暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

葉月の茶会 その2          

2012年08月28日 | 献茶式&茶会  京都編
「わからないことがあったら何でも聞いてください」
いつものお稽古のような雰囲気のなか、
お正客様のユーモア溢れる応答もあり、なごやかに進んでいきました。

思いがけなくお昼の懐石膳が出され、おなかいっぱい頂戴しました。
次いで荒磯の大皿に主菓子・西湖(せいこ、紫野和久傳製)がだされ、
冷たく独特の食感を久しぶりに味わいました。
いよいよ濃茶です。

              

賑やかだった席が急に静かになって、濃茶点前が始まりました。
斜め後方でしたが、先生のお点前を初めて拝見できました。
姿勢、四方さばき、茶碗の拭き方、柄杓の水の流れ、そして間合い。
随所で心の中で頷いたり、感嘆しながら拝見させて頂き、
一番、目に焼きつけておきたい場面でした・・・。

長緒の点前で、濃茶を一服、続いて二服練ってくださいました。
たっぷりと練られた濃茶を薫り高く美味しく頂戴しました。
茶銘は一保堂の青雲です。

茶入は遠州七窯の一つ、膳所焼の広口茶入、仕覆がステキでした。
渋く金が残る古金襴と吉野間道のような古裂で片身代りの仕立てです。

              

主茶碗は蕎麦、二服目は一入作の小振りの黒楽です。
黒の釉薬の中に一カ所だけ、一入特有の赤班が混じっているので
「かくれみの」という銘がついています。
私が頂いた三服目は侘びた高麗、大宗匠の箱書だそうです。

つづき薄茶で、煙草盆が運びだされました。
時代を経た砂張の盆にのった団扇とユウガオの干菓子は亀屋伊織製です。
次々と出される薄茶茶碗が圧巻、全部廻してワイワイ楽しく鑑賞しました。

主茶碗は浅い赤楽の茶碗、灰色の釉薬が荒々しい景色を作っています。
旦入作で、二代常慶「白雲」写です。
替茶碗の中で白地に薔薇のような牡丹の茶碗がお気に入りです。
これは角倉家お庭焼(一方堂焼)という珍しいものでした。

お茶を点てるのが難しいほど小振りの茶碗が拝見にまわってきました。
形と禾目模様にうっとりしていると、外国の陶芸作家の作品でした。
名前がえ~と・・・思いだせません。

他にも風炉先、釜、土風炉、水指、薄器、茶杓など
この日のために先生が調えられたお道具はどれも魅力たっぷりで、
話題はいつまでも尽きません・・・楽しかったです!

              

おもてなしの全てに先生のお心入れを感じる茶会でした。
三日間続いた茶会もこの席で終了とのこと、
・・・どうぞお疲れがでませんように、心の中で深謝してお暇しました。

今日一日、何も手につかず余韻に浸って過ごしました・・・。 

        
            葉月の茶会 その1へ


         写真はありませんで、写真1と2は龍安寺です。
         写真4は「薮茗荷」(季節の花300提供)




葉月の茶会 その1

2012年08月27日 | 献茶式&茶会  京都編
お習いしているS先生に嬉しい慶事がありました。
8月25日、ご自宅で茶会をしてくださり、お招きを受けました。

連日の猛暑の中、着物でお伺いするには気合いが必要でした。
気合いを入れるためにも美容院で髪を結いあげてもらい、
無地の紋付を着ました。
淡いパープルの絽で、一昨年の夏期講習会以来、箪笥で眠っていました。
帯は紗の袋帯、流水に萩と楓の刺繍があり、地に淡いピンクと薄緑が交叉して、
何にでも合わせやすい帯です。
帯締めは茶友から譲られた白の道明寺、気持よく締まります。

               

さて、夏の正装で、気持ちだけは引き締めて先生宅へ伺うと、
お庭の美しい青苔が露をしっとり含んで出迎えてくれました。

待合には優美な炭道具や箱書きがいっぱい荘られていて、
そちらへ眼を奪われ、肝心の掛物を見過ごしました。
達磨篭に調えられた炭道具は遠州お好みを取り入れたとのこと、
帰りに手に取ってじっくり見せて頂きました。
中でもトキの羽根一双が・・・なぜか脳裏を離れません。

              

本席は、いつもお稽古をして頂いている八畳と六畳の間です。
床に立派なお軸が・・・。

寛永の三筆の一人、近衛信尹筆で
   雖残多 直透万重関
   不駐青霄裏


「残り多しと雖も、じきにとおるばんちょうかん
 とどまらずせいしょうり」と読むのでしょうか?

