暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

神戸・生田神社

2016年04月29日 | 

                         「祈る人」・・・生田の森にて

淡路島の帰りに神戸で一泊し、茶友・茶会をめぐるお茶の旅が続きます。

6時半にホテルのロビーで茶友Yさんと待ち合わせ、夕食をご一緒しました。
京都滞在中、六甲までは来ていたのですが、三宮、元町など他へはなかなか来る機会がありません。
その日は神戸の街をぶらぶらしながらYさんが予約してくださったレストランへ。

     
   写真がないので以前取った神戸の洋館の写真です・・・

旧神戸居留地15番館の「TOOTH TOOTH」です。
洋館の素敵なレストランは横浜で言うなら「山手十番館}かしら?
Yさんとの茶の話は善い事ばかりでなく悩みも語って尽きせず、
お互いの近況報告をしながらフレンチのディナーを頂きました。
茶事の懐石とはまた違い、心も舌も次第にとろけていきます。
鱸のポワレがお勧めで、デザートのケーキもグッドでした。

                  

翌朝、生田神社へお詣りしました。
S先生の初釜で玄々斎手造りの「花箙(はなえびら)」の茶杓に出逢って以来、いつの日か生田神社を訪れたいと願っていたのです。
生田神社の祭神は稚日女尊(わかひるめのみこと)、
伊勢神宮内宮にお祀りされる天照大神(あまてらすおおみかみ)の和魂(にぎみたま)あるいは妹神と伝えられ、物を生み育て万物の成長を御加護する神様だそうです。

    

本殿で「今回の旅が無事でありますように・・・」と祈りました。
それから生田の森へ。
その昔、広大な鎮守の森であった生田の森は、源平合戦、南北朝争乱、織田信長と荒木村重の戦いなど、何度も合戦の要所となったそうです。
境内の看板によると

   源平合戦の古戦場
   史蹟 生田の森

   世に有名な「源平合戦」の折、西は須磨の一の谷から、
   東はこの生田の森にかけての一帯が戦場となりました。
   平家はこの生田の森を大手の木戸口とし、平知盛大将軍・
   平重衡副将軍が陣取り防備を固めていましたところ、
   源範頼の軍勢が攻め入りました。

   この時源氏の若武者・梶原源太景季が境内に咲き誇った
   梅の一枝を箙(えびら)に挿して戦ったことは武士の風流として
   語り継がれ、現在も「箙の梅」として老梅が境内に植わっています(後略)

                  
                       境内の「箙(えびら)の梅」をパチリ

樹齢数百年の御神木が数本あり、その御神木にさわり、祈りをささげる人がいました。
私も早速まねて、幾星霜を経て神戸の街中にそびえたつ御神木に両手をあて寄り添ってみました。
早朝の清々しい木霊の気を浴びて浄められ、元気が出てきました。

帰りに「箙の梅」と「梶原の井」を見物し、ホテルへ戻りました。
今日は姫路と竜野へ向かい、Kさんの夕去りの茶会へ出かけます。
旅はまだ続きますが、生田神社の御利益できっと素晴らしい旅になるであろう予感が・・・。

                                         


喜寿を祝う茶事へ招かれて  

2016年04月26日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                                                       


茶友T氏の母上様
の喜寿を祝う茶事へ招かれました。
京都に居るときからこの茶事のことは伺っていて、心待ちにしていました。
巻紙のお手紙に
  四月十八日  十一時席入
  席      真静庵
とあり、不肖暁庵が正客の指名、御連客4名様(Kさま母娘、Fさま、Fさま友人)とは初対面でした。
・・・でも、皆で心を一つにして臨んだ喜寿を祝う茶事は得難い一会となり、未だ余韻が治まりません。
忘れないように少しだけ書いておきます(これから数ヶ月茶事が続くとのことなので・・・)。

徳島から高速バスに乗り、鳴門海峡を渡り、淡路島の真静庵へ向かいました。
最寄バス停までT氏が出迎えてくださり、到着の安堵と共に正客の重圧がのしかかってきます。

                            

