暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

長興山紹太寺のしだれ桜

2010年03月29日 | ハイキング・ぶらり散歩
秋に行う同窓会の下見に箱根へ出かけました。
帰りに箱根湯元から入生田まで歩き、
長興山紹太寺(しょうたいじ)のしだれ桜を見に行きました。

長興山紹太寺は小田原藩主だった稲葉正則が建立した寺ですが、
その後稲葉家は国替えとなり、東海道に面して威容を誇っていた大伽藍は
時代の中に消滅し、子院の一つが長興山紹太寺として法灯を継いでいます。

               

かつて巨大な山門があったという道を上っていくと、
当時のままと思われる石段があります。
今回は石段の道を選び、ゆっくり上っていきました。
石畳の道を進み、さらに石段を上って行くと石橋があり、
その先は蜜柑畑になっていて、二十年前来た時とほとんど変わらぬ風景です。
ここは主要伽藍跡で、ところどころに禅語が刻まれた巨石が残っています。

               

一番奥の石段を上ると稲葉家の御霊屋跡と墓所となっていました。
大きな五輪塔が並んでいます。
紹太寺を建立した稲葉正則は徳川家光の乳母、春日局の孫にあたり、
春日局の子供である稲葉正勝の墓もありました。
春日局の供養塔もあり、立派な墓所なのですが、昼なお暗いので
いつ来ても荒廃した感じがします。

蜜柑畑まで戻り、しだれ桜を目指しました。
二十年前に訪れた時は今ほど有名ではなかったので会う人もなく、
薄暗い森のはずれに佇んでいるしだれ桜とその場所に
妖気を感じたことを鮮明に覚えています。

久し振りで見た、長興山のしだれ桜はちょうど満開でした。
全容を見下ろせる場所があって、しだれ桜の姿の好さに
惚れ惚れと見とれました。
桜花で覆われた袂を幾重にもなびかせて、優雅、妖艶、豊潤です。

桜の周りは保護されて人が入れないように整備され、
おでんや団子の売店もあり、若い家族連れがいたりで、
明るく楽しいお花見の雰囲気です。
あの時感じた妖気は何だったのかしら?

「古木もこのくらいになると風格がでて好いねぇ~」
と、珍しく主人もつぶやいて見惚れています。

               

樹令350年以上という古木です。
よく見ると幹の数箇所に黒い包帯がまかれていて、
この寺の栄枯盛衰を一人視続けてきた
年老いた比丘尼のような気がしてきました。

離れがたく、桜の前の腰掛で桜アンパンを分け合いながら
しばし、時を過ごしました。
それから、小田原市板橋にある松永耳庵の老欅荘へ向いました。

                         
追記
 
長興山のしだれ桜は今週4月4日頃まで見ごろです。
箱根登山鉄道「入生田」駅から徒歩20分くらいです。

仙遊之式

2010年03月25日 | 七事式&いちねん会
三月の花月の稽古は仙遊之式でした。
床の軸は大亀和尚筆の「春色無高下」。

月を引き半東(花が亭主)でした。
亭主のIさんと迎え付けの挨拶をし、亭主はそのまま座に入り、
私は花台を運び出し、半東の座へ入りました。
花は廻り花です。

正客はピンクの馬酔木、次客は雪柳と朴半、
三客は土佐水木と羽衣、亭主は薄紅色の木瓜、
枝振りの好い木瓜が萩焼の花入にぴったりでしたので
あげるのをためらいながら、最後に貝母を生けました。

どれも華やかで、はっとするほど花の個性が引き立ちますが、
それも一瞬のことです。
仙遊之式はよく追善の茶会で行われ、花はたむけの花と
言われるのが頷けます。
ふと小町の歌を思いました。

    色見えでうつろふものは世の中の
        人の心の花にぞありける  小野小町(古今集)

花台を引き、炭斗、灰器を運び出しました。
仙遊では本炭所望なので、湿し灰を撒き、中掃き、
灰器を繰り上げてから茶道口へ下がりました。

三客が炭をついで席へ戻ると、
半東は釜を引き戻し、水次を持ち出して釜を清めます。
真形釜の和歌浦地紋が鮮やかに浮き上がりました。
炭手前で一番好きな瞬間で、半東冥利でした。
清める時に肩ではなく甑口からしっかり拭くようにご指導がありました。

