暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

映画「殿、利息でござる」を見て久々に涙・・・

2016年05月27日 | 暮らし
                        

先日、湿し灰作りとバーベキューの集いへ行った時の話題に「号泣」がありました。
映画、芝居、オペラなどを見て、よく「号泣」するというのです・・・。
これでも涙もろいので「涙ぐむ」くらいはありますが、「号泣」はとんとご無沙汰で、
そんな出会いを内心羨ましく聞いていました。

いちねん会のランチタイムの時、映画好きの茶友Aさんが目を輝かして
「「殿、利息でござる」という映画のお話をしていいかしら?
 ・・・・(中略)・・・とてもいい映画で感動しました。
 最後に出てくる殿様(俳優はナイショにしておきますね)がもう素敵で・・・
 もう一度見に行こう!と思っているの」

Aさんのお勧めとリラックス対策で久しぶりに映画「殿、利息でござる」を見に行きました。

                                        

今から250年前(江戸時代)、仙台藩吉岡宿(現在の宮城県黒川郡大和町(たいわちょう)吉岡)であった実話だそうです。
殿様の見栄や浪費のため財政難に陥った仙台藩では、民衆が重税や苦役に喘いでいた。
吉岡宿でも伝馬役(馬や人足の経費は宿場負担)という重い課役に暮らしが成り立たず、
破産や夜逃げする住人が相次いでいた。

造り酒屋を営む穀田屋十三郎(阿部サダヲ演じる)は、町の行く末を案じ直訴まで思い詰めていた。
町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治(瑛太演じる)から、藩に大金を貸し付けて利息を巻き上げるという、宿場復興のための秘策を打ち明けられる。
計画が明るみになれば打ち首は免れないが、それでも十三郎と仲間たち9名は、町を守るために私財を投げ打ち、計画を進めていく。

                         

数年かけて、ようやく目標額の5,000貫文(1,000両)を達成し、お上の説得にもついに成功するが、再び大きな難題がふりかかる。
「銭ではなく金で納めよ」
お上が銭を作り始めたおかげで金と銅銭のレートが変動し、金1,000両は5,800貫文に高騰していた。
5,800貫文は約3億4,800万円に相当するという。
追加の800貫文(約4,800万円)の金策をどうするか、この映画のクライマックスである。

                         

金策をめぐり3つのエピソードがありますが、中でも店を潰すことを覚悟して
「あと500貫文(約3,000万円)出させてください」(既に1500貫文(9,000万円を出資)
と願い出る浅野屋甚内(妻夫木聡演じる)とその一家の人々に胸打たれました。
店は破産、一家離散だというのに、誰ひとり取り乱すものもなく、満願成就したような穏やかな佇まい。
このような人たちが実在したなんて!  久々にタオルを出して号泣です。

浅野屋一家の「無私の心」を育んだのは陽明学の書「冥加訓(みょうがくん)」でした。
この「冥加訓」についても興味津々、もっと書きたいところですが、これにて・・・。
ぜひ映画「殿、利息でござる」を見てくだされませ。  


スタッフ
監督 中村義洋
原作 磯田道史  「無私の日本人」(文春文庫) 
脚本 中村義洋 鈴木謙一
製作総指揮 大角正

キャスト
阿部サダヲ  穀田屋十三郎
瑛太      菅原屋篤平治
妻夫木聡   浅野屋甚内
竹内結子   とき
寺脇康文   遠藤幾右衛門
   ?     殿(仙台藩7代藩主・伊達重村)




五月の教室だより・・・基本の基

2016年05月24日 | 暁庵の裏千家茶道教室

  みどりあふれる五月の庭

その日は、YさんとKさんの初風炉のお稽古でした。

6月に予定している稽古茶事でYさんに半東をして頂くので、先ずは火入の灰形を作って頂きます。
最初なので私が最初に習った裏千家流(?)をお教えしました。
煙草盆、火入、灰筋は茶事のテーマや季節などにより変化させること、それが主客の楽しみになることなど・・・
奥が深いのですが、先ずは基本からです。
「これから茶会や茶事へ行ったら、煙草盆の取り合わせや火入の灰筋を観賞してね。
 こんな火入でこんな灰筋にしてみたい! という出会いがあったら頭に叩き込むこと」
なんせ初めてのこと、悪戦苦闘されて最初の火入が出来上がりました。
あとは自宅で反復練習あるのみでしょうか。

