ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第17回 Picardy@「キャッチ The 生産者」

2009-01-12 10:35:46 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年12月11日)

第17回  Bill Pannell  <Picardy>

今回は、 オーストラリアのワイナリー『ピカーディ』のオーナー、
ビル・パネルさんがお客さまです。
ビルさんは、良きパートナーであり理解者でもある奥さまのサンドラさんも一緒に連れての初来日です。



<Bill Pannell>

西オーストラリアのパース出身。
医学部の学生時代にワインに興味を持つようになり、1969年にワイナリー『モスウッド』をマーガレット・リヴァーに設立。
1985年にモスウッドを売却後、1986年にブルゴーニュの『ドメーヌ・ド・ラ・プスドール』の経営に参画。
1989年、ペンバトンに『ピカーディ』を設立。
1990年、ドメーヌ・ド・ラ・プスドールを離れ、ピカーディに専念 。


オーストラリアでピノ・ノワールとシャルドネ!

ピカーディは、西オーストラリア州(WA)のペンバトン(Pemberton)にあります。WAには、高品質ワインの生産地として知られるマーガレット・リヴァーなどがあり、特に冷涼地のワインのクオリティの高さと安定性には定評があります。

オーストラリアというと、まず思い浮かべる品種は「シラーズ」。一般的には、スパイシーで濃厚な赤ワインとして知られています。
ですが、『ピカーディ』では、赤はピノ・ノワール、白はシャルドネをメインにしています。
「まるでフランスのブルゴーニュみたいじゃない?」と思う人も多いことでしょう。
その理由を、ぜひビルさんから聞き出さねば!



Q.医者からワイナリー経営へというのは、かなり大きなチャレンジだと思いますが、そのきっかけは?
A.医学部にいた23歳の頃、大学の教授が大のワイン好きで、スワン・ヴァレーのワイナリーに連れて行ってもらう機会がありました。それをきっかけに、ワインに対して興味を持つようになり、よく飲むようになったのです。
人生を変えるまでのきっかけになったワインは、サンドラと一緒に結婚1周年の記念日に飲んだ、ペンフォールドの「グランジ 1962」です。それがたまらなく美味しく(当然でしょう!)、すっかりワインの魅力にはまってしまい、『モスウッド』を設立することになりました。

Q.『モスウッド』をマーガレット・リヴァーに設立した理由は?
A.1967年にアメリカで、「涼しい土地から良いワインができる」という研究報告書が出されたからです。そこで、WAの中でも涼しいマーガレット・リヴァーに土地を求めることに決めました。あちこちの牧場に出かけては、シャベルで土を掘り返して土壌を調べました(笑)。
ここではカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に植えたのですが、1970年代から85年にかけて、『モスウッド』のカベルネのワインは非常に有名になってくれました。

Q.『モスウッド』を売却し、フランスに渡ったのはなぜですか?
A.1980年、パースの酒屋でたまたま買ったブルゴーニュの「シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ 1966」(ブシャール ペール&フィス)との出会いがきっかけでした。このワインで、私はピノ・ノワールのとりこになってしまったのです。

なんとか自分でもピノ・ノワールのワインをつくりたい!
その思いから、1986年にブルゴーニュの『ドメーヌ・ド・ラ・プスドール』の株を購入し、フランスに渡りました。
共同経営者が7人いましたが、私以外の6人は投資が目的です。私一人だけ畑に出て、ブドウを育て、醸造に携わっていました。

Q.ブルゴーニュではどのような成果が得られましたか?
A.1970年代半ばから80年代半ばにかけて、ブルゴーニュではクローンの研究が進められていました。こうしたクローンの情報を得ることができましたし、もちろん他の技術的な情報も含め、ブルゴーニュのことをかなり知ることができたことは、非常に大きな収穫でした。

Q.その後、オーストラリアに戻ることになったのはなぜですか?
A. 実は、プスドールの経営は、あまり利益が出なかったのです。 そこで、故郷のWAで土地を探すことにしました。
マーガレット・リヴァーよりも南で標高が低い土地を探していたら、ペンバトンに行き着きました。ここは石がゴロゴロとして、水はけも良好だったので、1989年に『ピカーディ』を設立しました。
この時はまだプスドールの株を持っていて、すべてを売却したのは1990年です 。

Q.『ピカーディ』の設立で苦労したことは?
A.ブドウの苗(ブルゴーニュ・クローン)をブルゴーニュから持って来るのに、非常に時間がかかったことです。

外国から植物を持ち込むには"検疫"を通す必要があります。ヴィクトリア州の検疫はスムーズに行きましたが、WAの検疫が難航し、トータルで5年もの年月を要しました。このときの3本の苗は、今では3000本に増えました。

また、畑もワイナリーもすべて私たち家族の手作りです
元々牧草地で石が多く、土地の持ち主から、「本当にこんなところでいいのか?」とまで言われたほどです(笑)。そのため、自分で石をどかして畑を整え、苗木を植え、ワイナリーまで完成させるのに、12年もかかりました。(本当にご苦労さまです!)



Q.ペンバトンはどのような土地ですか?
A.1時間に50mlの雨が降ることもありますが、すぐに地面に吸収されてしまうほど水はけのいい土地です。地表50~100cmのところに、大きさがさまざまな砂利の層があり、その下は粘土質です。この粘土質土壌は砂利も含むので、ブドウの根がどんどん下に入っていきます。
モスウッドも、気候は違いますが、土壌はよく似ていました。 土壌に砂利があるということは、非常に重要なポイントです。栄養過多を抑える効果がありますし、昼間に暖められた石は、夜になると熱を放出し、熱のコントロールを行います。

Q.ブルゴーニュ・クローンのブドウ樹を選択し、ピノ・ノワールとシャルドネを中心としたワインづくりは、ブルゴーニュの模倣に見られがちでは?
A.ブルゴーニュには、ワインづくりでの長い歴史があるので、つくり方や考え方においては見習うべき先生だと思っています。
しかし、私はペンバトンならではのピノ・ノワールを目指しています。
ここはブルゴーニュほど強い大陸性気候ではありませんし、土壌はブルゴーニュほど石灰質が多くありません。この土地独特の気候があり、土壌があります。ブルゴーニュのピノ・ノワールはタイトで、開くのに時間がかかりますが、ペンバトンのものは若いうちから果実味があり、やわらかいワインになります。

Q.ほかのオーストラリアのピノ・ノワールと『ピカーディ』のピノ・ノワールとでは、スタイルが違うようですが?
A.今まで、オーストラリアでは、色が濃くて力強く、かつ凝縮感のあるピノ・ノワールしか受け入れられませんでした。
しかし、あるワイン評論家は「ピノ・ノワールは、グラスの上からグラスの底が見えるくらいがいい」と言っています。 私がピノ・ノワールに求めるのもそれで、味わいには、チェリーの種の周りの部分やレッド・カラントの赤い実の感じがあり、フィネスやエレガントさが備わっています。過剰なまでに色素分やエクストラクト分を抽出した力強いピノ・ノワールは、私の理想ではありません。

Q.あなたのワインづくりのコンセプトは?
A.質にこだわり、とにかく最高のものを、と思っています。
良いワインは畑でできます。そのためには良いブドウをつくることが大事です。

私は、ベストなクローンを選ぶこと、すべてに手をかけること(樹の仕立て、芽かき、摘房など)を心がけています。
畑は100%自社畑で、オーストラリアでは珍しいことですが、灌漑もしていません。 その土地に最適な品種を選び、樹は密植し、適度なストレスを与えます。殺虫剤は使いたくないので、ホロホロ鳥を放し飼いにしたり、てんとう虫を放したりして病虫を駆除しています。

ブドウは十分に熟成するまで待ってから収穫を行い、収穫後は30分以内にワイナリーに運び込むようにしています。
ブルゴーニュにも定期的に行って研究しています。醸造設備にはきちんとお金をかけ、最新のもの、しかし自分たちに合ったものを導入しています。例えば、オーストラリア産の樽では納得できないので、自分で探した、フランスの小さなメーカーのものを取り寄せています。この樽がブドウにエレガントな風味を与えてくれるのです。

Q.これからの夢は?
A.もっと畑を広げたいですね。また、今はワイナリーに来てくれた人にテイスティングしていただける場所(=セラー・ドア)がないので、セラー・ドアもぜひ作りたいですね。


<テイスティングしたワイン>



Picardy Chardonnay
フレンチオークで約10ヶ月熟成。エレガントなスタイルのシャルドネ。すぐにも楽しめ、食事とも合わせやすく、また、熟成にも耐えるストラクチャーもあります。 口当たりはまろやかで、年を重ねるたびに複雑さが出てくるのも特徴。

Picardy Pinot Noir
フレンチオークで約12ヶ月熟成。若い時は、みずみずしいピュアな果実味が心地よく、素直においしいと感じますが、熟成が進むにつれ、ピノ・ノワール独特の、まったりとした熟成感が出てきます。




Pinot Noir Tete de Cuvee
Pinot Noirには、特別なキュヴェ"Tete de Cuvee(テト・ド・キュヴェ)"があります。通常は、瓶詰めの前にワインをテイスティングし、これ!と決めてピックアップした樽をスペシャルなキュヴェとすることが多いのですが、ピカーディでは、畑の段階から決めているそうです。
また、Tete de Cuveeだけ毎年つくり方を変えている点もユニークです。
ブルゴーニュのグラン・クリュと並べてもひけを取らないほどのエレガントさと凝縮感が魅力で、ぜひ一度経験してみることをお勧めしたいワインです。


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インタビューを終えて


ちっぽけな日本列島でも、北海道と沖縄の気候で大きな差があるのですから、広大なオーストラリアでは、もちろんさまざまな気候があります。涼しい土地では、ピノ・ノワールやシャルドネからのワインが次々に誕生しています。
とはいえ、濃厚な色調と味わいを持った赤ワインのイメージが強烈なため、すべてのオーストラリアワインがこんな感じなんだと思われがちなのも確かです。

そういう意味では、ピカーディのワインから、オーストラリアワインの多様性や可能性を再認識することができます。 ピノ・ノワールに目覚め、追究してきたビルさんの苦労と功績に感謝です。



ですが、それも、奥さんであるサンドラさんの内助の功の賜物。このことは、ビルさんもしっかり認識しているようです。
現在は、息子さんや娘さんたちもワイナリーを手伝い、家族一丸となってワインづくりをしています。

ピカーディのワインには、 「夫婦愛」と「家族愛」 がいっぱい詰まっています。


*ピカーディのホームページ  http://www.picardy.com.au
            

(取材協力:ヴィレッジ・セラーズ株式会社)

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第16回 Champagne Pannier@「キャッチ The 生産者」

2009-01-12 10:28:28 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年11月11日)

第16回  Terence Kenny  <Champagne Pannier>

今回のゲストは、シャンパーニュのヴァレ・ド・ラ・マルヌにあるシャンパーニュメーカー、メゾン・パニエの輸出部長を務めるトゥランス・ケニーさんです。



<Terence Kenny>
スペイン、ニューヨーク、ブルゴーニュetc…を転々とし、フランス観光局にも勤務。
30歳の時には、ミシュランの星付きレストランを全て制覇。このレストラン巡りでワインに開眼。
その後、1990年にメゾン・パニエに入社。 現在は同社の輸出部長を務める。


ミステリアスな パニエの地下回廊カーヴ

ヴァレ・ド・ラ・マルヌは、シャンパーニュ地方の中心にあるエペルネから西に広がる生産地です。このヴァレ・ド・ラ・マルヌのぶどう畑の中心の地下には、12世紀に騎士ユーグ・ランベール公(通称ティエリー)が掘ったという2kmにおよぶ回廊があり、そのため、この町は"シャトー・ティエリー"(Chateau Thierry)と呼ばれています。

実は、このミステリアスな回廊をシャンパーニュ熟成のための地下カーヴとして使っているのが、メゾン・パニエです。1930年代に回廊はカーヴに生まれ変わりました。

メゾン・パニエは、1899年にエペルネの郊外ディジィに設立され、その後1937年にシャトー・ティエリーに移転しました。
元々は創設者のパニエ家がメゾンを所有していましたが、現在は1974年に買収した共同栽培者グループ(SCVM)が運営に当たっています。グループは350人の組合員で構成されています。



Q.パニエのシャンパーニュの特徴は?
A.ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエという3種のぶどうのブレンドの妙にあります。もちろん、ぶどうの選別は徹底して行います。
また、熟成期間にも注意を払い、シャンパーニュの規定では、ノン・ヴィンテージなら15ヶ月のところを3年、ヴィンテージ入りなら3年のところを5年というように、長めに熟成させるようにしています。それにより、バランスが良く、優雅な味わいのシャンパーニュが生まれます。

Q.プレステージュ・シャンパーニュ"エジェリ"(Egerie)について教えて下さい。
A. "エジェリ"は当社の最高級品で、特別良い年にしかつくらないヴィンテージ・シャンパーニュです。
1985年が最初で、その後は、88、89、90、95、96、98年があります。

"エジェリ"という名前は、ローマ神話の女神"エジェリア"から取っています。王が霊感が欲しい時にエジェリアに助けを求め、彼女のおかげで繁栄を続けることができたと言われています。表立ったことはしないけれど、良いアドバイスを与える女性の代名詞で、女性にとって"エジェリ"と言われることは、最大の賞賛の言葉でしょう。私のイメージでは、故ジョン・レノンの奥さんのオノ・ヨーコさんかな?