次はお香です。
仙遊では次香があり、香が上手につかめなかった前回の失敗
鮮やかに蘇ってきます。
次客のKさんが上手に本香を焚き添えられて、流石です。
志野袋の紐の扱いについてご指導がありました。
香盆を丸卓の前に運び、香炉を飾り、茶入を水指前に置きます。
棗を中央に置きなおすのを忘れて、香盆を持ち帰りました。

半東が席へ着くと、亭主は点前座へ行き濃茶を練ります。
そして、全員で濃茶を頂くのが仙遊の特徴の一つです。
亭主は中仕舞をして座へ着きます。

茶銘は小山園の雲鶴、まろやかな甘味のある御茶でした。
半東が拝見の茶碗を運んでいる間に亭主は点前座へ戻り、
中仕舞を解き、水一杓。

ここで亭主は客付へ廻り、「薄茶は花月で」と挨拶します。
亭主は居前に戻り、亭主と客は同時に帠紗をつけます。
順次茶碗を拝見の後、三客は茶碗を縁内に預かっておきます。
一同帛紗を付けてから三客より茶碗が返され、亭主は茶碗を取り込み総礼。
茶碗へ湯を入れ、まわしながらすすぎ、向うへついて置きます。

半東は総礼の後すぐに水屋へ戻り、
折据を乗せた干菓子盆を正客へ運び出します。
客、亭主と半東は同時に立って、
客(正客は干菓子盆を持って)は四畳半へ進み、
半東は前から、亭主は半東の後ろを通って四客へ入ります。

「折据おまわしを」で折据を廻し、続いて菓子器をまわします。、
折据は半東があずかり、干菓子器は正客へ戻します。
一緒に干菓子を頂いてから札をみて、花のみ名乗ります・・・。

先輩方のなさる仙遊之式にあこがれて、
優雅にすらすらと出来ることを目指していますが、
道遠し・・ですね。
いろいろ先生にご指導頂いて、学ぶことが楽しい仙遊之式でした。

桜を愛でる茶事

2010年03月24日 | 茶事
昨年(平成21年)のサクラと茶事のお話です。
4月半ばから四国遍路へ出かける前にどうしても・・と、
「桜を愛でる茶事」に茶友を我家へお招きしました。

裏庭の公園に染井吉野が十数本あるのですが、
その一本に一際見事な枝振りの桜がありまして、
「私のサクラ」と名付けて愛でております。
大きく開口している台所の窓から洗い物や野菜を切りながら、
朝な夕なに「私のサクラ」を眺め暮らしています。
・・・平和を感謝し、胸キュンになるくらい幸せな一時です。

平成21年4月5日(日)は天気も良く、満開のサクラ日和でした。
業平の歌の如く、茶事の日のかなり前から何時咲くのかしら?
満開は何日? 咲けば咲いたで、雨風や気温が気がかりでした。

茶事次第は、廻り炭、点心、菓子、中立、濃茶、薄茶(花月)でした。
お道具はもちろん、さしたる趣向もないのですが、
桜の花を愛で、散る桜を惜しみながら、粗茶一服さしあげました。

茶事が始まってから
「私のサクラ」が一番良く眺められる場所(公園)に薄縁を敷き、
腰掛を運び、緋傘を立てました。
露台(腰掛待合)から公園まで腰掛を運ぶのは着物姿の亭主には
ちと無理なので、主人にSOSでした。
中立でその腰掛へ座って頂き、しばしサクラを楽しんで頂きました。

濃茶の茶碗は佐渡の陶芸家・渡辺陶生作の楽茶碗で、サクラ色です。
佐渡の花之木旅館でこの茶碗に出合った時、もっとピンク色で
キャピキャピしていて落ち着きが欲しいと思いました。

「坂東玉三郎さんがこれと同じのをお買い上げで、使っているうちに
 とても好くなったそうですよ」と、陶生さんの奥様。
玉三郎の一言に購入を決めた思い出の茶碗です。
この茶碗は使うごとに好くなって
「玉三郎」と名付けて愛用しています。

毎年どなたかを気楽にお招きしたいものです。
今年の「私のサクラ」の開花予想は3月27日(土)、
満開予想は4月3日(土)です。

諸事情にて今年の春は茶事をいたしませんが、
薄茶一服(何服でも)や稽古のお付き合いは大歓迎です。
よろしかったらご一報ください。

                            