 






 出会った煙草盆いろいろ

                      
初炭手前、次いで四ヶ伝の唐物です。
風炉の初炭手前は茶事でも一番難しいところですが、濃茶までに煮えがつくように、
短時間で火がしっかり熾るように炭を置く必要があります。
茶事を前提に火が早く熾るように炭を置く稽古をしました。


                               
昼食後、Kさんの薄茶平点前、Yさんの濃茶平点前、Kさんの濃茶平点前と基本の基が続きます。
Kさんにとって半年ぶりの風炉点前でしたが、炉で基本がしっかり出来ているので、ほとんど直す必要がありません。
心配していた引き柄杓も上出来、濃茶も美味しく点てています。

内心、嬉しくKさんの点前をみていると、Yさんから
初釜許状式などの行事は別として、Kさんと一緒にお稽古するのは初めてですが、
1年でここまできれいなお点前が出来るようになるのですね。
私もとても刺激になり、今日は御一緒できて嬉しいです・・・」

お二人とも相乗効果でしょうか、習熟度は違っても基本の確認ということで好い稽古になったようです。
・・・そして、もちろん暁庵も。
自身の点前が「基本の基」ができているか、きちんと「基本の基」をお伝えしているかどうかを反省するのであります・・・。


  紅額が咲き始めました

稽古後のおしゃべりタイムで素晴らしい発見!がありました。
遠くいわき市から通ってくださっているYさん、(社)日本ティーコンシェルジュ協会1級認定講師であり、
ティーコンシェルジュチャンピオンシップで昨年今年と2年連続優勝に輝いた方だったのです(凄いですネ・・・)。

「ブログを再開したので、お暇な時にお寄りくださると嬉しいです」というメールがあり、
早速Yさんのブログを訪問しました。
ハーブティーの魅力ある世界や効能をちょっぴり知り始め、興味津々です。
とても素敵なブログなのでぜひお立ち寄りくださいませ。  

    ハーブティーのある幸せな日々:http://ameblo.jp/1-sizuku/

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    「ただ今、暁庵の茶道教室の生徒さんを募集中です」   
     詳しくは、暁庵の裏千家茶道教室HP:https:akatsukiane.wordpress.com/をご覧ください。
     ご縁があると嬉しいです。


お香の会へ

2016年05月20日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                  
                        額田王    安田靫彦(1884‐1978)画

5月15日、奥の細道会のNさんのお誘いで、香道直心流のお香の会へ。
会場はみたか井心亭(せいしんてい、三鷹市)、Nさん、Iさん、Kさん、暁庵の4人で出かけました。

「香会へのお誘い」という栞に次のように書かれていました。
 
  かねさす 紫野行き 標野行き
          野守は見ずや 君が袖振る     額田王

  紫草の にほへる妹を 憎くあらば 
          人妻ゆゑに われ恋ひめやも    大海人皇子

 万葉集の圧巻と思われる蒲生野での額田王と大海人皇子との贈答歌です。
 大胆不敵なやりとりを交わす二人です。
 七世紀後半の激動する政治情勢のなか、歌と愛に生きた額田王をとりあげます。
 お楽しみいただけると存じます。 ・・・後略・・・       荒井香春


                   
                               額田王の年表

香席は「標野恋歌香」とあり、香席へ入る前に主宰の新井香春先生のお話がありました。
大化改新、白村江の大敗、壬申の乱という3つの大きな出来事、激動の時代に生きた額田王について熱く語られ、香席への期待がいや増します。
それに、荒井先生のお話を伺うと、想像力や感性が豊かになり、より奥深くお香を楽しめる気がしました。