といったことから、複雑で、まじめで、霊感を与えるようなシャンパーニュにしたいということで、"エジェリ"と名づけました。

Q."エジェリ"のブレンド比率は決まっていますか?
A.年によって変わります。毎年1~2月にテイスティングし、2月にブレンド(アッサンブラージュ)を行います。
なお、ドザージュ(*1)の際のリキュールの量は、デゴルジュマン(オリ抜き)の時に決めます。よって、同じヴィンテージのものでも、デゴルジュマンの時期が違うボトルはドザージュの量も違います。

Q.パニエでは、ヴァン・ド・レゼルヴ(*2)の管理はどのようにしていますか?
A.ヴァン・ド・レゼルヴとして25%取っておきます。ステンレスタンクで保存し、3年前のものをドザージュの時に使います。これはノン・ヴィンテージ用で、ヴィンテージ入りのシャンパーニュには、マグナムボトルにして取っておいた同じ年のものを使います。
ヴァン・ド・レゼルヴとして取っておくことは、非常にお金のかかることですので、小さな生産者ではストックできないこともあります。

Q.国内外のシェアの比率は?
A. 65%はフランス国内で消費され、35%が輸出です。イギリスやアメリカが中心で、アジアではシンガポールなどにも輸出しています。しかし、日本のマーケットが一番成熟し、本物をわかってくれていると思っています。
いずれの場合も、いいホテルやレストラン、ワイン専門店に置くようにし、クオリティにうるさい人たちをターゲットにしています。

Q.ヴィンテージ・シャンパーニュの楽しみ方を教えて下さい。
A.ヴィンテージの入ったシャンパーニュは、軽い味わいのものではありません。もちろん、そのまま飲んでもよいのですが、ガストロノミー(美食、美味しい食事)と合わせるのはとてもいいことです。現在は、フランス料理のガストロノミーも再検討され、よいものになってきています。日本人は情熱があり、知性も高いので、料理とうまく合わせて楽しんでいただきたいですね。

(*1)ドザージュ
オリ抜きによって減ったワインを足してあげること。この時に、甘さの調整としてリキュールを加える(辛口に仕立てるため、全く加えないこともある)。

(*2)ヴァン・ド・レゼルヴ
オリ抜きで減った分の補填用ワインのこと。リザーヴ・ワインともいう。



<テイスティングしたシャンパーニュ>



Egerie de Pannier 1998
ピノ・ノワールとシャルドネが同量で、ピノ・ムニエが約10%。ドザージュの糖分量が3.5gというドライなブリュット。ケニーさん曰く「ダイエット・シャンパーニュ」。 香りが華やか!やわらかく熟成した感じがあり、飲みやすいのにコクのある味わい。


Egerie de Pannier 1990
ドザージュは7~8g。ものすごく夏が暑く、ここ最近では最良の年。酸度は十分あったが、思ったよりも熟成が早く進んでいるようです。 蜂蜜の香りがあるが、酸が熟成した感じで、後味にレモンや柑橘も感じられます。


Egerie de Pannier 1989
良年の1988年と1990年に挟まれ、忘れられた存在と言われているが、実は素晴らしい年。生産本数は3000本のみ。柑橘のニュアンスは少なく、最初からまろやかに感じるはず。 骨格がしっかりとし、かつ繊細な部分もあり、メインの料理にも合わせられます。


Egerie de Pannier 1988
ドザージュは7~8g。90年と似たニュアンスがあるが、酸は穏やか。コクのあるボディが魅力。


Egerie de Pannier Rose de Saignee
ピノ・ノワール80%とシャルドネ20%のロゼシャンパーニュ。シャルドネで軽やかさを出している。 淡いロゼ色が美しく、きりっとドライだが、ふくよかさもある。バランス良好。




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インタビューを終えて


乾杯だけではもったいない!

このところのシャンパーニュ人気は大変なものです。特に日本では、昔からロゼ・シャンパーニュの人気が高く、それは雰囲気で飲まれているような感じもあるのですが…。 たしかに、シャンパーニュによる乾杯は、優雅かつゴージャス。でも、それでおしまい、という飲み方が多いのも事実です。

ケニーさんも言うように、ガストロノミーと合わせるという楽しみもシャンパーニュにはあります。エスプリを感じるタイプや軽快なタイプ、芳醇でコクのあるタイプ、心地よい甘さのあるタイプetc…と、とても多彩なシャンパーニュだから、乾杯はもちろん、前菜、メイン、そしてデザートまで活躍してくれます。 私も以前は、「ずっとシャンパーニュで通すなんて…」と思っていましたが、ここ数年は、シャンパーニュの多様さ、懐の深さを実感し、「ずっとシャンパーニュだけでもOK」と思えるまでになりました。

これからの季節、色々なシーンでシャンパーニュが登場するかと思いますが、固定観念にとらわれず、もっと自由にシャンパーニュを楽しんでみてはいかがでしょうか?

*パニエのホームページ  http://www.champagnepannier.com/

            
(取材協力:ディス・エクスポール・ジャポン)

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第15回 Weingut Selbach-Oster@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:15:54 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年10月11日)

第15回  Johannes Selbach  <Weingut Selbach-Oster>



<Johannes Selbach>
1959年生まれの46歳。
16歳の頃、家業を継ぎたい、自然に密着した仕事をしたいと決意。
ドイツのガイゼンハイム大学で経営学を2年学んだ後、アメリカに留学し、ドイツワインに興味のある教授に師事。研究テーマは、アメリカにおけるドイツワインのマーケティングについて。
卒業後は1985~87年までニューヨークでワイン関係の会社に勤務。
1988年にドイツに帰国してワイナリーを継ぎ、現在に至る。

ヨハネス・ゼルバッハさんは、ドイツといったらこの生産地を抜きにしては語れない、モーゼル・ザール・ルーヴァーのワイナリー 『ゼルバッハ・オースター』 のオーナーです。
今回は、日本へは何度も来ている日本通のゼルバッハさんに、モーゼルワインの魅力をたっぷりと伺いました。



モーゼルといったら“リースリング”!

ドイツワインのことをよく知らないという人でも、「モーゼル」という名前は、きっと耳にしたことがあるでしょう。

「モーゼル」とは川の名前です。フランスのボージュ山中を水源とする流れは、ルクセンブルグを通ってドイツに入り、大きく蛇行しながら流れてゆき、ゴブレンツでライン河と合流します。

このモーゼル川の上流はザール川とルーヴァー川に分かれているため、これらの3つの川の流域を合わせて「モーゼル・ザール・ルーヴァー」地域と呼んでいます。

モーゼル・ザール・ルーヴァーは、リースリング種からつくられる上質な白ワインを産する生産地として有名です。

モーゼル川がドイツ国内を流れる距離は約240km。
それだけの長さがあると、上流と下流ではだいぶ様子が違ってきます。上流地域は「オーバー・モーゼル」、中流は「ミッテル・モーゼル」、下流は「ウンター・モーゼル」と呼ばれていますが、銘醸といわれる畑は「ミッテル・モーゼル」に集中しています。
もちろん、ゼルバッハさんの『ゼルバッハ・オースター』も、このミッテル・モーゼルのツェルティンゲン(Zeltingen)という地にあります。




Q.ワイナリーの歴史について教えてください。
A.ぶどう園として1661年まで遡ることができます。
伯父がワイナリーを経営しています(J&Hゼルバッハ)が、私の父はぶどう栽培農家で、ワイナリーにぶどうを提供していました。
しかし、新しいワイナリーとして伯父のところから独立し、1964年から『ゼルバッハ・オースター』としてリリースしています。
ゼルバッハ・オースターは家族経営の小さなワイナリーです。

Q.モーゼルワインの最大の特徴は?
A.軽くてフルーティーな早飲みタイプから20~30年も熟成可能なものまで、幅広く楽しめるワインだということです。
モーゼルワインの飲み頃には3段階あります。

1) 若く生き生きとしたフルーティーさを楽しむ時期(5年未満)。

2) 人間でいえば中年期で、さまざまな複雑な要素が出てくる時期。晩年に備え、ミネラルやアロマが倍増します。

3) 人間なら晩年期で、今までとは違ったアロマをかもし出し、まろやかな味わいで、舌触りもよく、何杯でも楽しめます。

Q.では、あなたのワインの特徴は?
A.私は「リースリングのスペシャリスト」だと自認しています。
モーゼルの伝統を生かしたワインづくり、つまり、軽くてフルーティなタイプから、何十年も熟成させてから楽しむタイプまで、幅広く生産しています。
また、より畑の個性を反映させるワインづくりを行っています。

畑は16haありますが、ほぼ100%がリースリングで、ゼクト(=スパークリング・ワイン)用にヴァイスブルグンダー(=ピノ・ブラン)を少々植えています。
畑はすべて南向きで(大きく蛇行するモーゼル川には、川に対して南向き斜面の畑が存在します)、土壌は青いスレート(珪酸質の粘板岩の薄板)です。
傾斜は最大で70度もあり(!)、川に近い下の場所は湿気が多く、川面に反射する光を集めますが、山の上の場所は少し冷涼になります。


非常に急な斜面の畑

Q.ツェルティンゲンでは、いつ頃収穫を行うのですか?
A.私のところは、だいたい毎年10/18頃からリースリングの収穫を始めます。
畑の上下でも収穫時期が変わりますし、上級クラスのワイン用のぶどうは、アロマやエキス分をよりぶどうの粒にしみ込ませるため、11月の初旬に集中して収穫作業を行います。 。

Q.リースリングのシュペトレーゼクラスまでは、よく食事に合わせて飲むといわれますが、その上のアウスレーゼは、どのように飲んだらいいでしょうか?
A.モーゼルのアウスレーゼは食中酒としても楽しめます。
実は150年くらい前の晩餐会のメニューを見ると、メイン料理に合わせて、シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)の赤ワインとリースリングのアウスレーゼが提供されています。アウスレーゼは、昔から食中酒としても楽しまれていたんです。

私はアンティパスト(前菜)に合わせたり、ナッツや、アロマが豊かな青カビのチーズと一緒に飲むのが好きです。それほど甘くないデザートと合わせてもいいと思います。
ほのかな甘さを持ったアウスレーゼが私の理想です。アウスレーゼは1杯で満足するワインではなく、2杯、3杯と飲みたくなるワインです。

Q.現在、輸出の割合はどのくらいですか?
A.輸出が6割で、国内消費が4割です。アメリカ、北欧、日本の順に多く輸出しています。
イギリスは重要なマーケットとしては考えていません。アメリカでは、かつては安くて甘いドイツワインが人気でしたが、最近は辛口タイプの比率が上がってきました。アジアの各国もマーケットとして大事ですが、もっとも重要なのは日本です。
繊細で素材を生かした料理が多い和食は私も大好きで、和食には白ワインが合うと思っています。ですから、今後もぜひ日本に力を入れていきたいですね。


<テイスティングしたワイン>



Zeltinger Sonnenuhr Riesling Auslese
(1983、1985、1989、1993、1995、1998、2001、2003年の垂直テイスティング)

同じワインが20年でどう変化するか?という、興味深いテイスティングです。
日常生活では、熟成期間が20年を超えるリースリングを飲む機会はなかなかありません。しかし、熟成したリースリングがこんなにも気品があり、ふくよかで、しかも酸が十分に残り、ミネラル感も感じられるものなのだということを、今回のテイスティングで実感させられました。

ヴィンテージが若くなるに従って、軽快で爽やかなフルーティー感が増してきますが、どれを取っても酸と甘さのバランスが良く、それぞれの時期ならではのおいしさを感じます。

ですが、セルバッハさんは「リースリングを飲むには忍耐が必要です」と言います。
確かに、数十年の熟成を経たリースリングの味わいは格別なものです。私たちは少し急いだ飲み方をしているかもしれません。




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インタビューを終えて

ドイツのリースリングは、アメリカで"リースリング・ルネッサンス"を巻き起こしました。地元消費が多いドイツワインが海外に輸出されるようになり、しかも"リースリング・ルネッサンス"といわれるような人気が出るようになるとは、ゼルバッハさんのお祖父さんやお父さんには信じられないことなのだとか。

「リースリングのワインは確かに糖分が多いかもしれませんが、それに負けない酸を持っています。そのため、30年は成長し続けるワインなのです。ですから、今から30年後にまた新たなリースリング・ルネッサンスが起きるかもしれませんね」とゼルバッハさんは言います。

「今まで、熟成した赤ワインに興味を持っていた人が、熟成したリースリングに興味を持つようになり、さらに、フレッシュなリースリングにも興味を持つようになってきました」。

リースリングからは、極甘口から半辛口、辛口、さらにゼクトまで、幅広いタイプのワインがつくられています。また、料理とのコンビネーションによっても、それらの味わいに変化が生まれます。そうした奥深さも、リースリングの魅力のひとつでしょう。
この日本でも、近いうちに"リースリング・ルネッサンス"が巻き起こるかもしれません。


*ゼルバッハ・オースターのホームページ  http:// www.selbach-oster.de
            
(取材協力:ドイツワイン基金)

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第14回 Bodega NQN@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:10:42 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年9月11日)

第14回  Luis Maria Focaccia  <Bodega NQN>

アルゼンチンといえば情熱的なアルゼンチンタンゴ、そしてサッカー!
今回のゲストは、その情熱溢れるアルゼンチンからやってきました。
パタゴニア地方のワイナリー"NQN"(エヌ・キュー・エヌ)のオーナー、ルイス・マリア・フォカッチアさんです。



<Luis Maria Focaccia>
パタゴニア地方ネウケン出身。
本業は弁護士。現在、弁護士の仕事とワイナリーの仕事は半々。「弁護士を引退したら、ワイナリーに専念できそうですね?」と尋ねたら、満面の笑みで「ええ、もちろん」と答えてくれたのが印象的。好きなワインはマルベック。
日本のテクノロジーに非常に興味があり、今回の来日では愛知万博や秋葉原も見学してきたとか。


パタゴニアって、どこ?

