ベリーA (04年・05年)

04年は深みのある色合いで、非常に色素が濃く、香りも甘くて濃厚。ボディにコクがあり、アルコールのなめらかな口当たりと果実の甘みのある、まろやかな味わいです。

ベリーAのワインは日本ではポピュラーですが、今までに味わったことのないような深みと厚みがあり、ベリーAでもこんなワインになるんだ!とびっくりしました。



05年はまだ樽に入っていたので、樽からのワインをテイスティング。色調は04年よりも薄めで、酸の出方もかなり違います。05年の方が強めに出ていますが、バランスは良好。

「年によって、同じ樹からのブドウでもこんなに差が出ます」と渡邊さん。

05年は、樽熟成していないベリーAもあり、こちらは既に瓶詰めされて販売されています。こちらはちょっと若く、ややカドを感じるかも?


メルロ (02年・03年・04年・05年)

メルロ主体で、カベルネ・ソーヴィニヨンが35%ほどブレンドされています。

02年は、コショウ、グリーンペッパーなどのスパイシーな香りが若々しく香り、タンニンもクリーンで、まだフレッシュな状態。開くまでしばらく待ちたいところ。

03年は、酸の出方が非常にデリケートに感じました。

04年は、やはりグリーンペッパー系の香りは共通して感じるものの、口の中に入れると丸みがあります。コクがあってなめらかで、ボリューム、厚み、甘み、旨味があり、それらを酸が支えています。キレイなタンニンの存在感も感じました。

05年はまだ樽に入っているため、樽からテイスティング。

2年使用樽からのものは、果肉&果実の甘さ、モワモワした感じがあり、フルーツのアロマを濃厚に感じました。



ブラック・マホガニー (03年)

NASU WINEのフラグシップワイン。メルロ主体で、新樽を100%使用。
カスタード、ヴァニラの香りが甘く、口に含むと非常にキメが細かく、酸がエレガント。

「仕込んでから3年後のクリスマス頃から飲めるようにつくっています。今年のクリスマスにいかがですか?(笑)」と渡邊さん。

価格は10,000円・・・ クリスマスにこれが飲めたら、たしかに素晴らしい!



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インタビューを終えて

志を抱いて家を出たものの、やむを得ない事情で戻らざるをえなくなった、というのはよくある話です。ですが、そうしたことがあるとしても、まだずっと先のことだと思っていた渡邊さんにとって、お父さんの突然の訃報は大きな打撃だったはず。

良いワインなんてできるはずがない、と思っている土地でワインづくりをしていくのか?
それとも、那須でのワインづくりの歴史を途絶えさせてしまうのか?

かなり厳しい二者択一です。

そして、那須でワインづくりをしていくことを選択した渡邊さんに、2006年、メルロはほぼ壊滅という試練の波が訪れました。

あと1ヵ月もしたら収穫ができるはずの9月の畑に、私はブドウの房を見つけることはできませんでした。まるで収穫後の畑のようです・・・

これはヒドイ・・・、と複雑な思いで渡邊さんに顔を向けると、

「なんとかなるでしょう!」と、笑顔を返してくれました。

たしかに、農園として他の農作物からの収入はあるでしょうが、2002年以来つくり続けてきたメルロが仕込めなくなるとしたら、どんなに無念なことか・・・




1ヵ月後、再会した渡邊さんに「メルロの収穫、どうなりました?」と尋ねると、

今度も「なんとかなるでしょう!」という答えが返ってきました。

逆境を逆境とも思わないなんて、この人、只者じゃない!

“日本のNASU WINE”、そして、“NASU WINEの渡邊嘉也”の名が広く知られるようになる日が、近い将来きっとある!
そう強く思わずにはいられない、渡邊さんとの出会いでした。




『NASU WINE』
テイスティングルームでは、無料試飲および購入が可能です。

(JR東北本線の黒磯駅から車で5分ほど) TEL.0287-62-0548
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第27回 Vina Ventisquero@「キャッチ The 生産者」

2009-03-08 10:02:44 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年10月11日)

第27回  Aurelio Montes  <Vina Ventisquero>

前々回のアドルフォさんもそうでしたが、
チリはどうして若いイケメンのワインメーカーが多いんでしょ?と思わず頬が緩んでしまうくらい、これまたステキな、 ヴィーニャ・ベンティスケロのアウレリオ・モンテスさんが来日しました。



<Aurelio Montes > (アウレリオ・モンテス)
チリの首都サンチャゴ生まれの31歳。
カトリック大学卒業後、オーストラリアなどでの研修を経てベンティスケロ入社。
現在は同社のワインメーカーとして活躍中。
チリの名門モンテス社のオーナーで醸造長のアウレリオ・モンテス氏は実父。

注)外国では父と息子が同じ名前ということがよくありますが、アウレリオさん父子も同じ名前です。



アンデスの氷河の懐に抱かれて

ベンティスケロは、チリの農産業のリーダー的存在のアグロスーパー社が1998年に設立した新しいワイナリーです。食肉やサーモンなどの加工で培われたアグロスーパーの完璧で衛生的な管理システムのもと、計1500haという広大な畑から1500万ケースの高品質ワインを生み出しています。

“ベンティスケロ”とは、スペイン語で“氷河”、“雪渓”の意味。
なるほど、ラベルにはアンデス山脈の壮大な氷河が描かれています。

この氷河の雪解け水がブドウ畑に恩恵をもたらし、豊かな実りを約束します。
ベンティスケロのワインは、まさにこの氷河が育んでいるのです。




Q.ベンティスケロ設立に当たってのコンセプトがあると聞きましたが?
A.ベンティスケロでは“環境への配慮、環境とのバランス”を大事にすることを企業コンセプトとしています。
当社は非常に近代的かつ大きなワイナリーですが、まず外観は周りの自然に溶け込むようにしています。また外観だけでなく、そこに生えていた木はそのまま残したり、鷹を使って害鳥を追い払うなど、環境とのバランスに最大の注意を払い、排水を浄化して水の再生利用も行っています。さらにはISO9001、ISO14001、HACCPなどの国際規格も取得しています

Q.では、ベンティスケロのワインづくりのコンセプトは?
A. “偉大な醸造家はいない。あるのは偉大なブドウだ” です。
良いブドウがないと、いくら腕の良い醸造家でも良いワインはつくれません。
ブドウは畑で育ちますから、良いワインというのは畑から始まっているわけです。

そこで、当社では所有する畑の土壌を調査し、それぞれの土壌の性格を把握してマッピングを行っています。それによって、どの区画にどの品種のブドウを植えたらいいのかがわかります。土壌の質を知ることで、質の高いワインを生み出すことができます。

このようにして、我々は各ヴァレーの最高の区画の中からそれぞれのブドウに最適な畑を自分たちで選んでいます。

Q.各ヴァレーに合うブドウ品種を教えてください。
A.カサブランカ・ヴァレー:冷涼な気候ですので、白ワインに理想的な土地です。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、赤のピノ・ノワールにも適しています。

マイポ・ヴァレー:地中海性気候で、赤品種、特にカベルネ・ソーヴィニヨンに適しています。

アパルタ・ヴィンヤード:コルチャグア・ヴァレーの中にあります。赤品種に適しています。小さい区画ですが、特にプレミアムワインをつくることのできる最高の品質の畑です。

ロロル・ヴィンヤード:ここもコルチャグア・ヴァレーの中にあり、当社の新しい区画です。現在は土壌の調査中ですが、白ワイン用のブドウを植えています。

Q.ベンティスケロは非常に高いテクノロジーを誇っているということですが?
A.はい、テクノロジーにおいては世界NO.1ともいえる設備が整い、最高の環境でワイン生産を行っています。
しかし、テクノロジーだけではありません。我々従業員全員が、品質についてきちんと理解しながら働いています。ブドウづくりから醸造、瓶詰め、出荷、営業を含め“優秀なチームの力”があるからこそ、クオリティの高いワインが生まれます。

Q.なるほど。高いテクノロジーと素晴らしいチーム力で、過去3年のチリ国内のコンクールでは最多受賞(メダル数180)だそうですね?
A.メダルは、ワイナリーにとってもワインメーカーにとっても大切なものです。我々が正しいワインづくりをしていることの証明になりますからね。

今後も、競争率の高い世界のワインの中で常に選んでもらえるようなワインづくりをしていきたいと思っています。
ですが、個人的には、ワインというのはやっぱり“楽しむもの”だと思っています(笑)

Q.ウルトラプレミアム級のワインの噂を聞きましたが?
A.現在のトップレンジはプレミアムワインの“グレイ”ですが、この秋に、
ウルトラプレミアムワイン“パンゲア”(PANGEA)2004年をリリースします。

パンゲアは“超大陸”という意味です。2億5千万年前、地球上の5大陸はすべてひとつの大陸にまとまっていたといわれ、“超大陸”と呼ばれていました。

このパンゲアには、オーストラリアのペンフォールドで28年間働いていたワインメーカーのジョン・デュバル氏を招聘しました。デュバル氏はオーストラリアの最高峰ともいえるシラーズの“グランジ”を生み出した人物です。
パンゲアはシラー種を使ったワインであること、また、デュバル氏はシラーの最高の造り手であり、私の父の友人でもあったことから、彼がこのプロジェクトに必要だと思ったのです。

パンゲアは、長い間かけて生み出した、良いブドウと良いワインメーカーの産物です。
それが分かれている大陸が融合した元の姿と重なり、“パンゲア”という名前が生まれました。

パンゲアはアパルタ・ヴィンヤードのシラーから生まれたウルトラプレミアムワインです。
チリでウルトラプレミアムと呼ばれるワインはいくつかありますが、シラーからつくられるウルトラプレミアムはパンゲアが初めてです




* 熟成期間18ヶ月。
* わずか800ケースのみの限定品で、2004年が初ヴィンテージ。

Q.あなたは、チリがのようだと言いますが?
A.首都サンチャゴは南米で最も近代的な都市ですが、その他の土地に目を向けると、チリは多くの自然に囲まれています。北の砂漠、南の南氷洋、東のアンデス山脈、西の太平洋と、四方を自然の壁で囲まれて孤立しています。まるで島のようじゃありませんか?(笑)そのおかげで病気も入ってきません。

また、四季がはっきりし、雹害もなく、昼夜の温度格差が大きい、といった好条件が整っています。そこにさらに磨き抜かれたテクノロジーも加わるのですから、チリにはプレミアムワインが生まれて然るべき充分な条件が揃っているのです。





<テイスティングしたワイン>

Vina Ventisquero Classico

“クラシコ”シリーズは、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーの4アイテム。

どれも素直な果実味が生きているワインで、ほどよい凝縮感とコクのある味わいが楽しめます。
中でも、スッキリとしたクリーンなシャルドネが好きな人は、このクラシコのシャルドネがオススメ。

この価格(標準小売価格1000円)で楽しめてしまうクラシコは、毎日飲みたい人には嬉しいシリーズでしょう。




Vina Ventisquero Reserva
ソーヴィニヨン・ブラン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの5アイテム。

レゼルヴァの中で私のイチオシが “ソーヴィニヨン・ブラン”
爽やかで心地良く、ソーヴィニヨンの個性をやさしく感じながら、1杯、また1杯・・・と、自然とグラスが進みます。
週末、ちょっとしっかりとしたワインを飲みたいなという時には、レゼルヴァが満足させてくれるはず。


Vina Ventisquero Gran Reserva
ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの6アイテム。

グラン・レゼルヴァ以上は手摘みで収穫します。
フレンチオーク(シラーはアメリカンオークも併用)で12ヶ月前後樽熟成させているので、重厚感があります。オークのニュアンスがまだちょっと勝ち気味なものもありますが、時が解決してくれることでしょう。

このグラン・レゼルヴァは、 次から“Vina Ventisquero Queulat”(ケウラ)という名前&新ラベルになります。




Vina Ventisquero Grey
メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルメネールの4アイテム。

パンゲアがリリースされるまでは、このグレイがベンティスケロのトップワインでした。フレンチオークで15ヶ月熟成後、さらに12ヶ月瓶熟成させています。
その分、グラン・レゼルヴァよりも落ち着いたエレガントさが備わっていて、
手の込んだ料理と合わせて特別なときに飲みたくなるワインです。

“Grey”(グレイ)は パイネ国立公園にある氷河の名前から
“Queulat”(ケウラ)は ケウラ国立公園(やはり氷河が有名)から
名付けているそうです。



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インタビューを終えて

チリの名門ワイナリーのオーナーを父に持つアウレリオですから、お坊ちゃまかも?と思っていたのですが、会ってみると とてもエネルギッシュな好青年でした(外見はたしかに“王子系”ですが・・・)。

偉大な父の元を離れ、超巨大で超近代的なワイナリーのワインメーカーとして手腕を発揮しているアウレリオのバランス感覚は最高で、きちんとした理論に基づきながら、情熱的なワインメーキングをしていることがヒシヒシと伝わってきました。 
ベンティスケロには6人のワインメーカーがいます。彼らのチームワークが非常に良いのはもちろん、栽培や営業などの他のスタッフとの信頼関係もかなり厚く、アウレリオが何度も「チームの力」と繰り返し語っていたのが印象的でした。




チリへの回帰

一時のブームが去って以来、日本でのチリワインの人気はいまひとつという状況が続いていますが、この『キャッチ The 生産者』ではもう何度もチリワインが登場しています。そして、毎回「また素晴らしいチリワインに出会えた!」と、驚かされています。

