暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

口切の茶事(2015)-3(最終回)

2015年12月04日 | 茶事


(つづき)
最後に懐石のことを書いておきます。
京都で一人茶事をがんばったお蔭で、茶事の流れが身につき、懐石も少しはできるようになりました。
一人茶事は充実感、達成感があってやりがいがありましたが、
体力的に限界を感じ横浜へ戻る時に卒業することにしました。

それで、口切の茶事の懐石は京遊庵さんへお願いしました。
京都出身の方なので打ち合わせの時から京都や茶事のお話が弾み、安心してお任せすることができました。
本職ならではの提案もあり、茶事中もお客さまとの会話を楽しむ余裕が生まれました。

「懐石が美味しいと好評で、私も嬉しいわ。
 今日の久しぶりのお茶事、とても愉しくって・・・お茶事っていいわねぇ~」
と思わず京遊庵さんにお話したら
「それは好かった! 私としても何よりです」
水屋で二人で盛り上がっていました。

   

その日の献立は
   向付 鯛薄造り 昆布締め  菊花 山葵
   汁 白味噌仕立 蕪 小豆 からし
   煮物 清まし汁仕立 蟹真薯 人参 壬生菜 柚子
   焼物 鰆射込み元焼き
   強肴 海老芋 穴子 紅葉麩 ほうれん草 刻み柚子
   強肴 大根 しめじ 椎茸 人参 蓮根 胡麻和え
   小吸物 梅肉 百合根
   八寸 車海老の雲丹焼き 銀杏松葉串
   湯
   香の物 沢庵 柴漬け 水菜漬け

膳の運びや薄茶を社中のFさんとYさんにお手伝い頂いて、念願の口切の茶事をすることが出来ました。
みなさま、ご協力頂き、ありがとうございます。
「茶事はしたいけれど、できるかしら?」
と案じていましたが、京遊庵さんに懐石をお願いすれば、できるような気がしてきました。



・・・そんなことを考えていたら、お客さまから茶事の礼状を頂きました。
備忘録としてお正客Kさまのお手紙を書き留めておきます・・・心から感謝しつつ・・・。
 
    雨音をききながら幸福な余韻に包まれています
    待合から本席 口切へと心地良い緊張感の中で
    和やかでゆったりと時は流れておりました

    みよしの の口切で香り高い一服のお茶を皆々様と共に
    心ゆくまで楽しませて頂き 誠にありがとうございました

    格調高いお茶事の正客を仰せつかりましたものの 
    力不足 言葉不足で ご亭主のお気持ちに添えましたでしょうか
    どうぞお許しくださいませ

    しばらくお茶事はいいかな・・・と 
    ご自身お思いになられていたようですが
    あの場に一番ふさわしく そして
    一番輝いていたようにお見受けしました。

    古希の茶会に続き 口切の茶事と
    エネルギッシュに満ち溢れた今年のご活躍
    本当に感服いたしております

    来年にはどのような夢を描き
    又どのようなご縁に導かれ どのようにたのしまれるのか
    ・・・不思議な期待感があります
    私を含めいろいろな意味で多くの人に刺激をお与えください

    お忙しい中でのご準備等おつかれのことと存じます
    どうぞお体を大切なさって下さい     
    ご挨拶に伺うべきところですが書状にて失礼致します
                         かしこ  Kより 


Kさま、みなさま、お付き合いくださり本当にありがとうございました。
師走に入り、今年のあれこれを思い出し、感謝やら反省やらしながら来年のことをぼんやり考えています。
茶事は大好きですが、がんばらない茶事や茶会をお客様と楽しむことができたら・・・最高ですね。
来年も何卒宜しくお願い申し上げます。  


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口切の茶事(2015年)-2

2015年12月02日 | 茶事


(つづき)
正客Kさまより
「どうぞご都合により茶壺の拝見をお願いします」
「ご都合により・・・」というのは拝見の仕方がいくつかあるためで、
今回は教本とは違うN先生にお習いしたやり方で、口切の前に茶壺を拝見にお出しします。