アルゼンチンのワイン生産地といったら"メンドーサ"。ぶどうの生産量も、95%以上をメンドーサエリアが占めています。このメンドーサと首都ブエノス・アイレスを含む地帯は"Centro"(チェントロ)(中央の意味)と呼ばれ、チェントロの南に南北に長ーく広がるのが"Patagonia"(パタゴニア)地方です。

フォカッチアさんのワイナリーは、このパタゴニア地方の"Neuquen"(ネウケン)という地にあります。  

彼のワイナリー名の"NQN"は、なんだか不思議な名前ですが、実はネウケン(Neuquen)から取っています。(ネウケン空港のコード名も"NQN"です)。

フォカッチアさんは、まずネウケンからブエノス・アイレスに飛び、次にブラジルのサン・パウロへ。
そして北米のニュー・ヨークと3回乗り継ぎ、38時間かけて日本にやってきました!気が遠くなるほどの長旅です。




Q.ネウケンはどのような土地ですか?
A.メンドーサの800km南に位置しています。チリとの国境にはアンデス山脈がありますが、ここは海抜300m程度です。雨は年間で180mlと少ない半砂漠地帯です。夏は暑く(40℃くらいまで上昇)、冬は寒くて(マイナス7~8℃まで低下)、また、一日の気温差も18℃くらいあり、寒暖の差が激しい土地です。

Q.いつからこの土地でワインをつくり始めましたか?
A.2001年にブドウを植え、2003年からワインを生産しています。
2003年は8万本、2004年は42万本、2005年は92万本の生産量でした。2004年から生産量が増えたのは、ワイナリーを2004年4月30日に本格的に稼動させたからです。醸造施設だけでなく、レストランも併設しているんですよ。

Q.なぜネウケンでワインづくりをしようと思ったのですか?
A.私はネウケン出身で、ここにリンゴやナシの果樹園を持っていました。この土地には愛着があります。
また、ここは半砂漠地帯のため量は望めませんが、品質を追求するのであれば、素晴らしいブドウが得られると思ったからです。元々ワインが好きで、ワイナリーを持つのが夢でした。ワイナリーは私の末息子のようなものです。

Q.ネウケンはワインづくりに適した土地ですか?
A.ブドウを植える前は、まったく手の入っていない荒地でした。土壌は砂地に小石が混ざっています。それを切り拓き、162haの土地にブドウを植えました。
風が強い土地柄で、空気がとても乾燥しますが、それがブドウの健康状態をよい状態に保ってくれます。

Q.半砂漠地帯ということですが、灌漑は行っていますか?
A."ドリップ・イリゲーションシステム"を採用しています。
畑のセクターごとにセンサーを取りつけ、コンピュータで湿度を管理し、灌漑を行います。畝の間には砂よけの雑草を植え、また、雹よけにネットを張ったりということもしています。

Q.NQNで生産しているワインは?
A.品種は、白はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを、赤はマルベック、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールです。全て手摘みで収穫します。
醸造に関しては、メンドーサからエノロゴを呼び、フレンチ・オーク、アメリカン・オークなども使ったワインづくりをしています
現在は4つのレベルのワインを生産しています。さまざまな品種、レベルのワインを生産するのは、マーケット戦略を考えてのことです。

Q.マーケット戦略というのは、海外を意識しているということですか?
A.国内と国外は、今は半々です。国外ではアメリカに輸出していますが、ブラジルへの輸出が決まっています。メキシコとドイツは途上中です。日本はまだですが、近いうちにぜひ、日本のみなさんにも飲んでいただきたいですね。

Q.アルゼンチンでは、NQNのような新しいワイナリーは増えていますか?
A.ここネウケンでは、立ち上げて4~5年という若いワイナリーが5つあります。どこも同時期に立ち上げたところで、ネウケン全体では2000haになります。
他の地域でも、新しいコンディションを持った土地を求め、メンドーサ以外の新しい地域に広がる傾向が見られます。




<テイスティングしたワイン>

1) Malma Pinot Noir 2004
ピノ・ノワール100%で、アルコール度数は14.5%!完熟したフルーツの凝縮感が強く、ボリュームのあるボディを持った力強いワインですが、ビロードのように超しなやか。

2)Malma Merlot 2004
メルロー100%。80%をステンレスタンクで、20%を樽で熟成させています。樽はフレンチオークとアメリカンオークの両方を使用。
色は非常に濃厚。香りはフローラルな若々しさを感じ、口にするととてもなめらかです。花のような豊かなアロマを持った、きれいなスタイルのワインです。

3)Malma Malbec 2004
アルゼンチンのお家芸ともいうべきマルベック100%。こちらも80%をステンレスタンクで、20%を樽で熟成させています。紫の色が非常に濃く、深みがあります。フルーツのジャム、コンポートのような甘い香りが華やかで、果実味が口いっぱいに広がります。タンニンも豊富でパワフルなのに、とてもまろやかに感じます。



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インタビューを終えて


NQNのワインには、上から
"セレクション"、"マルマ・リゼルヴァ"、"マルマ"、"ピカダ" の4つのラインナップがあります。

ブランド名となっている"マルマ(Malma)"は、先住民であるマブーチェ族の言葉で"誇り"を意味するのだとか。


こちらは マルマ・リゼルヴァ

アルゼンチンワインというと、地域では"メンドーサ"、品種では"マルベック"という認識があり、「大きな肉の塊を濃厚なマルベックのワインで流し込む!」みたいなイメージもありました。
しかしここ数年で、ネウケンをはじめ、各地方で新しいワイナリー、そして新しいワインが誕生しつつあるのです。

特に国際マーケットを意識しているワイナリーでは、クオリティが高く、かつ洗練されたワインを次々と生み出しています。有機栽培に取り組むところも増えてきました。

しかし、そうしたワインは、まだまだ日本ではお目にかかれる機会がほとんどないというのが実状です。
近いうちにぜひ、みなさんに新しいアルゼンチンワインをごく気軽に飲んでいただき、驚いてもらいたいものです。


*NQNのホームページ   http://www.www.bodeganqn.com.ar

(取材協力:アルゼンチン大使館)

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第13回 Chateau Pape-Clement@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:05:19 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年8月11日)

第13回  Anne Le Naoul  <Chateau Pape-Clement>



今回は、フランスのボルドーから素晴らしい生産者をお迎えしました。
グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも指折りの名門、
シャトー・パプ・クレマンのワインメーカーである、アンヌ・ル・ナウルさんです。

<Anne Le Naoul>
パリ生まれ。料理学校の先生をしていた父と、ホテル業界を経て"ゴー・ミヨ"誌の編集に携わっている母の影響を受け、ワイン業界へ。
モンペリエの醸造学校でディプロマを取得後、オーストラリアのヤラ・ヴァレーのワイナリーでアシスタント修業。その後はシャンパーニュのマム、シャブリのラロッシュなどを経て、パプ・クレマンに入社。
好きなワインは赤で、品種ではメルロー。自分のつくるワインはもちろん、ラングドックあたりのものもよく飲むとか。


パプ・クレマンは、グラーヴの"クリュ・クラッセ・デ・グラーヴ"(赤ワインは12シャトー、白ワインは9シャトー)に格付けされている超一流シャトーです。

現在のオーナーはベルナール・マグレ氏で、他にもメドック格付け4級のシャトー・ラ・トゥール・カルネをはじめ、フランスではボルドー地方やラングドック地方、国外ではスペイン、アルゼンチン、カリフォルニア、ウルグアイ、モロッコなどの32のワイナリーを経営しています。
また、コンサルタントには、あのミッシェル・ローラン氏が参画しています。



Q.パプ・クレマンには何人のワインメーカーがいますか?
A.当社では、パプ・クレマン以外のワインも数多くつくっているので、6~7人のワインメーカーがいます。が、女性は私ひとりで、しかも、私が一番年下です。

Q.あなたの担当範囲は?
A.ボルドー地域とカリフォルニアのナパ・ヴァレーで、7つのぶどう園を管理しています。そのため、ナパには年に何度も出向きます。

Q.オーナーのマグレ氏は、なぜそんなにたくさんのワイナリーを経営しているのですか?
A.みなさんに違ったワインを届けたいためです
例えばパプ・クレマンはグラン・クリュクラスのワインで、ラ・トゥール・カルネは4級格付けですが、もっと気楽に飲めるものも提供したいと考えています。また、ブティック・ワインといった、稀少価値の高いワインもつくりたいと考えています。
それらを、ネゴシアンとしてではなく、"ワイン生産者"として提供したいと思っているので、ワインにはマグレのサインを入れ、保証の印としています。私たちは、プライスよりクオリティの追求に力を入れているのです。

オーナーは現在68歳ですが、新しい考えを持っている人です。ボルドーは、シャトー側の主張が強いところが多いのですが、消費者の求めるものを常に気にかけています。サインには、消費者を失望させてはいけないという、オーナーの気持ちが込められています。

Q.パプ・クレマンのワインづくりのポイントは?
A.ワインづくりには、"エグ味(苦味)"と"酸化"といったマイナスの要素の危険性を伴いますが、それをどれだけ押さえるか、ということに最大の注意を払っています。
例えば、よく熟していない未熟なぶどうだったり、また、醸造の際にぶどうの種が潰れたり、茎や葉っぱなどの緑の部分が混ざったり、ということでエグ味が出てきますので、そうならないような作業をします。

具体的には、房の一粒ずつを手で外しながら丁寧に選別しています。

これは2001年から始めたことなのですが、収穫時の2週間は150人体制でこの作業に当たります。そのための人員を確保したり、特別な部屋を用意したりと、非常にコストがかかりますが、品質のためには仕方がありません。
これにより、ワインにエグ味が出ないようになりますし、実に傷がつかないので、酸化を防ぐこともできるのです。

Q.すべてのワイナリーで、一粒ずつ取り外す作業を行っているのですか?
A.全てではありません。機械を使って除梗するところもありますが、なるべく手作業に近づけるような方法を取っています。

Q.フランス以外でワインをつくる理由は?
A.我々は常に良いぶどうを求めています。良いぶどうを求めるということは、良い畑を求めるということです。良い畑を求めていたら、例えば、スペインであればトロとプリオラートにポテンシャルの高いテロワールを持った畑が見つかったのです。そこで我々の持てる技術を駆使し、良いものを最大限に引き出したいと考えてます。

Q.今後のプロジェクトの予定は?
A.現在、南アフリカやイタリアで土地を探しているところです。イタリアではシチーリアに素晴らしい畑がありそうです。



<テイスティングしたワイン>  


La Croix du Prieure 2002(ラ・クロワ・デュ・プリウレ)
AOCプルミエール・コート・ド・ブライエの赤ワイン。
収穫量を26hl/haに押さえ、最高のテクニックを使ってつくった、生産本数3,000本というブティック・ワイン。メルロー90%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%を100%の新樽で熟成。
果実味が凝縮し、タンニン量も豊かな力強いワインで、今からでも充分おいしく飲めますが、長期熟成のポテンシャルを持っているので、今後が楽しみです。


Chateau Fombrauge Blanc 2003(シャトー・フォンブロージュ・ブラン)
AOCボルドークラスであるにもかかわらず、収穫量は28hl/haとかなり低く押さえています。ソーヴィニヨン・ブランを中心に、セミヨンとソーヴィニヨン・グリと少量のミュスカデルをブレンドした白ワインです。
フレッシュな状態の2~3年以内に飲むことを勧められましたが、新樽を使っているので、樽の風味がしっかり感じられ、ワインに厚みもあります。発酵から瓶詰めまで、すべて重力のみで作業され、フィルターもかけていません。


Chateau La Temperance 2003 (シャトー・ラ・タンペランス)
AOCオー・メドックの赤ワインで、メルロー主体に、カベルネ・ソーヴィニヨンとプティ・ヴェルドがブレンドされています。収穫量は48hl/haで、つくりもシンプルなので、ハレの日よりは週末に気軽に楽しんでほしいワインだそうです。たしかに、まろやかで飲みやすく、料理によく合います。
「このワインはフォアグラの脂に合うと思います。日本で食べたマグロの赤身にもよく合いましたよ」とアンヌさん。



Chateau Pape-Clement 1984 (シャトー・パプ・クレマン)
カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー40%で構成されています。
20年の熟成の時を経たワインは非常にやわらかくこなれ、いい飲み頃を迎えていました。こういうワインを飲むと、熟成したボルドーの素晴らしさを再認識させられます。(マグナムボトル)

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インタビューを終えて

ボルドーも男性中心の世界で、女性のワインメーカーはまだまだ少ないそうですが、有名シャトーでも少しずつ女性が活躍しはじめたようです。
ある統計によると、香りや味覚に一番敏感なのは、若い世代の女性なのだとか。
ということは、アンヌさんのような人材が醸造の分野に積極的に携わっていくことは、実は非常に理にかなっているといえるでしょう。
しかもアンヌさんは、両親の影響で"香り"と"味"に対して敏感に育ち、自然にワインの道に進んだ、というのですから。

彼女たちを起用するかどうかはオーナー次第かもしれませんが、伝統的な体質が根強く残るボルドーにも、これからはマグレ氏のようなオーナーが増え、人材の起用だけでなく、シャトー経営のさまざまな面において、驚くような変化が見られるようになっていくのかもしれません。


*ホームページ  http://www.pape-clement.com


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第12回 Chateau de la Roche@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:00:28 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年7月11日)

第12回  Louis-Jean Sylvos  <Chateau de la Roche>
   


今回のゲストのルイ=ジャン・シルヴォさんに会うのは、実はこれが二度目です。彼から、「また日本に行くから、ぜひ会いましょう!」とメールをもらった私は、「もちろん!」と、返信しました。


<Louis-Jean Sylvos>
1946年生まれの59歳。シャトー・ド・ラ・ロッシュのオーナー兼ヴィニュロン(ぶどう栽培家)。前職を引退後、ワインビジネスの世界へ。


シャトー・ド・ラ・ロッシュ は、ボルドーのシャトー?と勘違いしてしまいそうな名前ですが、フランスのロワール地方にあるシャトーです。

ロワールのワイン生産地域は、ロワール河を河口に近いナント地域から上流に上ってくると、アンジュー&ソーミュール地域、その上流のトゥーレーヌ地域、さらに内陸の中央フランスとなっています。

シャトー・ド・ラ・ロッシュは、 "フランスの庭園"と呼ばれるトゥーレーヌ地域の、アゼイ・ル・リドー(Azay-le-Rideau)にあるシャトーで、その歴史は1580年に遡ります。
シャトーが所有する土地は35haで、うちぶどう畑は6.5haあり、シュナン・ブランを中心に、カベルネ・フラン、グロロー、コー(マルベック)種が栽培されています。
土壌は粘土石灰岩質で、シレックスと呼ばれる火打石も混ざっています。



Q.たしか、あなたがこのシャトーを手に入れたのは最近ではありませんでしたか?
A.はい、私がこのシャトーを買ったのは2000年でした。その前は、私は建築家で、ワインとは全く関係ない仕事をしていました。フランスでは、ビジネスマンが引退した後、好きなワインづくりをはじめるということはときどきある話です(笑)。

Q.ということは、昔からワインが大好きだったということですね。毎日飲みますか?
A.もちろん、ワインは毎日飲んでいますよ(笑)。

Q.あなたのワインづくりのコンセプトは?
A.まず、自然な農法でぶどうを育てることにあります。

Q.ということは、ビオディナミ(*1)を採用しているのですか?ロワールではビオディナミの生産者が多いようですが?
A.いいえ、特にビオディナミというような名前のついたものでなく、本当に伝統的な自然な方法なのです。
化学的なものは使いません。施肥は剪定した枝を利用していますし、うねの間に草を生やし、害虫や雨対策をしています。
ロワールではたしかにビオディナミという看板を掲げている生産者が多いのですが、私は敢えて言いません。

Q.今日のワインについてコメントをお願いします。
A.私のところでは発泡性のワイン(ペティアン)もつくっていますが、今回は持ってきませんでした。とても泡がやわらかいスパークリング・ワインです。


Touraine Azay-le-Rideau Blanc Sec 2004
シュナン・ブラン100%でつくっている白ワインで、セック(辛口)ですが、やわらかい果実味があります。

Touraine Azay-le-Rideau Blanc Demi Sec 2003
ご存知のように、2003年のヨーロッパは猛暑でしたので、ぶどうの糖度が上がり、最初の2004年のワインと同じシュナン・ブラン100%ですが、ワインはドゥミ・セック(半辛口)になりました。しかし、かなり強い甘味を感じるかと思います。

Touraine Rose 2002
グロロー種を使ったロゼです。これは、ノドが渇いたときに冷たーくして飲むと、とても美味しく感じるワインです。少し発泡している感じもあります。