それは、アウレリオのような若い世代のワインメーカーがチリワイン界の中心になってきたからでしょう。彼らは近代的な技術や理論をしっかりと学び、世界の銘醸地で修行を積み、世界の味や消費者の嗜好も知っています。

“チリワインといえば濃いチリカベ”という時代はもう終わりました。

チリの風土を見据え、そこに合ったブドウから土地の個性、ブドウの良さを最大限に引き出そうというワインづくりがされるようになってきました。
我々も、そうした新しいチリワインともう一度しっかりと向き合ってみようじゃありませんか。

取材協力:アンデス・アジア株式会社   

(ホームページ http://www.ventisquero.com/english/

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第26回 Mt.Langi Ghiran@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:59:04 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年9月11日)

第26回  Dan Buckel  <Mt.Langi Ghiran>
 
オーストラリアはヴィクトリア州、グランピアンズ(Grampians)から、ユニークな経歴を持つワインメーカー、ダン・バックルさん が初来日しました。



<Dan Buckle >
元フェンシングの選手。
仕事をしていたワイン・バーでワインに開眼。
その後、醸造学校に進み、オーストラリアやフランス等で修行を重ねる。
1999年にヤラ・イェーリングステーション(ヴィクトリア州)にワインメーカーとして入社。
3年前から同系列のマウント・ランギ・ジランに移り、ワインメーカーとして活躍中。


黄色い尻尾を持った黒いオウム

ランギ・ジランはアボリジニの言葉で“黄色い尻尾を持った黒いオウムのふるさと”の意味。実際、グランピアンズには国立公園に指定されているランギ・ジランという花崗岩の山があり、黒いオウムが山の斜面を飛ぶ姿を見ることができるそうです。

ランギ・ジランのエリアはアボリジニのロックアートをはじめとした文化遺産の重要スポットでもあり、周囲にはブドウ園や農園が広がり、人々を惹き付けて止まない魅力ある土地です。

なお、この黄色い尻尾の黒いオウムは、ワインのエチケットにも鮮やかに描かれています。



Mt. Langi Ghiran
1963年 フラティン兄弟がグランピアンズにブドウを植え始める
1969年 フラティン兄弟によりマウント・ランギ・ジラン設立
1979年 トレヴァー・マスト氏がワインメーカーに就任(彼は現在もダンさんとともにワインメーカーを務める)
1987年 トレヴァー・マスト氏がフラティン兄弟からワイナリーを譲り受ける
2002年 ロスボーン・ファミリーがオーナーとなる



Q.ダンさんがワインメーカーになったキッカケは?
A.1995~96年頃に『ジミー・ワトソンズ・ワイン・バー』という、メルボルンで有名なレストラン&ワイン・バーで働いていた時に、創始者の孫に当たる人と一緒にワインセラーの管理をしていました。
歴史ある店なので古いワインが多く、リコルク作業をする時に古いワインを味見する経験をさせてもらったのですが、
「50年経ってもしっかりしたワインがあるなんてスゴイ!自分もそういうワインをつくってみたい!」と思ったのがワインづくりに興味を持ったキッカケです。

すぐに醸造学校に入り、卒業後はヴィクトリア州ヤラ・ヴァレーにあるコールド・ストリーム・ヒルズで2年間修行し、フランスのボルドーやブルゴーニュでも経験を積みました。

Q.『ジミー・ワトソンズ・ワイン・バー』には面白いエピソードがあるそうですが?
A.1930~40年代、創始者が自分の店で出すためのワインを樽で買い付ける際、できるだけ良い樽を選んでいたことにちなみ、“ジミー・ワトソンズ・トロフィー”というアワードが1962年に誕生しました。メルボルンのワインショーにおいて、樽に入れられて1年目の最高のワインに贈られる名誉ある賞で、オーストラリアでは特別なアワードとなっています。

Q.マウント・ランギ・ジランのあるグランピアンズというのはどのような土地ですか?
A.ここの地層は5億年前の古いグラニット(花崗岩)で、標高は350~650mとオーストラリアにしては高く、また、南から冷たい風が吹き、オーストラリアで最も寒い地域です。

1963年にブドウが植えられ、その後1980年代に樹齢の高いシラーズからのワインが有名になりました。“冷涼気候のシラーズ”として知られ、スパイシーで、潰したコショウの風味がするといわれています。

Q.冷涼というのは、どの程度ですか?
A.夏(1月)の平均気温が18.2℃で、吹く風も冷たく、冬(7~8月)は雪も降ります。
マウント・ランギ・ジランでは西に山があるので午後の日照時間が短くなり、夕方5時には暗くなってしまいます。

Q.ワインづくりで心がけていることは?
A.オーストラリアでは、ワインの85%が購入後24時間以内に飲まれてしまいます。ワインを熟成させて飲むことが少ないので、すぐに楽しめるようなワインをつくろうと心がけています。

オーストラリアのワインといっても、山地のワイン、崖のワイン、小川のワインetc…と、さまざまな場所でつくられています。オーストラリアにもテロワールが存在します。ブドウの育つ土壌や場所をぜひ見てください。
ワインメーカーはその土地のブドウを生かしたワインづくりをすべきで、自分の色を強く出すべきでないと考えています。

Q.今後どのようなワインをつくっていきたいですか?
A.2001年にブルゴーニュのドメーヌ・コンフュロン・コトティドに研修に行ったのですが、そこでは14haの畑から16のAOCワインをつくっていました。
小さい畑から異なる個性を持つワインができるのは面白く、マウント・ランギ・ジランでも、そんなワインをつくってみたいと思っています。小さいシングル・ヴィンヤードのワインは、近々実現できるかもしれません。

Q.日本の印象は?
A.日本に来るのは初めてですが、外国に来てみると面白いですね。我々のワインは冷涼な気候でつくられているためにエレガントですから、特に日本人に、また日本の料理に向くと感じました。

世界的に、ここ数年でヘビーなものからデリケートで食事に合うワインに人気が移ってきました。そうしたこともあり、涼しい気候でつくられたワインは、今後の人々の嗜好に合うといえるのではないでしょうか



<テイスティングしたワイン> 

White Wine

1)Billi Billi White 2004
2)Riesling 2004

思わず笑ってしまいそうな「ビリ・ビリ」という楽しい音を持つ名前は、ランギ・ジラン山に棲んでいたというアボリジニの王様の名前だそうです。植民地支配をしていたイギリス権力と戦ったとても強い王で、彼の名は川の名として残っています(ビリ・ビリ川)。

どちらも、冷涼な気候ならではの、酸がキリッとした心地良い白ワインで、
1)はセミヨンとリースリングのブレンド、2)のリースリングはミネラル感がたっぷりとしています。  

*いずれもスクリューキャップ使用




Red Wine

3)Billi Billi Red 2002
4)Cliff Edge Shiraz 2002
5)Shiraz 2003
6)Cabernet Merlot 1999

3)~5)はシラーズで、3)にはグルナッシュとムールヴェドルがブレンドされています。

2002年はとても良い年で、ペッパーの香りが特にエレガントに出ているのが特徴。
2003年は暑かった年なので、ペッパーの感じは弱めな代わりにナツメグぽい感じが出ています。

4)のクリフ・エッジはその名の通り(クリフは“崖”でエッジは“縁”の意味)、急な崖っぷちにある畑です。風が非常に強いため、1993年からは畑の70%をネットで覆っていますが、このネットはカンガルーからもブドウを守ってくれます。

5)はワイナリーのトップとなるシラーズで、古い花崗岩土壌の畑からブドウを選別し、100%フレンチオークを使用しています。

どの樽会社を使うかも非常に大事で、4つの会社を選び、緊密な連絡を取り合っています」とダンさんは言います。

6)はだいぶ熟成されつつあり、ユーカリっぽいスパイシーさも味わえます。




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インタビューを終えて


古いワインとの出会いでワインの虜になってしまったダンさんですが、その行動力とバイタリティはフェンシング仕込みの“攻め”の精神から来ているのかも?

どっしりとした体格と少年のような笑顔がとても親しみを感じさせますが、彼のつくるワインは、その容姿に似合わず(失礼!)、とてもデリケートでエレガント。

ダンさん自身も、アグレッシブなタンニンを持つワインは苦手で、エレガントなタイプが好きと言っていました。



オーストラリアのシラーズというと、濃厚でパワフルでスパイシー、というのがかつての印象でした。
しかし、オーストラリアで最も南に位置するヴィクトリア州は冷涼で、その中でもグランピアンズは夏の平均気温が18.2℃という涼しい地域ですから(日本じゃ考えられません!)、マウント・ランギ・ジランのシラーズに涼しげな上品さが感じられるのは、当然といえば当然なのかもしれません。

グランピアンズのシラーズは、ガツンとしたシラーズは苦手・・・という人にオススメです。

エレガントで酸のしっかりした白ワイン2種も、オーストラリアワインを選ぶときの幅を広げてくれそうです。

現在、単一畑でのワインも準備中ということですから、今後のマウント・ランギ・ジランの動向を見守りたいところです。


取材協力:ヴィレッジ・セラーズ株式会社

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第25回 Vina Cono Sur@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:55:39 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年8月11日)

第25回  Adolfo Hurtado  <Vina Cono Sur>

チリのコノ・スル社から、チーフワインメーカー兼CEOのアドルフォ・フルタード
さんが来日。 コノ・スル社の新しい取り組みについて語ってくれました。



<Adolfo Hurtado >
1970年生まれ。
チリのカトリック大学農業学校を卒業後、カチャポアル・ヴァレーのVina La Rosa(ヴィーニャ・ラ・ローザ)にワインメーカーとして入社。26歳の時(1997年)にコノ・スルのチーフワインメーカーに就任。
現在はコノ・スル社のCEOでもある。


止まらない快進撃のヒミツとは?

日本市場でチリワインが不調といわれる中、2006年に入って4ヶ月で前年比147%と好調なコノ・スル社。
特にオーガニックワイン では、200%の伸びを見せる絶好調ぶりです。
その秘密はどこにあるのでしょうか?



Cono Sur  VINEYARD & WINERY
1993年 チリのラペル地区コンチャグア・ヴァレーのチェンバロンゴに設立
1998年 オーガニックワインに取り組み始める
1999年 ピノ・ノワール・プロジェクト発足
2006年 スクリューキャップを本格導入



Q.コノ・スルのワインは日本で非常に伸びていますが、どうしてでしょうか?
A.当社が設立された1993年当時のチリでは、伝統的なワインばかりがつくられていました。しかし、我々は新しいコンセプトのワイン、つまり、より品質の高いワインを発信していこうと考え、イノベーションのパイオニアとして、短期間に急激に成長してきました。
このようにして高い品質を保ちながら良いものを安定して供給してきた結果、我々のクオリティが日本の市場で受け入れられたのだと思います。

Q.イノベーションの具体例は?
A.1997年にはチリで初めてシンセティックコルク(プラスティック樹脂コルク)を採用し、その後、いち早くスクリューキャップを導入したのも当社です。2006年から、白ワインとピノ・ノワールの一部でスクリューキャップを本格的に採用することになりました。

Q.なぜスクリューキャップの本格採用に踏み切ったのですか?
A.コルク臭のトラブルをほぼ100%回避し、酸化のリスクを減少させることができるからです。さらに、ワインをよりフレッシュに保ち、よりよい状態で熟成させることもできます。これは実験でも確認できました。

Q.スクリューキャップに対する反応はいかがですか?
A.イギリスや日本では非常に受け入れられています。しかし、チリ国民は保守的ですので、国内での認識はこれからですね。
チリでは海外から他国のワインが入ってくることがほとんどなく、新しいものに目が行くというような環境にありません。国内市場で流通しているのは自国の伝統的なワインで、その大半が天然コルクです。2年前の段階では、スクリューキャップはほぼ拒絶されていました。ところが、ようやく国内でも少しずつスクリューキャップが受け入れられるようになってきました。
その他のワイナリーでもスクリューキャップを導入し始めていますが、まだトライアル的で、当社のように大々的に導入しているところはありません。

Q.オーガニックワインが順調のようですね?
A.1998年からオーガニックに取り組み始めました。ワイナリー内の化学物質をできるだけ排除し、自然のサイクルに従った栽培を行っています。ただし、当社の管理する畑は1000haと広いため、すべてをオーガニックにしようとすると手が回りません。
現在はチェンバロンゴの300haだけがオーガニックですが、そのほかの畑もオーガニック同様に厳しい規制の下、消費者にとってヘルシーなワインづくりを行っています。残りの畑の今後のオーガニックへの切り替えは、段階的に進めたいと考えています。

なお、現在オーガニックワインは1アイテムのみですが(赤ワインブレンド)、ピノ・ノワール、シャルドネでもつくる予定です。

Q.ドイツのオーガニック農産物認定機関“BCSエコ”の認定を受けているそうですが?
A.BCSエコはかなり厳しい認定基準の機関です。我々は、南米ということだけでなく、インターナショナルスタンダードとしてのオーガニックの認定を取得したかったので、評判の高いBCSエコを選びました。

Q.チリ国内でのオーガニックへの意識はいかがですか?
A.現在のチリではまだまだ環境への意識が低い状態ですので、オーガニックワインへの関心もほとんどありません。これからですね。

