暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

トリは長屋門公園・子ども茶会

2010年12月31日 | 茶事
年内に書いておきたい茶会があります。
PC故障で写真が消失し、気落ちもあって後回しになっていたのですが、
気をトリ直して、今年のトリは長屋門公園・子ども茶会です。

長屋門公園事務局長・清水靖枝さんと協力して
「古民家の和の空間で、子どもたちに茶の湯を体験してもらおう」と
11月27日(土)、28日(日)に「子ども茶会」を初めて開催することになりました。

初日にお辞儀、菓子を運ぶ、菓子を頂く、茶を点てる、茶を喫む
二日目に子供たちがお茶を点て、友だちや両親を招いておもてなしをする・・・
という内容で、小学生10名(親子でも可)を予定していました。

私一人では無理なので、真ML茶の湯コミュニティ-
お手伝いしてくださる方を募集させて頂きました。
「子ども茶会をお手伝いくださる方(茶歴、流派不問です)
 をさがしています。
 ご一緒に秋の日を長屋門公園で子どもたちと過ごしませんか?」

Uさん、Hさん、Sさんがお手伝いを快く引き受けてくださり、嬉しかったです・・・。
ところが、応募者は親子一組だけでした。

お茶事と同じで、たとえお一人でもきちんと対応するつもりでしたが、
「お二人ですがよろしいですか?」と長屋門スタッフが確認してくださいました。
でもでも、その親子さん、
「私たちだけでもかまいません。是非お茶を習いたい」
と言ってくださったのです・・・これで勇気百倍です!

当日、さくらちゃんとお母さんがやってきました。
緊張気味だったので、お辞儀の仕方を習ったり、
床や花を拝見して少し身体を動かしてもらいました。

Uさんの盆略点前で、お菓子と薄茶をお出しすると
「お茶もお菓子もとてもおいしい!」
初めてのお茶がおいしいなんて・・・こ、これは将来有望です。

今度はお二人に盆略点前を簡単にした点前を一緒にやって頂き、
実際にお茶を点ててもらいました。
お二人ともこちらがハッとするほど、一生懸命に取り組んでいます。
さくらちゃんが点てたお茶をお母さんに、
お母さんが点てたお茶をさくらちゃんに喫んでもらいました。

お二人とも目を輝かせて
「美味しい!」
サポートしていた私たちも安堵し、何か熱いものがこみ上げてきます。
もう一度、盆略の略点前でお茶を点て、今度はご自服してもらいました。
二度目なので見違えるように上手に点てています。

聞けば明日は用事があるそうで、予定していた茶会はなくなりました。
「今回のお稽古はこれで終わりです。
 さくらちゃんもお母さんもとても熱心に取り組んでくださって、ありがとうございます! 
 これからも機会を作ってお茶を点てて楽しんでくださいね」

                     

早めに終了したので、Hさんが平点前で薄茶を点ててくださいました。
「見学してもよろしいでしょうか?}
「さっきのお点前と違いますが、どうぞ見てください」

さくらちゃんもお母さんも最後まで熱心に見学していました。
たった二人の参加者でしたが、茶の湯の初心へ帰ることができたような気がしました。
あのキラキラとした、熱い何かにまた出会えたら・・・と思います。

お手伝いして頂いたUさん、Hさん、名乗りを上げてくださったSさん、
とても嬉しく、心強かったです。 ありがとうございます! 
準備が大変だったけれど、とても有意義な一日でした。
清水さん、長屋門スタッフの皆さま、ありがとうございます。

             

皆さま、来年もどうぞ宜しくお願いいたします。
良い年をお迎えください。
「先今年無事 目出度千秋楽」

                          

     

茶道具 こわい

2010年12月29日 | 茶道具
上坂冬子さんの「ときめき老後術 ひとり暮らしの骨董ざんまい」を読んで
心から共感した文章がありました。

それは・・・気に入った香炉に出会ったけれど、とても高価なので迷っているときに
故郷のお母さんから電話がありました。
つい、電話口でお母さんにそのことを話してしまったのです。
すると、お母さんはきっぱりと、むしろ声を強めて言ったそうです。