Touraine Rouge 2002
カベルネ・フランでつくった、やわらかくやさしい口当たりの、まろやかな赤ワインです。


(*1)ビオディナミ:
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。



≪さて、ワインをテイスティングしてみると…≫

この地域のシュナン・ブランの白ワインは、大概やさしい印象を受けますが、シャトー・ドゥ・ラ・ロッシュの白ワインは本当にソフトで、しかもナチュラルな魅力にあふれています。
しかし、2003年の甘さにはかなり驚きました!ドゥミ・セックなんてものではなく、しっかりとした甘さで、フォアグラやデザートなどにも合わせてみたくなるほど。
同じ構成なのに、2004年はミネラル感がしっかりと感じられ、非常にクリーンなスタイルで、ルイ=ジャンによると、2004年は"普通の年"だったので、こちらがこのシャトーの白ワインの典型のようです。

ロゼワインは透明感のある淡いローズ色が美しく、外観はうっとりするほどですが、口にすると生き生きとした酸が素晴らしく、非常にフレッシュでキリッとした味わいです。
気持ちがスカッとし、リフレッシュに最適のワインで、夏のバカンスに連れて行きたくなります。

カベルネ・フランを使った赤ワインには青臭いものが見られますが、ルイ=ジャンのつくる赤にはそんな面は一切なく、タンニンがよく熟してなめらかで、飲んでほっとする心地良いやさしいワインです。

これらのワインに共通するのは、"つくりすぎていない"こと。
わざとらしさがなく、自然で、すーっと入ってきます。
ルイ=ジャンの言う「自然な農法でつくったぶどう」が素直に生かされているのだなぁ、と実感しました。



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インタビューを終えて

"元建築家"というと、なんとなくキッチリとして生真面目そう、というイメージがありますが、ルイ=ジャンはとても気さくで、ユーモアもたっぷり。
たしかに、素朴な"農夫"という雰囲気ではありませんが、「自由気ままにやってるさ…」と、田舎暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきます。
こんなルイ=ジャンがつくるワインたちは、どれも伸びやかで、ナチュラル。
ワインはつくっている人を表す、というのは本当です。

ロワール地方は、ぶどうの品種もさまざまで、甘口から辛口まで、バラエティ豊かなワインがつくられています。
また、このところAOCに昇格する村も多く、ビオディナミや有機栽培の生産者も多いことから、注目されつつあるエリアでもあります。

ワインは値段も手頃で、味わい的にも普段の生活にすーっとなじめそうなものが多く、ルイ=ジャンのワインも正にその通り!

フランスには、ボルドーやブルゴーニュをはじめ、素晴らしいワイン生産地がたくさんありますが、肩肘張らずに楽しめるロワールのワインは、もっと飲まれてもいいのにね…、と強く感じた私でした。

*ホームページ http://www.chateaudelaroche.com/(日本語バージョンもあり)

シャトーでは、ツアー客の見学受け入れのほか、宿泊施設も備えています。さまざまなイベントも開催されていますので、ロワールのシャトーめぐりのひとつに加えてみてはいかがですか?ルイ=ジャンとは英語でも会話可能です。

*取材協力: 横浜君嶋屋


以前に会った時のルイ=ジャン。・・・かなり変化が(笑)


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第11回 Weingut Josef Leitz@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 12:55:33 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年6月11日)

第11回  Eva Fricke  <Weingut Josef Leitz>



今回は、久しぶりの女性生産者の登場です!
この5月、ドイツワイン基金の『Riesling &Co. World Tour 2005』が大阪、東京、横浜で開催されましたが、そのプレゼンテーションに『ワイングート・ヨセフ・ライツ』の代表として参加したのが、エヴァ・フリッケさんです。

<Eva Fricke>
ラインガウ出身の27歳。
ライツ醸造所の娘さんではありませんが、栽培と醸造のディプロマを取得後、スペインやオーストラリアのワイナリーで研修を重ね、2002年からライツに勤務。


ライツ醸造所は、ドイツワイン生産地の中でも素晴らしいワインを生み出すといわれるRheingau(ラインガウ)のリューデスハイムにあり、設立は1985年と比較的最近です。当初は花屋との兼業で、畑も3haしかなく、近くの人たちにワインを売るような小さな家族経営のワイナリーでしたが、徐々に畑を拡大し、2000年になる前くらいから輸出に力を入れ始め、生産量を伸ばしてきています。日本ではまだ輸入会社が決まっていませんが、ぜひ積極的に売り出していきたい!と意気込むエヴァさんに、ライツのワインをテイスティングしながら、色々なお話をうかがいました。





1) Riesling Dragonstone 2004
QbAクラスに該当するややカジュアルなワインで、半辛口よりやや甘めのタイプ。果実味が豊かでフルーティで、酸味がしっかりしています。
エヴァさんのおすすめの飲み方は、アペリティフとして、また、東南アジアの力強い味付けの辛い料理などと一緒に。夏にテラスで気軽に、という「テラスワイン」にも最適とのこと。




2) Rudesheimer Bischofsberg Riesling Auslese 2004
非常にキレイでクリーンな、薫り高いワインで、まだ少々発泡しています。というのも、これはサンプルで持ってきたもので、ラベルに書かれた「Auslese」の文字はエヴァさんの手書き。繊細でエレガントな甘さが魅力の、上質なワインです。 畑は山
の斜面の石とロームの混ざった土壌で、「かなり個性的な味を楽しんでもらえると思います」とエヴァさん。




3) Rudesheimer Kirchenpfad Riesling Beerenauslese 2002 (左)
4) Rudesheimer Kirchenpfad Riesling Trokenbeerenauslese 2003 (右)
どちらも素晴らしい甘口ワイン(お値段も高価です!)で、BAの方はなぜかイチゴのようなベリーの甘いニュアンスを感じました。
TBAは甘さの凝縮感が非常に強く、とろーんとした口当たりで、アプリコットのフレーバーがあります。

2003年はドイツも非常に猛暑で乾いた年であったため、貴腐がつかず、ぶどうはカラカラの干しぶどう状態になったとのこと。

この極甘口に合うエヴァさんのオススメマリアージュは、青カビのチーズやフォアグラ。
今回はこの甘口ワインと一緒に、激甘の赤いベリーのソース(イチゴやラズベリーなど)のかかったデザートをいただいたのですが、極甘口といえど酸がしっかりしているので、激甘のデザートとも素晴らしいマリアージュでした。


ライツのワインは、「エレガントでミネラルが豊富」で、「酸と残糖のバランス」を重視するスタイル。
辛口のトロッケンタイプのワインにも果実の自然な甘さを感じるのは、試飲をして、いいと思った段階で発酵を止めるので、発酵されずに残る果糖によるものとか。



Q.あなたのライツでの役割は?
A.夏から秋は、ほとんど畑に出ています。従業員はオーナーと私と事務担当の3名だけなので、私は、栽培、収穫から醸造までの全ての過程に関わっています
また、経営責任者でもあります。ラインガウ地域は男性社会なので、女性がここまで担当させてもらっているのは珍しいことです。

Q.ライツ醸造所について詳しく教えて下さい。
A.当初畑は3haだけでしたが、その後、小さい良い畑を徐々に買い集め、現在は26haを所有しています(生産量は年間約19,000ケース)。
しかし、大量生産ワインではなく、品質に注意したワインづくりを行っています。また、昔風の古臭いイメージから脱却し、新しいイメージを打ち出していくための、さまざまな工夫を試みています。 ワインは100%リースリングのみです。

リューデスハイムの畑は、場所によりローム(黄土)やシーファー(粘板岩のスレート)といった土壌の違いがあるのですが、その土壌の違いが出せるようなワインづくりをしています。
もちろん、化学肥料や農薬などは使わず、自然のままの栽培を行い、畑仕事は100%手作業です。
9月から10月にかけて房を選りすぐり(グリーンハーベストに該当)、1本の樹から1.2~2.0kgの実が得られるよう、約4~6房を残します。
収穫は10月から11月にかけてで、平均収穫量は60hl/ha(最良の畑では30hl/ha)です。

Q.良い畑は、そう簡単に手に入るものなのですか?
A.この地にはかつて、小さくて古いワイナリーがたくさんありました。しかし、後継者がいないところは畑を手放さざるをえず、そうしたところから良い畑を選んで買うのです。
私たちは本当に良い畑を持っています。が、現在VDP(*1)でエアステス・ゲヴェックス(*2)と認定されている畑は持っていません(ライツはVDP会員)。認定されている畑よりも私たちの持っている畑の方が良いものがあるのですが…。私は、VDPの認定基準には疑問を感じています 。

Q.新しいイメージを打ち出している、という具体例は?
A.例えば、アメリカやイギリス向けに力を入れている「ドラゴン・ストーン」ですが、モダンなデザインのエチケットにし、商品名も英語の「Dragonstone」としました。これだけで年間7万リットルも売る人気商品です。
これはドイツ国内ではほとんど売られていないのですが、アメリカでは、ドイツの辛口リースリングといえば「ドラゴンストーン」と認識されるまでになっていて、非常に成功しています。
(*「Dragonstone」は商標登録もしています) 。

Q.現在の輸出の状況は?
A.生産量の80%が輸出で、輸出先も、アメリカ、イギリスに加え、デンマークやノルウェー、カナダなどにも拡大してきました。日本では、今回のプレゼンテーションでも人気の高かった「Dragonstone」と「Rudesheimer Bischofsberg Riesling
Spatlese Trocken」、「Rudesheimer Berg Roseneck Riesling Spatlese」の3アイテムを売り出したいと考えています。日本のマーケットは私が担当する予定です。


(*1)VDP:
"ファウデーペー"と読み、ドイツ優良ワイン生産者協会のこと。

(*2) エアステス・ゲヴェックス
ラインガウ地域の辛口ワインのトップ・クオリティのものに付けられる肩書きで、格付けされた畑のぶどうからつくられたものに限るなどの厳しい条件があり、VDPによって認定が与えられる。




---------------------------------------

インタビューを終えて

ドイツでも、学校を卒業してもすぐに仕事には就かず、しばらくはフラフラしている若者が多いそうですが(どこの国も同じ?)、エヴァさんは卒業と同時に世界各地のワイナリーで実践を積んできたので、若くして今の地位を得ることができた、と言います(エヴァさん、かなりのしっかりものです!)。

ドイツでも伝統あるラインガウ地域というと、気難しそうな年配の男性が口数少なくワインづくりをしているような図を想像してしまいがちですが、ライツでは、消費者の嗜好に合わせた、ターゲットを絞り込んだワインづくりや販売戦略を行い、また、エヴァさんのような若い女性を重要なポジションに置くなど、革新的ともいえるワイナリー経営で、成功を収めています

これからは、このライツのような考えを持ったワイナリーがどんどん出てきそうですし、ドイツは確実に変わりつつあります。

*ライツでは生産するワインの100%がリースリングということですが、実は0.5haのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の畑も所有しており、今年はそれから新しいワインをつくる予定とのこと。
エヴァさんは「赤のゼクトなんてどうかしら?」と言っていましたが、果たしてどんなワインが出来上がるでしょうか?注目です。

(ライツ醸造所のHP: http://www.leitz-wein.de


*取材協力: ドイツワイン基金

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第10回 Vina Perez Cruz@「キャッチ The 生産者」

2008-12-29 10:52:03 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年5月11日)

第10回 Felipe Uribe Valdes  <Vina Perez Cruz>



第10回目のゲストは、 チリのワイナリー『ヴィーニャ・ペレス・クルス』の輸出部長のフェリペ・ウリブ・バルデスさんです。

ペレス・クルス社は、2002年がファースト・ヴィンテージという新しいワイナリーです。このところ、チリワインの話題が淋しい日本ですが、この新ワイナリーでチリ人気再燃なるか?という期待を胸に、フェリペさんにお話を伺いました。


<Felipe Uribe Valdes>
今回の来日が5回目、いや6回目かも…?というほど、日本は何度も訪れているというフェリペさん。以前はチリの大手ワイナリーで北米担当の輸出マネージャーをしていましたが、現在は『ペレス・クルス』の首脳陣の1人として、世界中を駆け回る忙しい日々を送っています。 



"チリカベ"という言葉に象徴されるように、1990年代後半には、「安くておいしい」ということから、チリワイン、特にその中でもカベルネ・ソーヴィニヨンに注目が集まり、普段からワインを飲み慣れていない人でさえも「好きなワインはチリカベ!」と言うほど、チリワインが大変な人気を博しましたが、ワインブームが落ち着いてきた2000年代に入ると、チリワインは息をひそめてしまったような感さえあります。

こんなふうに、現在の日本でのチリワインはちょっと形勢不利かも…という状況の中、『ペレス・クルス』がやってきました!
なんと、生産するワインは赤ワインのみ、しかも全てがレセルバクラス以上というこだわりようです。
さて、新しいチリワインは、一体どんなワインなのでしょうか?



生産ワイン5アイテム -すべてが赤ワイン

ペレス・クルスがあるのは、チリの首都サンチャゴから南西に45kmほど行った"マイポ・ヴァレー"で、この地域はチリの高級ぶどう品種栽培地の中では古い歴史を持ち、気候は温暖で穏やかな地中海性気候で、カベルネ・ソーヴィニヨン中心に栽培が行われています。


1) Cabernet Sauvignon Reserva 2003

2) Cot Reserva Limited Edition 2002

3) Carmenere Reserva Limited Edition 2002

4) Syrah Reserva Limited Edition 2002

5) Liguai 2002




1)"カベルネ・ソーヴィニヨン・レセルバ"が生産量の9割を占める主力商品

2)~4)の"リミテッド・エディション(LE)"は、収量を厳しく制限してつくられた(平均収量は36hl/ha)限定品です。

LEは全ての製造過程にグラヴィティシステム(重力によってワインを移動させるシステム)を採用し、マロラクティック発酵は樽で行い、熟成にはフレンチおよびアメリカンのオークの新樽が使われています。




最上級レンジとなる、5) リグアイ は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カルムネールを約3割ずつブレンドした、17~18hl/haという驚きの収量のスペシャルなワインで、こちらももちろん、全過程にグラヴィティシステムが採用され、新樽で熟成が行われています。


今回、この5アイテムすべてをテイスティングしましたが、
ベーシックなカベルネにおいては、果実味は豊かでありながら、ベタつくような甘さは全く感じず、品の良いタンニンがくっきりと輪郭を保ち、全体的にバランスが取れています。
価格はデイリーなのに、よくここまで頑張った!という上質なチリカベです。

LEの3アイテムに関しては、どれも凝縮感があり、かつ骨格ががっちりとしていますが、口当たりはなめらかでやさしく、しかも品種それぞれの個性がはっきりと出ています。ちょっと贅沢な味わいを楽しみたいときにぴったりです(実はこれも嬉しい価格!)。

最高級のリグアイは、カルムネールやシラーからのアロマが個性的で馨しく、味わいはまろやかでコクがあり、質の良さを舌でも鼻でも実感でき、特別なときに開けたいと感じるワインでしょう。





Q.現在のチリでは、ペレス・クルスのような新しいワイナリーがどんどん誕生しているのですか?