Q.貴社のアイコンワイン“OSIO”(オシオ)“ピノ・ノワール・プロジェクト”から誕生したということですが?
A.チリNo.1のピノ・ノワールをつくることを目的とし、ブルゴーニュのドメーヌ・ジャック・プリュールのマルタン・プリュール氏の協力の下、1999年にこのプロジェクトを発足させました。
他のワイナリーと違うものをつくりたいと努力した結果、ワインの品質が飛躍的に向上し、オシオが生まれました。
冷涼で良い区画の樹齢の高いブドウを選び、収穫量を抑え、より凝縮した味わいに仕上げています。昨年度はチリのベスト・ピノ・ノワールにも選ばれました。



Q.チリワインの特徴と魅力は?
A.南北に長いチリにはさまざまな気候があるので、各地に最適なブドウ品種があり、多様性のあるワインをつくることができます。当社でも、北はエルキ・ヴァレーから南はビオビオ・ヴァレーまで42の農園に適した品種を栽培し、最終的にはブレンドを行って良いものをつくる努力をしています。

また、チリは四方を自然の要塞に守られているので、他から病原菌の進入がなく、フィロキセラ禍もありませんでした。チリがブドウ栽培の楽園といわれるゆえんです。

Q.地域による特徴には、どんなものがありますか?
A.例えばチェンバロンゴのあるコンチャグア・ヴァレーとカサブランカ・ヴァレーで比較すると、チェンバロンゴの成長期の気温は28~29℃ですが、カサブランカは23~24℃と冷涼で、収穫時期も異なります(チェンバロンゴは3月中旬、カサブランカは4月の第2週頃)。
同じピノ・ノワールでも、チェンバロンゴではカシスやブラックベリーの濃い香りのするワインになりますが、カサブランカでは、フレッシュで花のような華やかな香りを持つワインになります。




<テイスティングしたワイン>   (S)はスクリューキャップ

White Wine

Cono Sur Chardonnay Varietal 2005(S)
冷涼地からのブドウを使用しているため、しっかりとした酸がフレッシュで心地良く、非常にコストパフォーマンスのよいシャルドネ。
バラエタルシリーズには、シンセティックコルクとスクリューキャップが使われています。

Cono Sur Vision Sauvignon Blanc Single Vinyard “Loma Roja” 2005(S)
ソーヴィニヨン・ブランのアロマと味わいが楽しめるワイン。
ヴィジョンシリーズは、シングルヴィンヤード(単一畑)からのブドウを使い、ワインメーカーが自由につくっているワインとのこと。


Red WIne

Cono Sur Organic Cabernet Sauvignon Carmenere 2005
紫の色が鮮やか。スパイシーさとやわらかさ、まろやかさが相俟って、飲み口良好。
チェンバロンゴのオーガニック栽培によるカベルネ60%、カルムネール40%をブレンド。

Cono Sur 20 Barrels Limited Edition Cabernet Sauvignon 2004
タンニンが豊かで、しっかりと凝縮した素晴らしいカベルネ。

20 Barrelsは、1995年にイギリスからのリクエストで品質の高いピノ・ノワールを20樽選んだことに始まるシリーズ。
実は“ピノ・ノワール・プロジェクト”はこのために始まったもので、ブドウを厳しく選別し、収量を落とし、樽熟成の期間も長くしています。
アドルフォさん曰く、「6~7年熟成させて楽しめます」とのこと。



Pinot Noir

Cono Sur Pinot Noir in Transition to Organic 2005
果実味が豊かで、酸味もしっかりとしたチャーミングなピノ・ノワール。
100%チェンバロンゴでオーガニックに転換中の畑からのブドウでつくられています。
08年ヴィンテージから正式にオーガニックワインとしてリリースします。

Cono Sur Reserve Pinot Noir 2005(S)
果実の甘さがありながらも引き締まったアタックで、凝縮感があり、余韻も長め。
リザーヴシリーズは、樽熟成させたキュヴェを高い比率でブレンドした、比較的クラシックなレンジに仕上がっています。

Cono Sur OSIO Pinot Noir 2004
深いガーネット。少しモワモワ感があり、スモークベーコンのような燻したニュアンスと豊かな果実味、濃縮感があります。年間3000本という超限定品。
“OSIO”はスペイン語で“余暇”の意味。「家族や友人と一緒にゆっくり飲んで、リラックスして過ごしてほしいということから名づけました」とアドルフォさん。


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インタビューを終えて

弱冠26歳という若さでチーフワインメーカーに就き、その実力を発揮してきたアドルフォさんは、2005年度のチリのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれました。
そのワインメーカーとしての腕もさることながら、経営でも手腕を発揮し、コノ・スル社の業績をどんどん伸ばし続け、スクリューキャップや新プロジェクトにも積極的に着手し、確実に成果を出しているやり手です。

「スクリューキャップはマーケティング的な側面から始めましたが、テクニカル面でも効果があることがわかってきて、今後は非常に期待しています」とアドルフォさんは言います。

ニューワールドと言われながらも、実は古い体質を持っているチリで、さまざまな革新を行ってきたアドルフォさんとコノ・スル社は、クオリティの高いワインをコストパフォーマンス抜群のプライスで提供しています。これはコノ・スル社と彼の努力の賜物で、私たち消費者にとっては大歓迎です。

今後は、どんなことで私たちを驚かせてくれるでしょうか?

まずは、オーガニックに移行中のピノ・ノワールとシャルドネの本格リリースが待たれるところです。



右はアジア担当輸出マネージャーのゴンザロ・マリナさん


取材協力:株式会社スマイル

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第24回 Dominio del Plata@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:51:57 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年7月11日)

第24回  Susana Balbo  <Dominio del Plata>

今回のゲストは、アルゼンチンのドミニオ・デル・プラタのオーナーであり、チーフワインメーカーであるスザンナ・バルボ さんです。
スザンナさんと夫のペドロさんは、日本で初めて開催されるアルゼンチンワイン試飲会のために来日しました。



<Susana Balbo>
1956年4月9日生まれ。
1981年に醸造学科を卒業後、さまざまなワイナリーのワインメーカーを経て1999年にドミニオ・デル・プラタ設立を決意。
2001年にワイナリー完成。現在はドミニオ・デル・プラタのオーナー兼チーフワインメーカー。
2006年3月、アルゼンチンワイン協会会長に就任。

夫のPedoro Marchevskyさんとは1994年に出会い、1995年に結婚。ペドロさんはドミニオ・デル・プラタのオーナー兼ヴィンヤードマネージャーを務める。


アルゼンチン初の女性ワインメーカー

スザンナさんはアルゼンチン初の女性ワインメーカーとして知られています。
数々のワイナリーで活躍し、また、アルゼンチン人として初めてヨーロッパのワイナリーのコンサルタント を務めてきましたが、ペドロさんというパートナーと出会い、2人のワイナリー、ドミニオ・デル・プラタが誕生しました。

その一方で、スザンナさんは2006年3月からWines of Argentina(アルゼンチンワイン協会)の会長に就任し、アルゼンチンワイン界の発展に努めています。

スザンナさんは、まさに現在のアルゼンチンワイン界を代表する人物といえます。


Wines of Argentinaについて

Q.Wines of Argentinaはどんな組織?
A.12年ほど前、アルゼンチンワインのブランドを確立するために設立されました。アルゼンチンワインを世界中のみなさんに飲んでいただくこと、品質の高さを知っていただくことを目的として活動しています。

Q.参加しているワイナリー数は?
A.仲の良い10のワイナリーで“Top 10 Association”をつくったのが始まりで、その後のAVA(Argentine Viticulture Association)を経て、Wines of Argentinaになりました。現在は、小さいところから大手まで、さまざまな規模の約100のワイナリーが参加しています。

Q.この3月に会長に着任したということですが?
A.それまでも取締役ではありましたが、前会長の退任により私が会長職を引き継ぎました。取締役会では女性は私一人だけでした。

Q.アルゼンチンでは、ワインづくりにかかわっている女性は少ないのでしょうか?
A.25年前は女性は私1人でした。今は女性のワインメーカーは30人くらいいると思いますが、まだまだ男性社会かもしれませんね。

Q.男性社会のアルゼンチンのワイン業界で、女性であるあなたが協会の会長に選ばれた理由は?
A.私はこの25年、真面目に正しい姿勢でワインづくりに励んできました。もちろん夫の助けがあったからですが。

得た知識や情報は惜しみなく他のワイナリーとシェアしてきましたし、そのオープンな姿勢と偏見を持たない態度、品質の高いワインをつくってきた実績が認められたからではないでしょうか。

アルゼンチンワインには“変革”が必要だといわれています。そのためには、ワイン以外のさまざまな業界を巻き込んで実施する必要があり、それには私が適任だと思われたことも、理由のひとつのようです。

Q.それはどのような変革ですか?
A.アルゼンチンワインを国際市場で受け入れられるような商品スタイルにしたいと考えていますので、そのためには、品質向上を目的とした技術革新が必要です。

Q.現在の輸出の状況は?
A.Wines of Argentina に参加するワイナリーの生産量の90%が輸出向けで、アメリカ、イギリス、ブラジル、カナダ、ロシア、ラテンアメリカ諸国、ヨーロッパ・・・と続き、日本は第9位です。

Q.アジアのマーケットについてはどのように考えていますか?
A.今回、香港と中国と日本で試飲会を行いました。毎年、世界25都市で試飲会を行っていますが、アジアでは初めての試みでした。非常に手ごたえがありましたので、今後アジアでも定期的に開催していけたらと考えています。

Q.国内市場の現状はどうなっていますか?
A.アルゼンチンでは、政治的かつ経済的問題から他国との国際交流がほとんどできなかった時期がありましたので、ワインは国内の嗜好を中心に、昔ながらの、古臭くてちょっと酸化したようなものがつくられてきました。

ですが、7年前くらい前からだいぶ様子が変わってきました。まず、インターナショナルなワインが好まれるようになり、安いワインをガブ飲みするというスタイルから良いワインを少しずつというように、飲み方も変わってきました。

70年代の終わり頃の国民一人当たりのワイン年間消費量は95リットルでしたが、現在は30リットルという数値がそれを物語っています。これは世界的な傾向(量より質)とも一致しています。

Q.ワインの消費量が減ったことについて、なにか対策は?
A.ワインを飲むためのさまざまな機会を提案したいと考えています。例えば、ゆっくり食事をしながら良質のワインを飲むディナータイムとか、考えれば色々ありますものね。

Q.アルゼンチンで人気の品種は?
A.アルゼンチンに昔からあるトロンテスは、かつては低い品質のワインが多かったのですが、現在はクオリティが向上し、再発見されている品種です。

他には、白ではソーヴィニヨン・ブラン、赤ではマルベックはもちろん、メルロが人気です。

Q.確かに、アルゼンチンといえばマルベックですが、その特徴は?
A.非常に恵まれた栽培条件にあるため、ブドウの房を完熟した状態で木に付けておくことができ、タンニンがよく成熟したブドウが得られます。色に深みがあり、ワインになった時点ですでに心地良く飲むことができ、長く熟成させることもできます。

早く飲みたい人にとっては、フルーティで甘さのあるタンニンのワインとして楽しめ、長く熟成させてワインのストラクチャーを楽しむ、ということができる品種です。



Dominio del Plataについて

Q.ドミニオ・デル・プラタのコンセプトは?
A.1)正確なヴィティカルチャー、2)継続可能であること、3)醸造における高い品質、4)愛と情熱です。

1)まず、確実な技術と知識に基づいてブドウを育てることです。畑はヴィンヤードマネージャーである夫のペドロがブドウの成長をフォローしています。自分の目で見て細かくチェックし、プロセスの確認をすることが大事です。

2)子供たちに今のきれいな環境を残したいので、それを守るために長く続けられるプロジェクトが必要です。すべてオーガニックだから良いというわけではなく、不意のアクシデントにも対応できなければなりません、オーガニックよりも幅の広い統合的なコンセプトで継続していければ、と思っています。

3)品質の高いワインをつくるには、まず醸造知識が必要ですが、20数年の経験でそれは実現できるようになってきていますし、最新の技術にも対応したいと思っています。

4)ワインづくりには愛と情熱が欠かせません。自分ひとりだけでなく、家族一丸となって取り組んでいくことが大事だと思っています。

Q.ワイナリーのあるAgrelo(アグレロ)はどのような土地ですか?
A.地域はメンドーサで、標高は1000mあり、湿度20%くらいの半砂漠です。非常に乾燥しています。冬は寒く、夏の日中は暑いですが、夜になると14~18℃くらいまで気温が下がります。1日の気温の差が激しいので、ブドウの色付きが良く、黒ブドウに最適な場所といえます。「アグレロ」は「粘土」の意味で、実際ここの土壌は粘土質です。

Q.ワインづくりで重要な要因はテロワールでしょうか?品種でしょうか?
A.メンドーサでは雹が降ることがあり、場合によってはすべてを失うこともあります。そのため、テロワールも品種も大事ですが、人的な要因も大きな影響を与えます。

例えば隣り合った土地で、手のかけ方の違うブドウからワインがつくられた時、それは同じテロワールを持つワインといえるでしょうか?ワインは人がつくるものです。材料が良いか悪いかはもちろんのこと、生産者のパーソナリティが反映されます。これが“作者のワイン”で、“場所のワイン”という考え方とは対立するでしょう。私は良いパーソナリティを持ったワインを目指しています。

Q.ドミニオ・デル・プラタでは、アルゼンチンでは珍しいプティ・ヴェルドとカベルネ・フランを栽培しているようですが?
A.私のつくるワインにこの2つの品種が必要だったからで、ボルドースタイルの“ブリオーソ”にブレンドしています。カベルネ・フランは2ha、プティ・ヴェルドは1haですが、2001年に自分たちで植えました。植樹率は8000本/haです。

