暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「雨月の茶事」・・・(5)後礼のお手紙

2024年07月20日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

つづき)

「雨月の茶事」の最終章になりました(ちょっぴり )。

心地好い疲れを感じながら数日、茶事の余韻に浸ってグズグズしていると、後礼のお手紙が届きました。

何よりの疲労回復剤ですし、亭主とは違う視点があって興味深く、嬉しく拝読しました。

ありがとうございます! 茶事の記念に掲載させて頂きますね。

 

  YKさまより

前略ごめん下さいませ

昨日は雨月の茶事にお招き頂きまして とても有難く感謝申し上げます

立礼のお席でございましたので膝の痛みを気にせず 

皆様と和やかに楽しくゆっくりお話しできまして嬉しく思っております

甘くて香の良い とても美味しい濃茶を頂戴致しまして ありがとうございました

又 お道具の数々がお能に関係のある銘で 

灯火のもと 暁庵様がご覧になられたお能のお話をしてくださいました折

お謡いやお鼓の稽古の事 能楽堂へ出かけておりました頃が懐かしく思い出され

お茶とお能の関連を改めて痛感致しております

中立でのEK様のお仕舞も素敵でございましたね

お味の良い季節の材料の美味しかった懐石料理と器も心に残っております

お心こもったおもてなしをして頂きまして 幸せな一日でございました事と

お茶とお能の茶事は初めてで 私にとって忘れがたい思い出になるでしょう

厚く御礼申し上げます

ご準備や後片付けでさぞかしお疲れのことと存じます

季節の変わり目 お身体にお気をつけて日々をお過ごしくださいます様 願っております

      かしこ     YK

  EKさまより

暁庵さま

昨日は蒸し暑いなか、雨月の茶事にお招きいただき、本当にありがとうございました。 

このたびは「能とお茶」をテーマに楽しいお茶事を催してくださり、相客の皆様にも恵まれ、素晴らしい会となりました。

茶道はその情趣を高めるために他の芸術分野を取り込み、日本文化の総合たる芸術になっていると思います。特に能は裏千家学園の一科目として取り入れられたり、茶道具の銘や趣向のタネとしてよく出てくるのに、能をテーマとしたお茶事に遭遇したことがありませんでした。

これは私の茶人としての経験不足によるものだと思うのですが、今回、能と茶道を学ぶ者として、能の趣向を取り入れたお茶事に招んでいただけたこと、心から感謝しております。

京都、炭屋旅館の主人 堀部公充氏が「能をテーマにして茶事をやってもその趣向がわからずに解説することになると白ける。趣向というものはジョークと同じで解説するようなものではない」という旨の発言をしておられて、なるほどと思いました。

今回は相客もみなさま、能を愛してらっしゃる方で、お茶会の趣向がびしびしと伝わる良き会となったように思います。

待合の伏見稲荷の短冊からすでに能の異界に導かれ、本席の「隅田川」の掛物、船の香合に「江口」の舟遊びや「隅田川」の渡し船を想い、車軸釜には「葵の上」の車争いを、お茶碗も「姥捨」「西行桜」など、「鵜飼」の鵜籠、棗は篝火で薪能・・・と思ったら、お部屋には本物のろうそくの灯火が据えられ、その揺らめきに幽玄を感じました。

また京都人として嬉しかったのは、明日からの祇園祭、菊水鉾の茶会に使われる「したたり」がお菓子だったこと。菊水鉾は元の金剛能楽堂の場所、鉾の上には「菊慈童」の人形が乗っております。

もうなにもかも楽しくて、相客の皆様や先生の能のかかわりなど話題が尽きず、能のように夢うつつに、あっという間に時は過ぎてゆきました。

それにしても雨月の茶事にふさわしく、そぼふる雨の音を聞きながら、美味しい懐石に舌鼓を打ち、芳醇な濃茶の香と味に酔い、さらに半東さんの美しいお点前、本当に幸せで気持ちよい時を過ごさせていただきました。

私は明日から京都に参ります。お茶事のおかげで、ひさしぶりに金剛能楽堂に足を運ぼうかなと思いました。

10回目のお茶事を終えられ、先生もお疲れのことと存じます。どうぞ御身ご自愛くださいませ。半東さんやお水屋さんもいろいろありがとうございました。

またのお招きを心待ちにしております。      EK

 

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  「雨月の茶事」支度を楽しんで・・・

 


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