A.はい、新しいワイナリーは多いです。ただし、小さいところが多く、当社も、ブティック・ワイナリーのコンセプトでつくられた小規模のワイナリーで、レセルバ以上のクラスのワインしかつくらないという考えのもと、設立されました。
オーナー一族は電気やガスを供給する会社などを経営していますが、20世紀の半ばに農業に進出し、1990年代にぶどうを植え始め、2002年ヴィンテージを初めてリリースしました。年間生産量は約6万ケースです。


Q.ペレス・クルスのコンセプトについて、もう少し具体的に教えて下さい。

A.当社の主力商品は「カベルネ・ソーヴィニヨン・レセルバ」ですが、価格帯的にも(輸入元希望小売価格:2,100円)非常に競争相手が多く、これを世界に広く販売していくことは容易なことではありません。競争に勝つためには、高品質であるのに価格的にはお値打ち、ということが求められるかと思います。
確かに、世界最高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンのワインは他にもたくさんあるかと思いますが、当社のカベルネ・レセルバは、この価格で最高の品質のワインであることをめざして努力しています。


Q.現在のペレス・クルスの体制は?

A.畑から醸造の仕事を含め、35~40人くらいの社員がいます。社長はオーナー一族のアンドレス・ペレス・クルスで、首脳陣5人のうち3人が一族の兄弟関係ですが、ワイン・メーカーは専門のエノロゴが務め、販売関係は私が国内外ともに担当しています。
確かに一族経営のワイナリーですが、醸造と販売の責任者を一族と切り分けることにより、風通しが良いワイナリー経営ができる体制を取っています。


Q.ペレス・クルスでは、赤ワインしか生産していないのはなぜですか?

A.このあたりの土地のテロワールに合う品種が赤ワイン用のぶどうだからです。白ワイン品種も育たないわけではありませんが、我々は理想的なワインをつくることを目標としてしています。


Q.赤ワイン用ぶどう品種は、土壌の違いなどによって植え分けているのですか?

A.実は土壌は、ほとんど同じ性質です。川から流れ出した堆積層で、大きな石や、砂が固まったような石が転がり、土地の栄養分がとても低い土質です。このような土地ではぶどうにストレスがかかり、収穫量も少なくなるので、高品質のぶどうが得られます。

畑は全部で140haあり、そのうち100haがカベルネ・ソーヴィニヨンで、40haにメルロ、コット(=マルベック)、カルムネール、シラー、プティ・ヴェルドを植えています。カベルネが多いのは市場戦略を考えてのことです。


Q.ペレス・クルスでは「環境にやさしい農業」を行っているということですが。

A.チリの北にはアタカマ砂漠、東はアンデス山脈、南は南氷洋、西には大西洋という自然のバリアがあり、こうした自然環境の条件から、外部からの病害虫やウィルスの侵入を防ぐことができるので、特別なことをしなくても、健康的なぶどうを得ることができます。

また、夏の間に雨が少ない地中海性気候であり、ぶどうの生育期である10月から3~4月にかけてほとんど雨が降らないことも、ぶどうには非常に良いことで、そのため、ケミカルなものは元々使う必要がありません

正しい方法で畑の作業に努めていれば(例:グリーン・ハーベストなど)、よいぶどうが得られます。特に「有機」とか「ビオディナミ」という名のついたものではありません。


Q.輸出のシェアはどのくらいですか?また主な輸出先は?

A.国内消費は8%で、輸出が92%です。輸出先は、カナダ、デンマーク、アメリカ、日本、ベルギー、オランダ、イギリス、スイスなどで、スーパーなどではなく、良いレストランやワイン専門店などに置くようにしています。

日本への販売戦略ですが、現在の日本はチリワインの第2の成長期、と捉えています。単なるアルコールを含んだ飲み物を飲む層にではなく、ワインを理解する新しい層に訴えていきたいと思っています。価格的にも、最低の価格ではなく、1,500~2,500円くらいの良質なワインを選んでくれる層がターゲットで、量だけが掃ければよいと考えるのではなく、消費者の視点に立った販売をしていくことが、これからは、輸入業者を含めた売り手側に求められることではないでしょうか。

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インタビューを終えて

確かに、チリワインは「安くてそこそこ美味しいからいいだろう」と、私たち消費者は思っていました。でも、それだけで終わっていて、今となっては、特に強い印象が残っているわけではないような…?

大手ワイナリーでの経験を生かし、 
「小さなワイナリーが世界で勝負して生き残っていくためには、価格以上の品質のものをつくっていくことが大事!」と、フェリペさんは繰り返し力説していましたが、実際に飲んでみると、ペレス・クルスのワインには、その意気込みがひしひしと感じられます。

大変洗練された、スタイリッシュでモダンな味わいで、ワインの美味しさをよくわかっている人も「ううむ…」と唸りそうなほど、高いクオリティを持っています。
しかも、嬉しいくらいのお手ごろ価格とは!

「こういうワインが飲みたかったんだよね!えっ?これがチリワインなの?!」という消費者の驚きの声が聞えてきそうで、これこそ『新生チリワイン』と言っていいかもしれません。

ただ単に価格が安いだけではなく、適正な価格で最大限に高い品質を提供するワイン。これからは、そんなワインがチリのスタンダートになっていきそうです。

「我々は短期間のうちに、チリのトップワイナリーのひとつに成長してきたと思っています。それは最初から計画的にワイナリー経営に取り組んだからですが、今度は、もう数年のうちには、名実ともにチリのナンバーワンになりますよ!」と宣言したフェリペさん。

彼が次に日本にやってくるときには、果たして、チリのナンバーワンマネージャーになっているでしょうか?


(ペレス・クルス社のHP:http://www.perezcruz.com) (スペイン語のみ)


*取材協力: (株)稲葉 

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第 9回 Vallformosa Vinos & Cavas@「キャッチ The 生産者」

2008-12-29 09:37:11 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年4月11日)

第 9回  Rafael Rostoll Aranda  <Vallformosa Vinos & Cavas>



第9回目のゲストは、スペインのワイナリー『ヴァルフォルモサ』ラファエル・ロストール・アランダさんです。
ヴァルフォルモサのコマーシャル・ディレクターを務めるラファエルさんは、この3月に幕張メッセで開催されたイベント『FOODEX』のために来日しました。

このワイナリーの得意とするのは"CAVA"(カバ)

特にこれからの季節に嬉しいCavaのあれこれを、ラファエルさんに伺ってみましょう!


<Rafael Rostoll Aranda>
7年前までは香港のブイヨン工場!で働いていたラファエルさんは、ヴァルフォルモサ・ファミリーとの出会いでワイン業界へ転職。以前はそれほどワインが好きではなかったけれど、「今では毎日飲みます!(笑)」と言い、同社のコマーシャル・ディレクターとして世界各地を飛び回る日々を送っています。



CAVA とは…  

フランスのシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵でつくられたスペインのスパークリングワインのことで、その製法は、古典的方式(クラッシック・メソッド)、または伝統的方式(メソッド・トラディショナル)と呼ばれます。  

スペインワインにおいては、一般的には特定の原産地にDO名(*1)が付けられていますが(例:DOプリオラート、DOリベラ・デル・ドゥエロなど)、Cavaだけは特殊で、ひとつの生産地だけでなく、カタルーニャ州を中心に分散した地域でつくられているのが特徴です。しかし、その生産地やぶどう品種には規定があります。  

通常使われるぶどう品種は、マカベオ(=ヴィウラ)、パレリャーダ、チャレッロの3種で、マルバジアやシャルドネ、黒ぶどうのモナストレル、ピノ・ノワール(ピノはロゼのみに使用可)などもごく少量使われています。  

味わいのタイプは、1リットルあたりの残糖グラム数により、極辛口のブリュット・ナトゥーレから、エクストラ・ブリュット、ブリュット、エクストラ・ドライ、ドライ、セミ・ドライ、スウィートまで、幅広く揃っています。



Q.Cavaには色々な味わいのタイプがありますが、スペインで人気のタイプは?

A.極辛口のブリュット・ナトゥーレが人気です。
日本では、やや甘口タイプを好む傾向にあるように感じます。


Q.スペインでブリュット・ナトゥーレが人気の理由は?

A.最初はスペインでも甘口タイプの方が好まれていました。しかし、飲んでいくうちに、人々はだんだん甘くないものを好むようになり、辛口が主流になってきました。


Q.ブリュット・ナトゥーレでも、ほのかな甘さを感じるのですが?

A.確かにブリュット・ナトゥーレには甘味は加えませんが、自然に3g程度(1リットルあたり)の糖分が残るためです。これは他のタイプでも同じで、例えば甘味を6g加えたブリュットの場合は、元々の残糖分と合わせて10g程度の甘さになります。


Q.タイプ別のCavaの楽しみ方を教えて下さい。

A.極辛口のブリュット・ナトゥーレは、アペリティフに飲まれることが一番多いのですが、甘いものにも意外と合いますよ。
お腹にたまるような料理には、ブリュットやセミ・セコ(=セミ・ドライ)を合わせるとよいと思います。
私は、肉料理のときはブリュット・ナトゥーレを、魚料理のときはブリュットを飲むことが多いですね。


Q.日本では今、フランスのシャンパーニュが大変人気ですが、それに対して、スペインのCavaの秘策は?

A.瓶内二次発酵という製法はCavaもシャンパーニュも全く同じです。違うのはぶどうの種類だけで、ワインのクオリティとしてはとてもよく似ていると思います。
"同等のクオリティなのに価格が安い!"という点が、Cavaの優れたポイントです(笑)。著名なヨーロッパ系航空会社のウェイティングルームでも扱っていただいているほど、当社のCavaの品質は保証済みです!


(*1)DO:
Denominacion de Origen(デノミナシオン・デ・オリヘン)の略で、原産地呼称ワインのこと。





ヴァルフォルモサでは、トラディショナルラインからワンランク上のノーブルライン、さらに最上級なセレクションラインと、バラエティ豊かな約40アイテムのワインとCavaのラインナップを持っています。
中でも、ワイナリーのあるペネデスがCavaの生産の中心地であるため、Cavaには特に力を入れているとのこと。

「当社はファミリーによるワイナリー経営をしているので、大量生産のCavaと当社のCavaを同レベルで考えずに飲んでもらいたいですね」と、語るラファエルさん。



今回私がテイスティングしたのは、トラディショナルライン(○)の中から3種類と、ノーブルライン(◎)の中から1種(Carla)の4種。

Vallformosa Brut Nature

Vallformosa Brut

Vallformosa Semi Seco

Vallformosa Carla Grand Reserva Brut




左から「Brut Nature」、「Brut」、「Semi Seco」、「Extra Seco」。

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インタビューを終えて

Cavaは通常は9ヶ月以上の瓶内熟成が必要とされていますが、グラン・レセルバともなると30ヶ月の熟成期間が必要で、ノーブルラインの『Carla』も30ヶ月熟成とのこと。これはさすがに複雑な味わいが楽しめました。

今回、私が特に気に入ったのが、『ブリュット・ナトゥーレ』。
極辛口といいながらも、やさしく、みずみずしい飲み心地で、もちろんこのまま飲んでも美味しく、しかも食事にも合わせやすいタイプだと感じました。料理は、あまり手をかけず、素材の持ち味を生かしたシンプルなものがいいかもしれません。

『ブリュット』、『セミ・セコ』になると、果実の甘味が加わり、ジューシーで心地よい飲み口が楽しめます。


*残念ながら、日本で手に入るのは、『ブリュット』と『セミ・セコ』の2アイテムのみ。『ブリュット・ナトゥーレ』や『Carla』、ラファエルさんが写真で抱えている最高級クラスの『Gala』は、スペインに行かなくては飲めません。
(→後日談ですが、このFOODEXでの評判がよかったので、『ブリュット・ナトゥーレ』が名前を変えて日本に入ってくるというお話を、原稿を書き上げた後に聞きました。楽しみですね!)


確かに"シャンパーニュ"は、その響きだけで私たちを酔わせてくれます。
"カバ"という名はユーモラスで、笑いを誘うかもしれませんが、ぶどうの違いによる個性が楽しめ、クオリティの面でもシャンパーニュにひけを取りません。

さまざまなシチュエーションやシーンに応じて色々なワインを飲み分けるのも、ワインの楽しみ方のひとつ。
コストパフォーマンスに優れたCavaは、あなたの毎日の生活の素敵なパートナーになってくれるかもしれませんよ?


*取材協力:中部貿易(株)
(注:2008年1月に社名を「株式会社アグリ」に変更)


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第 8回 Domaine Robert Arnoux@「キャッチ The 生産者」

2008-12-28 16:28:38 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年2月11日)

第 8回  Pascal Lachaux  <Domaine Robert Arnoux>



第8回目のゲストは、 フランスのブルゴーニュ『ドメーヌ・ロベール・アルヌー』の現当主パスカル・ラショーさんです。
ラショーさんは、日本各地でのテイスティングセミナーのため、第7回で登場したジャン・マルク・ピヨさんと一緒に、2004年12月に来日しました。


<Pascal Lachaux>
1962年生まれ。Beaune(ボーヌ)で薬剤師をしていたが、先代の娘との結婚をきっかけに、1985年にドメーヌ・ロベール・アルヌーに入る。
ディジョン大学で1年間醸造について学び、他のドメーヌでも研修を経験。先代の没(1995年)後は、ドメーヌ・ロベール・アルヌーの5代目当主となる。
現在、生産量の70%を輸出し、主要輸出先は、1位:イギリス、2位:日本、3位:アメリカ。



ロベール・アルヌーは、ブルゴーニュのCote de Nuits(コート・ド・ニュイ)地区にあるVosne-Romanee(ヴォーヌ・ロマネ)村の村はずれにドメーヌを構えています。
グラン・クリュであるRomanee-Saint-Vivant(ロマネ・サン・ヴィヴァン)、Echezeaux(エシェゾー)を筆頭に、ヴォーヌ・ロマネ1級や、お隣のグラン・クリュClos de Vougeot(クロ・ド・ヴージョ)、Nuit-Saint-Georges(ニュイ・サン・ジョルジュ)1級などを含め、現在は17種類のワインをつくっています。  

ブルゴーニュのドメーヌとしては珍しく、一般客向けのテイスティングルーム兼ショップを備えているので、ここでワインを気軽に試してから買うことができ、とても便利です。もしかしたら、稀少なヴィンテージのワインも手に入るかもしれません。
ブルゴーニュを訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみたいドメーヌのひとつと言えるでしょう。


ヴォーヌ・ロマネ村は、お隣のフラジェ・エシェゾー村と合わせて、"ヴォーヌ・ロマネ"のAOCを名乗るワインを生み出しています。
多くの著名なグラン・クリュ畑を抱え、ブルゴーニュ一有名な、いえ、フランス一、世界一有名とも言えるあの"ロマネ・コンティ"も、ここヴォーヌ・ロマネ村から生まれます。  

ヴォーヌ・ロマネのワインは華やかで豊かな香りがあり、ブルゴーニュにしてはスパイシーなニュアンスを持ち、みずみずしく、かつ優美で、長期熟成にも向くボディを持っていると言われています。


冬のVosne-Romanee村 (2003年12月訪問)


Q.先代のロベール・アルヌー氏の娘さんである奥さまとの結婚が、ワインづくりの道に入ったきっかけということですが?(奥さまは三姉妹とのこと)。

A,確かにそうですが、もともとは義父ロベールその人と、彼のつくるワインに魅力を感じたからです。
義父は私を本当の息子のように、また旧来の友達のようにも扱ってくれました。
そうした彼の人柄に惹かれたこと、そして、彼の人となりがワインにも反映されていたことが、私をワインづくりの道へと引き込んだのです。


Q.先代の時代と比べて、ワインづくりで変わったことは?