待合で連客の皆様と改めてご挨拶を交わすと、口々に
「お茶や茶事のことはよくわかっていませんので、失礼があるかもしれません。
 どうぞ宜しくお願い致します」
・・・と心配そうなご様子でした。
内心、「そうよね! 正客の私もどうなることかしら??ですもの」と思いながら
「今日はお茶の作法うんぬんは抜きにして、間違っても良いことにしましょう。
 皆さまと心を一つにしてS先生の喜寿をお祝いしたいと思いますので、そのことに専念致しましょう」
と申し上げると、皆さまの顔に笑顔が戻りました(ヨカッタ!)。

待合のお軸は寿老人の画と俳句、仙義梵和尚の筆です。
ユーモラスな寿老人にS先生の穏やかなお顔を重ね、楽しい俳句にもニッコリです。
机の上に奉書と硯が置かれていて、バスの中でひねり出した歌を書きました。

      先達の喜寿をことほぎ渡る島
         夢の淡路のあとを慕ひつ     暁庵

                           

真静庵へ席入すると、薄暗い四畳半の茶室に燭台が置かれています。
その灯りを頼りに床のお軸を拝見したのですが、達筆すぎて・・・う~~ん。
喜寿を迎えられたS先生と客5名がお祝いの挨拶を交わし、
記念の茶事へお招き頂いた感慨が各人の胸や言葉に溢れて、S先生も込み上げてくるものがあったようでした。
涙もろい暁庵もすぐにほろり・・・ 

挨拶のあとでS先生にお軸をお読み上げ頂きました。

    諸悪莫作修(衆とも)善奉行(しょあくまくさ しゅぜんぶぎょう)

名前は失念しましたが、宗旦居士時代の大徳寺住職筆、禅機が迫ってくるような力強い書です。
このお軸を掛けられた趣旨をお伺いすると
「なんとか喜寿を迎えるまで来ましたけれど、その道は必ずしも善いことばかりではなく、悪しきこともあり、いろいろ乗り越えてここまで来たように思います・・・」
S先生のお話を伺って
「悪いことはせずに善いことをしなさい」
と単純に理解していた「諸悪莫作修善奉行」が全く違う意味合いで心に迫ってくるではありませんか!
この禅語を選ばれた先生のお心に触れた思いがし、胸が熱くなりました。

・・・もうこれだけでも感動でしたが、これからが・・・・

喜寿の茶事が全て終った頃に続きを書けたら・・・と今は思っています。

                                 


弥生&卯月の教室だより

2016年04月24日 | 暁庵の裏千家茶道教室


いろいろありまして遅くなりましたが、久しぶりの教室だよりです。

弥生(3月)からN氏が暁庵の茶道教室の門を敲いてくれました。
三十代に茶道にかなり熱中し、茶名も持っておられます。
・・・が、諸事情で中断すること20年を経て再開してくださいました。
それで、平点前からぼつぼつお稽古して頂いてます。

N氏が大の骨董好きということがわかり、早速おねだりしました。
稽古に来るたびに「1つだけ骨董」を持参して見せて頂きたい・・・と。
1つだけにしたのは、毎回の楽しみにしたいのと、時間の問題もありますので。
折角の機会なのでギャラリーが多い方が愉しいと思い、ツレにも声をかけ、
Kさんと3人で拝見しました(なんて贅沢なことでしょう!)。



それは、古備前の茶入でした。
黒く焼き締められた丸壺の茶入。
手に取って見せて頂くと、かわいらしい形、焼き締められた肌合いの、深く侘びた味わいに惹きつけられました。
この茶入は二畳台目の小間で客二人。水指は木地釣瓶、茶碗は・・・と、つい想像してしまいます。
江戸時代の遠州流家元でしょうか、素敵な歌銘が付けられていました。
それに付属品が凄かったです。外函、内函、曳家、仕覆など。
時代裂地の4つの仕覆は品よく珍しい裂地ばかり、持ち主の深い愛情を感じました。

・・・素晴らしい茶入を見せて頂いて、少々興奮気味で稽古に入ります。
その日の科目はN氏、Kさんともに炉の薄茶平点前と濃茶平点前でした。
お稽古も楽しみですが、骨董も楽しみでして、次回が待ち遠しいです・・・。