「残り多しといえども まっすぐに幾重にも重なる関を通り、
 やっと青空の下(悟りの境地)へ辿りついたが、
 そこに留まらず、今後とも精進をしていかなくてはならない」

・・・という意味だそうで、先生の充実した今のお心と、
さらなる精進を誓うお姿を表わしている禅語でした。
修業時代の万重関のお話も少し伺えて、その道程の厳しさと
茶道への並々ならぬ意志の強さに触れることができました・・・。

               

床柱には、白い槿と縞葦がすっきりと生けられていました。
花入は初代大樋長左衛門造、大内筒(青磁)写だそうです。

八年前の茶室披きの時にも同じ白槿と縞葦だったとか、
「八年間この稽古場で私を支えてくださった皆様のお陰で、
 今日の私があります。有難く御礼申し上げます・・・」
というご挨拶に感無量の方もいらしたことでしょう。

私もご縁があって5月から先生にお習いしていますが、
このような慶事の茶会へ参席させて頂けて、もう嬉しくって!
・・・なのでした。(つづく)

         葉月の茶会 その2へ

       写真1は丹生神社のクスノキ
       写真2と3は芙蓉、写真4は槿・・・季節の花300提供


Shizuku 左京区カフェ探検-2

2012年08月24日 | 京暮らし 日常編
今回の左京区カフェ探検は「shizuku」です。
隊員Pさんから次のようなメールが届きました。  
   楽しかったですね。「茶寮 宝泉」が格調高かったので、次回は
   「いかにも左京区っぽい、ゆるカフェでいいのかしら」と思います。
   次のどちらかで如何でしょうか?
   1) Shizuku(ランチあり)
   2) ゴスペル(ヴォリーズ作・西洋館の2F)

「Shizuku」を選択し、12時にPさんと待ち合わせました。
私は知らなかったのですが、映画「マザーウォーター」(2010年封切)の
ロケに使われたお店として有名だそうです。

「Shizuku」は、北白川疏水と志賀街道が交わる処にありました。
中へ入ると、簡素だけど居心地の良さそうな空間が拡がっています。
疏水に面したテーブル席は緑陰が涼しく、
春になると見事な桜の景が見れるそうです。
私たちは、座り心地の良い古いソファの席へ。

           
                      

日替わりランチから「牛すじ肉と冬瓜のコチジャン風スープ煮」を注文、
五穀米のご飯、小鉢とすまし汁が付いています。
コチジャン風スープ煮は冬瓜、人参、ゴボウが程よい硬さで、
牛すじ肉は驚くほど柔らかく、辛みが全体の味を引き締めていました。
とても美味しく、早速マイレシピに加えました。
オリジナリティのある料理ばかりで、日替わりのもう1種はたしか、トマト丼?

           
           

お話が弾んでいると、幸い(?)雷雨がやってきて当分外へ出れません。
セットメニュウへ変更して、ミニデザートとコーヒーを頂きながら雨宿りです。
ミニデザートは木の実のタルトを注文、食後なのでミニで我慢しました。

日替わりランチは750円、セット(ミニデザートと飲み物付)1000円でした。
ランチの他にも名物料理がいろいろあって、食事もお勧めのお店です。

           
              Pさんはエスプレッソを注文

雨が上がってから北白川疏水近くをぶらぶらしていると、
雰囲気のあるカフェ探検物件を発見! 乞ご期待!