茶壺はむらさき茶会の後に「古希の記念に・・・」という口実で購入しました。
口切は特別な行事であり、口切の茶事へお招きを受けるのは茶人として最高の栄誉とも言われていますので、
亭主としても姿勢を正し、茶壺を新たにし、日頃の感謝の心を込めました。
仁清写の茶壺で銘「みよしの」です。

   み吉野の山をいろどる花の雲
       今や錦の時雨ふるらし      暁庵


お正客さまはじめ全員に茶壺を右から左へ回して頂きました。
(満開の桜と同時に錦の時雨を連想してもらえたかしら・・・それと・・・)

御茶入日記を持ち出し、茶壺を持ち帰り、口切をしました。
口切をしたところで
「いずれのお茶を差し上げましょうか?」
「ご亭主様におまかせいたします」とKさま。
「承知いたしました」
茶の入った半袋3つのうち1つを取り出し、茶銘を読み上げ、挽家(ひきや)に入れました。
「千代の寿(上林)でございます」(意中のお茶だったらしく皆さまニッコリ)



詰と書かれた挽家へ葉茶じょうごの詰茶を入れ、葉茶じょうごを傾けて
「トーン トトトン」
・・・この音の響きに口切を実感しながら、残りの詰茶を壺へ戻し、合口を美濃紙で封じ、印を押しました。
お客さまも我がことのように息を詰めて見守ってくださり、心地良い一体感を感じながら・・・。

口切の後は初炭手前、炭斗のふくべを持ち出すと、どっとドヨメキが・・・。
ふくべは茶友Wさんが畑で丹精込めて育て、贈ってくださった逸品、存在感が凄かったみたいです。
なんせ、炉用の大きな炭が小さく感じるほどで、大のお気に入りです。
やっとこのふくべを使って口切の茶事ができたと感無量でした。


   炉縁は根来塗、釜は霰唐松文真形

備忘録として、口切を中心に茶事の流れを書き記しておきます。

1)客は待合で汲み出しを頂いたら、蹲を使い、席入
2)挨拶、正客が「ご都合で茶壷の拝見を」と所望する
3)亭主は壺を床から運んで、炉の下座・かぎ畳で網を脱がせ口緒をほどく。網と口緒は定座へ置く
4)茶壷を拝見に出す。 拝見の間亭主はかぎ畳に座っている
5)詰が正客へ壺を持っていく頃に席を立ち、水屋から御茶入日記を正客へ持ち出し正客前に座り、壺の下座へ置き、壺を持って戻る
6)口覆をはずし壺の封印を改める
7)正客より茶壺、口覆についてお尋ねがある(問答)
8)亭主は水屋から葉茶じょうご一式を持ち出し、壺の下座におく。
9)前畳縁内に挽家(ひきや)二つを左右同時に出し、その前に一式のった美濃紙を出す。
 挽家の蓋を左右同時に開けて横へ置き、壺の口覆をはずし右肩へ置く。
10)茶壷の口を切る。蓋を取り、口覆の前に置いて、亭主は正客に所望の濃茶を尋ねる。
「いずれのお茶をさしあげましょうか」 (問答)
11)詰め茶(薄茶)を葉茶じょうごにあけ、客に所望された袋に入った濃茶を取り出し、右の挽家に入れ蓋をする。
じょうごをまわして詰茶を「詰」と書かれた左の挽家へ入れ、残りを壺に戻す。
12)壺に蓋をして、封紙に糊をつけ合口に封をし、捺印する
13)諸道具を元に戻し、口覆をかぶせ、葉茶じょうご一式を水屋にひく
14)かぎ畳へ斜めにすわり、左手で網袋と口緒を取り、口緒を懐に入れ、右手に網を持たせ壺正面にまわる
15)茶壷を網に入れて水屋へ持ち帰る。
16)御茶入日記を下げて茶道口で礼、襖を閉める
17)初炭手前
18)懐石と主菓子
19)中立
20)銅鑼の合図で後入して濃茶点前。
21)後炭
22)薄茶点前
23)最後の挨拶をし、送礼。