  あけびを竹尺八へ

卯月(4月)からOさんが短期入門されました。
Oさんはスウェーデン在住です。
娘さん夫婦が日本に留学されたのでお孫さんの世話のため一緒に来日されたのでした。
スウェーデンで裏千家茶道を習っていたので、めったにないこの機会に日本で稽古をしたい・・・と思ったのだそうです。
短期間と言っても半年それとも1年かしら?・・と思っていたのですが、3ヶ月の滞在です。
Oさんの稽古への前向きな気持ちと、土、日曜日は孫のお守りも休みなので、茶の空間に身を置き、自分の時間を持ちたい・・・と。

その気持ちがよくわかり、短期間ですがお引き受けしました。


 頂戴した「京の花だより」(by 心花さん)と「つくしの里」(by Wさん)

3ヶ月間の稽古の要望をお尋ねすると
 ○ 自信がないので基本から見てほしい
 ○ 炭手前を見学や稽古したい(海外では炭手前は難しいとのこと)
 ○ 茶事や茶会の機会があれば、見学でも良いので勉強したい

上級(引次)まで許状を持っていらっしゃるので、
最初は薄茶と濃茶平点前から基本を見させて頂きました。
2回目は和巾と貴人点、今度が3回目です。
とても楽しく意欲的にお稽古してくださっていて、私も3ヶ月でどこまでお教えできるか、がんばっています。
                       Oさんと一緒に


    暁庵の裏千家茶道教室  前へ   次へ   トップへ



初めての許状式

2016年04月17日 | 暁庵の裏千家茶道教室


帷子川の川辺の八重桜が満開になりました。
4月13日(水)は暁庵の茶道教室の初めての許状式でした。
昨年6月に入門されたKさんがめでたく初級(入門、小習、茶箱)の許状を拝受しました。

さて、初めての許状式をどのように行ったらよいかしら・・・
自分の許状式を思い出しながら、なるべく社中の方にも参席して頂いて、皆でKさんの許状式をお祝いしたいと思いました。
小さな暁庵の茶道教室ですが小さな教室にはそれなりの良さがあると思うからです。
午前中にYさんが稽古にいらしたので、FさんとYさんに立会人になって頂きました。
許状式は14時からです。



床に利休居士画像のお軸を掛け、花、香、蝋燭をたむけ茶と干菓子を献じました。
献茶は天目茶碗に湯を汲み、薄茶を一杓入れるだけですが、Yさんに体験して頂き、
ハワイ(現・京都滞在中)の心花さんから頂いた桜の干菓子を高坏に盛りました。



お軸の画(複製)は土佐光孚(とさみつたか)、次のような鵬雲斎御家元(現・大宗匠)の賛があります。

   今日親聞獅子吼  
   他時定作鳳凰兒        宗室(花押)


   読み下しは、今日親シク獅子吼(ししく)ヲ聞ク
           他時定メテ鳳凰ノ兒(ほうおうのこ)ト作(な)ル

   今日、利休居士に繋がる茶道の門を敲き、その教えを聞くご縁ができたことを嬉しく思います
   いつの日か、茶道の修練を重ね茶道の真髄を体得できることを願っています
   (・・・勝手ながらそのようにお話ししました)
  
 


今日庵第十六世・千宗室御家元に代り、不肖・暁庵が許状を読み上げ、Kさんにお渡ししました。
ピンクの着物で式に臨んでくださったKさん、緊張の中にも嬉しく感無量の様子が伝わってきます・・・。


                   

その後、許状の小習より貴人清次薄茶点前を選び、Yさんの点前、Fさんの半東、暁庵の清(貴人)、Kさんの次(お供)で稽古しました。

席を移し、吸物八寸で一献を差し上げ、Kさんの許状式を皆で愉しくお祝いすることができ、安堵しています。
・・・そして、私もご指導いただいた先生方のご厚情を懐かしく思い出し、裏千家茶道の縁に繋がる喜びを改めて噛みしめたのでした・・・。
                           

   暁庵の裏千家茶道教室  前へ   次へ    トップへ



弥生の五葉会・・・香付花月

2016年04月11日 | 暁庵の裏千家茶道教室


アップが大変遅れましたが、久しぶりに五葉会だよりです。
2015年5月15日の初回以来、ほぼ毎月第二金曜日に開催していますが、
今年に入り初めての五葉会でした。

1月は年始休会、2月は腰痛のため臨時休会、弥生3月になって開催できてほっとしています。
さて当日、春雨の中、N先生はじめ4人の会員とFさんが来てくださり、感謝です。
科目は、仙遊之式、投げ込み花月、昼食をはさんで香付花月でした。