           
            北白川疏水沿いにある銀月アパートメント

家に帰ってから、映画「マザーウォーター」をネット検索しました。
 (あらすじ)
   不変な中にヒタヒタと進化を続ける、
   そんなシンプルな美意識を貫いてきた街、京都。

   街をよこぎる大きな川と、その川に繋がる小さな川や湧き水。
   そんな確かな水の流れがある京都の街に住み始めたのは、
   芯で水を感じる三人の女たち。

   豆腐を売るハツミ(市川実日子)。
   コーヒー店を始めるタカコ(小泉今日子)。
   そして、ウィスキーしか置いてないバーを営むセツコ(小林聡美)。

   多くを語らず、そよぐ風のように暮らす三人の女たち・・・
   やがてそこに住む人たちの心にも、新しい風が吹き抜けていく。
   今一番大事なこととは――。
   そんな人の思いが静かに強く、いま、京都の川から流れ始める。

「マザーウォーター」とは、ウイスキーの仕込み水のことで、
物語の全てが水に繋がっているらしいのですが・・・う~~ん。
水に関心のある私としては、大いにそそられる映画でもあり、
解釈は見る人にゆだねられているらしく、お能みたいですね。

悲しいかな! 映画(DVDも)を見ていないので、拝見してから
イメージを膨らませて、「Shizuku」を再訪したいです。
                                   &  

       左京区カフェ探検隊へ      次へ

    Shizuku
     京都市左京区北白川小倉町110-4 小倉マンション1F
     Phone&fax 075-702-2893  FAX:075-712-1270
     open 11:30~17:00  18:00~21:00
     定休日 水曜日 大1・3木曜日 (P1台有り)


瓢亭の朝かゆ

2012年08月23日 | 京暮らし 日常編
京都では大気の状態が不安定で、連日雷雨が続いています。
でも、どしゃぶりの後は涼しく、毎日スコールが欲しい猛暑です。

そんなある日、あこがれの瓢亭の朝かゆをご馳走になりました。
瓢亭の朝かゆは、7月と8月だけと聞いていたので、
8月末の誕生祝いを少し早めにしてくれたそうです。
そういうことなら、誕生日が早く来ても何も不満はございません(アリガトウ!)。

瓢亭のパンフによると、
京都南禅寺畔「瓢亭」は、四百年余り前より南禅寺の参拝客を
もてなす茶店として構えたのが始まりです。
特に「一子相伝」といわれる「瓢亭玉子」が評判となり
天保八年八月十五日から料理屋としての看板を上げました・・・

             

8時の予約なので、7時40分に家を出ました。
・・・もちろん、自転車です。
茶店の風情を残す待合で待っていると、
着物姿の仲居さんが離れの部屋へ案内してくれました。
苔の美しい庭に離れが点在し、全部で四棟あるそうです。

             

             

お部屋は四畳半の落ち着いた茶室で、窓外に隣りの無鄰庵から
水を引き込んだ池がめぐっています。
涼やかな水音に耳を傾けていると、小鳥のさえずりが聞こえ、
蝉の鳴き声もいっぱいでした。
お軸は笹に鮎でしょうか、即中斎の賛で「清流」、
仏壇のような小棚に金水引と槿(そこべに)が生けられていました。

             
             
             

冷たいおしぼりと梅昆布茶が出され、一息していると、
最初のお膳(口取り、炊き合わせ、酢の物、和え物)が出されました。
口取りは、瓢亭玉子、小鯛の笹鮨、枝豆、鱧の南蛮、
炊き合わせは、茄子の胡麻味噌添え、麩、湯葉、
酢の物は、鱸、キノコ、みぞれ酢和え、
和え物は、三度豆の山椒和え・・・だったと思います。

             

それから、朝かゆと思えぬほど次々に料理が出され、
豆腐と海苔の椀、鮎の焼物、最後にかゆと漬物が出されました。
かゆに添えられた葛あんが珍しく、漬物も良し、葛あんかけもよしで、
おかゆにバリエーションがでますね。

             

朝かゆらしく素朴な料理が多かったので、とても参考になりました。
「瓢亭玉子」は半熟のとろり加減が絶妙で美味しく食べましたが、
一たらしされた醤油の味に工夫があるみたいです。
一度は「瓢亭玉子」にチャレンジと思い、玉子だけすぐに買い求めましたが、
安売りの玉子ではだめなのかしら??