A.私が初めてワインをつくったのは1990年ですが、この10~15年で、ぶどう栽培においても醸造においても、かなり変わってきました。
栽培では、私はリュット・レゾネ(減農薬農法)を実施しています。土壌を大切にし、土壌の持ち味をぶどうに反映させるため、ここ6年ほどは除草剤も殺虫剤も使っていません。それが健全で完熟したぶどうを得るために必要なことと考えているからです。

収穫は手摘みで行い、摘み取ったぶどうの房がつぶれないよう、小さなカゴを使います。梗は100%除梗します。果実の15%ほどだけを破砕し、約18~22日間かけて発酵させます。
熟成の際の新樽の使用率は、村名クラスで30%、1級で60%、グラン・クリュは100%で、ワインにより14~18ヵ月間樽熟成します。
清澄作業もしませんし、フィルターもかけません。
瓶詰め後は、6~10ヵ月ほど寝かせてから出荷をします。 。


Q.あなたはリュット・レゾネを実施していることはわかりましたが、ビオディナミ(*1)に移行する予定はありますか?。

A.実は私も、月の満ち欠けに従って瓶詰めなどの作業をしていますが、今のところ、ビオディナミを採用しようとは思っていません。必要性からではなく、ビオディナミ自体が目的になってしまっている生産者が多いように感じるので…。


Q.薬剤師の経験はワインづくりに役立っていますか?

A.全く役に立っていませんね(笑)。
身体の不調を治すにはワインが一番ですよ(笑)。
でも、薬剤師の経験で"ホメオパシー"の理論を学び、それがワインづくりに非常に役に立つのではないか、と考えています。

注)ホメオパシー(Homeopathy)は、「同種療法」「同毒療法」「類似療法」などと訳され、「同じようなもの、似たものが病を押し出し、癒し、終わらせる」という考えに基づく療法です。
例えば、頭痛のときに鎮痛剤を飲めば、その痛みは和らぎますが、その原因そのものが除去されたわけではありません。これを繰り返すと、次第に鎮痛剤も効かなくなってしまう恐れがあります。
ホメオパシーでは、その症状(例えば頭痛)を引き起こす物質(自然界にあるものを使用)を超微量投与し、それにより、生体の自然治癒力を高め、治療につなげます。副作用もなく、欧米では非常に注目が集まっている療法です。


Q.あなたのワインづくりのコンセプトは?

A."自分の好きなワインをつくる"ということです。
私は自分の感性を信じ、フィーリングで働いていますので、その時の気分で、ワインも毎年違ってきているはずです(笑)。


Q.あなたの好きなワインは、シャンボール・ミュジニーと聞きましたが?

A.当ドメーヌでは、4つのコミューン(*2)にまたがる14haの畑から17種類のワインをつくっていますが、1999年に念願のシャンボール・ミュジニー(2ha)(村名クラス)を手に入れました。
シャンボールの、女性的で、フルーティーで、ふくよかで、エレガントで、チャーミングな点が非常に気に入っています。


Q.日本は2番目の輸出先となっていますが、輸出先によって、ワインの仕込み方法を変えていますか?

A.いえ、変えていません。日本はいいのですが、例えば○○○○など、私のワインを理解していない国には売りたくない、というのが本音です(笑)。  

注)○○○○に入る国名は聞きましたが、ここでは伏字とさせていただきます。みなさんの方でご推理下さい。ちなみに、アルヌーの輸出先上位3位に入っている国です。


(*1)ビオディナミ:
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。

(*2) コミューン:
フランスの最小行政区画のこと。市町村。

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今回のテイスティングセミナーで提供されたワインは下記の通り(全て赤)

1)Vosne-Romanee Les Hautes Maizieres 2000

2)Nuit-Saint-Georges 1er Cru Clos des Corvees Pagets 2000

3)Vosne-Romanee 1er Cru Les Chaumes 2001

4)Echezeaux Grand Cru 2001

5)Romanee-Saint-Vivant Grand Cru 2001

6)Vosne-Romanee 1er Cru 1976

7)Vosne-Romanee 1er Cru Les Suchots 1976




テイスティングをしてみると…  

ロベール・アルヌーのワインは、村名クラスでは心地よい素直な美味しさを感じさせてくれますが、1級になるとグンと凝縮感が増し、余韻も非常に長くなります。
さらに特級クラスになると、そこにエレガントさも加わり、無類の幸福感を与えてくれます。

今回は2)だけがニュイ・サン・ジョルジュです。

「ヴォーヌ・ロマネのワインは"エレガント"ですが、ニュイ・サン・ジョルジュには"力強さ"があります」とラショーさん。

たしかに、2)のワインのタンニンはキュッと引き締まり、やや冷たい堅さを感じさせますが、アタックはピュアで甘く、余韻の長さも光っています。

4)は2001年とまだ若く、タンニンも充分溶け込んでいないので、今飲むにはまだ早い感じがありますが、この凝縮感とエレガントな口当たりは、さすがエシェゾーです。
5)は香ばしい樽のロースト香があり、味わいもボリュームがありますが、酸に品の良さを感じます。
4)も5)も、今でもおいしくいただけますが、充分熟成させてから飲んでみたいワインだと感じました。

6)と7)は先代の時代のもの。
1976年は雨がなく、乾燥した暑い年だったとのこと。これらは2年前にリコルクされています。かなり色合いが薄れてきていますが、まだ酸がしっかりと残っているので、保存状態が良ければ、あと4~5年は耐えてくれそうです。
 
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インタビューを終えて



自称"トム・ハンクス"似(笑)というラショーさんは、ユーモアたっぷりで、とてもフレンドリー。

今回は、第7回のゲストであるジャン・マルク・ピヨさん(写真右)も同席してのインタビューでしたが、二人が並ぶと、ピヨさんの方が落ち着いて見えるのは(実際はピヨさんの方が3つ年下)、ラショーさんの、明るく、かつ軽やかなシャンソンの楽曲のような雰囲気を持っているせいかもしれません。

それは、"フィーリングが大事"という彼のワインづくりの姿勢にも現われているようです。
きっちりとした薬剤師時代より、自然とともにのびやかに生き、自由な感覚でワインをつくっている今の生活の方が、彼には合っているのかもしれません。

まさに、"水を得た魚"。

この先、彼がどんなワインを生み出してくれるのか、これからもロベール・アルヌーのワインから目が離せそうにありません。


*取材協力: Wijnhandel Herman B.V.

        (Special thanks to Masaki Takeshita)

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第 7回 Domaine Jean Pillot & Fils@「キャッチ The 生産者」

2008-12-28 15:46:54 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年1月21日)

第 7回  Jean-Marc Pillot  <Domaine Jean Pillot & Fils>



第7回目のゲストは、 フランスはブルゴーニュの生産者、ジャン・マルク・ピヨさんです。
ピヨさんはコート・ド・ボーヌの Chassagne-Montrachet(シャサーニュ・モンラッシェ) でワインづくりをしていますが、日本各地でのテイスティングセミナーのため、2004年12月に来日しました。
今回は、東京でのセミナーを終えたピヨさんに、彼のワインを飲みながらお話を伺いました。



シャサーニュ・モンラッシェは、隣接するPuligny-Montrachet(ピュリニー・モンラッシェ)とともに、偉大なるブルゴーニュの白ワインMontrache(モンラッシェ)やBatard-Montrachet(バタール・モンラッシェ)などを生み出す村ですが、グラン・クリュ以外では、いまひとつ印象が薄いAOCかもしれません。

じゃあ、グラン・クリュ以外の白ワインはどうなの?
また、実は生産量の半分以上を占めるという赤ワインについてはどうなの?と、実に疑問だらけです。

では、そんなシャサーニュ・モンラッシェでワインづくりをしているピヨさんのワインとは、一体どんなワインなのでしょうか?


<Jean-Marc Pillot>
1965年生まれ。シャサーニュ・モンラッシェで歴史あるドメーヌの5代目オーナーであり、エノロジスト(醸造家)。
12歳の頃から父の仕事を手伝う。ボーヌの醸造学校を卒業後、1985年にドメーヌに入る。
他のドメーヌでの修業も経験し、1986年から妹のベアトリスとともにドメーヌ・ピヨを引き継ぐ。
現在、生産量6万本のうち80%を輸出し、主要輸出先は、1位:アメリカ、2位:イギリス、3位:日本。




Q.ドメーヌ・ピヨの歴史を教えて下さい。

A.祖父の代まではトヌリエ(樽職人)もやっていました。
1900年代の頃はバルク売りをしていましたが、1930年頃からは瓶詰めをするようになり、仕事量が増えたと聞いています。
父ジャンの代になると畑も増えてきたので、樽作りはやめて、本格的にワインづくりに取り組むようになりました。


Q.現在のドメーヌの体制を教えて下さい。

A.父はすでに引退しましたので、母と妹と私の3人でやっています。家族経営の小さなドメーヌです。私の妻はドメーヌの仕事には関わっていません。
ピノ・ノワールとシャルドネを5haずつ、合計10haの畑から赤ワインと白ワインをつくっています。


Q.あなたのワインづくりについて教えて下さい。

A.できるかぎり"良いぶどう"をつくるようにしています。例えば、最適な時期に余分な芽や葉を摘み取り、グリーンハーベスト(*1)も行います。
これらは全て手作業で、収穫ももちろん手摘みで行います。

収穫したぶどうは100%除梗し、ピュアなアロマを残すよう、空気圧でプレスします。こうすると、絞ったジュースが酸化しません。
マロラクティック発酵(MLF)(*2)は毎年100%行い、MLFが終わるまでバトナージュ(*3)は欠かしません。
新樽の使用率は25~30%で、12ヵ月の熟成期間中、オリ引きは1回のみです。フィルターはかけません。


Q.シャサーニュ・モンラッシェの特徴は何でしょうか?

A.全体的に "力強さ"が特徴と言えるかと思います。
また、食事を楽しむためのワインでもありますし、誰にでも好きになってもらえるワインであると思います。
土壌的には、岩盤がむき出しになって崖になっている場所があり、その岩盤から直接ぶどうの樹が生えていますので、そこから吸い上げたミネラルで、生き生きとしたワインができます。


Q.シャサーニュは"白"のイメージが強いですが、赤ワインの特徴は?

A.シャルドネ用とピノ・ノワール用の畑は違います。ピノ・ノワールを植えている畑には、コート・ド・ニュイのヴォーヌ・ロマネと同じ、ジュラ紀に堆積した土壌が少し見られます。
シャサーニュの赤は、5年から8年熟成させると飲み頃になってくるワインです。ヴォーヌ・ロマネと同じ土壌の赤、ということを考えると、プライス的にお買い得ではないでしょうか?(笑)


Q.あなたとお父さんのワインのスタイルの違いは?

A.父は15~18ヵ月の樽熟成をしていました。が、長く樽に入れていると、せっかくのアロマが失われてしまいますので、私は1990年からは樽熟成は12ヵ月にし、フレッシュ感を残したまま瓶詰めするようにしています。
こうすると、花やフルーツのフレッシュな香りが残ります
瓶詰め後は、セラーで1年間寝かせてから出荷します。


Q.リュット・レゾネ(減農薬農法)でぶどうを栽培しているそうですが、ビオディナミ (*4)については、どのように考えていますか?

A.98年のように、ウドンコ病やベト病が広く発生したときには、ビオディナミが役に立たない年もありました。
私は、環境を守ることを第一としていますので、薬品を使わざるを得ない場合は、必要なところにのみかけ、噴霧器は使いません。また、益虫を増やすことができるような畑をめざしています。


(*1) グリーンハーベスト:
1本のぶどう樹の房数を制限するため、まだ未熟な段階の青い房を摘み取って落とすこと。

(*2) マロラクティック発酵(MLF):
主発酵の後、ワイン中のリンゴ酸が乳酸菌の働きによって乳酸に変化する現象。ワインの酸味を和らげ、複雑な香味を増す効果などがある。

(*3)バトナージュ:
タンクや樽の中のオリを攪拌して混ぜること。酵母に含まれる旨味成分を抽出し、酸化を促す効果などがある。

(*4) ビオディナミ:
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。





今回のテイスティングセミナーで提供されたワインは下記の5本(いずれも白)

1)Saint Romain Blanc 1999

2)Chassagne-Montrachet 1er Cru les Marcherelles 2000

3)Chassagne-Montrachet 1er Cru Morgeots 2000

4)Chassagne-Montrachet 1er Cru les Vergers Clos Saint Marc 2001

5)Meursault Genevrieres 1er Cru Cuvee Baudot 2001 Hospices de Beaune


ドメーヌ・ピヨでは、白のトップワインとして、グラン・クリュのChevalier-Montrachet(シュヴァリエ・モンラッシェ)、また、Puligny-Montrachetの1級や、Meursault Charmes(ムルソー・シャルム)など、赤ワインでは、シャサーニュ・モンラッシェ1級はもちろん、お隣の村、Santenay(サントネイ)のワインもつくっています。


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インタビューを終えて


一見まじめな職人風で、最初はちょっと口数の少なかったピヨさんでしたが、グラスが進んで口もだんだんとなめらかになってくると、

「僕って、あの自動車会社社長のゴーンに似ていない?」

と、一番似ているという横顔の角度でポーズまで取ってくれました。


この横顔、本当にゴーン氏そっくり!