さて、香席では先ず試香「あかねさす」が焚かれ、香を聞き、「あかねさす」と名乗って次の方へ香炉を送ります。
本香では用意された5つの香包みが打ち混ぜられ、順番に焚かれ、最初の香だけ「出香」と名乗って香炉を送ります。

   試香
     あかねさす  1ちゅう

   本香
     一.あかねさす  1ちゅう
     二.標野     3ちゅう
     ウ        1ちゅう

名乗り紙の表に名前を書き、内側三枚目に聞いた本香を順番に名乗り例(二一ウ二二)の如く記しました。
Iさんが手渡してくれたメモ用紙とペンが大活躍です。
試香1つ、本香5つを順番に聞いていくので、特徴や印象をメモしておかないと分からなくなってしまいます。
メモに自信を持って、ウ二一二二と書いたのですが、正解はウ一二二二でした。
ウ~~ン!難しい・・・・

                  
                  
                  この書は「われ恋ひめやも」のひさえさまへ贈呈されました

執筆者が筆でしたためる記録詞書は次のようになります。
       紫野ゆき     一当り
       標野ゆき     二当り
       君が袖ふる    ウ当り
     われ恋ひめやも    全当り
       野守は見ずや   不当り

8名のうち1名が「われ恋ひめやも」(全当り)、暁庵は「君が袖振る」(ウ当り)でした。

香道体験席では、香炉の50本の灰筋に挑戦し、六国五味のうち寸門多羅(スモンダラ)を焚かせて頂きました。

                  
                               体験香席

最後に立礼席で緑茶とお菓子を頂戴しました。
お菓子は、「標野恋歌香」にインスパイアされたオリジナルでの上に二つの飾り。
お菓子も意味深で、どんな物語が紡ぎだされるのかしら?

                  

愉しいだけでなく、想像力、創造力、五感が大いに刺激され、魅了されたお香の会でした。



骨董鑑賞が楽しみに・・・

2016年05月17日 | 暁庵の裏千家茶道教室


「薫風自南来」  一休禅師書
  (体の中を薫風が吹き抜けていきます・・・
   身が引き締まる大好きなお軸。本歌はMOA美術館


今日(5月11日)はN氏の稽古日で、とても楽しみにしていました。
・・・それは、毎回秘蔵の骨董品を一つ持って来てくださるから。
いえいえ、稽古も楽しみなんですよ。
でも、身近で骨董を鑑賞できるお勉強の機会が確実に増えました(アリガトウ)。

前回(4月28日)は、茶箱一式をFさん、ツレと3人で拝見しました。
大胆な意匠の草花模様が函外側にあり、螺鈿の花、銀(鉛?)の部分は時代で黒く、
京都の黎明教会資料研修館で見た、光悦を思わせる優雅な茶箱です。

開けると、お宝が次々と・・・(メモがないので思い出すままに)。
茶碗と茶入は素敵な仕覆を身に着けて、入れ子になっています。
茶入は根来塗の薬器(?)でしょうか、古色溢れる塗に惹きつけられ、根来大好きな暁庵には垂涎ものでした。
蓋裏に花押があり、宗旦四天王の一人、山田宗偏の花押とか。
花押だけでもいろいろな物語があれこれ想像できますね・・・。

茶碗は高麗・狂言袴の筒茶碗、侘びた味わいが深遠へ誘うような趣きがあり、茶入とぴったりお似合いです。
仕覆は古裂、茶入は緑地に金箔の押し文様が美しい金襴(だと思う)、
茶碗は粋な縞模様でカピタン裂のようでもあります。

薄器は古染付(明時代)、茶巾筒も染付、茶筅筒は紫檀の透かし彫、茶杓は象牙の笹葉かしら?
いずれも網袋や仕覆が着せられて、大事にされていたのがわかります。

でも、使われていなかったらしく、久々に陽の目を見て、お道具たちも思いっきり深呼吸しているようでした。
ギャラリー3人は美術館のガラスの向こうにあるような、茶箱一式を拝見出来て大感激でしたが、N氏も嬉しかったようで、皆、幸せな時間でした。