Q.普段はどのようにワインを楽しんでいますか?
A.アルゼンチンの料理はヨーロッパ風や地中海風のものが多いので、白ワインのトロンテスなどはサラダや野菜料理に合わせています。

アルゼンチンの主食は“肉”といっていいほど、1人あたり年間90kgも牛肉を食べます。肉にはマルベックの赤ワインですね。パスタ類もよく食べます。肉、サラダ、シチュー、パンやパスタ、といった組み合わせの食事が多いです。

Q.アルゼンチンワインと日本の食事との相性はいかがですか?
A.私は初めて日本に来ましたが、素材の自然の香りを生かして調理され、また、魚介料理がとてもきれいに作られていたことに感心しました。日本の食事はバラエティ豊かなので、アルゼンチンのワインともピッタリ合うものがあるはずと思いました。

アルゼンチンワインは薀蓄を語るためのワインではなく、飲むためのワインですから、色々な料理に合わせて楽しんでほしいと思います(ペドロさん談)。


<テイスティングしたワイン> 

Crios


Crios Trrontes 2005
Crios Malbec 2005

“Crios”は“子供たち”のこと。“Susana Balbo”シリーズのレベルに達しないキュヴェや若木からのワインがCriosになります。

ラベルにはスザンナさんの大きな手と子供たちの小さな手が描かれていますが、

「ラベルの子供たちの手は小さいですが、今では子供たちの身長は私よりはるかに大きく、手も大きくなりました」と笑うスザンナさん。

トロンテスはフレッシュで爽やか、マルベックはやわらかくチャーミングな味わいで、Criosシリーズは全体的にやさしい印象があります。毎日飲みたくなるワインです。


Susana Balbo


Susana Balbo Malbec 2004
Susana Balbo Cabernet Sauvignon 2003
Susana Balbo Brioso 2003

スザンナさんの手がけるシリーズ。その年の最高のブドウを選び、より複雑かつ繊細な味わいとアロマを追求したワインです。

マルベックもカベルネもエレガントなタンニンが素晴らしく、フィネスを感じます。

ブリオーソはカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、マルベック、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランをブレンドしたボルドータイプ。ブドウは完熟したものを使っているので、タンニンに丸みが出ていて、飲みやすく心地良いワインです。まだ若いですが、長期熟成が期待できそうです。


Ben Marco


Ben Marco Malbec 2004
Ben Marco Cabernet Sauvignon 2004
Ben Marco Expresivo 2003

ペドロさんの手がけるシリーズで、ブドウ本来の味とアロマをそのままワインに表現することを目指しています。

マルベックはやわらかく、カベルネにはしっかりしたタンニンを感じます。

エクスプレシーボは、マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨン、ボナルダ、シラー、タナの5種類のブドウをブレンドしたもの。ボナルダは70年という樹齢の木(ラベルに描かれているもの)のブドウも使われています。まだまだ固いものの、酸味が大変しっかりとしているので、もうしばらく辛抱すると素晴らしい味わいになりそうです。


 ブドウ園とシエスタ
“シエスタ”とはランチ&お昼寝休憩のこと。
ブドウ園では朝の8時から12時まで働き、12時から16時までがシエスタタイム。
その後16時から20時までもうひと働きします。お昼休みが長いのは、日中は暑くて仕事にならないからだそうで、なるほど合理的なシステムです。
休憩時間が4時間とたっぷりあるので、ランチにワインを1杯飲んでも、お昼寝すれば全く問題ありません。
ブドウ園で働く人たちはお昼になるといったん家に帰り、ゆっくりとシエスタをむさぼります。

一方、ワイナリー(ファクトリー)で働く人たちの勤務時間は朝8時から夕方17時までで、お昼休みは1時間。都会のオフィスと全く同じで、これでは昼休みにワインを1杯というわけにはいかないようです。



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インタビューを終えて


スザンナさんと夫のペドロさんはどちらも離婚経験者で、それぞれ2人ずつ子供がいました。1994年に出会い、1995年に結ばれた2人と4人の子供たちは一緒に暮らし始めます。



家族で集まった時の写真を色々と見せてもらいましたが、本当に仲の良い家族で、2人が4人の子供たちに分け隔てない愛情を注いできたことが手に取るように伝わってきます。そうした2人の愛情を一身に受けて成長した子供たちは、ドミニオ・デル・プラタのワインのラベルデザインを手がけたり、農業技術者になったり、醸造学や経営学を大学で勉強中と、両親の志を継ぎつつあります。

スザンナさんがワインづくりで得た知識や情報を惜しみなく他の人に提供してきたことは、4人の子供たちに愛情を注いできたことと通じるものがあります。彼女の母性による深い愛情は、これからのアルゼンチンワイン界の力強い支えとなってくれること間違いなしです。

もちろん、夫と子供たちという家族の愛情に支えられたスザンナさん自身の今後の活躍も期待大ですね。

今回、日本で行われたアルゼンチンワインの試飲会では、かつてのイメージを覆す素晴らしい品質のワインが目白押しでした。

変革を遂げつつあるアルゼンチンワインは、今後要チェックです!

    
取材協力:アルゼンチン大使館


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第23回 La Soufrandiere/B.Brothers@「キャッチ The 生産者」

2009-02-02 11:15:53 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年6月11日)

第23回  Jean-Philippe & Jean-Guillaume BRET
       <Domaine La Soufrandiere / Bret Brothers>
   


今回のゲストは、フランスはマコネ南部のヴァンゼル村からやってきた、若きジャン・フィリップとジャン・ギョームのブレ兄弟。
彼らは、「ドメーヌ・ラ・スフランディエール」「ブレット・ブラザーズ」の経営者です。



<Jean-Philippe Bret>
ブレ3兄弟の長男。カンヌ生まれの31歳。
マコン・ダヴァイエ醸造学校でエノローグ、ディジョンの技術学校でディプロマを取得後、ボルドーのバロン・フィリップ・ロッチルド、ムルソーのコント・ラフォン、ヴェルジェ、カリフォルニアのソノマ、ナパのワイナリーなどで修行。



<Jean-Guillaume Bret>
ブレ3兄弟の次男。リヨン生まれの30歳。
マコン・ダヴァイエ、アヴィズの醸造学校でエノローグの資格を取得後、ローヌ、ブルゴーニュ、ヴェルジェ、カリフォルニアのソノマ、ナパなどのワイナリーなどで修行。

*彼らの苗字「Bret」は、フランス語では「ブレ」と発音しますが、「Bret Brothers」は「ブレット」と英語読みします。


マコネとプイイ・ヴァンゼル

マコネがブルゴーニュの南あたりということはなんとなくわかるけど、
ヴァンゼル村って…?と要領得ないのがこの付近の地理。

広く"ブルゴーニュ"と呼ばれている地域は、北は"シャブリ"地区から始まり、その南が最もよく知られた"コート・ドール"地区、その南に"コート・シャロネーズ"地区、"マコネ"地区があり、最南端に"ボージョレ"地区と、細長く帯状に広がっています。
マコネ地区だけでも南北が50kmあり、シャブリとボージョレでは300kmも離れています。これは日本でいえば東京から新潟までに相当するから、けっこうな遠さです(マコネから北のボーヌまで90km、南のリヨンまでは60km)。

マコネでは、18世紀後半には白ブドウと黒ブドウは半々につくられていましたが、19世紀後半のフィロキセラ禍で黒ブドウのガメイが衰退し、現在は白ブドウのシャルドネが85%を占めています。
マコネはブルゴーニュ地域の中では最も面積が広く、土壌も多種多様な地区です。
"Macon+コミューン名"ワインが多く存在することからもわかるように、バラエティ豊かなワインが生まれます。

マコネ地区で最も有名なアペラシオンは、"Macon Village"や"Macon+コミューン名"以外では "Pouilly-Fuisse"(プイイ・フュイッセ)と"Saint-Veran"(サン・ヴェラン)でしょう。
この2つは面積も広いので、当然生産量も多くなります。

ところが、ブレ兄弟が拠点を置き、畑を所有しているAOC Pouilly-Vinzelles(プイイ・ヴァンゼル)は、面積においてはプイイ・フュイッセの6.6%(51ha)、生産量は5.6%(2455hl)と、非常に小さなアペラシオンです。マコネの最南端に近く、プイイ・フュイッセの東側に位置しています。




Q.あなた方が携わる前のドメーヌ・ラ・スフランディエールの状態は?
A.スフランディエールは祖父(ジュール・ブレ)が1947年に取得しましたが、祖父はパリで開業医をしていたので、畑は小作人に任せ、収穫したブドウは小作人と折半して協同組合に売っていました。
その後、父(ジャン・ポール・ブレ)が引き継ぎましたが、父もワインとは関係ない仕事をしていたため、ブドウ畑は引き続き小作人に任せていました。

Q.祖父、父もワインづくりには携わっていなかったのに、なぜあなた方はワインづくりの道に進もうとしたのですか?
A.スフランディエールには小さい頃から夏のバカンスなどでよく訪れていて、ワインも5歳くらいから飲んでいました(笑)。
ここからアルプスまでは比較的近く、ヴァンゼル村を拠点に山歩きをしたり、キノコを探したりしていました。2人とも自然の中にいるのが大好きだったので、大きくなったら自然を相手にした仕事をしたいとは思っていました。ワインに興味を持ち始めたのは15歳頃で、2人とも16歳からマコンの醸造学校に進みました。

Q.ワインをつくりたいという気持ちは2人とも同じだったんですか?
A.ええ、我々は趣味も好みも似ていて、小さいときから何をするにも一緒でした。実は我々の下に末の弟がいるのですが、ジャン・ギョームとは4つ離れていることもあり、年の近い我々がいつも一緒にいたんです。ちなみに、末の弟はベルサイユの生まれなのですが、実は3人とも両親のバカンス先で生まれています(笑)。

Q.それで、醸造学校を卒業後、各地で修行をしてからスフランディエールを引き継ぐことになったわけですね?
A.我々がスフランディエールを引き継いだのは2000年で、この年の収穫からドメーヌワインとして醸造と瓶詰めを始めました。

Q.もうひとつ経営しているブレット・ブラザーズ(Bret Brothers)はどんな会社ですか?
A.2001年の8月に設立したネゴシアンです。現在は12の生産者と契約し、ネゴシアンワインとして流通させていますが、ドメーヌワインと全く同じ信念、情熱を持って生産しています。

Q.あなた方の信念とは?
A.長年の実績のある農家や従業員たちとの関係を大事にし、ひとつの区画はひとりの生産者に責任を持って手がけてもらい、ほかの区画とのブレンドはしません。樹齢は35年以上のもののみを選択し、畑での作業はすべて手で行います。
また、自然なものを尊重し、発酵は自然に任せ、すべて自分たちのコントロールの下、ワイン生産を行っています。。

Q.ビオディナミを実践しているということですが?
A.スフランディエールとしては、スタート時の2000年からビオディナミを始めました。2003年にフランス政府に申請し、ECOCERT(エコセール)の認可を受けています。しかし、実際にシールを貼って販売できるのは2006年ヴィンテージからになります。 スフランディエールではすべてビオディナミに切り替えが完了していますが、ブレット・ブラザーズの扱う生産農家においては、現段階では40%が公式に認証を受けています。残りの60%は転換中です。


<テイスティングしたワイン> (すべて白ワイン)


Bret Bothers

・Macon-Vinzells Clos de Grand Pere 2004

・Vire-Clesse limat a Verchere 2004

・Saint-Veran Climat Les Fournaises 2004

・Pouilly-Fuisse Climat En Carementrant 2004

・Pouilly-Fuisse Climat La Roche 2004

Macon-Vinzellsからすでに充分おいしいのですが、まろやかでふくよかな果実味の"Pouilly-Fuisse Climat En Carementrant 2004"、ミネラル感が際立ち、余韻も非常に長い"Pouilly-Fuisse Climat La Roche 2004"は秀逸。



Domaine La Soufrandiere

・Pouilly-Vinzells 2004

・Pouilly-Vinzelles Climat "Les Longeays" 2004

・Pouilly-Vinzelles Climat "Les Quarts" 2004

・Pouilly-Vinzelles Climat "Les Quarts" Cuvee Millerandee 2004

どれもワインに個性が感じられますが、滋味にあふれ、凝縮されたエキス分を感じる"Pouilly-Vinzelles Climat "Les Quarts" Cuvee Millerandee 2004"はさすがに素晴らしい!



