暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

白露の朝茶事を終えて・・・1

2017年09月16日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会

  ススキの穂が顔を出し、いよいよ秋の到来です


「9月2日の白露の朝茶事へいらっしゃいませんか?」
というお誘いをブログへ掲載したのは暑い暑い8月3日のことでした。
年2回(風炉と炉の時期に)お茶サロンを心掛けていますが、思い立って番外編のお声掛けをしました。
とても楽しみにしていたのに夏風邪がなかなか治らず、3日前まで開催を迷っていました・・・

9月2日(土)の「白露の朝茶事」は8時半の席入り、あいにく朝から雨が降っていました。
8時過ぎ、お客様が到着したようです。
待合の掛物は「静寂」と書かれた扇子、棋士の趙治勲筆です。

待合から板木を打つ音が高らかに聞こえてきました・・・・1、2、3、4、5。
「さぁ~おもてなしをしっかりね!」と自分に気合を入れ、茶事のスタートです。
汲み出しは手付ガラスカップ、冷えた梅ジュースをお出ししました。


  雨の音にいっそうの静寂が・・・・

亭主も心ひそかに楽しみにしていた、庭の草木の白露を愛でながらの席入りはできなかったのですが、
「雨にも負けず・・」参席してくださったお客様お一人お一人と、「出会い」の素晴らしさを感じながらご挨拶を交わしました。

正客はWさま(川崎市麻生区)、第4回お茶サロン「春は名のみの正午の茶事」、第5回お茶サロン「野の花を愛でる茶会」に続いて参加してくださいました。今、お茶事が楽しく、お茶事に燃えているご様子がうかがえ頼もしいです。
初めての正客と一時心配そうでしたが、誠に堂々と見事な正客ぶりで、お願いして大正解でした。

次客Yさま(横浜市旭区)と三客Kさま(東京都港区)は小堀遠州流をお習いで、佐藤愛真さまの料理教室の生徒さんでもあります。
小堀遠州流(当代は宗圓宗匠)は遠州の弟・小堀正行の末になるそうですが、他流の方のお話や席中の所作はとても新鮮で、いろいろな刺激を頂戴しました。
特に風炉の灰形や炭手前は裏千家流とだいぶ違うようですが、小堀遠州流のお点前にも興味津々なのでいつか是非お招きを・・・。


  スウェーデン・ストックホルムの公園にて

四客Nさま(川崎市中原区)は裏千家流に入門して7か月、当ブログ「スウェーデンお茶の旅」を読んで応募してくださったそうです。
ご主人はスウェーデン人、将来的に日本とスウェーデンの両方の文化を取り入れて、おもてなしができたら・・・と思い、着付けを習い、お茶を習い始めたそうです。
その志が嬉しく、入門7か月で暁庵の茶事へ参加してくださった勇気に感動したのでした。
きちんと朝茶事のことを勉強されて茶事に臨んで頂き、これもまた嬉しいことです。

詰は暁庵社中のFさまです。Fさまにとって特別の日だったのでお招きしたいと思いました。
あとで、サプライズが・・・・?? 



床の御軸は「洗心」、藤田寛道和尚筆です。

点前座には唐銅道安の風炉、糸目桐文車軸釜を掛けました。
釜は和づく釜で長野新造・・・松風が美しく心地良く、いつまでも聞いていたくなるお気に入りです。


       白露の朝茶事を終えて・・・2へつづく


葉月の教室だより・・・茶箱まつりと暑気払い

2017年09月08日 | 暁庵の裏千家茶道教室
           
              螺鈿と銀箔(黒くなっている部分)の草花文が素晴らしい茶箱・・・N氏愛蔵

久しぶりの教室だよりです。
8月の前半は夏休みだったので、8月23日が葉月最初の稽古日でした。
この日は茶箱まつり、「暑さを吹き飛ばそう!」と、茶箱点(ちゃばこだて)の集中稽古をしました。
茶箱点は裏千家流固有の点前で、全部で6種類あります。

