暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶の湯釜に恋して  二代 畠春斎さん (2)

2009年09月30日 | 茶道具
京都の町家に似た、とても情緒のあるお宅でした。
中庭に面した奥座敷にいろいろな釜が並んでいます。

畠春斎さんが現れて、釜を手に取らせてくださいました。
四方釜、真形釜、新しい感覚の筋文八方釜・・どれも素晴らしい釜です。
製作工程の話、製作の苦労話、「糸目の筒釜」で
初めて賞をもらったことなど、興味深く伺いました。

急に雨が降り始めました。
「夕立でしょう。
 雨が止むまでゆっくりしていってください」

お話しながらも、あの糸目の筒釜が気になります。
こちらへたどり着くまでの経緯をお話してから
思い切って値段を尋ねました。

「これは佐藤美術館で見られたのと同型の糸目です。
 ××万円です」 
「う~ん?」 約二倍の値段でした。
「先ほど○○万円とお聞きしたのですが・・」
「母が間違って言ったのです。
 ときどき間違えるんですよ。
 その時にお買いになれば良かったですね」

・・という訳で、他の釜も勧められましたが、気に入りません。
「糸目に惚れこんでここまで来られたのですから
 他の釜では駄目ですね」

そうなのです・・・。
夕立も上がり、やっと諦めておいとましました。

その後ご縁があって、初代畠春斎造の「波文尻張釜」と
二代畠春斎造の「雲竜釜」が私の手元にあります。

一昨年、畠春斎さんがお亡くなりになったことを知りました。
私が恋した「糸目筒釜」ではありませんが
「波文尻張釜」と「雲竜釜」、大事に使わせて頂いてます(合掌)。

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                   あの日はで雨宿り 

     写真は、近くの畑の「オクラの花」です。    

茶の湯釜に恋して  二代 畠春斎さん (1)

2009年09月28日 | 茶道具
茶道を再開してまもない頃のお話です。
夏休みの旅行で、黒部から立山、そして富山へ出かけました。
富山に一泊し、城址公園にある佐藤記念美術館へ行きました。

展示作品の中に糸目の筒釜がありました。
すっきりとシンプルで、糸目がはっとするほど美しく、気品を感じる釜でした。
「このお釜でお茶を点ててみたい・・」と思いました。
他の展示品を見てもその釜が気になって、また戻ってしまいます。

作者は二代畠春斎、1944年生まれ、高岡市金屋町に住まうとありました。
高岡といえば鋳物が盛んな土地で、富山から1時間くらいのところです。
主人に頼んで、高岡でもう一泊することに予定変更しました。
翌日、国宝・瑞龍寺、高岡古城公園、大仏を見てから、
千本格子の古い家並みが続く金屋町を訪れました。

すると、「釜師 畠 春斎」の看板を見つけたのです。
「ここだわ!あのお釜の作者さんの家だわ」
恐る恐る中を覘くと、店のような玄関のような一角に
棚があり、釜が並んでいました。

佐藤美術館で見た糸目の筒釜に似たものがあります。
夢中で中へ入り、奥へ声を掛けました。

年配のご婦人が出てこられたので、早速お値段を尋ねると
「○○万円です」
「はぁ~」
お茶を再開したばかりの私にはとても手の届かない金額でした。
そのご婦人に
「実は富山の佐藤美術館でこれとそっくりのお釜を見て
 急遽高岡へやってきました」
と言いますと、
「まぁ、それはそれは・・・。ちょうど春斎もおりますし、
 休憩の時間ですからどうぞ上ってください」

その方は畠春斎さんのお母様でした。
御本人と交渉すれば、もう少しお安くなるのでは・・・
という思いもあり、図々しく二人で上りこんで、
奥様が点ててくださった抹茶と菓子をごちそうになりました。

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                   あの日はで雨宿り 

     写真は、秋の七草の一つ「オミナエシ」です。    

七事式  始めての唱和式

2009年09月26日 | 七事式&いちねん会
先日、七事式のお稽古で、始めて唱和式をしました。
唱和式は淡々斎によって創案され、淡々斎の没後、
満三年の法要のあとに公開されました。

最初に全員が花を生け、亭主が香を焚いて全員が聞き、
亭主が濃茶を点てて全員でいただき、薄茶は花月(三服点て)、
最後に短冊に和歌を書き付け、一人ずつ詠みあげます。

「お花とその花に因む歌をご用意ください」
本来は、その場で花を選び、生けた花に因む歌や俳句を
即興で詠むそうです。

「花は何にしようかしら?」から始まりました。
秋明菊、秋海棠、ホトトギス、酔芙蓉・・・
今咲いている花が頭に浮かびましたが、
他の方とかち合いそうな気もします。

それで、葛の花にしようと、昨年見つけた秘密の(?)場所へ
採りに出かけました。
廃屋の庭一面に葛の花が咲き乱れている筈でしたが、
草がきれいに刈られていて見つかりません。

諦めきれず近くをうろうろ捜していると、
葛の花の甘い香りが漂ってきて
「こっちだよ」と案内してくれました。
足元が覚束なく、おまけにマムシがいそうな処です。
手を伸ばしてやっと数本採ることができ、これで一安心・・・ふぅ~。

床には長谷川寛州筆の七事式のげじゅが掛けられていました。
私は月の札を引き、正客でした。
亭主は細竹の一重切に吾も紅、ススキ、ホトトギス、
続いて、正客(私)が青磁の花入れにススキと葛を生けました。
(用意した歌の都合でそのようにさせていただきました・・)