そんなお茶目なピヨさんに、同席していた一同はみな大爆笑!
年齢をうかがったら意外と若く(失礼)、話をすればするほど、彼の魅力にどんどんと引き込まれていきました。



さて、肝心のワイン。
今回のテイスティングセミナーで提供されたのは白ワインばかりですが、どのワインも酸がしっかりとベースにあるのを感じました

やや樽のニュアンスが強めに感じる(2)や(4)、香ばしいナッツの香りを持ち、デリケートで心地よい酸味の(3)など、それぞれに個性があります。
特に(4)の酸には力強さがあり、しかもその余韻が非常に長く感じられました。これは長期熟成に耐えられるワイン、とピヨさんが言うだけのことはあります。

年にもよりますが、シャサーニュの白は10~20年は熟成可能とのこと。
もちろん、良い状態で保管できればの話です。


今回テイスティングした1級クラスのシャサーニュは、"偉大"とまでは言えないものの、そっとそばに寄り添ってくれるようなワインたちで、食事のお供にはもちろん、くつろぎの時にそのままずっと飲み続けていたいような、非常に心地よい余韻が実に魅力的でした。

普段から気軽に、そして長く熟成させたものはちょっと特別なときに。
そんな幅広い楽しみ方ができるのが、シャサーニュの魅力かもしれません。


*取材協力: Wijnhandel Herman B.V.

       (Special thanks to Masaki Takeshita)

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第 6回 Weingut Louis Guntrum@「キャッチ The 生産者」

2008-12-28 13:47:57 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2004年12月11日)

第 6回  Louis Konstantin Guntrum  <Weingut Louis Guntrum>



第6回目のゲストは、 ドイツのRheinhessen(ラインヘッセン)にある"Weingut Louis Guntrum"(ワイングート・ルイ・グントルム)の若き11代目、ルイ・コンスタンティン・グントルムさんで、今回はドイツを訪問してのインタビューです。(2004年10月訪問)


<Louis Konstantin Guntrum>
1648年から続くワイナリーの11代目。実際にはもっと古い歴史があるようですが、戦争で記録が失くなってしまったとのこと。
グントルム家が現在の土地に移ってきたのは1920年で、1923年には現醸造所が建てられました。伝統を重んじながらも近代的技術を用いたワインづくりがグントルムのコンセプト。
輸出先は世界約80ヶ国にもわたり、現在コンスタンティンは、経営者としての敏腕ぶりを発揮中です。



ドイツのワイン生産地は国土の南西部に集中していますが、ラインヘッセンはちょうどそれらの中心付近に位置し、北側はラインガウ、西側はナーエ、南側はファルツといった生産地域に囲まれています。
ラインヘッセンはドイツ最大のワイン生産地で、品種ではミュラー・トゥルガウ、ドルンフェルダー、シルヴァーナー、リースリングの順に生産が多く(ドルンフェルダー以外は白品種)、どちらかというと大量生産の安ワイン的なイメージがありました。
しかし、そのイメージを脱却しよう!という若い世代の動きも活発になりつつあり、今後注目したい地域のひとつといえます。



ニーアシュタインの丘から望むライン河

ルイ・グントルムの醸造所はNierstein(ニーアシュタイン)という地区にあります。醸造所の目の前をライン河が流れているので、道路が発達していなかった時代には、船を使ってのワイン輸送に大変便利なロケーションだったようです。

ライン河はマインツで西に向きを変えるまで、ラインヘッセン地域の東側を南から北に流れています。ここニーアシュタイン付近では、ライン西岸の緩やかに連なる丘の斜面にぶどうが植えられ、畑は東から東南を向いています(この斜面は"ラインテラス"と呼ばれています)。
ライン河の東の対岸は見渡す限りの平地で、こちらはジャガイモ畑だそうです。



ライン河に向かう急な斜面のラインンテラスの畑

訪問した10月の後半は、ちょうど仕込みの真っ最中。せっかくだから、この時期ならではのテイスティングをしましょうと、醸造所地下のステンレスタンクから直接白ワインのモスト(*1)をいただきました。

仕込み直後のものから、だいぶワインに近づいてきたものまでありましたが、外観はどれも"にごり酒"のように濁っています。

まず、仕込み直後のものの味わいはぶどうジュースそのもので、アルコール度数も1%しかありません。
少し日数を経たモストもまだまだジュース風で、アルコール度数は5~6%。
その次は"Federweisser"(フェーダーヴァイサー)(*2)という状態のものでしたが、これも口当たりがよく、ゴクゴク飲めてしまいますが、「これをくいっと飲んだら、かなり危険だよ(笑)」とコンスタンティンさん。
実はこれのアルコール度数は12%でした。

なお、エクスレ度(*3)がゼロ?!というモストも試してみましたが、舌が痺れるほど超辛口でエグみもあり、この段階ではとても飲めたものではありません。これが華麗な辛口ワインに変化するというのですから、なんとも不思議なものです。



地下セラーで(左は2004年4月に就任した醸造長)


訪問した日はお天気も良かったので、「畑の中でテイスティングをしましょう!」と言うコンスタンティンさんの提案で、ニーアシュタインの丘の上に移動することに。
畑まで車で狭い農道を登って行きますが、ここの"ラインテラス"はとても急で、作業する人にとってはかなりキツそうです。

土壌はサラサラの赤土で、土が固まってスレート状になった破片があちこちに散らばっていました。
余談ですが、帰国後、履いていたクツの底や側面を見たら、ここの赤土がべったりと付いていました。かなり粒子のキメは細かいようです。


今回のテーマは『辛口リースリング』ということで、コンスタンティンさんが以下の白ワイン7本を用意してくれました。(最後の2本はオマケの甘口です)

1)Niersteiner Pettenthal Riesling Kabinett Trocken 2003

2)Guntrum Classic Oppenheimer Sacktrager Riesling Spatlese Trocken 2002

3)Niersteiner Bergkirche Riesling Kabinett 2003

4)Niersteiner Rehbach Riesling Spatlese 2003

5)Oppenheimer Schutzenhutte Riesling Auslese 2002

6)Pinguin Eiswein 2003 (甘口)

7)Oppenheimer Kreuz Silvaner Beerenauslese 1976 (甘口)




Q.ラインヘッセンのワインの特徴は?

A.リースリングは酸に特徴があり、クリスピーで、グリーンアップルのニュアンスもあります。
リースリングやシルヴァーナーはラインヘッセンでは歴史ある品種で、ルーレンダー(ピノ・グリのドイツでの呼び名)も伝統的ですが、今はマーケットから消えつつあります。
しかし、これら各種のぶどうからつくられるさまざまなタイプのワインは、さまざまなシーン別に楽しむことができるワインです。


Q.ルイ・グントルムのワイン生産について教えて下さい。

A.自社畑は9haですが、50ha分のぶどうを買っています。全体の50%がリースリングで、残り50%が他のぶどう(約10種類)からのワインです。白ワインが多いですが、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワールのドイツでの呼び名)やカベルネ・ソーヴィニヨンなどの赤ワインもつくっています。


Q.貴社ではリースリングを多く生産しているようですが、リースリングの魅力とは?

A.リースリングの特徴は"酸"にあります。この酸は食事のためにあり、食欲を湧き立たせてくれます。また、クリームたっぷりの食事にもこの酸が合うんですよ。ほら、口の中がさっぱりするでしょう?
リースリングは健康にも良く、社交的な飲み物で、良いディスカッションのお供にもなったりします。(-いいことづくめですね-笑)。


Q.土壌の違いによるワインの味わいの違いを教えて下さい。

A.この地区で代表的な村は"ニーアシュタイン"と"オッペンハイム"ですが、
ニーアシュタインの畑はサラサラの赤土ですので、ワインもライトなタイプに仕上がります。
それに対して、オッペンハイムは重たい土質なので、土壌の水分をよく保ち、ワインはリッチでフルボディタイプになります 。


Q.スクリューキャップタイプの栓のワインもあるようですが?

A.当社では1リットルボトルにスクリュータイプの栓を採用しています。これらはスーパーマーケットなどで売られるデイリータイプ用ですが、スクリューキャップでも充分その役目を果たしますし、使い勝手も良いのではないでしょうか。
25年以上保管するワインであればコルクの方が望ましいと思いますが…。
なお、"王冠"タイプの栓は、ワインをフレッシュに保つことができる栓だと思います。


Q.このリースリングは一部が貴腐化(*4)していますが、収穫はどのようにするのですか?

A.まず、貴腐化した部分だけをていねいに手で摘み取ります。貴腐菌はその粒の周辺の粒にも付くことになるので、後日、それらの粒が完全に貴腐化したら摘み取る、ということの繰り返しで、何回かに分けて収穫することになります。




Q.ぶどうはすべて手摘みですか?

A.畑によって違い、手摘みのところもあれば、機械で収穫する畑もあります。
ちょうど今機械で収穫している畑がありますので、見に行きましょう!



丘の上からだいぶ下った、ちょうどライン河に面した畑に到着すると、赤い収穫機が活躍していました。畑では機械を操作する人がひとりで広い畑を担当していました。収穫機のスピードはかなり速く、あっという間に斜面を降りて行きました。


(*1) モスト:
ぶどうから得られる果汁で、赤ワインなどは果皮や種子も含む。

(*2) フェーダーヴァイサー:
まだ発酵途中の濁ったワインで、いわば"どぶろくワイン"。仕込みから数週間程度の限られた時期の9~10月頃に、ワイナリーの直売所などで買うことができる。まだ炭酸ガスが発生しているのでコルクは打たれておらず、残念ながらお土産には不適当。地元で飲むのが楽しい"旬"のワイン。

(*3)エクスレ度:
ドイツの物理学者エクスレが発明した、果汁の糖度を調べる比重計によって表される数値のこと。果汁に含まれる糖分はアルコールに変わるため、ワインになったときのおよそのアルコール度数がエクスレ度から計算できる。

(*4) 貴腐化:
ボトリティス・シネレア菌の働きでぶどう粒の水分が失われ、エキス分だけを残した干しぶどう状態になること。こうして貴腐化したぶどうから天然の甘口のワインができるが、貴腐化する条件はかなり厳しいので、貴腐ワインは非常に稀少で高価。

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インタビューを終えて  

伝統あるワイナリーに生まれながらも、若い世代らしく、最新技術の導入、外部からの新醸造長の抜擢、販売ネットワークの拡大など、非常に積極的で意欲的なコンスタンティンさん。
英語も堪能で、スーツ姿もぴしっと決まり、どこから見ても有能なビジネスマンですが、収穫のときは自らも畑に出るなど、現場をとても大切にしている様子。
明るく、人見知りしない気さくな性格と行動力が彼の武器のようで、彼の力で、ラインヘッセンのワインの評価がグーンと高まる日が来るのも、そう遠いことではないかもしれません。

ホームページ→ http://www.guntrum.de




さて、今回訪問したドイツですが、実は2005~2006年は日本におけるドイツ年、ということをご存知でしたか?ドイツの文化やスポーツなど、さまざまな分野でドイツが注目を浴びそうです。
もちろんドイツワインにも注目が集まること必至です。ドイツのワイン生産地では、この10年でかなり大きな変化が起こっています。ぜひ新しいドイツに目を向け、素晴らしいドイツワインを発見してみて下さい。



ドイツといえば、ハム類が自慢!


(*取材協力:ドイツワイン基金 http://www.dwfjp.com )

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第 5回 Domaine C. et Claude Marechal@「キャッチ The 生産者」

2008-12-28 11:18:08 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2004年10月11日)

第 5回  Claude Marechal  <Domaine Catherine et Claude Marechal>



第5回目のゲストは、 フランスのブリニィ=レ=ボーヌ(Bligny-les-Beaune)村の"Domaine Catherine et Claude Marechal"(ドメーヌ・カトリーヌ・エ・クロード・ マレシャル)のオーナー、クロード・マレシャルさんです。

マレシャルを訪問したいと思ったのは、東京で飲んだ彼のワインのピュアでみずみずしいおいしさに感動したからです。
ブリニィ=レ=ボーヌという村のことも、非常に気になりました。彼はどんなところで、どんなふうにワインをつくっているのでしょうか?

<Claude Marechal>
ドメーヌの設立は1981年。
以前は他の仕事をしていたクロードは、カトリーヌと結婚した後、実家に戻り、ワインづくりに携わるようになりました。
現在は夫婦二人三脚でぶどう&ワインづくりに力を注いでいますが、仕事を離れると、小さな男の子を持つパパの顔に戻ります。リビングにはおもちゃがあちこちに散らばり、ベビーの写真が飾られていました。



そもそも、ブリニィ=レ=ボーヌ村ってどこにあるのでしょう?

実はブルゴーニュにあるのですが、この村の名前のAOC(*1)名がないため、残念ながら、ブルゴーニュの生産地マップにはめったに載っていません。

ブルゴーニュの中心ボーヌの街から南に向け、国道74号線を3kmほど車で走らせると、"Bligny-les-Beaune"の標識が見えてきます。その標識を左折し、ちょっと日本の田舎的な風景にも見える平坦な畑の中を通り抜けると、そこはもう村の中。  
しかし、本当に小さな村です。ドメーヌはどこ?と探しているうちに、車は村を通り過ぎそうになりました。村の中は人っ子ひとりとして歩いていないので、道を尋ねることもできません。
なんとか無事に到着すると、ダイニングではマレシャル一家と友人たちとのランチがちょうどお開きになるところでした。
クロードのパパもかなりいい感じにご機嫌状態(下のにこやかなお顔の写真をごらん下さい)です。


マレシャルではコート・ド・ボーヌエリアのワインを生産しています。
ここを訪問したのはこの前の冬だったので、樽に入れたばかりの2003年のワインを中心にテイスティングさせてもらいました。下記はその一部です。

●Bourgogne Aligote (B)

●Bourgogne Blanc Gravel (B)

●Bourgogne Rouge Gravel (R)

●Auxey-Duresses (B) (R)

●Ladoix-Serrigny (R)

●Chorey-les-Beaune (R)

●Savigny-les-Beaune (B) (R)

●Savigny-les-Beaune 1er Les Lavieres (R)

●Volnay (R)

●Pommard La Chaniere (R)

(注)(B)は白、(R)は赤ワインです





Q.ブリニィ=レ=ボーヌ村で収穫されたぶどうからのワインは、どういう名前で出されるのですか?

A.ご存知のように、"ブリニィ=レ=ボーヌ"というAOC名はありませんが、ここもブルゴーニュですので、白は"ブルゴーニュ・ブラン"、赤は"ブルゴーニュ・ルージュ"として出しています。
赤白とも"Gravel"という畑名を付けています。

 
Q.ぶどうの樹齢はどのくらいですか?

A.Ladoixは20年くらいですが、Choreyは30年、Savignyは35~40年、Volnayは50年で、ラベルに"ヴィエーユ・ヴィーニュ"(*2)と入れているものもあります。
 

Q.現在はブルゴーニュでもビオディナミ(*3)の生産者が増えていますが、あなたのところはどういう農法ですか?