裏千家十一代玄々斎が利休形(好み)の茶箱を用いて雪(冬)・月(秋)・花(春)そして卯の花点(夏)の四季を表わす点前を考案しました。
このほか、十三代圓能斎と十四代無限斎(淡々斎)が御所籠を用いた色紙点を完成させ、さらに、無限斎は和敬点を考案しました。

茶箱に茶碗、薄器、茶杓、茶筅の入った茶筅筒、茶巾の入った茶巾筒、振出しを入れ、盆または掛子(かけご)と呼ばれる中蓋を使ったり、茶碗、薄器、茶杓に仕覆を着せるか否か・・・など、お支度も点前も複雑かつ微妙に違います。
お支度がさらさらと出来れば、その茶箱点はできたも同然・・・とよく言われています。

             
              暁庵の茶箱 銘「からくれない」
              (一閑塗 色紙ちらし茶筥  表雲斎造)

最初はKさんの「卯の花」・・茶箱点の基本になる点前で、茶箱の平点前と言われています。盆を使いますが、盆の上に諸道具を並べ、茶は茶箱の蓋上で点てます。
次にUさんの「花」・・・茶碗、薄器、茶杓は仕覆扱いです。盆を使い、盆の上で茶を点てます。
KさんとUさんは7月に続き茶箱点は2回目です。

          
                雪点前のお支度(右にあるのは掛子です)

3番目はN氏の「雪」・・・茶碗、薄器、茶杓は仕覆扱いです。盆は使わず、掛子を使い、茶は掛子の上で点てます。
雪点前は四国遍路の献茶で用いたので、暁庵にとって特別の想い出のある点前です。
N氏の侘びた味わいのある雪点前を拝見しながら「なぜ雪なのかしら? どのように雪を感じさせたらよいのかしら?」いろいろ瞑想しました。

最後はFさんの「月」・・・器据(きずえ)という板(桐の木地板四枚を紫の打紐で綴り合わせた)を使い、器据に諸道具を並べ、この上で茶を点てます。
最初に香を焚くのもステキな味わいがあり、香道で使うウグイス(針)を茶筅立てに応用しています。
茶箱点前中で最も美しい点前とされる月点前、Fさんお持ち出しの春慶塗茶箱が華やかさと温か味を添えていました。

点てた茶を出すときは必ず古帛紗を使います。
道具の拝見を乞われると、茶器、茶杓、それから、茶筅筒、茶巾筒、仕覆が入った茶箱を拝見に出します。

        
            高麗茶碗「狂言袴」、茶器(山田宗偏由来)と象牙茶杓・・・N氏愛蔵

        
            網袋、古染の茶巾筒、漢詩の彫られた茶筌筒・・・N氏愛蔵

「茶箱まつり」なのでN氏とFさんがMy茶箱をお持ち出しくださいました。
骨董好きのN氏の茶箱は光悦の作風を思わせる優品です。
皆の目が輝き、茶箱に納められたお道具をつ一つを手に取って拝見させて頂きました。
説明するN氏もお道具たちも嬉しそう・・・。


        
         ミートボールを食べながら皆でスウェーデンの茶友に想いを・・・
          (写真はIKEA提供です)

稽古後、待合のテーブルで暑気払いの食事会となりました。
北欧の旅で賞味したスウェーデン料理を食べて頂きました。
・・・が、実はIKEA港北店で調達した食品(ミートボール、サーモン、ジャガイモパンケーキなど)を温めたり、煮たり、サラダにしたり、サーモンおにぎりをにぎったり・・・したものです。
飲み物はビール、白ワイン、ウメッシュ、麦茶。
簡単な料理ばかりですが、ワイワイガヤガヤ・・・楽しく賑やかにいろいろなお話が飛び交って宴はつづきます・・・こんなパーティもたまにはいいですね!