琉球焼の徳利に八重の酔芙蓉、
備前の傘徳利に矢筈ススキとホトトギスと水引、
籠に白萩と貴船菊、 
部屋が秋色満載になりました。

香、濃茶、花月と順調に進みました。 

最後に、重硯箱が運ばれ、墨をすり、懐から短冊を取り出し、
上に花の名前、歌を二段に、下に名前を書きました。
文台が運ばれ、正客から短冊をとりあげて自作の歌を
二回詠み上げ、文台に右から並べていきます。

皆さまの個性溢れる歌や俳句にしばしうっとり・・・
お稽古とは思えない心豊かな一時でした。
一年に一回の唱和式、次回が待ち遠しいです。

  葛  かほりたつ葛の花かげ追いながら
     道おぼろげに秋の山ゆく        暁庵

                
                             

     写真は、散歩みちで見かけた見事な白萩です。

横浜開港150周年を祝う茶事を終えて

2009年09月23日 | 茶事
最後の「横浜開港150周年を祝う茶事」を終えました。
6月に2回、7月に1回、そして今回の9月20日の計4回、
私としては珍しくロングランの茶事でした。

今回のお客さまは翆晶庵・横山和子さんのお客さまで、
亭主の私は初対面の方がほとんどです。
大事なお客さまに失礼なく楽しく過ごしていただきたいと、
半東のHさんと少し緊張しました。

無事黒船に乗船し、横山さんの美味しい懐石料理を
フォスターの名曲を聞きながら
ワインとともに味わって頂きました。
「私たち、とってもシアワセねぇ~」
「まるでアメリカにいるみたい・・」
という声が聞こえて一先ず安堵しました。

           

初炭を終え、主菓子の栗入りプディング「黎明」をお出しすると、
今日の主役、生粋のハマッコ・横山和子の登場です。

集められた資料を片手に当時の船上料理やアレンジした
懐石料理、そして横浜開港への想いをお話しています。
横山さんの登場を待ちに待っていたお客さまなので、
質問や応答がにぎやかで、横山さんもとても嬉しそうでした。

火相、湯相も決まり、後座では松風が
薄暗い船室で心地よく聞こえていました。
蝋燭の火の元での濃茶点前は、主客ともに集中し
大好きな時間です。

お気に入りの井戸茶碗で濃茶を練りました。
「大変美味しくいただいています」
亭主はほっとして客付きにまわり、
「先ほどはデッキで懐石を召し上がっていただきましたが、
 午後になって風が出てまいりましたので、
 船室の方へお移りいただきました」
と、部屋が暗く蝋燭の灯火の訳をお話しました。

茶銘、菓子、花、茶碗、開港にまつわる話などを
正客や連客と交わします。
このへんになると、正客だけではなく皆さまから
いろいろお話がでて座がくつろいで楽しくなります。
濃茶が出たあとなので、私はいつも大歓迎で嬉しいです。

薄茶も和やかに終わり、いよいよ最後のご挨拶です。
四回に渡る「横浜開港150周年を祝う茶事」が
これにて終了と思うと・・・感無量でした。

お客さま、半東さんのKさん、K君、Hさん、
水屋のNさん、そして横山さん、
皆さまとの一座建立の一会一会でした。
この場をお借りして、心より御礼申しあげます。
ありがとうございました!!

感激の余り、またお茶事をしたくなりました。
困った病気?です。

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   写真は、足立泰堂老師筆の「水上青々翆」と、
        海老真蒸の煮物碗です。

   


水清き庵の正午の茶事 (2)

2009年09月21日 | 思い出の茶事
  (つづき)
後座の花は花水木の照り葉と黄色の小菊、
まだ照り葉には早すぎる時候なのに・・・。
きっと遠くまで足を運んでくださったことでしょう。

花入は益田鈍翁作の尺八で銘「峯の松」。
あとで拝見すると、金字で今日のお席にぴったりの和歌が
書き付けられていました。

    峯渡る松の梢を吹き過ぎて 
        嵐も訪いぬ谷かげの庵

対柄杓で練ってくださった濃茶の美味しかったこと。
主茶碗は「もみじ呉器」。
品のある形と色、雨漏りの景色の味わいが忘れられません。
インド更紗のような出袱紗とともに持って帰りたいほどでした。
またの出合いが楽しみです。

薄茶も白湯も美味しく頂戴しました。
又妙斎手造りの赤楽「猩々」と瀬戸の沓茶碗で即中斎銘「虫の音」。
どちらも見るからに点て難そうな茶碗でしたが、
いかにも点てやすい茶碗のように、さらさらと点てられて
感服しながら拝見しました。
裏流にふっくらと滑らかで、美味しくいただきました。

「水」だけでなく、次々と使われる茶道具や懐石の器にも
ご亭主のお好みとこだわりが満載です。
「はぁ~、ひぇ~、ふぅ~、へぇ~、ほぉ~」
と、その度に嘆声があがりました。

一糸の乱れも無いような統一感のある道具組で、
「やさしい、優雅な、かわいらしい」というような形容詞でしょうか?
何よりお道具の楽しみ方、集め方のお手本を見せて頂き、
客一同とても刺激になりました。

相客のお一人は、
「お茶のテンションが下がっていたけれど、この茶事に伺って
 もう一度茶の湯に取り組む意欲がでてきました」と喜んでいます。

書き尽くせませんが、奥の奥まで行き届いたおもてなしをして頂き、
忘れられない茶事となりました。

私たちの姿が見えなくなるまで門先でお見送りくださった
ご亭主さま、本当に本当にありがとうございました!

    水清きこがねの庵訪ぬれば
        「秋の月」かげ「虫の声」聞く

                             

       写真は、散歩みちで見つけた「ゴーヤ?」です。