                 

桜の花狂い  「花の業平」

2010年03月21日 | 茶道楽
この時季になると在原業平の歌を思い出し、
これからの「桜の花狂い」の日々が思いやられます。
今年は桜とのどんな出合いがあるのでしょうか。

  世の中にたえて桜のなかりせば
      春の心はのどけからまし  在原業平(古今集)

先ずは我家の江戸彼岸桜が満開になりました。
早速、井上良斎作の唐華彫花瓶へ生けてみました。

三月に行われた五事式の会茶事入門教室では徒然棚を用いました。
淡々斎お好みの、この優雅な棚は業平棚という別名があり、
業平菱に似た形になっています。
勝手付きに二つ、客付きに一つ、業平菱の透かし模様が入っています。
戸が開けられてどんな棗が登場するのか、とても楽しみな棚です。

                     

・・実は宝塚歌劇が大好きで(・・と言っても宝塚歴は浅いです)
香寿たつきさんと安蘭けいさんのファンです。
お二人とも星組のトップスターになり、既に引退しましたが
DVDで今も舞台を時々楽しんでいます。

香寿たつきさんが在原業平を演じた「花の業平」は、
伊勢物語を題材にして、藤原高子との悲恋を縦糸に
東下りの段、伊勢斎宮との禁断の恋、
当時の陰謀渦巻く政争と犠牲になった人々などを
多彩に盛り込んだミュージカルです。

最初と最後の場面は舞台一面の桜。
桜の花は、業平の恋の始まりと終りを、
現世の抗いがたいうつろいを、象徴しているようでした。

これも「桜の花狂い」の一つで、
この時季になると「花の業平」をまた観たくなります。

                             

茶事入門教室Prat2(第1回)

2010年03月19日 | 茶事教室
3月13日に茶事入門教室Prat2(第1回)が終了しました。

今回は亭主、半東、正客、詰と希望者がいらして
その方々にお役をお願いしました。

亭主のSさんには一度打ち合わせに来て頂き、
あとはメールで連絡を取り合いました。
初めての亭主だったので、点前、道具の説明、席中の会話など
覚えることや考えることが一杯で、大変だったと思います。

緊張を少しでも和らげてもらいたいと水屋指導のS先生に
激励役?をお願いしました。
「その役は上がり症(自称?)の私にぴったり。
 少しでもSさんのお役にたてるよう努めますね」
と、親身のサポートをしてくださったようです。

竹花入へ生けられた木瓜と寒芍薬(別名クリスマスローズ)、
間合いの好い銅鑼の音色、そして美味しく練られた濃茶に、
Sさんの一生懸命さが凝縮されていると思いました。
そのお気持ちは客方へも十分伝わったことでしょう。

「これから、益々精進して参りたいと思っております」
Sさんから嬉しいメールが届きました。

              

半東のMさんは、茶事や茶会をご自身でなさっている表千家の茶友です。
「私がお教えすることがあるのかしら?」

すると、ご主人(裏千家流)が亭主をなさる時に半東がつとまるよう、
裏千家流の半東を是非勉強したいというのです。エライ!
それで、炉中の整え方、敷き香、下火の入れ方、火入の灰型、
濡れ釜、続き薄で水屋から薄茶を持ち出すタイミングなど、
本に書かれていないところを実際に経験して頂きました。

正客のIさんは茶事のお仲間(男性)なので、
私としては教えやすいような、教えにくいような・・でした。
気になる点や質問はなるべく解り易くお話したつもりですが、
「ちょっと言いすぎかしら?」
と反省したりしました。
とても素直に拙い指導をお聞き入れくださって感謝しています。

お詰のSさんは初めての参加でしたが、とても前向きな方で
「次回も続いてお詰を勉強したい」
と、嬉しいお申し出がありました。
いろいろな方に交替でお役を経験して頂きたいので、
「ゆっくり一歩ずつお勉強してね・・」
と、その旨をお伝えしました。

お役を含め、茶事の基本や働きなどを皆で学んでいきたいですね。

次回の教室は風薫る5月。
同じ顔ぶれですので、主客ともに一層、気持を合わせて
初風炉の茶事を楽しみたいと思っています。