「欲しいものがあるなら無理してでも買っておきなさい。
 お前は自分の力で買えるんだから、飛びつきたいものがあったら
 買ったほうがいい。年をとると欲しいと思うものがなくなるでねぇ。
 買いたいものがあるうちが花だでね」

本当にそうだなぁ~と思います。
「買いたいものがあるうちが花。
 熱中できるものがあることが幸せ」
と私も時々自分を叱咤激励しながら、茶道具や茶事を愉しんでいます。

                
             
今年もあと三日、
今年私の元へやってきた茶道具との出会いやご縁、
そして買うことを決心した瞬間のことを振り返ってみました。

ぱっと思い出すのは次の三つです。
一.朝鮮唐津の茶入
一.平戸焼の色絵水指
一.揖保川焼の水指

一番購入を迷ったのは五月に平戸・有田・唐津方面へ旅行した時に
唐津で出会った朝鮮唐津の茶入でしょうか。
朝鮮唐津の水指や花入は時々拝見しますが、茶入は初対面でした。

独特の釉の乱れの景色や複雑な色合いが素晴らしく、
素朴な形も気に入り、その茶入が手放せませんでした。
二つの仕覆の裂地(織部緞子と小真田付吉野間道)も好かったのですが、
仕立てがとてもお上手でした。

でも、旅の最後に訪れたので、既に買い物をし過ぎていました。
買うのをためらっていると、私の様子を傍で見ていた主人が
「気に入ったのなら買った方がいいんじゃない」と。
その一言で決心がつきました。

あとで
「ありがとう!よくあそこで声をかけてくれたわね」と感謝すると
「やっぱりあの茶入が忘れられないから、また唐津へ行きたい」
と言われかねない・・と思ったそうです。
予算オーバーもいいところですが、
無理して買ってよかった!と今でもその一言に感謝です。

それから、平戸焼の色絵水指と揖保川焼の水指との出会いはまさに一目惚れでした。
特に、揖保川焼の水指が私の元へ来たのは奇跡としか言いようがありません。

「非売品ですが、師匠から常々、自分の気に入っているものから手放すように
 言われていましたし、せっかく遠くから来ていただいたのですから・・・」
と、池川みどりさんはお気に入りを私へ託してくださったのです。

茶道具をめぐるいろいろなご縁に感謝しつつ
来年はどんなことになるのやら?
楽しみなような、こわいような・・・です。

                        



上坂冬子さんと豊楽焼

2010年12月27日 | 茶道具
長くなりそうですが、よろしかったらお付き合いください。

親友のMさんからお福人形の話を聞いたのは2年前のことでした。
「上坂冬子さんの本に載っていたお福人形がとても好かったので
 布絵で色紙に作ってみました。茶事に使うようでしたら送ります。
 本も面白く、スラスラと読めますよ」

早速、「ときめき老後術 ひとり暮らしの骨董ざんまい」
上坂冬子著(海竜社 2007年)を購入し、一気に読みました。
上坂さんが亡くなられたのはそれから間もなくでした。
いつか、その本は本箱の片隅に追いやられ、忘れられていました。

上坂さんが亡くなられた年(2009年)の12月、平和島骨董まつりで
豊楽焼(とよらくやき)の茶道具で調えられた茶籠を買ったものの、
豊楽焼についてはよくわからないままでした。
(下の写真は、暁庵の豊楽焼・棗です。クリックすると大きくなります)

         

先日、本の整理中に「ときめき老後術」を見つけ、
もう一度読んでみると、「趣味を持つなら働き盛りに」の章に
豊楽焼の茶碗との出会いが書かれていたのです。
一部ご紹介します。
 (・・前略・・)
   私が目を止めたのは、見込み(茶碗の内側)に染付の鶴が飛び、
   外面はこげ茶の漆塗という蓋つきの茶碗であった。 (・・中略・・)

   「茶碗の外面に漆を塗ったのは豊楽(とよらく)さんの特徴で、
    ヨソじゃ見られんと思うがねん」
   と爺さん(注:愛知県の骨董屋)は説明した。ねんというのは方言である。