A.私のところはビオディナミではなく、必要最小限の除草剤や殺虫剤類を使う"リュット・レゾネ"です。ビオディナミは大変です。
 

Q.あなたのワインづくりのコンセプトは何ですか?

A. "ベスト・フルーツ"を大切にすることを心がけています
そのため、樽の風味が勝ち過ぎないよう、新樽の使用はできるだけ控えめにし(平均20%ほど)、キュヴェによっては新樽は使わず、3~4年経った樽を使うようにしています。
また、ろ過にはこだわりがあり、ワインにフィルターはかけません

 
Q.あなたにとって"ワイン"とは?

A.ワインは生きています。決して同じものはなく、いつ飲んでも違っています。今日はこう感じても、明日はまた違ってきます。それがワインの面白さだと思っています。

(*1)
Appellation d'Origine Controleeの略で、原産地統制名称ワインのこと

 
(*2)
"vieille"(=古い)+"vigne"(=ぶどうの樹)で、樹齢の古いぶどうの樹からつくられたワインを意味し、"V.V."と略されたりする。何年以上をV.V.にするかは、各生産者の捉え方によっても違う。

(*3)
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。

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インタビューを終えて  

樽に入れられたばかりの2003年のワインはどれも色が濃く、よく熟した果実感がたっぷり。まだワインになっていない、フレッシュでプチプチとしたアタックが舌に小気味良く当たります。
しかしながら、通常は酸味が強いとよく言われる"アリゴテ"には熟したパイナップルのようなニュアンスがあり、とてもまろやかな味わいでした。

白では珍しい"サヴィニ・レ・ボーヌ"があり、そのやさしくふくよかな味わいには、一気にファンになってしまったほど。見かけたらぜひ試してみて下さい。
"ポマール"になるとさすがにパワフルで逞しく、長い熟成の必要性とポテンシャルを感じました。


とってもにこやかなクロードのパパ


約20種のテイスティングを終えて感じたのは、
彼のつくるワインにはすべて、自然な果実のピュアで凝縮したおいしさがある、ということです。
突き刺すような攻撃的なところは一切なく、なめらかな舌触りで、すうっとノドをすべり落ちていきます。

おとなしくシャイな感じの彼ですが、ワインに向かったときに見せる鋭い目の奥の輝きが、妥協を許さない意志の強さを物語っています。
それが、やさしいのに凝縮している彼のワインに現れているのでしょう。

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第 4回 Domaine du Deffends@「キャッチ The 生産者」

2008-12-27 13:15:46 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2004年9月11日)

第 4回  Anne de Lanversin  <Domaine du Deffends>



第4回目のゲストは、
フランスのコトー・ヴァロワ(Coteaux Varois)の "Domaine du Deffends" (ドメーヌ・デュ・デュフォン)のヴィニュロン(*1)、
Anne de Lanversin (アン・ドゥ・ランヴェルサン)さんです。


<Anne de Lanversin>
ドメーヌの現オーナーであり、エクス・アン・プロヴァンス大学で教鞭をとっている父ジャックと母スゼルの長女として生まれる。
会社勤めの傍ら、自らヴィニュロンとしてぶどう栽培に携わっています。
兄エマニュエルと妹マリー・リエスもドメーヌを手伝い、3兄妹で両親を支えています。
若々しくチャーミングな長女アンは、3歳と7歳の男の子のママでもあります。



コトー・ヴァロワは、1993年にAOC(*2)になったばかりの新しいアペラシオン(*3)で、日本ではまだあまり知られていません。
アンによると、イタリアのピエモンテ地方に似ていて、ぶどうづくりに適している土地だとか。

ドメーヌ・デュ・デュフォンは、現当主ジャック・ドゥ・ランヴェルサン(アンの父)が畑にぶどうの苗を植えた1968年に、その歴史が始まりました。
最初の頃は協同組合にぶどうを売っていましたが、1982年からドメーヌでのワインづくりがスタートしました。
ジャックはブルゴーニュのドメーヌ・デュジャック(Domaine Dujac)で修業を積んでいます。

現在所有する畑は14ha。ぶどうの出来によって、生産するワインは年によって異なりますが、主に以下のラインナップでつくられています。


Vin de Pays du Var Champs du Sesterce  (Blanc)

Coteaux Varois Rose d'une Nuits   (Rose)

Coteaux Varois Clos du Becassier  (Rouge)

Coteaux Varois Clos de la Truffiere  (Rouge)





Q.コトー・ヴァロワという地域はまだ馴染みがないのですが、どういう土地ですか?

A.コトー・ヴァロワはマルセイユの北東、エクス・アン・プロヴァンスの東、トゥーロンの北側にあります。オーレリアン山、サント・ボーム山、サント・ヴィクトワール山という3つの山に囲まれ、孤立したエリアになっています。

プロヴァンスにはコート・ド・プロヴァンスAOCが東と西に飛び地状にありますが、ちょうどその間にコトー・ヴァロワがあります。小高い丘になっていて、川が流れ、水が豊かな土地柄です。

プロヴァンスの他の地域は、“乾いた”特徴を持つプロヴァンスなのですが、コトー・ヴァロワと呼ばれ、オリーブの樹も多く植えられています。
土壌は石灰質で水はけがよく、痩せています。


Q.コトー・ヴァロワのワインの特徴は?

A.プロヴァンスというと”ロゼワイン”の印象が強く、実際にも多くつくられていますが、コトー・ヴァロワでは赤ワインが中心です。しかも、長期熟成をさせるタイプが多く生産されています。
ワインの性格はパワフルですが、複雑でデリケートでもあります。
土地柄、畑のパーセル(区画)は小さく、規模も小さいところが多いのですが、とても強い意志を持った生産者ばかりです。いくつかの協同組合もあります。


Q.コトー・ヴァロワでは、赤ワインにはカベルネ・ソーヴィニヨンが使用品種として認められているんですね?デュフォンでもカベルネを栽培しているようですが?

A.デュフォンでは、最初はグルナッシュとサンソーだけ植えていたのですが、近くにカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーの素晴らしいワインをつくっている生産者があったので、勉強に行きました。
1993年のAOC認定の背景には、その素晴らしいカベルネとシラーがあったから、という理由もあったそうです。
私のところの代表ワイン“クロ・ド・ラ・トリフィエール”も、カベルネとシラーのブレンドなんです。


Q.デュフォンのワインづくりのコンセプトは何ですか?

A.テロワールを大切にするということです。そのパーセル(畑の区画)のキャラクターをワインに反映させたいと思っています。
私たちは、以前はぶどう生産者でもあったので、ぶどう生産者の気持ちを大切にしながらワインをつくっています。


Q.デュフォンのワインをお料理に合わせるとしたら、何がいいですか?

A.白ワインは、コキーユ・サンジャック(*4)などがいいですね。日本のお寿司にも合うと思います。

ロゼは食事の前のアペリティフとして。

赤ワイン、特に“クロ・ド・ラ・トリフィエール”は、その名前の通り、“トリュフ”(*5)に合わせると最高です。フレッシュなトリュフを、塩とオリーブオイルで、それにパンを添えていただきます。


(*1)
ぶどうの栽培に従事する人のこと

(*2)
Appellation d'Origine Controleeの略で、原産地統制名称ワインのこと

(*3)
"アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ"の略で、一般的には(*2)のAOCで認められた原産地名称を指して使われることが多い。

(*4)
帆立貝のこと。バターやホワイトソースでグラタン風に調理することが多い。

(*5)
土の中に自生するキノコの一種で、超高級食材として有名。  

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インタビューを終えて

お料理との相性の答えに"トリュフ"が出てきました!私は「日本ではフレッシュのトリュフは高級食材ですから、そんな食べ方はできませんよ(笑)」と応戦。

“クロ・ド・ラ・トリフィエール”は、トリュフの採れる畑からのぶどうでつくられているため、その名をつけたということですが、実際この地方ではトリュフが採れ、デュフォンのぶどう畑のまわりの森でもトリュフがよく見つかるとか。ホント、羨ましい限りです。  

今回はトリュフとのマリアージュは実現しませんでしたが、“クロ・ド・ラ・トリフィエール”の2001年と1990年のヴィンテージを飲ませていただきました。

2001年のものはスパイシーでコクがあり、土やミネラルの風味を感じる若々しいワインでしたが、14年の歳月を経た1990年ヴィンテージは非常によく熟成しており、官能的なニュアンスさえ感じるまろやかさと艶やかさがありました。

アンによると、「これは、いつ開けても楽しめるタイプのワインなんですけど、まだまだ熟成しますよ~」とのこと。

熟成したプロヴァンスの赤ワインなんて、なかなかお目にかかれる機会のない稀少モノ。コトー・ヴァロワなんていう新しいアペラシオンで、こんなポテンシャルを持ったワインがつくられていたなんて、びっくりです。

となると、この コトー・ヴァロワ、今後ぜひ注目したい生産地ですね!


http://www.deffends.com


(輸入元&取材協力:横浜君嶋屋)


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第 3回 Mas de Libian@「キャッチ The 生産者」

2008-12-27 09:30:17 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2004年7月11日)

第3回  Helene Thibon  <Mas de Libian>



第3回目のゲストは、フランスはコート・デュ・ローヌのドメーヌ“Mas de Libian”(マス・ド・リビアン)のオーナー、Helene Thibon(エレーヌ・ティボン)さんです。

初めて日本を訪問し、「久しぶりのバケーションを楽しんでます」と屈託なく笑うエレーヌ。若くして(しかも美しい!)ドメーヌを引き継ぎ、現在はご主人のアランと力を合わせ、また、引退したご両親も手伝って、4人でドメーヌを切り盛りしています。
メカニックなことは男性陣が、営業的な面は女性陣が主導権を取りつつも、大事なアッサンブラージュ(*1)などは常に4人で決めているという、とても仲のよいファミリーです。


<Helene Thibon>
1974年12月11日生まれ。血液型はO型。3人姉妹の長女。ハンサムなご主人アランとの間に11歳の男の子がいます。
オフのときも“試飲”をしているという熱心なエレーヌは、植物や花が大好きで、家の庭の手入れが趣味とか。
インタビュー前日には、上野の「ぼたん園」を楽しんできたそうで、日本の「お茶」の木にも興味を持っているという、根っからの植物好き。



現在のラインナップには、下記のワインがあります。(2004年の春時点)

Vin de Pays Coteau d'Ardeche 2003(Rouge)

Cotes du Rhone Blanc 2002

Cotes du Rhone Rouge 2002

Cotes du Rhone Village 2002(Rouge)

La Calade 2002(Rouge)





Q.マス・ド・リビアンのあるロケーションは、どんなところですか?

A.南ローヌでのアヴィニョンから北西に車で1時間ほどのところにあります。アルデッシュ県の南の端に位置し、ローヌ河の右岸です。
乾燥した北風、ミストラル(*2)の影響がありますが、冬は比較的暖かく、夏は家の中でも35~40℃になるほどの暑さです。
畑は全部で17haありますが、この地域は赤ワイン用品種がほとんどで、私のところも白用品種は1.5haしか持っていません。


Q.畑には大きな石がゴロゴロしていると聞いたのですが?

A.大きいもので赤ちゃんの頭くらいの丸い石がゴロゴロしています。
この石が日中に受けた太陽の熱を夜間も保ってくれるのです。この石の層はどれくらの深さまであるのかと思い、掘り返してみたことがあるのですが、1mまで掘ったところで諦めました(笑)。数mはあるみたいです。
この石の層の下に粘度層があり、ぶどうの根はそこまで伸びて水分やミネラルを吸い上げています。
こんな土壌なので収穫量は自然と減ってしまい、収穫量は平均して15~30hl/haです。他に粘土石灰土壌の畑もありますが、そちらの収穫量は40hl/haです。


Q.昔からビオロジックでぶどうを栽培していたのですか?

A.1670年から農業をしていましたが、ぶどうだけでなく色々な農作物をつくっていました。その頃はワインは自家用のみでした。しかし、1870年頃にフィロキセラでぶどうは死滅してしまい、その後30年は試行錯誤の時期があったと聞いています。
本格的にワインをつくり始めたのは父の代からで、1970年にカーヴを建て、今に至っています。昔から現在まで、農薬も化学肥料も一切使っていません。


Q.かなり古いぶどうの樹があるということですが、樹齢は平均でどのくらいですか?

A.フィロキセラで死滅した後、1902年に植えられたグルナッシュの樹があります。すでに100年が経っていますが、実はこの樹からのぶどうはそれほど品質が優れているわけではなく、珍しいからブレンドしています(笑)。
白品種でクレレットの樹齢75年の樹がありますが。これは素晴らしいワインになります。
ほかのぶどうの樹齢はバラバラですが、平均すると40年くらいです。


Q.マス・ド・リビアンのワインの特徴、コンセプトは何でしょうか?

A.この土地の土壌と収穫年の特徴を反映させたワインをつくりたいと思っています。また、ワインは飾るものではなく、すぐに楽しく飲めるもの、と考えていますので、自然で、ピュアで、バランスよく、エレガンスを感じさせるものを目指しています。

私が一番愛するぶどうは“グルナッシュ”なのですが、みなさんが思うよりもずっとやわらかでエレガントなワインになります。但し、南のワインですので、少し冷やし気味の16℃以下程度で飲むと、より美味しくいただけると思います。


(*1)
アッサンブラージュ:仕込んだワインを瓶詰め前にブレンドすること。
(*2)
ミストラル:南フランスで、ローヌ河の谷間や海に向かって吹く北(西)風のこと。

--------------------------------------

インタビューを終えて

今回はエレーヌのご主人のアランも同席してくれたのですが、活発な彼女に対して、アランはとってもシャイで無口。
「彼は口ベタだから、営業的なことは私と母が取り仕切っているのよ(笑)」とエレーヌ。

南仏の太陽のように明るくナチュラルなその姿は、彼女のつくるワインにも現われています。
ふっくらしながらも酸がきゅっと引き締まった白ワイン、濃厚過ぎず、軽快な口当たりなのにタンニンの輪郭がはっきりとしている赤ワインは、いずれも2,000円以下というコストパフォーマンスの良さ!
スペシャル・キュヴェの“ラ・カラード”はさすがにお値段も少々上がるものの、ムールヴェードル主体でアッサンブラージュしているので骨格がしっかりとし、果実味と旨味の乗った逸品でした。

ローヌは強すぎて、ちょっと…という方でも、マス・ド・リビアンのワインを飲むと、きっとローヌ好きになること間違いなしですよ!


(輸入元:ソレイユ・テルクール)
(取材協力:クラブ・パッション・デュ・ヴァン)

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