何十年も夫婦をしていると話すこともないのですが、
料理一つ一つの材料や味付けの話はいつも盛り上がります。

こんどはいつ瓢亭へ来れるかしら? 楽しみが増えました(ヨロシク!)

                                   & 




能「東北」の公演

2012年08月21日 | 歌舞伎・能など
「東北」の公演は、8/19を逃すと、しばらくないかもしれません。
ぜひ楽しんでらしてください(^0^)/

お能好きのRさんのメールに後押しされて、京都観世会館へ行き、
念願の「東北」を見てきました

12時30分の開場に間に合うように自転車を走らせました。
家から10分ほどでしょうか。
東京の観世会館で並んで待った記憶があったので、
内心あせってかけつけたのですが、お席はがらがらでした。
橋掛かりが良く見える、正面右の通路側の席を陣取りました。

              
                 京都観世会館の能舞台
「観世青年研究能」のパンフによると
京都府次世代等古典芸能普及促進公演と書いてあります。
次世代という文字にワクワクと心躍ったのは私だけでしょうか。
これから能を観て楽しむ者として、一緒に育てていただきたいです。

演目は、京都に因む能「賀茂」と「東北」、
そして、狂言「柑子」と仕舞「敦盛」・「玉蔓」・「項羽」でした。

「賀茂」は、賀茂神社の縁起にまつわる能で、
三神の話が身近で興味深く、登場人物が多くて物語に変化があり、
楽しめました。もちろん、うつらうつらしながらですが・・・。

              
                  下鴨神社の糺の森

さて、いよいよ能「東北」です。
舞台は東北院、いにしえは一条天皇中宮・上東門院藤原彰子の住まいで、
その院内の小堂に、彰子に仕える和泉式部が住んでいました。
東北院の庭先には梅があり、折から白い花をいっぱいつけ、
えもいわれぬ芳香を放っています。
この梅は、好文木または鴬宿梅とも言われ、軒端の梅と呼ばれています。
軒端の梅は、そこに住んでいた和泉式部が植え置いた梅でした。
もちろん、舞台に梅はありませんが、
東北院の梅を心の中で再現しながら愉しみました。

             
              東北院に咲く「軒端の梅」

春の宵、僧の夢の中に式部とも梅の精ともわからない女が現れて、
和歌の徳、東北院の有様を語り、薫り高く舞います。
シテは河村浩太郎氏、「能を楽しむ夕べ」で最後の見どころを
舞ってくださった方でした。
和泉式部の心の綾を語るような、すがれた笛の音色が今でも
どこかで響いています。

お能の持つ緊張感を満喫できる素晴らしい舞台でした。
こんなにも感動を与えてくれる「観世青年研究能」へ
観客がワンサカと押しかければ好いのに・・・と思ったりしました。

1年ぶりに見たお能ですが、「京スマを機にお能へ通ってみよう」
と思い始めています。
自転車で10分足らずという地の利に感謝して・・・。  


             
                 橋掛かりの袖にある揚幕            

(忘備録)
観世青年能(二十四の一)  平成24年8月19日(日)
              於 京都観世会館

  能  「賀茂」 
     ワキ(室明神の神職) 小林努
     ワキツレ(従者) 久馬治彦、岡 充
     前シテ(里女) 大江広祐
     前ツレ(里女) 河村和晃
     アイ(末社の神) 松本薫
     後ツレ(賀茂御祖神) 大江泰正
     後シテ(賀茂別雷神) 大江広祐

     大鼓 石井保彦  小鼓 林 大輝  
     太鼓 前川光範  笛  杉 信太朗

  
  能 「東北」 
     ワキ(旅僧) 原 大
     ワキツレ(従僧) 岡 充、小林努
     アイ(東北院門前ノ者) 丸石やすし    
    前シテ(都の女) 河村浩太郎
     後シテ(和泉式部) 河村浩太郎
    
     大鼓 谷口正壽  小鼓 林 大和 
     笛  左〇(ママ)泰弘

     地謡に林宗一郎氏のお姿がありました。