<ふたつのテイスティングを終えて>

どちらもクオリティの高いワインが勢揃いで、地形や土壌による味わいの違いが見事に反映されています。
ドメーヌものの方がおいしくてネゴシアンものはイマイチと考える人が多いようですが、そんな考えはきっぱり捨てるべし! です。


<区画の違いによる味わいの違い>

ワインは区画ごとにそれぞれ異なった個性を持っています。
どれが優れているか云々よりも、まずはその個性を理解し、好みやそのときの気分でチョイスするといいでしょう。
なお、ドメーヌものとブレット・ブラザーズで同じ区画名がついているワインでも、全く同じ畑ではありません(隣り合うことはあります)

Pouilly-Fuisse

En Carementrant
ロッシュ・ド・ヴェルジソンの断崖の下にある真南の畑。石灰質に富み、ヴェルジソンで最も素晴らしいテロワールのひとつ。

La Roche
ロッシュ・ド・ヴェルジソンの東向きの麓で、ヴェルジソンで最も素晴らしいテロワールのひとつ。岩場のワインはミネラルに富み、キメの細かなものになる。


Pouilly-Vinzelles

Les Longeays
丘の中腹の東~南東向きの畑で、粘土質石灰質土壌。一番早くブドウが熟す区画。フルーツ主体のワインとなり、純粋でまっすぐな果実味が特徴。

Les Quarts
南東向きの丘の上にある石英質にバジョース階(中期ジュラ紀の一段階)石灰岩を含んだ粘土石灰質土壌で、VolnayやPommardのように赤い部分が見られる。ピュアで透明感があり、ミネラルに富み、複雑で長熟なワインになる。




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インタビューを終えて

最初に現れた2人がとてもよく似ているので、「あれ?双子?」と思ったほど。すぐにその誤解は解けましたが、彼らの話を聞いてみると、趣味も考えも本当によく似ています。



ドメーヌ・ラ・スフランディエールとブレット・ブラザーズは、そんな息の合った若い2人が二人三脚で始めたドメーヌとネゴシアンですが、今までのワイン本では素通りされていたプイイ・ヴァンゼルを背負っていくことは間違いないでしょう。それは彼らのワインを飲んだ時に確信しました。

2人の信念が生み出すワインはナチュラルな土壌の味わいがしっかりと出ていて、それがカラダの細胞のひとつひとつにジワジワと染み渡るのです。
素直においしく、カラダがスーッと受け入れる、そんなワインです。

日頃はコート・ドールのワインにばかり目が行きがちですが、マコネ、そしてプイイ・ヴァンゼルという小さくてマイナーなアペラシオンにも、このような素晴らしいワインが生まれつつあります。

総じて、マコネ地区の生産者は小さいところ(4~5ha)が多いものの、情熱を持ってワインづくりをしている生産者がたくさんいる、とブレ兄弟は言っていました。
となれば、マコネ地区、中でもプイイ・ヴァンゼルのワインは、今後、要チェックですよ!


取材協力:トーメンフーズ(株)ワイン本部 →(現在)豊通食料

 http://www.vin-de-t.com/district/bourgogne/bourgogne/bret.html

 http://www.bretbrothers.com/index.php

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第22回 Marcel Richaud@「キャッチ The 生産者」

2009-02-02 11:10:37 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年5月11日)

第22回  Marcel Richaud  <Domaine Marcel Richaud>



「私は職人です」と言う マルセル・リショーさんは、フランスの コート・デュ・ローヌ の Cairanne(ケランヌ)村 で 有機農業による自然なワインづくりをしています。

<Marcel Richaud>
52歳。妻のマリーさんとの間に4人の子供あり。
趣味はハングライダーとバイク。
血液型はA型。(マリーさんの血液型はO型)。


テクニックに頼らない自然なワインづくり

このところ、「自然派」を唱える生産者が増えてきました。
その名の通り、栽培過程でも醸造過程でも化学的な薬剤類は使わないつくり、ということですが、
リショーさんは敢えて「自然派」ということを声に出さないのだとか。
それは、彼が自然なワインづくりに行き着いた過程に理由があるようです。





Q.ケランヌ村とは?
A.AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュには、ワイン名に村名を付けることを許されている村があります。ケランヌ村もそのひとつで、18ある村の中ではトップクラスのワインを生み出すとされています。
(コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ケランヌの認定は1967年)

ケランヌは南ローヌのオランジュの街の北東にあり、典型的な地中海気候です。ワインのアルコール度数は、 赤は12.5%以上、ロゼと白は12%以上と規定されています。

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<参考>AOCコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(18)

Rochegude,Rousset les vignes,Saint Maurice,Saint Pantaleon les vignes,Chusclan, Cairanne,Rasteau,Roaix,Sablet,Seguret,Valreas,Visan,Laudun,Saint Gervais,Massif d'Uchaux,Plan de Dieu,Puymeras,Signargues
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Q.ケランヌ村の特徴について、もう少し詳しく教えてください。
A.ケランヌでは、荒れた台地にブドウ畑が散在しています。日照量が多く、夏は非常に暑くて風が強いのですが、風のおかげで湿気が飛び、病虫害の被害はなく、ブドウが健康に育ちます。

砂質、粘土石灰質、大きな石混じり、とさまざまな土壌から得られるブドウは、ワインに複雑味をもたらし、不作といわれる年にも柔軟に対応ができます。
また、ワインに石灰質土壌によるブドウのミネラル分を感じるのがケランヌの特徴です。

Q.32年前からワインづくりをしているということですが?
A.父の時代はブドウを栽培して協同組合に売っていましたが、私の代から瓶詰めを始めました。醸造学校などには行っていません。全くの独学です。醸造庫や熟成庫なども自分でつくったんですよ。

Q.あなたは現在「自然派」と言われていますが?
A.最初の10年くらいは技術を極めたワインづくりをしていました。ありとあらゆるテクニックを駆使したワインをつくっていましたが、なかなか売れず、非常に悩んでいました。

ところが、あるときパリのビストロで素晴らしいワインに出会ったんです。ソムリエに聞くと、それは土壌をよく表現しているワインだと言います。

そうか、私もケランヌのという土地の個性を生かしたワインをつくらねば!そのためにはどうしたらいいだろうか?行き過ぎたテクニックを捨ててみようか?と、テクニックをひとつひとつ捨てていった結果、おのずと自然なつくりになってきました

Q.テクニックは一切否定しますか?
A.土壌の味を表すワインをつくることが大事だと思いますので、ワインづくりにはできるだけ人間の手が介入しない方がいいと考えています。ブドウの持っているものを全部引き出してあげたいんです。

しかし、テクニックを全く使わないために土壌の味を殺してしまうことになるのなら(そうした生産者もいますが)、多少使っても、きちんと土壌を表すワインをつくる方がいいと思います。

Q.ワインづくりで大事なことは?
A.まずその土地の土壌を理解することです。土壌の味、ブドウ本来の味を出していくためには、生産量を落とし、よい品質のブドウをつくらねばなりません。
また、地元の古いブドウを守っていくことも大事ですので、クローンを使うのではなく、セレクション・マサル(ブドウの枝から挿し木で増やしていく方法)により自分で増やしています。

Q.あなたのワインの特徴は?
A.私のワインは、清潔でピュアな、きちんとしたワインです。たしかに、栽培から醸造まで化学薬剤を使わないことによるリスクはありますが、リスクのない状態で瓶詰めできるようにしています。
また、ヴィンテージの差よりも土壌の違いを表すワインです。ノンフィルターで、補酸なども一切行いません。なお、ワインを守るため、わざと全てのワインに少しガス(二酸化炭素)を残して瓶詰めしています

Q.現在所有している畑について教えてください。
A.50ha所有していますが、そのうち40haをドメーヌものとして瓶詰めし、10haは協同組合に貸すなどしています。これが手をかけられる限度で、ちょうどいい広さだと思っています。これ以上広げるつもりはありません。これでひとまず食べていけますしね(笑)。
従業員は10人います。化学的な技術(除草剤や殺虫剤など)を使えば人手は少なくてすみますが、手作業で行うには人が必要です。モラルに欠けたワインはつくりたくありません。私は職人ですから

Q.貸し出している10haの畑の手入れ方法は、貸出先に任せているのですか?
A.いいえ、どちらも同じように我々が手をかけてブドウを育てています。化学的なものは一切使いません。畑の雑草は残します。土には空気がたっぷり含まれ、ミミズもいます。

Q.輸出の割合、輸出先について教えて下さい。
A.90%がフランス国内で消費されています。国内400店ほどのワインショップ、レストランなどに入っています。輸出先は、アメリカ、イギリス、日本です。





<テイスティングしたワイン>

1)Cotes du Rhone Village Cairanne Rose 2004
セニエ方式でつくったロゼ。春から夏の季節にオススメ。ピクニック、食前酒、魚のグリルなどに、よく冷やして。

2)Cotes du Rhone Cuvee Printemps 2005
ボージョレ・ヌーヴォー的な位置づけとして、2005年のキャラクターを知ってもらうためにつくったというカジュアルでフルーティーな赤。ラベルのデザインは毎年変わるそうです。ラベルはアーティストに依頼して「春」のイメージで描いてもらっています。


2005年の「春」のイメージ

3)Cotes du Rhone Les Garrigues 2004
ガリーグ(潅木の生えている土地)のワイン。ボディがしっかりとし、タンニンが豊かでスパイシーで、ブドウの種を噛んだ感じがあるので、ハーブやトマトを使った料理や仔羊などがオススメだそう。

4)Cotes du Rhone Village Cairanne 2004
甘草、香草、ミネラルの香りがあり、全てのバランスを取ってつくられたワイン。

5)Estrambords 2003
リショーさんが「限界ギリギリの思いでつくった」というワイン。猛暑に見舞われた年だったけれど、ミネラルが残り、バランスが取れたとのこと。

6)L'Ebrescade 2001
ケランヌからラストー村にかけて広がる土地で、どうしても手に入れたかったため、2倍のお金を払ったとのこと。300mの高台にあり、南向きなので、北から吹くミストラルが当たりません。古い樹齢のムールヴェドル、グルナッシュ、シラーからつくられています。ミネラル、酸、ブドウが完熟した年でした。

7)L'Ebrescade 2003
リショーさん曰く「アクシデントのワイン」。糖度が非常に上がったため、発酵の際に残った糖のせいで甘く感じます。
「樹齢50年の完熟したグルナッシュ(100%)のポテンシャルを出し切りました」とリショーさん



 右から順に1~7



ワインはどれも「バランス良くエレガント」なスタイルです。
南ローヌというと、アルコールが高くて濃厚なイメージがありますが、リショーさんのワインには、穏やかなやさしさがあります。


1)のロゼ以外は全部赤ワインです。

白ワインはつくっていないんですか?白を飲みたくなったら、どうするんですか?」と尋ねたところ、

実はほんの少しだけ(5%)白ワインをつくっているとのこと。
魚料理やフロマージュ・ブラン(熟成させる前のフレッシュな白いチーズ)に合わせて楽しんでいるそうです。


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インタビューを終えて

リショーさんは「無口」だと聞いていたのに、次の質問になかなか入れないほど絶(舌?)好調。ワインづくりのこととなると、話が止まらないようです。

趣味はハングライダーとバイク。今回の来日では、ぜひホンダやトヨタの工場見学に行きたいと思っていたそうですが、時間が取れなかったので、次回はぜひ!と、少年のようでした。

そんなリショーさんを支えるのが、妻のマリーさん

「マリーが経理と営業、従業員管理など、全て取り仕切ってくれています。家族の力は大きいです」と言うリショーさん。

4人のお子さん(30~15歳)のうち、末っ子の女の子がワインに興味を持ってくれているようなので、彼女がワインづくりを引き継いでくれることを期待しているとか。

「世界各地のワインと競合することで、多くのワインはその土地のオリジナルから離れていきました。元のオリジナルの土壌をそのまま表した、誠実で素直なワインこそ消費者のためになるワインです。私は消費者が喜んでくれるワインをつくりたいと思っています」

テクニックを知り尽くしたリショーさんだからこそ出てくるこの言葉。
そして、いつのまにか辿り着いたという自然なワインづくり。

「自然派」という手法が目的になりがちな昨今ですが、彼が敢えてそれを語らないのには、そんな背景があるようです。 ワインを飲む側にとって、こうした生産者の気持ち&姿勢というのは、なんとも嬉しいことではありませんか。


取材協力:有限会社ベスト・マーケティング・オフィス
      クラブ・パッション・デュ・ヴァン

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第21回 Chateau Suau@「キャッチ The 生産者」

2009-02-02 11:06:42 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年4月11日)

第21回  Monique Bonnet  <DUO@Chateau Suau>

今回のゲスト、モニク・ボネさんは、フランスのプルミエール・コート・ド・ボルドーにあるシャトー・スオウのオーナーです。
モニクさんは、新しいスクリューキャップワイン「DUO」(デュオ)の紹介のために来日しました。



<Monique Bonnet>モニクさんの父クロードさんが資金提供し、1986年にボネ家がシャトー・スオウを取得。
以降、それまでは栄養士やダイエット関係の仕事に従事していたモニクさんがシャトーのオーナーとして就任。現在に至る 。


ボルドーでスクリューキャップ?

シャトー・スオウはプルミエール・コート・ド・ボルドーに82haの土地を所有し、うちブドウ畑は59ha。小石と粘土がモザイク状に入り混ざった土壌です。
赤品種ではメルロ(50%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(30%)、カベルネ・フラン(20%)を、白品種ではソーヴィニヨン・ブラン(40%)、セミヨン(40%)、ミュスカデル(20% )を栽培し、豊富な資金力のもと、最新の醸造設備を駆使したワインづくりを行っています。
特にオーク樽を使用した白ワインは、国際的にも非常に高い評価を得ています。

そうした高品質ワインを生産する一方で、モニクさんは新しいタイプのワイン「DUO」を誕生させました。しかも、スクリューキャップというから驚きです!

ボルドーでスクリューキャップ栓とは、一体どんなワインなのでしょうか?