皆で分担して仙遊之式の準備をします。
仙遊之式は、廻り花、炭(本炭所望)、香(本香と次香の二種)、濃茶(全員)、薄茶で花月です。
本来は客4名ですが客5名だったので、八畳への席入りは鍵畳を通って畳一畳に正客以下3名が座り、
四客は真直ぐ進んで直角に曲がり畳半畳へ、五客はまっすぐ進んでそのまま半畳に座ります。
いつものように迎えつけをしますが、帛紗はつけません(濃茶が終わり、「薄茶は花月で」で帛紗をつけます)。



いろいろ書いておきたいことばかりですが、大好きな香付花月について記しておきます。
香付花月は、香を聞き、花月で薄茶、香銘に因んだ和歌や俳句などを詠み、奉書にしたため、自作の歌を朗詠して皆で楽しみます。

水屋で折据を廻し、Yさんが花(東)を引きました。
迎え付けのあと、客は帠紗を腰に付け、四畳半へ進みますが、
今回、N先生のご指導で香は八畳のままでしました。

香盆に折据を載せて正客前へ運び出し、末座に座り、
「どうぞ折据お回し」で、月(暁庵)と花が名乗り、
月が香を焚き、花は花月の初花です。

香盆が月に運ばれ、重香合から香包みを三つ左手に取ります。
香銘は「春霞」「春雨」「花衣」より「春霞」を選びました。
香を焚き、香と香包みを伏せて順次廻し、香を聞きます。
香元が本聞きを終えると、
「どうぞお香そのままに」と東は挨拶し、香盆を床脇に荘りました。
東が盆を荘って水屋へ下がる時に同時に客は四畳半へ入りました。
この時月は折据を持って入り、定座(五目)へ置きます。

東は茶碗と棗を置き合わせ、建水を踏込畳に置き、仮座へ入ると、
初花が点前座に進みます
以下花月と同様ですが、三服点ての間に香銘に因む和歌などを考えます。

花月之式との違いは折据は返さずに、
東が水次で立つと同時に正客は折据を持ち、一同八畳へ戻ります。
正客は定座(七つ目)へ折据を置きます。         

東は二つに折った奉書(二枚重ね、わさが左)と重硯をのせた文台を運び出し、
重硯を正客へ運び出します。
正客は重硯を下から縁内へ取り込み、縁外で順次廻します。

東は奉書を広げ、墨をすり、右端に「香付花月之記」と書き、
名前を順番に書いていきます。
日付、開催場所、出香(香元の名前)、香銘を書いてから、正客へ文台を運びます。
正客以下、自分の名前の上に和歌などを書き、文台を次客へ廻します。

東は再び文台を正客へ運びます。
自作の歌をニ回ずつ朗詠しました・・・「春霞」の情景や作者の気持ちを味わいながら、春の歓びでいっぱいになりました。
文台が東まで戻ると正客は折据を廻し、春なれば「花」が、
秋なれば「月」が名乗ります・・・ステキな趣向ですねぇ~。

最後に、東は奉書を巻いて(反物を巻くように)端を折留め、
「花」の客(この日は宗智さん)へ奉書を手渡します(尺八を吹くように縦にして)。
重硯を文台にのせて下げ、再び折据を取りに正客前へ進み総礼。
折据を持ち帰り、送り礼、客は袱紗を懐中し退席します。

    


      香付花月之記

    吉野山まとふ衣は春霞
    白桃紅のお色直しつ        宗曉

    花の色は霞にこめて見せづとも
    香ただよう春の山風        宗智

    春霞まばゆく見ゆる富士山を
    遠くにかすめ暖かさ増す      宗里

    水ぬるみ山にたなびく春霞     宗厚

    春霞緑のかすみ紅かすみ
    ひろがるふる里菜の花の野辺    宗悦

    春霞うたかたの夢に酔いしれる   宗澄

     平成二十八年三月十一日
            於  暁庵
           出香  暁庵
    香銘 春霞


   ・・・・だいぶ時間が経っているので間違いがあったら教えてね・・・  


    暁庵の裏千家茶道教室  前へ    次へ    トップへ