暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

山家花月香-2 水無月のいちねん会

2015年06月30日 | 七事式&いちねん会
(つづき)
初心者の私たちのために用意された香は三種、七事式の茶カブキに似ています。
先ず、試香(ためしこう)二ちゅうを聞きます。
   試香  花  一ちゅう
        月  一ちゅう

試香は聞き終わると、「花」や「月」の香銘を名乗って次客へ縁内でまわします。
実際の香席では二ちゅうではなく、たくさんの香を聞くのでわからなくならないように
いちいち香銘を名乗るそうです
それから試しの二香に ウ(試香で聞いていない未知の香)をうち混ぜて、この三種が本香となります。
   本香  花  一ちゅう
        月  一ちゅう
        ウ  一ちゅう

本香は一つずつ二種焚かれるので、三回以上ゆっくり聞いて香の特徴や印象を記憶するように・・・とのことでした。
本香になると、香銘ではなく「出香(しゅっこう)」と言って次客へまわします。

香席では必ず執筆者がいて、料紙に筆で記録詞書(ししょ)を書くそうです。
例えば、茶カブキで当りは「¬(カギ)」を記し、全当りは「全」または「叶」と書きますが、
和歌の一部で表わすのが香席らしいと思いました。

   記録詞書(ししょ)  
       花のふすまを    花 当り
       花見ぬ夜の     月 当り
       散りなむ後や    ウ 当り
       その如月の     全 当り
       花散らで       不当

                           

和歌はもちろん西行法師の「山家花月集」からです。

   木の下にたびねをすれば吉野山 花のふすまを着する春風

   同じくは月の折り咲け山ざくら 花見ぬ夜の絶え間あらせじ

   あくがるる心はさても山ざくら 散りなむ後や身にかへるべき

   ねがはくは花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月のころ

   花散らで月は曇らぬ世なりせば ものを思はぬ吾身ならまし

和歌で表現する優雅なお香の世界にどっぷりひたり、夢のようなひと時を過ごしました。

それから、肝っ玉かあさん(秘かに尊敬して呼んでおります)ことIさんのセンス溢れるランチタイムです。
吟味して取られた江戸前寿司を中心に、口取り八寸、煮物椀などがテーブルに並びます。
陶芸をなさっていたという亡き父上の作品が料理を引き立て、このランチがとても楽しみです。
ワイワイパクパクガヤガヤパクパク・・・・美味しくってシアワセ・・・。

                              

でもね!これで終わりではありません。
手分けしてお茶の準備をして、これからが定例のいちねん会のお稽古です。
台子で炭付花月、濃茶付花月をがんばりました。

Iさん、香席を設けてくださって、ありがとうございました!
お香のレクチャーと実践が毎回とても勉強になります。
おかげさまでいちだんと心豊かないちねん会になり、堪能しました。   その日は 


          山家花月香-1 水無月のいちねん会 へ戻る
   

  (カメラの画素数オーバー(?)で写真が掲載できず、5月のいちねん会の写真です)
       

山家花月香-1  水無月のいちねん会

2015年06月27日 | 七事式&いちねん会

水無月のいちねん会は6月21日にIさん宅でひらかれました。
Iさんが香席を設けてくださって、一同いそいそと出掛けました。

香席に縁遠い私たちに、用意してくださったのは「山家花月香」(さんがかげつこう)。
漂泊の詩人、西行法師の歌集「山河花月集(または心中集とも)」より和歌五首を選び、
これらが風流かつ優雅な香席の案内人となります。

                    

最初にIさんが「香道と六国五味(りっこくごみ)」と「山家花月香」についてレクチャーをしてくださいました。
何回聞いても覚えが悪い生徒で、申し訳ないです・・・しっかりと書いておきます。

香道と六国五味について

 香道では、香木(沈水香)の分類がいろいろ考えられました。
沈水香の木所(きどころ、品質のこと)によって、伽羅(キャラ、産地はベトナムの奥地)、羅国(ラコク、タイ東南部)、真那賀(マナカ、マレーシア)、真南蛮(マナバン、カンボジア)の四種でしたが、
後に、佐曽羅(サソラ、インド南部)、寸門多羅(スモンダラ、スマトラやボルネオ)の二種を加えて、六種とし、これが香の「六国(りっこく)」といいます。
 六国名は香木の産地に由来すると伝えられていますが、実際には広い地域で産出されています。