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AOCプルミエール・コート・ド・ボルドー

ボルドーのワイン生産地域はかなり広範囲に広がっていますが、
ポイントは3つの川
フランスの南西部を東から西に流れるドルドーニュ川と南から北に流れるガロンヌ川が合流してジロンド川となり、大西洋に注いでいます。
これらの川の流域の地形や土壌はさまざまで、それらが各地域のワインに独特の個性をもたらしています。

プルミエール・コート・ド・ボルドーはガロンヌ河の右岸沿いに広がる地域です。赤ワインは早飲みでフルーティーなものが多いといわれてきました。しかし、しっかりした色とコクを持つワインもあり、繊細な味わいのワインもあり…と、ひとことでは言い表せません。 ここは、今後見守りたい生産地域のひとつでしょう。

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Q.DUO はいつから生産していますか?
A.2002年ヴィンテージからです。

Q.DUOと従来のシャトー・スオウのワインと違う点は?
A.私が今まで手がけてきたワインというのは、赤であればタンニンがしっかりとしたクラッシックなもので、つまりボルドーの基本ともいえるワインでした 。

しかしDUOは、赤も白も味わいはフレッシュでみずみずしく、ボトルに詰めたらすぐ飲めるワイン、というコンセプトでつくりました。ボルドーの伝統的な、長く寝かせておいて飲むタイプのワインではありません。

Q.なぜDUOにスクリューキャップを採用したのですか?
A.DUOは、買ってきたらすぐにでも楽しんでいただきたいワインですから、栓が簡単に開けられる方がいいでしょう?

開けて、注いで、キャップを閉めてと、とても簡単だし、ボトルに残ったワインをそのまま取っておけるのもスクリューキャップのメリット。きっちりキャップを閉めておけば、また別の日に楽しむことができますもの。

Qスクリューキャップを採用しているワイナリーは、ボルドーでは現在どのくらいありますか?
A.はっきりとした数はわからないけど、まだそんなに多くないと思うわ。たぶん15ほどじゃないかしら?

Q.DUOに合うオススメの料理は?
A.白はアロマが豊かだけれど口当たりが爽やかなので、さっぱりとした料理に。
赤は中華料理とかのスパイシーな味付けの料理に合うと思うわ。

Q.DUOはどんなふうに楽しんだらいいでしょう?
A.好きなときに好きなように楽しんでほしいと思っています。ちょっとした集まりやピクニック、クリスマスetc…。
どんなときにでも気軽に飲めるのがDUOの良いところよ。

Q.ラベルがとても親しみやすくてキュートですね。描かれているは?
A.これは"特別な鳥よ"(笑)。"ルルー"という名前で、いつも動き回っていて、立ち止まらないの。

Q.特別なギフトパッケージボックスがあるとか?
A.2本入りのかわいいギフトボックスがあるので、一番のお勧めはバレンタインのプレゼント用ね。1本は彼が、もう1本はあなたが飲む、というのはどうかしら?(笑) 母の日や父の日の贈り物にも最適よ。





<テイスティングしたワイン>

DUO@Chateau Suau Blanc 2004<AOCボルドー>
セミヨン(Se)45%、ソーヴィニヨン・ブラン(SB)40%、ムスカデル(Mu)15%のブレンド。ソーヴィニヨン・ブランのアロマがとても豊かに香り立ち、爽やかで、ほどよいコクもあり、みずみずしさにあふれたフレッシュなワイン。これからの季節なら、テラスでくつろぎながら飲みたくなること請け合い!

DUO@Chateau Suau Rouge 2002<AOCプルミエール・コート・ド・ボルドー>
なめらかでスルスルとしたノド越し。果実味がやわらかく、タンニンはまろやかで、バランスも良好。ハンバーグ、焼き鳥、肉ジャガといった、普段のご飯にも合わせられそうな、使い勝手のいい赤。気温が高いときは少し冷やしても。メルロ(Me)60%、カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)40%のブレンド。

Chateau Suau Blanc Cuvee Tradition 2004
DUOのワンランク上の白ワイン。ステンレスタンクを使って発酵、熟成を行っているクリーンなスタイルのワインで、ボルドーの気品をしっかり備えながらもリーズナブルなプライスが魅力。SB50%、Se40%、Mu10%のブレンド。

Chateau Suau Rouge Cuvee Tradition 2001
DUOのワンランク上の赤ワイン。Me40%、CS40%、カベルネ・フラン(CF)20%。きれいにバランスが取れた、ふくよかな味わい。CFが入ることで、より複雑になり、エレガントさも感じます。

Chateau Suau Blanc Prestige 2004
オークの新樽を100%使って熟成(8ヶ月)させているため、ボディに厚みがあり、豊かなコクがあります。文句なしにウマイ!と思わせる、本格的なボルドーの白。クリームを使った料理などにピッタリ。SBとSe各50%。

Chateau Suau Rouge Prestige 1999
オークの新樽を使って熟成(12ヶ月)。典型的なボルドーのスタイルと品の良さを持った赤ワイン。タンニンにきっちりとした存在感があり、飲みごたえがあります。ようやく飲み頃を迎えつつあり、まろみも出てきました。CSとMe各50%。


※シャトー・スオウでは、甘口の貴腐ワイン"カディヤック"(Cadillac)も生産しています。
  生産本数が少ない希少なもので、15年以上の熟成が可能です。



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インタビューを終えて


モニクさんは本当に陽気な女性で、ついつい彼女の楽しげな話しぶりに引き込まれてしまいます。

今回モニクさんが紹介してくれた「DUO」は、楽しくおしゃべりをしながら、いつのまにかグラスを重ねてしまう、そんなワインです。

そのまま飲んでもいいし、軽くなにかをつまみながら、また、しっかり食事をしながらでも楽しめるという柔軟さも嬉しいポイント。
特にラベルに描かれている"ルルー"の存在が楽しく、このルルーは格好の肴になってくれそうですよ。



"ボルドーワイン"というと、ちょっと気取っていて、敷居が高くて、なんだか敬遠しちゃうのよねぇ…、それに、どうやって飲んだらいいの?と思う人もいるかもしれません。
でも、この「DUO」なら、思わず手に取って開けてみたくなりませんか?

普段の生活の中で気軽にボルドーワインを楽しめたら、なんだかとっても嬉しいかも。

寝かせて待たなくてもいいし、好きなときに好きなように飲んでいいのなら、ワインの楽しみ方は無限に広がりそうです。

型にはまらないワインの楽しみ方を、モニクさんはこの「DUO」で教えてくれたようです。


(取材協力:中部貿易株式会社)→ 現社名は(株)アグリ に変更

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第20回 Tenuta San Guido@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:30:48 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年3月11日)

第20回  Dottore Sebastiano Rosa  <Tenuta San Guido>

20回めのゲストは、イタリアの“スーパータスカンのパイオニア”といわれる"サッシカイア"のワインメーカーを務める、セバスチャーノ・ローザさんです。
テヌータ・サン・グイードの後継者でもあるローザさんに、次世代サッシカイアとして新しく誕生した"グイダルベルト"を中心に、お話を伺いました。



<Sebastiano Rosa>
1966年生まれ。2歳で実父と死別。その後、母がテヌータ・サン・グイードのオーナーであるニコラ・インチザ侯爵と再婚したため、インチザ公を養父として、ボルゲリで育つ。
カリフォルニア大学デイビス校にて、ブドウ栽培および醸造学修士課程を終了後、カリフォルニアのジョーダン・ワイナリーで1年間勤務。その後、フランスはボルドーのシャトー・ラフィット・ロートシルトで2年間勤務。
1990年からトスカーナのアルジャーノへ。ジャコモ・タキス氏とともにスーパータスカン"ソレンゴ"を誕生させている。
2002年からテヌータ・サン・グイードへ。現在は、ワインメーカー兼マーケティングディレクターを務める 。


次世代サッシカイアの担い手

サッシカイア(Sassicaia)といえば、イタリアワインファンならずとも心ときめく、スーパータスカンの代名詞的存在。
キアンティのサンジョヴェーゼ種、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのブルネッロ種が伝統的なトスカーナ州において、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランで構成されるサッシカイアは、原産地呼称制度上は単なるテーブルワイン(ヴィーノ・ダ・ターヴォラ)に過ぎませんでした。

しかし、1968年ヴィンテージ以降、熟成にフレンチオークを使用し、国際市場へとターゲットを広げていきながら、サッシカイアは、ボルドー1級シャトーと並ぶ評価を得るまでのワインへと成長していきました。 そして、1994年ヴィンテージからは、単独のDO"ボルゲリ・サッシカイア"に昇格しました。

現在は、イタリアを代表する超高品質ワインのひとつとして、その名声をほしいままにしているテヌータ・サン・グイードですが、つくっているのは、このサッシカイアだけでした。

しかし、21世紀を迎えた今、新しいワインと次世代のリーダーが誕生しました。



Q.なぜ、カリフォルニア大学デイビス校へ?
A.私が進学をしようとしていた1980年代は、ワインの勉強をする学校としては、フランスのボルドー大学かデイビス校しか選択の余地がなかったのです。私はイタリア人ですから、陽気な土地がいいと思い(笑)、カリフォルニアに渡りました。もちろん、カリキュラムが充実していたこともありました。入るのは簡単でしたが、入ってからが大変!勉強はかなり努力を必要としました。

Q.サッシカイアが"スーパータスカン"といわれるまでになった経緯を教えてください。
A.私の養父ニコロの父マリオ・インチザは、ボルドーワインの大ファンでした。第二次大戦後の1946年、シャトー・ラフィットのカベルネの苗木を購入し、ボルゲリの地に植えました(2ha)。マリオはピエモンテ出身ですが、イタリアで高貴なワインをつくることを学生時代から夢見ていたようです。

畑は海から近くに位置しているので気候は安定し、東向きで日照も充分だったので、成熟したワインができると考えたようです。
最初は家族消費用としてつくっていたのですが、そのワインは硬く、あまり評判が良くなかったため、しばらく寝かせていたところ、非常に良くなったので、1960年代に畑を拡大することにしたそうです。
その後、アンティノリで働いていたエノロゴ、ジャコモ・タキス氏の影響もあり、それまで大樽で行っていた発酵をステンレスタンクに変え、熟成にフレンチオークの新樽を使い、また、マーケティングターゲットを国際市場に広げたところ、サッシカイアは非常に高い評価を得るようになりました。それが1968年ヴィンテージです。

Q.ということは、醸造方法の変更とマーケティングが成功の秘訣ですか?
A.いえ、それだけではなく、ボルゲリの土地にも秘訣があります。
先に述べたように、ここは海から近く、最初に祖父が植えた2haの畑は海から5kmのところにありましたが、60年代に広げた畑は、海から2kmの近さにあります。そのため、春は早くから暖かくなり、トスカーナの内陸部とは1ヶ月も違います。
夏は海の影響で涼しく、穏やかな天気となり、雲が出にくく、降水量も少ないのです。こうしたマイクロクライメット(微気候)は、海からの偉大な財産です。

また、土壌にはがたくさん含まれ、ボルドーのグラーヴと同じ土壌構成です。つまり、カベルネに適した土地なのです。
"サッシカイア"という名前は、「小石がいっぱい」という意味なんですよ。

Q.1994年にボルゲリ・サッシカイアがDOCに昇格した背景は?
A.今まで偉大なワインが存在しなかったボルゲリの地に偉大なワインを誕生させ、エノロジーと栽培学への貢献が認められたことによるといわれています。マリオがカベルネを植えた畑は、イタリアのカベルネの生誕地とされています 。




Q.次はいよいよ、新ワイン"グイダルベルト"の登場ですね?
A.グイダルベルトは2000年ヴィンテージからリリースしています。サッシカイアの個性はそのままに残しつつ、若いうちから楽しめるものを、ということから生まれました。 また、若い世代の、新しい飲み手に飲んでもらいたいため、手軽な価格設定にしました。
品種については、ボルゲリの土地にはメルロが合うと考えていたので、メルロブレンドのワインにしてみました。

ちなみに、"グイダルベルト"の名は、インチザ侯爵家の祖先であり、18世紀初頭のボルゲリでブドウ栽培の改良に貢献した"グイド・アルベルト・デッラ・ゲラルデスカ侯爵"から取っています 。

Q.グイダルベルトとサッシカイアの具体的な相違点は?
A.サッシカイアは、カベルネ・ソーヴィニヨン85%とカベルネ・フラン15%のブレンドですが、グイダルベルトは、メルロ45%、カベルネ・ソーヴィニヨン45%、サンジョヴェーゼ10%のブレンドで、メルロが入っています。
当初、メルロの比率は30%でしたが、現在は45%です。サンジョヴェーゼは、イタリアらしいスタイルを与えるために加えています。
どちらのワインも同じ栽培&醸造チームで手がけています。

Q.栽培方法や醸造方法は全く同じですか?
A.栽培に関しては全く同じように手をかけています。よって、サッシカイア用のカベルネのブドウが、その年の出来によっては、グイダルベルトに回されることもあります。

一方、醸造では、樽の使い方が違います。サッシカイアの熟成はフレンチオーク樽のみですが、グイダルベルトにはフレンチオークとアメリカンオーク樽の両方を使います。アメリカンオークは樽のニュアンスがダイレクトに出るため、樽熟成24ヶ月のサッシカイアよりも短い樽熟成期間(12ヶ月)のグイダルベルトのバランスがうまく取れるよう、メルロだけに使います。

Q.あなたは世界各国でのワインづくりの経験がありますが、その土地を意識したワインメーキングをしているのですか?
A.私は国によって自分のスタイルを変えることはありません。ワインメーカーがどういうワインをつくりたいか?ということが、まず最優先すべき点です。
例えば、カベルネ・ソーヴィニヨンのワインは世界中にありますが、たとえ1km先の畑であっても、その土地の個性がワインに現れます。
ボルゲリでボルドーのようなカベルネのワインにしたいと思っても、同じワインにはなってくれません。私が土地に合わせるのではなく、ワインが自然にその土地の個性を引き出してくれます。