 
     口切の茶事(2015年)-1へ戻る    3-へつづく


今日のお勧め(として過去のmy blogから)・・・「紅葉のさんぽみち-2・・・栄摂院の散紅葉」


口切の茶事(2015年)-1

2015年11月30日 | 茶事
                           
銀杏、コナラ、欅が色づき、葉を散らしています。
台所の窓からルノワールの秋をぼんやり眺め暮らしています。

11月25日に口切の茶事をしました。
今年1月末に横浜へ戻って以来、久しぶりの我が家での茶事です。
茶事をするなら「口切」、心のどこかで決めていました・・・。

京都滞在中の3年間、S先生の炉開き炉開きの茶事へお招きを受けていたのですが、
口切にはご縁がなく、とても寂しく思っていました・・・。
もちろん、有名茶事どころで口切の茶事はしていましたが、高額(5~10)な上、
知らない大勢さんの中にポツンと入る勇気もありません。

むらさき茶会が終わると
口切への思いが日毎につのり、我が家で茶事をすることを決意しました。
むらさき茶会でお世話になった茶友や暁庵社中の方、6名様をお招きしました。
正客Kさま、Iさま、Wさま、Hさま、Yさま、詰Fさまです。
懐石は京遊庵にお願いしました。これも初めてのことです。


   我が家の待合は椅子席です

待合にはもみじが描かれた画賛「紅葉舞秋風」、N先生から頂戴した懐かしいお軸です。
京遊庵特製の香煎を萩焼の汲み出しでお持ちし、席入のご案内をしました。
昼頃から雨の予報が、10時頃からポツポツと降り出しました。
外腰掛と蹲はすぐにあきらめて、水屋甕で手を清めて席入して頂きます。


  待合に「紅葉舞秋風」


    「利休居士四規七則」

床には「利休居士四規七則」黄梅院・小林太玄師筆のお軸を掛け、下座に網袋に入った茶壺をかざりました。
「四規」すなわち「和敬清寂」は、二十数年参禅修行されて「居士号(こじごう)」を授かった利休居士の悟境を示し、茶道の道を照らす基本理念でもあります。
小林太玄和尚は次のように味読しておられます。

   和敬清寂

   人の道は和する調和すること、
   人に対し心より尊敬、敬意を持ってし
   己は常に清浄を保って生活し
   何がおころうと心乱し動じてはならぬ

と四規を示され、次の七則は私共の日常生活の中での実践の心得を単的に説かれているのです。


   一.炭は湯が沸くように
   一.花は野にあるように
   一.降らずとも雨の用意
   一.刻限は早めに
   一.相客に心せよ
   一.夏は涼しく冬は暖かに
   一.茶は服のよきように


・・・茶道の道を示す四規をいつも身が引き締まる思いで拝見しています。
「七則」は「和敬清寂」を実践に移した教えで、大好きな言葉です。
一読すると易しいことのようですが、とても難しく奥深い内容が含まれています。

「降らずとも雨の用意」・・・雨になり外腰掛、蹲が使えず、水屋桶への変更で切り抜けましたが、
動線や濡れ釜の手順が狂い、もう大変!・・・未熟なことです

それでもお客さまとのご挨拶では
「利休居士四規七則」を心の片隅に留めて、今日の茶事を行いたいと思います」・・・と。


      口切の茶事(2015年)-2へつづく


長屋門公園ひな祭り茶会―2015年3月1日

2015年03月10日 | 茶事
                  梅と椿が満開です・・・散歩道にて

ただいま! ブログを再開いたします

陽光が日ごとに眩しく、まさに万物が生きる歓びを謳い上げています。
引っ越し以来、ベランダで太陽の光を心ゆくまで浴び、
お日様の匂いをぷんぷんさせた布団で眠る幸せを感じる日々です。
京都では京都の味わいがあり、横浜には別の歓びが待っていました

長年、放置していた我が家の片づけと掃除に思いがけなく苦戦しています。
押入れの物を全部出して、いらないものの整理を始めました。
増え続ける物(家具、本、衣類)にいつか居場所を奪われ、
特に茶道具に家人の抗議が集中、茶道具の置き場を確保するためでもあります。
この機会を逃しては・・・と、「楽しさを感じる片づけ方」を思い出しながら
一日一か所のペースで頑張っています。
片づけはまだ継続中ですが、お知らせもあり、ブログを再開します。
また、どうぞご愛読くださいませ。