   「漆の地に金で、松が描いてあるところが気に入ったわん」
   と私も方言で答えながら、
   まもなく正月がくるからこんなのを棚に飾って迎えようかと思った。

   料理下手の私は盆がこようが正月がこようが手料理など作ったこともないのだが、
   空っぽの茶碗でもおめでたい松の模様なら、ひとり住まいの我が家にも
   正月がくるような気がしたのである。
   豊楽さんは地元中京地区では人気があるのだという。
                                     
どんな茶碗なのか、写真は掲載されていませんでした。
本の終わり近く、「最後の晩餐」の章に再び、この豊楽焼の茶碗が登場します。
独特のユーモア溢れる文章で、ご自分の最後の晩餐に並ぶ料理と
それを盛る器について愉しみながら書いています。
そして、ここで初めて茶碗の写真が掲載されていました。

 (・・前略・・)
   汁は骨董ではないが、愛用の輪島塗にたっぷりの赤味噌汁を盛りつける。
   ご飯は、と考えて長い間仕舞い込んでいた故郷愛知の蓋付き茶碗を思い出した。

   「磁器の外側に漆を塗るのは豊楽さんの特徴で、ここらじゃ名品といわれとるがね」
   といって名古屋の業者が有難そうに、この蓋付きを取り出してくれたのは、
   もう三十年前のことだ。

   独身の私は結局、故郷の両親の墓に入ることになるのだろうから、
   最後は「ふるさとの茶碗」で「ごちそうさま」というのもいい。

   ここまで考えて、何だか祭りの前夜のように陽気になった。
   年齢として不足はないのに、まだ死が現実のものとして考えられないのは、
   年の割に陽気な性格の特徴かもしれぬ。
    ま。いいか。
                            

  写真上から、「お福人形」 (Mさん作)
          「茶籠に入っていた豊楽焼の棗」
          「内側は織部風です」

     
上坂 冬子(かみさか ふゆこ、本名:丹羽ヨシコ)
1930年6月10日東京で生まれ、愛知県豊田市で育つ。
愛知県立豊田東高等学校卒業後、トヨタ自動車工業(現・トヨタ)入社。
1959年「職場の群像」で第1回中央公論社思想の科学新人賞を受賞。
以後ノンフィクション作家として執筆活動に専念する。
1993年には第41回菊池寛賞、第9回正論大賞を受賞。著書多数。
2009年4月14日肝不全のため逝去。享年78歳。

豊楽焼(とよらくやき)
名古屋市中区大須の万松寺南の隠卿で焼かれた楽焼系の軟質陶器の総称。
尾張藩御焼物師の加藤家、四代大喜(だいき)豊助は、器の一部に漆を塗り、
蒔絵を施した木具写しを考案した。
抹茶茶わん、薄茶茶碗、菓子器、手あぶりなどがあり、印は「豊助」「豊楽」など。 


茶入の仕覆

2010年12月25日 | 茶道具
Merry Christmas!

(クリスマスだというのに足首の捻挫?が悪化して、整形外科通いです・・)

クリスマスとは関係のない話題で恐縮ですが
やっと茶入の仕覆が完成しました。
二つ目の仕覆です。

「はじめての仕覆」以来、8ヶ月が経とうとしていました。
その間、夏期講習会、茶会、茶事、旅行、いろいろなことがありました。
月2回の稽古日ですが、月1回通うのがやっとでした。
それでも細く長く続けていきたい・・と、先生にお願いして通いました。

K先生にもご不幸がありました。
「仕覆づくりは不器用な方がいいんじゃないかなぁ・・・」
と言って、入門時に背中を押してくださったご主人が
八月に急逝されたのです。
深い悲しみを乗り越えられて、教室を再開されたのは十月半ばでした。



そんな過程を経て、茶入にようやく着物が出来ました。
裂地は友人から頂いた着物地で
紫に白い藤の花模様を生かして作りました。
銀の紐は組紐で編んだものです。

今、茶碗の仕覆に取り掛かっています。
あと、振り出し、茶筅筒、茶巾筒もあるし、茶杓も・・・。
振り出し、茶筅筒、茶巾筒は網の袋を編もうかしら?
完成品を想像してあれこれ愉しんでいます。