Q.では、あなたのスタイルとは?
A.私は、つまり、テヌータ・サン・グイードでは、パワフルさではなく、ボルドーのようなエレガントさを求めています。過剰な凝縮は行わず、樽の香りを前面に出すことも嫌います。フィルターもかけず、自然のままの、飲んで心地よいワインを目指しています。 また、他の生産者では、悪い年にはワインを生産しないことがありますが、
我々は、1968年以来、毎年サッシカイアをつくり続けています。畑で密度が高い仕事をすれば、きちんとしたワインができると信じているからです。そのため、収穫は全て手摘みで行い、選別もテーブルで厳しく行っています。
その結果、難しいといわれた年(92年、96年、02年など)でも良い評価を得ています。92年などは確かにリリース当初はかなり批判を受けましたが、今はきれいに熟成しておいしいワインになっています。

Q.他のブドウ品種でワインをつくる予定はありますか?
A.10年ほど前、南の方の品種を試してみたことがありますが、よく成熟せず、アルコール度数も低く、グリーンな香りのするブドウしか得られませんでした。
我々はボルゲリでNo.1のワインをつくりたいと思っているので、この土地に合ったブドウで勝負していきたいと思います。ここではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロがベストで、パフォーマンスの良いブドウが得られます。

Q.現在、興味を持っていることは?
A.オーク樽の研究です。現在は、セガン・モロー製などのフレンチオークを使っています。フレンチオークはどこでも使われて需要が多いのに、2001年の寒波でフランスの森林に被害が及び、供給の方が危うくなってきています。そこで、フランス産だけでなく、のスラボニアオーク樽なども試験的に使用しています。また、スクリューキャップにも興味を持っています。

 
<テイスティングしたワイン>

Guidalberto


2002
色がやや薄めで、口当たりはなめらか。果実の凝縮感ある甘さが押し寄せてくる感じもありますが、スムーズでバランスが良く、飲みやすいワインです。
「2002年は悪い年と言われていますが、ボルゲリはトスカーナの他の地域に比べると良好でした。収穫は遅く、10月中旬です。このワインはもうすでに開いているので、今飲むにはちょうどいいでしょう。レストランにもお勧め。クリーンなタイプのワインで、樽はほのかな感じです(新樽20%)。ブラックベリー、カシス、ラズベリーの感じがあり、バランスが良く、フィニッシュも長め」(ローザさん)

2003
色が濃く、深く、黒っぽい外観で、アタックもたっぷりとふくよか。ボリュームがありますが、酸も非常に豊かで、タンニン量も充分です。
「この年のヨーロッパはこの150年で最も暑い夏で、メルロはいつもより1ヶ月早い8/15に収穫を開始しました。暑さに苦しんだワイナリーも多く、トスカーナではブドウが過熟してしまいましたが、ボルゲリは地中海性気候なので、悪くはありませんでした。色は自然に濃くなりました。香りは閉じていますが、キメが整い、奥深さ、複雑さがあります。ポテンシャルが大きく、熟成の可能性を秘めた長熟タイプのワインです」(ローザさん)

2004(Barrel Sample)
まだ紫のニュアンスが残る黒い深い色をしています。まろやかで、果実のボリュームにあふれたアタックがあり、余韻も長く、ツルツルととてもなめらかなのに、キュキュッと引き締まった感じもあります。
「この年は天候も畑の出来も良く、全ての条件が整い、非常にお気に入りの年です。というのも、実は私が結婚した年でもあるからで、気合を入れてつくりました(笑)。これはいくつかの樽からブレンドしたバレルサンプルですが、香りの中にすでに複雑性が出ています。メルロの特徴もよく出ていますね。さまざまなベリーの香りがあり、なめし皮の香りもあります。父とディスカッションしたときに、2004年はサッシカイアよりこっちの方がいいかも?という話まで出ました。年明けのボトリング(2006年1~2月頃)が待ち遠しいです」(ローザさん)


Sassicaia


2003(Barrel Sample)
同じ年のグイダルベルトよりもさらに黒味が深い外観。酸のしっかりとした厚みと、凝縮した果実の甘さを強く感じ、タンニンはすでになめらか。
「モンタルチーノでは40℃を超える日が1ヶ月も続きましたが、ボルゲリは海の影響で、32~34℃くらいに止まりました。サッシカイアのブドウ樹は古いものが多く、根が非常に深く張っているため、猛暑の影響は樹に及びません。2003年はクラシカルなタイプではありませんが、凝縮感があり、ここ10年くらいで1番良い年だと思っているくらいです」(ローザさん)

2002色はやや薄め。香りは最初控えめですが、だんだんと甘い香りが出てきます。酸はきっちりとあるものの、全体のボリュームはやや抑え気味。
「この年から、長い熟成に向かないカベルネのロットを、グイダルベルトに混ぜ始めました。若いうちに楽しむグイダルベルトにとって良いことであり、サッシカイアをより良くするためでもあります。2002年のサッシカイアはすでに香りが開いていて、熟成感もあります。他の年に比べると、ややふくよかさに欠けるところがありますが、酸のレベルが高く、良い質のタンニンがあり、フェノール類も出ています。さらに3~4年すると、もっと良くなるでしょう」(ローザさん)

2001
色はかなり黒っぽく、アタックは強めながらも、口当たりはなめらか。タンニンの性格はクラシカルで、酸もエレガントなワインです。
「とてもクラシックなスタイルの年です。だんだん香りが開きつつあります。樽とフルーツの香りのバランスが良く、気品、複雑性があります。サッシカイアの特徴であるミネラル感、なめらかな舌触り、調和した複雑さがよく出ていて、熟成の可能性も充分秘めています」(ローザさん)

1997
酸とタンニンがしっかりとし、まだまだ若さを感じさせますが、スムーズで、フィネスさえも感じさせる素晴らしいワインです。
「1997年はトスカーナの偉大な年で、もちろんボルゲリも最高です!」(ローザさん)



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インタビューを終えて

超一流のワイナリーのオーナーを父にして育つという恵まれた環境にありながらも、世界各地で長年の修行を積み重ねてきた強い意志。確実に実績を積み重ねてきた堅実さと創造力。ワインメーカーとしての立場だけでなく、経営全体のことも見据えることのできる能力と判断力。ローザさんには、そうしたものがしっかりと備わっていることを実感しました。

かなり期待できます、サッシカイアのプリンス!

ローザさんがサン・グイードに戻ってきたのと時を同じくしてリリースされたグイダルベルトも、これからもますます進化していきそうな勢いです。
さらに、他の土地への進出プロジェクトもあるようですから、ローザさんの動向には目が離せそうにありません。


(取材協力:株式会社スマイル)

(サッシカイアのホームページ) http://www.sassicaia.com




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第19回 Chateau La Fresnaye@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:25:58 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年2月11日)

第19回  Philippe Baudin  <Chateau La Fresnaye>

仏ロワールのシャトー・ラ・フレネのオーナーでありながら、現役の旅客機パイロットでもあるというフィリップ・ボダンさんが、奥様のロールさんを連れて来日しました。
今回も面白い話が聞けそうです。



<Philippe Baudin>1966年、アンジェに生まれる。
アンジェの大学を卒業後、エール・フランスへ。
旅客機のパイロット(キャプテン)歴は15年。現在もキャプテンとして活躍中。
1999年にシャトー・ラ・フレネを取得後は、奥様のロールさんと3人のお子さんとともに、シャトーでの生活をエンジョイする毎日。


パイロットがビオディナミに挑戦 !

"フランスの庭園"と呼ばれる、美しいロワール地方。その中でも、"花と芸術の都"と讃えられるのがアンジェ市(Angers)です。
フィリップさんの『シャトー・ラ・フレネ』は、アンジェ市の中心から南西約20kmのサン・トーバン・ド・リュイニュに位置しています。
ラ・フレネでは、サン・トーバン・ド・リュイニュや、ラブレ・スール・ラヨン・レシャリエの地から「AOCアンジュー・ブラン」や「AOCアンジュー・ルージュ」などを、また、トゥワスの地から「AOCボンヌゾー」などを生産しています。

『シャトー・ラ・フレネ』のワインづくりの歴史は、17世紀の半ばまで遡ります。ワインはヨーロッパ各国に輸出され、その栄光は1960年代まで続きました。しかし、火災を機にシャトーが売却に出されると(1974年)、300年以上続いたワインづくりの伝統の灯は消えてしまったのです。



それを救ったのが、フィリップさんでした。彼は1999年にシャトーを取得し、ラ・フレネのワインづくりを復活させました。
しかし、彼のつくるワインには、かつてのラ・フレネと大きく違う点がありました。それは、"ビオディナミ"(*1)を採用したことです。



Q.まず、フィリップさんが現役パイロットということにびっくりしましたが、パイロットをしながら、なぜ、ワインづくりの道に進もうと思ったのですか?
A.私は元々ワインづくりに興味を持っていました。いい土地があれば買いたいと思っていたところ、テロワール、土壌の質ともに良い土地を見つけたからです。

Q.それまで、ワインづくりの経験はありましたか?
A.1995年から99年までの4年間、他のワイナリーにスタージュ(研修)に行き、ワインづくりを学びました。

Q.パイロットの勤務は過酷だと思うのですが、どのようにしてシャトーの仕事と両立させているのですか?
A.パイロットとして月に15~17日の勤務がありますが、勤務以外の日にシャトーの仕事をします。ここはパリの空港から3時間かかり、通うのは大変ですけれど、好きなことですから苦になりませんよ(笑)。
また、醸造に関してはジュリアン、畑に関してはブノワという、2人の頼もしい現場責任者がいますので、私が不在でも安心して対処ができる体制になっています。

Q.ロワールの土地を選んだのはなぜですか?他の土地は気になりませんでしたか?
A.まず、私がロワールのアンジェ出身で、地元に愛着があることも理由のひとつですが、ここで素晴らしい畑を見つけたことが最大の理由です。
特にシュナン・ブランにとって最適な砂地の畑があり、とても素晴らしいテロワールだと確信したからです。

Q.ラ・フレネではビオディナミを採用しているということですが?
A.ワインのポテンシャルをアップさせたいと思い、甘口ワインの畑2haを、まずオーガニックから始めました。現在は4~5haの畑がビオディナミになりました。

Q.ロワールはビオディナミの生産者が多い土地ですが、参考にしている人はいますか?
A.確かに、ビオディナミではニコラ・ジョリー氏<が第一人者(*2)でしょう。彼は世界中を飛び回っています。
現在、ビオディナミ生産者にはいくつかのグループがありますが、私は敢えてどこにも属さず、いいと思う人とは積極的に交流を持っています。

私が素晴らしいと思っているのはマーク・アンジェリ氏(*3)で、彼とはもちろん親交があり、また、オリヴィエ・クザン氏(*4)とも深い交流があります。畑を耕すときは、オリヴィエさんの馬を借りたりする仲です。
(下記の写真はオリヴィエさんと愛馬)



Q.あなたのワインについて教えてください。
A.白はシュナン・ブランで、辛口の"アンジュー・ブラン"と甘口の"ボンヌゾー"のワインが、赤はカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランからのワインがあります。
ラ・フレネのワインは、"畑で全てがつくられる"、と考えています。純粋で良いブドウが得られれば、セラーでは何もすることはありません。特に手をかけなくても、ただ待つだけで素晴らしいワインになってくれます。

Q.ボンヌゾーは毎年生産できるのですか?
A.ボンヌゾーの極甘口ワインは、その年の天候に大きく左右されるため、毎年できるとは限りません。収穫は通常、10月下旬から11月にかけて行いますが、1999年は11月中旬に行いました。2005年は非常に難しく、5リットルほどがやっとでしょう。

Q.国内消費と輸出の割合は?
A.80%が海外輸出です。輸出先はイギリスやドイツ、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、アイルランド、イタリアなどで、アジアでは、日本のほか、台湾にも輸出しています。アメリカへは、もう少し先になりますが、輸出する予定です。
フランス国内では、星付きのレストランやワイン専門店などに卸しています。

Q.これからの夢は?
A.まず、ビオディナミをきっちり究めていきたいですね。畑は、トラクターなどの機械を使わないでも管理できるようにしていきたいと思っています。

また、究極の白ワインをつくりたいと思っています。ボンヌゾーは甘口タイプと決められていますが、ボンヌゾーの畑から"辛口"のプレステージワインをつくるのが夢です。もちろん、それはボンヌゾーとは名乗れず、単なる"アンジュー・ブラン"になってしまうのですが、素晴らしいワインになりそうじゃありませんか?(笑)


(*1)ビオディナミ:英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。

(*2)ニコラ・ジョリー氏:サヴニエールにある"ラ・クーレ・ド・セラン"のオーナーで、ビオディナミの伝道師とも言われる人物。1980年からビオディナミを開始。

(*3)マーク・アンジェリ氏:アンジュにある"フェルム・ド・ラ・サンソニエール"のオーナー。1990年からビオディナミを開始。

(*4)オリヴィエ・クザン氏:マルティニェ・ブリアンにある"ドメーヌ・オリヴィエ・クザン・ルデュック"のオーナー。1996年に有機栽培開始、2002年からビオディナミ開始。




<テイスティングしたワイン>

Anjou Blanc L'Echalier 2002
口当たりはトロリとなめらか。辛口タイプなのにしっかりと熟した豊かな果実味を感じ、非常に厚みがあり、飲みごたえがあります。
「よく熟した果実だけを使っています。プレスは軽く行い、ピュアなテイストを大切にしています」(フィリップさん) 。



※なお、レシャリエの04ヴィンテージは、2006年2月6~8日にアンジュで開催された「第20回サロン・デ・ヴァン・デ・ロワール」のコンクールで、見事銀賞(Ligers D'Argent 06)を受賞しました!おめでとうございます!