          

          

3月1日(日)に横浜市長屋門公園・ひな祭り茶会をしました。
ひな祭り茶会は2011年3月11日の東日本大震災の直後も開催し
京都へ家うつりする直前の2012年3月3日まで
茶友たちのご協力のもと毎年開催していました。
でも、長屋門公園の清水靖枝さんから
「私が京都に滞在していた間、ひな祭り茶会をしなかった・・」と伺い、
「またひな祭り茶会をしましょう!」
気軽にお茶を楽しむ良い機会と思い、ボランティア活動を申し出たのでした。
今回も、Akatuki庵さん(暁庵と同名の)、Hさん、Oさんにお手伝い頂き、本当に助かりました。

           
           
             600体の雛人形と華麗な吊るし雛・・・どちらも増えているみたい

あいにくの雨でしたが、遠くからもお客様が駆けつけてくださって、嬉しいやら・・・
有難いやら・・・もう感激!でした。
お点前、半東、水屋を適当に交代して、2時間があっという間です。
お客様は11名と少なかったのですが、囲炉裏を囲んで、逆勝手や鶯点のお点前を見てもらい、
主菓子(菓子銘「内裏さま」)と薄茶(茶銘「松柏」)を味わっていただきました。
お客様ともゆっくりお話ができ、濃密なお茶会だった気がします。

           

「楽しい茶会でした。また、来年も伺いたいです」

「ご馳走さまでした。うぐいす点てというお点前があるのを初めて知りました。
 また茶会を続けて頂けるのを楽しみにしております」

「楽しいひと時でした。鶯点を拝見したのは二回目です。
 落ち着いたら、今度はぜひ鶯点のお勉強会をお願いいたします。
 またお目に掛かれるのを楽しみに致しております」

「お忙しい中ご対応いただき、ありがとうございました。
 素晴らしい演出とおもてなしで、久しぶりのお茶を心ゆくまで楽しませていただきました」
とお客様。

                      

その言葉にスタッフ一同、疲れも吹っ飛び、「またやりましょう・・」と元気が出ました。
片づけの後、レストランでおしゃべりタイム、こちらも楽しかったです。
いつもありがとう! これからもどうぞ宜しく・・・ね。
                               


   

長屋門公園・ひな祭り茶会のご案内

2012年02月28日 | 茶事
立春、雨水も過ぎ、今年もまたひな祭りが近づいてまいりました。
恒例の長屋門公園・ひな祭り茶会のご案内です。

囲炉裏のぬくもりに包まれた築200年の古民家には
新旧の雛人形や吊るし雛がいっぱい飾られます。

美味しいお菓子を食べて頂き、心をこめて薄茶をお点てします。
子どもさんも大人さんもたくさんのお雛さまを見ながら
日本の素晴らしい伝統文化をお楽しみください。
ひな祭り茶会のお問い合わせは長屋門公園へお願いいたします。

ひな祭り-楽しい人形劇の公演-もありますよ。
3月3日(土)10時から11時。詳しくはHPをご覧ください
                 
                 
                 

    ひな祭りの茶会              
   日時  平成24年3月3日(土)
   場所  横浜市長屋門公園 囲炉裏ばた
       (〒246-0023 横浜市瀬谷区阿久和東1-17)    
        TEL&FAX 045-364-7072
   茶席   13時~15時
   参加費  300円 (茶菓代) 
        
   交通アクセス 相鉄線三ツ境駅より徒歩18分
   地図参照: http://members2.jcom.home.ne.jp/9327mzss/use.htm

   (バス情報) 「三ツ境」駅からはバスも利用できます。
          「三ツ境」駅から「上阿久和(かみあくわ)」バス停まで約6分。
          バス停から公園まで徒歩5分です。

         「三ツ境駅」 → 上阿久和(長屋門公園入口)
          乗り場は(2)番です(地図参照)
         ・戸17「戸塚駅東口」(阿久和経由)行き
         ・戸19「戸塚駅東口(湘南泉病院経由)」行き