その日は炉の稽古日(最終回)だったので、
Fさんは真之炭手前と台子薄茶点前、N氏は貴人点薄茶と貴人点濃茶点前の稽古、
炉としばしの別れです。

                              
5月11日にN氏が来庵しました。
風炉の初日は、全員が薄茶平点前と濃茶平点前から始めます。
この日はN氏だけ、細かな所作を直したり、科目内容の希望もじっくり伺えるので、とても貴重な日です。
毎回、颯爽と着物でいらっしゃるので、暁庵もがんばって着物で応対しています。  

さて、この日のお宝は古染(古染付)の香合。
少し大ぶりの扇子型で、正月の床に映えそうですし、茶事で盆香合に使うのもインパクトがあります。
扇面に洞庭湖を思わせる山水の景が広がり、水をテーマの茶会にも・・・つい、あれこれ妄想が。
素晴らしい御道具をお持ちなので、それらを生かした茶会や茶事をしてほしい・・・とお伝えしてあります。
あまりプレッシャーをかけてもいけないので、気長に楽しみに待つ事にいたしましょう。

実はそのあと、しばらく「古染病」になりまして、まだ後遺症が・・・。
もともと「古染」はお好みでしたが、気になって・・・おります


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茶花を贈る人

2016年05月15日 | 暮らし
                        
                           雨除けのパラソルを拡げた作業場(ベランダ)

5月9日にNさんから茶花の苗が届きました。
大きな段ボールが2個、茶花10数種と植木鉢がたくさん入っていました。
「茶花を贈る人」とのご縁は真ML茶の湯コミュニティーに掲載された次のような記事から始まりました。

   山野草差し上げます
   自宅の建替のためにベランダや庭の花達を整理しています。
   もし、お持ちでなくて育ててみたいと思われる方がいらっしゃいましたら、
   送料のみご負担いただければ小さな鉢に小分けしてお送りいたします。

   丹頂草、立浪草(白、紫:今開花中)、藤袴(白)、清澄菊、足摺野地菊、
   キラン草(開花中)、秋海棠(白、ピンク)、半夏生、セキショウ、菊葉藤袴(桃)、
   シャガ、銀水引(斑入り葉)、三寸アヤメ、蓼藍などです・・・(後略)。


Nさんへすぐにメールを出しました。
 
   はじめまして。暁庵と申します。
   昨年5月から茶道教室を開設し、茶花に四苦八苦しています。
   もし、茶花をお分けいただけたら助かります。
   記載の茶花はほとんど持っていないので、いくつか選んでお送りいただけますか?
   何卒、よろしくお願い致します。

                       
                               紫の立浪草 (季節の花300)

GWあけに茶花が届き、すぐに開けてみると、
暑さで弱っているのもあったのですが、バケツ2個に入れて水を補給しておきました。
用事を済ませ15時頃から植え付け作業を開始すると、あいにく雨が降ってきました。
天気予報では3日間雨とのこと、雨の中、急ぎ1時間30分で終了させました。

植木鉢をもらって助かりました。
それでも足りず、一部、庭にスぺースを造り、直に植えたりもしました。

                       
                        
                       
                         送られてきた茶花と植木鉢(雨がポツポツ来てます)

   種がこぼれたのか、穂咲きナナカマドの小苗が出ていましたので一緒にお送りいたしますね。
   地味ですが、私の先生がお好きで、頼まれて畑に植えたものです。
   初夏の茶花には、一味添えてくれますし、秋には派手すぎない照葉が楽しめます。


・・・というメッセージと共に、大好きな穂咲きナナカマドの苗も送られてきて、一番嬉しい茶花です。

植え付け作業が終わると腰が痛くなりましたが、
希望者18人へ発送作業をなさったNさんの大変さを思い、頭が下がります。
ありがとうございました! 
そして、Nさんの植物を愛する気持が伝わってきて、爽やかな感動が・・・。

頂いた茶花は大事に大事に育てますね。
建替が落ち着きましたら、秋にでも我が家へお茶飲みにいらしてください。大歓迎です。

                                             

                        
                               睡蓮鉢に金魚が2匹住んでいます