Anjou Rouge Festina Lente 2002
フィリップさんは「フルボディでパワフル!若いときは、デカンタージュして飲んでいただきたいです」と言いますが、私には、凝縮感はあるのに、果実味とタンニンのキャラクターが非常にエレガントに感じ、やさしい口当たりで、ピュアでナチュラルな味わいがしました。
2002年は80%がカベルネ・ソーヴィニヨンで、20%がカベルネ・フランですが、年によって比率が変わります。2003年はカベルネ・ソーヴィニヨン100%。




Bonnezeaux cuvee L 2003
甘さが凝縮し、ひと口飲むだけでシアワセな気分になれてしまう甘口ワインですが、残念ながら、このボンヌゾーは日本未入荷。生産量の少なさを考えると仕方ありませんが・・・。



フィリップさんのおすすめマリアージュ

白ワインは刺身(イカやホタテ)、お寿司にもいいですね。
フランスではヌーヴェル・キュイジーヌの料理、スパイスを使った白身の魚料理、ホタテ貝料理などが合うかと思います。
肉でも白身のものならOKですし、山羊のチーズ(シェーブルチーズ)、パスタなどにも合わせてみてください。

赤ワインはジビエ類(ウサギ、鹿、イノシシetc…)に最適で、ブフ・ブルギニヨン(牛のブルゴーニュ風煮込み)などとも美味しくいただけますよ。



ダブル”フィリップ・ボダン”?

シャトー・ラ・フレネには、もう一人のオーナーがいます。 そのオーナーの名前も、なんと"フィリップ・ボダン"! このフィリップさんの方は金融業に携わっていて、日本に住み、奥様も日本人です。
2人の名刺は全く同じで、見分けるポイントはメールアドレスのみ。実に紛らわしいのですが・・・。

今回インタビューをしたパイロットの方のフィリップさんに、「2人をどう呼び分けたらいいの?」と尋ねたところ、「僕が"本物のフィリップ"(real Philippe)だよ」と答えてくれました(笑)。

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インタビューを終えて


個人的に好きなワインは?と聞くと、 「実はブルゴーニュの赤ワインが好きなんです」と笑うフィリップさん。 特に"ルロワ"のワインが好きで、ルロワのマダム、ラルー・ビーズ・ルロワさんの名を取って、娘さんに"ラルー"と付けたという筋金入りのルロワファン!

「でも、基本的には、やっぱりロワールのワインが好きですね。バランスが良く、ファインなワインで、ピュアなスタイルをしていますからね」と語るフィリップさん。
シュナン・ブランのワインは、まさしくそれにドンピシャということですが、リースリングのワインも、同様の理由から、非常にお気に入りとのこと。

ワインづくりには、このところ話題となっている"ビオディナミ"を採用していますが、「ワインのポテンシャルを高めるため」と、フィリップさんは、自分なりの理論をしっかりと持っています。

手法が目的になりがちなビオディナミですが、飲む側の私たちも、それにあまり囚われることなく、まずは素直にワインと向き合いたいものですね。

(取材協力: 有限会社イシス) http://www.isiswine.com


奥様のロールさんと

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第18回 Brokenwood@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:20:59 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年1月11日)

第18回  Iain Riggs  <Brokenwood>

オーストラリアのワイン生産地、南オーストラリア州(SA)のハンター・ヴァレーにあるワイナリー『ブロークンウッド』
今回のゲストのイアン・リッグスさんは、ブロークンウッドのオーナーの一人で、かつチーフ・ワインメーカーも務めています。



<Iain Riggs>
1955年、南オーストラリア州のBurra出まれ。 ローズワーシー大学卒業。
マクラレーン・ヴェールのBleasdaleワイナリー、Hazelmereワイナリーを経て、1982年にブロークンウッドに着任。
現在、ブロークンウッドのマネージング・ディレクター兼チーフ・ワインメーカーで、オーナーの一人 。
また、ハンター・ヴァレー・ワインショーの議長やその他のアワードの審査員なども務めている。


白ワインのスペシャリストからシラーズのスペシャリストへ

イアンさんが入る前まで、ブロークンウッドは、オーナーが趣味で片手間にやっているような、ちっぽけなワイナリーで、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズの赤ワインのみを生産していました。

ところが、「白ワインもつくってみたい」というオーナーの願いから、白ワインづくりで名を馳せていたイアンさんに白羽の矢が当たり、1982年、イアンさんはブロークンウッドのチーフ・ワインメーカーとして着任。
そしてこの年、ちょうど新しいワイナリーも完成し、イアンさんを中心とする"新ブロークンウッド"がスタートすることに。

イアンさんの活躍の成果はすぐに現れ、翌1983年の生産は、赤ワインが30%、白ワインが70%と、いきなり白ワイン優勢のワイナリーへと転換しました。
現在も白ワインは、セミヨン、シャルドネ、ピノ・グリ、ヴィオニエ、リースリングと、幅広く生産しています。

ですが、現在のブロークンウッドを有名にしているのは、実は赤ワインのシラーズ
イアンさんはシラーズのスペシャリストでもあるのです。





Q.セミヨンは、ボルドーではソーヴィニヨン・ブランとブレンドした辛口に、また、ソーテルヌでは甘口ワインに使われていますが、ブロークンウッドのセミヨンのスタイルは?
A.我々のセミヨンは辛口スタイルで、ボディはあくまでもライトに仕上げています。フレッシュなシトラスと花の香りがあり、酸が生き生きとし、味わいもフレッシュで、アルコール度数も低めです(10.5%)。

ハンター・ヴァレーは高温多湿の地として知られています。つまり、ブドウにとってはあまり良い条件ではないんです。そこで、なるべく早めに収穫をするようにして、フレッシュさが損なわれないようにしています。

Q.ブロークンウッドのリースリングのスタイルは?
A.オーストラリアで辛口のリースリングを生産しているワイナリーは、非常に多くありますが、当社では、リースリングは甘口タイプのみを生産しています。
マクラレーン・ヴェールのジェルカ・ヴィンヤードという単一畑のもので、収穫は6月に行ないます。2004年は貴腐菌が少し付き、大変良いものができました。

Q.イアンさんはシラーズのスペシャリストということですが、ブロークンウッドのシラーズには、どのようなものがありますか?
A.当社を代表する、つまりフラグシップとなるワインは、"Graveyard Vinyard"(グレーヴヤード・ヴィンヤード)です。
畑はニューサウスウェールズ(NSW)のハンター・ヴァレーにあります。グレーヴヤードの樹齢の若いブドウ"Baby Graveyard"からのワインも少しつくっています。

ハンター・ヴァレーでは他に、単一畑"Mistress Block"と、"Hunter Valley Shiraz"があり、SAのマクラレーン・ヴェールでは、単一畑"Rayner "Graveyard Vinyard""Wade Vinyard Block2 Vinyard"があります。

他に、マクラレーン・ヴェールとパサウェイのブドウをブレンドした"Brokenwood Shiraz(McLaren Vale/Padthaway)"があり、広い範囲の土地でシラーズをつくっています。

Q.フラグシップワインについて詳しく教えて下さい。
A.先ほどお話した"Graveyard Vineyard Shiraz"が、当社のフラグシップワインです。
ブロークンウッドが設立された1970年、ハンター・ヴァレーのグレーヴヤード・ヴィンヤードにシラーズを植えました。
重たい粘土質土壌のため、自然と収穫量も低く抑えられてしまう畑ですが、そのおかげで、凝縮感のあるブドウが得られます。
現在は、グレーヴヤードにはシラーズの他にシャルドネも植え、単一畑の"Graveyard Vineyard Chardonnay"としてリリースしています。

Q.マクラレーン・ヴェール(SA)とハンター・ヴァレー(NSW)のシラーズの違いは?
A.マクラレーン・ヴェールのシラーズの特徴は、果実味の甘さにあります。そのため、樽はアメリカンオークを使い、果実味を生かすようにしています。
ハンター・ヴァレーの方は、マクラレーン・ヴェールよりも果実味が抑えられたキャラクターですので、熟成樽はアメリカンオークとフレンチオークの両方を使っています。

Q.ブロークンウッドのワインには全てスクリューキャップが採用されているようですが?
A.はい、高級レンジのワインも含め、全てスクリューキャップを採用しています。というのも、ワインをベストな状態で飲んでいただくには、スクリューキャップこそ最適な栓である、ということを確信しているからです。コルクによるダメージを受けることはありませんし、新鮮さを保てますから。




<テイスティングしたワイン>

Brokenwood Semillon 2005
グリーンがかった透明ボトルに入れられ、見るからに爽やか!口にすると、とてもフレッシュ。最初は刺激的だった酸が、飲んでいるうちに落ち着き、骨格のある酸に変化します。
「2005年はとても強い年で、フルーツのニュアンスがよく出ています。料理を合わせるのなら、オイスター(牡蠣)がピッタリ。ワインがフレッシュなので、フレッシュな味わいの料理や食材に最適ですよ」とイアンさん。アルコール度数10.5%。

Brokenwood Shiraz (McLaren Vale / Padthaway) 2001
香りはおとなしめで、味わいもピュアできれいなタイプのシラーズ。ソフトで甘い口当たりですが、よく凝縮されています。
「2001年はとても良い果実ができました。収穫も多かった年でしたが、10年は持つワインに仕上がっています」(イアンさん)。アルコール度数は13.5%。

Brokenwood Hunter Valley Shiraz 2003
樹齢10年。涼しげな香りで、まだ少々タンニンが若く、暴れている感じがありますが、もう少し落ち着くと、ちょうどいい飲み頃になるでしょう。アルコール度数は13.0%。
「2003年はとても暑い年でした。このワインは、フレンチとアメリカンオークを50%ずつ使って熟成させています。ラム肉やロブスター料理に合わせてみてください」(イアンさん)。

Brokenwood Wade Block 2 Vineyard Shiraz 2003
とても深い色合いで、甘さと凝縮感があります。アルコール度数は14.5%と高め。
「よりリッチで、ダークチョコやチェリーリキュールのニュアンスが感じられます。アルコール度数が高いのに、アメリカンオークを使っているため(19ヶ月)にそれが和らげられ、あまりアルコールを感じないと思います。料理はオーソ・ブッコ(牛スネ肉の煮込み)などがオススメ」(イアンさん)。

Brokenwood Graveyard Vineyard Shiraz 2003
ブロークンウッドのフラグシップワイン。スパイシーで、レッドチェリーのニュアンスがあり、酸も非常に豊かで、優美さも漂います。アルコール度数は13.5%。「このグレーヴヤードのシラーズは、デカンター誌で金賞を受賞するなど、国際的に非常に高い評価をいただいています。嬉しいですね」(イアンさん)。

Brokenwood Jelka Riesling (botrytis affected) 2004
マクラレーン・ヴェールのジェルカ・ヴィンヤードから生まれた、甘口のリースリング。深いハチミツ色で、アプリコットのような甘い香りがあります。口当たりはなめらかで、ふっくらとした甘さもたっぷりなのに、酸のボリュームあるので、バランスもグッド。食事の最後にこういうワインを口にすると、ほっとします。アルコール度数は10.5%。
「この年は少し貴腐が付きました。チーズなどをつまみながら飲んでください。デザートのタルトタタン(リンゴの焼き菓子)にも合いますよ」(イアンさん)。



スクリューキャップ

今回テイスティングしたワインは、全てスクリューキャップが採用されていました。このところ、オーストラリアやニュージーランドなどを中心に、スクリューキャップを選択する生産者が多くなってきました。
中には、"流行"だからと、ただ真似ているだけのところもあるかもしれませんが、ブロークンウッドでは、きちんとした理念のもと、高級レンジを含めた全てのワインにスクリューキャップを採用しています。
ブロークンウッドのワインに共通して感じるエレガントできれいなスタイルは、スクリューキャップだからこそ、よりそれが具現されているのかもしれません。

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インタビューを終えて

白ワインのスペシャリストとしてブロークンウッドに着任したはずなのに、いつのまにか、シラーズでも大々的な評判を得てしまったイアンさん。

たしかに、オーストラリアではシラーズの存在を無視することはできません。
ですが、単なる"オーストラリアのシラーズ"ではなく、それぞれの土地の個性を生かし、単体で、また、いくつかの土地を組み合わせたシラーズを生み出している点が、ブロークンウッドの特徴です。

しかも、「これでもか!」という強烈なスパイシーさや力強さを前面に出しているワインとは一線を画し、洗練されたエレガントさが備わっています
だから、いつまで飲んでいても飲み疲れないし、料理とのマリアージュの可能性も広げてくれるのでしょう。

ブロークンウッドのワインは、今までは日本ではほとんどお目にかかれませんでしたが、いよいよ日本に上陸することが決まりました



フラグシップのグレーヴヤードのワインは少々お値段が張りますが、オーストラリアでも指折りの品質を誇るワインを、ぜひ一度、試してみてはいかが?

*ブロークンウッドのホームページ  http://www.brokenwood.com.au/              

(取材協力: ミナト・ワイン・インポート)

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