写真の茶入は、平和島骨董まつりで買った茶籠に入っていた棗で、
豊楽焼(とよらくやき)という珍しいものです。
茶入、茶碗、振り出し、茶筅筒、茶巾筒のセットになっています。
以前、「豊楽焼についてご存知の方、教えてください」という
コメントを書いたのですが、これに関する情報はありませんでした。

先日偶然、豊楽焼の記述が乗っている本を見つけました。
上坂冬子著
「ときめき老後術 ひとり暮らしの骨董ざんまい」
(海竜社 2007年)です。
上坂さんが小気味よい文章で次々と紹介される、
秘蔵の骨董との出会いが面白く、ちらつく死生観も興味深く、
一気に読みました。

書き出すと長くなりそうなので、豊楽焼の続きは次回に回します。

                            


   新しいPCのせいか?写真が思うように画面に入りません(とりあえず・・・アップします)

   写真は、「山帰来の実」 (季節の花300 提供)
         「茶入の仕覆」 (クリックすると大きくなります)


仙遊之式で納会

2010年12月22日 | 七事式&いちねん会
師走18日に今年最後の悠遊会がありました。
悠遊会は有志の花月勉強会で月1回開催されています。

マンションのドアを開けると、
山帰来の赤い実のリース、楽譜が書かれた釜敷と香合など
楽しいクリスマス室礼で迎えられました。

広間の軸は
「無心帰大道」
伸びやかで力強いお筆です。
Tさんが読み上げてくださいました。
「無心なれば大道へ帰る」
 (・・・いいですねぇ~)

今まで何も考えずに 「無心 大道に帰す」と読んでいましたが、
読み方で禅語の意味や感じることが微妙に違ってきますね。

花月は仙遊之式と四畳半花月でした。
みんなで準備して、先に到着した五名で仙遊之式を始めました。
亭主はOさん、半東はWさん、正客はYさん、三客はTさんです。
私は次客で、次香の役でした。

最初は廻り花です。
花の少ない時期にもかかわらず、たくさんの花が持ち寄られました。
霜柱(写真)、青文字は初めてお目にかかりました。
他に蝋梅、椿(白侘び助、白玉、太神楽、西王母など)、
水仙、磯菊、小菊、照り葉などがありました。
竹一重切に思い思いの花を入れていきます。

花入の口が大きめなので、花が思うように留まらない様子のときに
「・・・どうぞ そのままで。
 花の形は生ける人の、その時の気持ちが現れているそうですから・・・」
と、Tさんが声を掛けました。
(な、なるほど・・・)
私は水仙一種を生けました。
すっくと気高く生けたかったのですが・・・。

             
              
且坐は略炭所望ですが、仙遊では本炭所望となり、
三客は炭を継いで後掃きをし、戻ります。

香盆が正客前に運び出され
「どうぞお香を」と亭主から挨拶があり
正客と次客は同時に受礼をします。
老眼鏡を取りに行ったおかげで、志野袋から次香も無事に・・・
と書きたいところですが、香が細すぎて掴めませんでした。

「どうぞお香そのままで 本香おたき添えを」
受礼をして、次香を斜め下に寄せ、本香を「り」の字のように
たき添えました。

今年は仙遊之式を何回やったでしょうか?
五回は修練したと思うのですが、細かい点がまだ曖昧です。
特に後半の濃茶から薄茶へ移るあたりから
半東の座への戻り方(八畳の時と四畳半)、
花月になって仕舞い花の拝見の出し方や仕舞いつけなど
「あらっ?そこはどうだったかしら?」ばかりでした。
「来年こそ仙遊之式をスラスラと、趣深く出来るようになりたい」
・・・と密かに思いました。

             

悠遊会の納会に総勢12名が集まりました。
「暮のお忙しい時期に大勢の方が集まってくださって
 このご縁に感謝します・・」と、会の重鎮・Tさん。
こちらこそいつも楽しく、美味しく、いろいろお勉強をさせて頂いて
感謝申し上げます。ありがとうございました!

皆さま、来年もどうぞ宜しくお願いいたします。

                            

      写真は上から、「水仙が咲き始めました」
               「霜柱の花」 (季節の花300提供)
               「霜柱の氷」 (季節の花300提供)