                 

夏風邪を退散させた・・・と思っていたら、2日後にぶりかえし声が出なくなりました。 


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大文字 夕去りの茶事を終えて-2

2017年09月05日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 「妙」の送り火のまわりでお精霊さまが踊っているような・・・
    (2014年8月16日 京都にて撮影)

(つづき)
その日(2017年8月16日)横浜は雨でしたが、京都は晴れていたようでヨカッタ!です。
昼頃には腰掛待合と露地の蹲踞を使うのを断念して、玄関に簡易の蹲踞を設けました。
席入は16時、一人亭主なので懐石に時間が掛かることをお詫びして、30分席入を早めて頂きました。
・・・しっとりと降る雨の中の夕去りの茶事、お正客Yさまはじめステキなお客様と過ごしたひと時は一生忘れる事のない想い出になることでしょう。

「大文字 夕去りの茶事」のあれこれを書きたいところですが、来年も(?)できましたら大文字の茶事をしたい・・・と思っております。
それで会記と、Rさまからの後礼の手紙を掲載し、「大文字 夕去りの茶事」の記念とさせていただきました。

待合  
床    般若心経  
煙草盆  竹張香座間透 
火入   青磁香炉

本席(初座)
床    掛物   「去々来々来々去々」   足立泰道老師筆
     花    高砂百合と烏瓜    
     花入   杼(ひ)の釣り舟
風炉   唐銅道安      
釜    波文尻張釜    畠春斎造

初炭   
炭斗   樺細工箱炭斗
羽根   フクロウ
火箸   岡山城大手門古釘
灰器   琉球焼         
灰匙   真鍮のスッカラ
水次   樺細工水次
香合   独楽 銘「ヒマラヤ」         

本席(後座) 
床    懸け仏     三具足
水指   備前         
茶入   ガラス茶器 銘「暁」  西中千人造      
     大津袋 
茶碗   白楽 銘「小鷺」  染谷英明造
茶杓   銘「寧」(ねい)    染谷英明作
棗    几帳棗   
茶碗(薄茶) 青磁    
        信楽    
蓋置   竹        
建水   京焼    

濃茶は「延年之昔」(星野園)、薄茶は「舞之白」(星野園)です。




  Rさまよりステキな後礼のお手紙が届きました。ありがとうございます!

大文字~急な雷雨~雨宿り~そして出逢い
・・・という流れは芝居で何度か観たことがあります
天候の急変が多い今年です
気圧の変化でお疲れは出ていらっしゃいませんか
私は雨宿りでの出逢いこそ無かったのですが、この大文字茶事に出会えた事がこの夏一番の想い出になりました。

暁庵様のお茶事ではいつも迎え付けの会話からワクワクいたします
今回も諸荘りは後座への布石とか、五山送り火探しのたのしみとか、お話を進めて頂いて、そこからトレジャーハンターに変身いたしました
お懐石の美味しかったこと・・・
ご主人様のお心尽くしのお味噌の田楽もお煮物も嬉しくって茄子を買って帰りました

短檠の明かりの中、緑の床の間に浮かんでいる懸け仏様のお姿はそのまま戻って行ってしまう親しい者の姿に見えて、改めて送り火の意味を教えて頂いたようで胸に迫るものがありました。
その反面、韓国や南仏そして北欧の旅で連れ帰ってきてくださったお道具達は初使いの物を含めて我々がこれから出会うであろう新しい楽しみ事にも思え・・・
去々来々来々去々
の最初の軸にこうして繋がるのだと嬉しい想いでございました

温か味のある形の備前水指に斬新なガラス茶器の取り合わせ、小鷺茶碗でのお濃茶が美味しかったです

   美味しい物を頂いた幸せ
   巡り会えたご縁への感謝
   そして送りし者への惜別

・・・とが混ざり合い、静かな雨音の中、色々な想いに浸っていたい夜でした
なので五山の発見はただ二つだけ・・・う~む残念でございました

お招きいただいて心より感謝しております
暁庵様のおかげで母が好きだったお茶とはこう言うものだったと改めて教えていただいております
ありがとうございました
どうぞお疲れが出ませんように御身お労りくださいませ
                   ごきげんよう

   平成二十九年 初来月十九日         Rより
 


 最後はいつも物悲しく見送ります・・・・迷わず帰って行けたかしら?


  暁庵より
巻紙に書かれた長文のお手紙、茶事中の皆様との会話を思い出したり、時には共に亡き人の面影を追いかけたり、涙ながらに拝読しました。
また、掲載できませんでしたが、皆さまから心温まる後礼のお手紙を頂戴し、感謝感激しております。
こちらこそ、頂戴したお手紙に大いに癒され、励まされ、茶事の喜びと茶事を続ける勇気を頂戴しました。
いつもありがとうございます! 


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大文字 夕去りの茶事を終えて-1

2017年09月03日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 (茶事の写真がありませんで・・・
  実際には杼の釣り舟に白百合と烏瓜を生けました)

長月に入ったというのにいまだ夏風邪が治りきらず、頭脳明晰ではありませんが、ボツボツと書き始めます。
よろしかったらお付き合いください。

8月16日(水)、暁庵の茶道教室が夏休み中のこと、「大文字・夕去りの茶事」に茶友5名様をお招きしました。
お客さまは、日頃ご一緒に茶道に親しみ励んでいる、とても気心が知れた方々です。
お正客はYさま、膝を悪くされているOさまが次客、三客Rさま、四客Oさま、詰は初めてご来庵のSさまにお願いしました。

席は横浜なれど、同日同刻に京都で行われる京都・五山送り火を思いながら、暁庵にて粗茶一服さしあげたく・・・とご案内の手紙をさしあげました。

京都・五山送り火とは、東山・如意ケ嶽の「大文字」、金閣寺附近の大北山(大文字山)の「左大文字」、松ケ崎西山(万灯籠山)と東山(大黒天山)の「妙法」、西賀茂船山の「船形」および上嵯峨仙翁寺山(万灯籠山・曼荼羅山)の「鳥居形」をさします。
如意ケ嶽「大文字」の夜8時点火をはじめとし、次々と点火されていきます。
ふたたび冥府にかえるお精霊(しょろ)さまを送る盆の送り火なので、京都の人は手を合わせて静かに見送ります・・・。


2014年8月16日 京都にて撮影

難しいテーマですが、あまり深刻にならぬようサラッとその意味を伝え、何かを感じて頂ければ・・・と思いました。
「大文字」「左大文字」「妙法」「舟形」「鳥居形」を茶事の何処かに散りばめて、最後に回答して頂くことにしました。
すぐにわかるのもつまらないと思い、難しくしすぎたかしら?・・・。
このクイズ?のおかげでお客様同士、五山送り火のお話があれこれと続いたそうで、それを伺って安堵しました・・・。

念願のテーマでしたのでとてもやりがいを感じ、準備段階から亭主として大いに楽しませていただきました。
・・・が、久しぶりの一人亭主で体力に今一つ自信がありません。 
「一人では懐石に時間がかかり、お客さまにご迷惑をお掛けしてしまう」
とツレを口説き落として懐石の助太刀を頼みました(実際には他にもいろいろ・・・)。
懐石は盆の送り火なのでお精進に初挑戦してみました。
材料を重複しないように心がけましたが、お精進の方が難しかった・・・です。




「大文字 夕去りの茶事」の懐石献立 (平成29年8月16日)
  汲み出し  冷梅ジュース
  
  向付    胡麻豆腐  山葵
  汁     赤味噌仕立て  絹ごし  ジュンサイ  茗荷  
  煮物椀   飛竜頭  椎茸  オクラ  生姜
  焼物    米茄子の田楽  木の芽  芥子の実
  炊合せ   里芋  揚げ茄子煮 ぜんまい 青菜
  小吸    スダチ 
  八寸    昆布煮  しし唐天麩羅  
  湯香    こがし湯   大根  胡瓜糠漬  柴漬

  酒     上善如水 (白瀧酒造)
  主菓子   西湖(せいこ) (紫野和久傳)


      大文字 夕去りの茶事を終えて-2 へ続く