 匂いの性質を味の感じ(味位)に置き換える分類方法も考えられました。
「五味」と称し、「酸」は梅のすっぱさ、「甘」は蜜のあまみ、「辛」は丁子のからみ、「苦」は黄壁のにがみ、「鹹(カン)」は塩のからみと伝えられています。
これらを併せて「六国五味」と称します。


実際には、香りの特徴を聞き分けるのも、表現するのも複雑で難しいですが、
余り深くは考えずに、最初の印象を大切にする・・・ことにしました。

                    

Iさんが凛とした香道の所作で、香たどんを香炉へ入れ、
灰を美しく調えていくのを、いつものように一同固唾を呑んで見つめます。
ぴりっとした空気が漂い、お香で一番好きな時間です。

山のように盛られた灰山が灰匙や小羽根で綺麗に整えられ、さらに灰山を五つに分け、
それぞれ10の灰筋が火箸でつけられていきます。
最後に聞き筋がつけられ、頂上に空気穴があけられました。
この穴の大きさで火加減を調節します。

あとで伺うと、これは真の灰形だそうです。
家に帰ってから、見よう見まねで香炉の灰を作ってみました・・・(2へつづく)。


       山家花月香-2 水無月のいちねん会へつづく


             

お茶のご縁ってステキ!

2015年06月23日 | 暁庵の裏千家茶道教室
ある日のこと、電話が鳴りました。

暁庵の茶道教室へ入門希望の男性の方からです。
「初めてですが、お茶を習ってみたいのです・・・」
秘かに男性の生徒さんがいらっしゃらないかしら?と思っていたので、
もうもう大歓迎です。
「先ずは薄茶一服差し上げたいので、どうぞいらしてください」
それで、6月20日にMさんが見学にいらっしゃることになりました。

                      

前日の6月19日の夕方、電話が鳴りました。

京都・灑雪庵で行った「京都の春を惜しむ茶会」(ブログが100万頁を達成した記念茶会)へ福井県から駆けつけてくださった、若武者Fさんからでした。
「出張で今、東京にいます。明日ご都合がよろしかったら、横浜のお宅へお寄りしたいのですが・・・」
明日はMさんの見学日、Fさんが同席してくださればずっーと楽しくなるし、茶道を学ぶ男性としてのアドバイスもいただけるし・・・お茶の神様のステキな配材に相違ないと思いました(そういえば、前回はSさんがご一緒してくださった・・・)。
「よくぞ思い出して電話してくださいましたね。
 Mさんがいらっしゃいますが、ご一緒に薄茶一服を楽しんでください」

                      

ドキドキしながら待っていると、MさんとFさんがいらっしゃいました。
お互いに自己紹介をしたり、Fさんの茶歴や稽古の様子などを伺いました。
Mさんもだんだんと緊張がほぐれていったようで、お仕事のこと、当教室を選んでくださった理由などを興味深く伺いました。

30分ほど待合の椅子席で過ごしてから和室へ移り、
Fさんと一緒にお床や点前座の拝見をしてから、初炭手前を見て頂きました。

主菓子は「よひら」、「よひら」とは紫陽花のことで、葛を使ったお手製です。
「いかがでしょうか?」
「とっても美味しいです・・・」の言葉に一安心。
続いて、お二人に薄茶(一保堂の「式部の昔」)を点てました。
「いかがでしたか?」と心配しながらMさんにお尋ねすると
「美味しく飲みました」・・・最初の関門、突破でしょうか。

                     

最後にFさんにお点前をお願いすると、快く応じてくださって、これもMさんには良い経験になったことでしょう。
なんせ、男性のお点前を拝見することは私でさえ少ないのですから・・・。
帛紗のつけ方、帛紗、扇子や懐紙など、男性と女性の違いをお話ししましたが、
お点前そのものは裏千家茶道は男女の違いがなく、男女同権であることを改めて誇らしく思いました。

「お茶」という共通語が昨日まで知らなかった同士を結びつけ、すぐに親しくさせるという「お茶」のステキなご縁に感謝です。
Fさん、いろいろありがとう! またお茶飲みにいらしてくださいませ。  


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友にエールを・・・茶道会館・研究会茶会

2015年06月19日 | 茶会・香席
6月14日、茶道会館(高田馬場)で行われた研究会茶会へ出かけました。

茶道会館で学んでいる方たちの曜日ごとの研究会が毎年行う茶会で、
茶友Yさんへエールをおくりたくって、5年ぶりに出かけました。

9時半にOさんと待ち合わせです。
梅雨の最中ですが、雨も上がり凌ぎやすい日だったので二人とも着物でした。
Oさんは黒の単衣、白地に楓模様の帯、シックな装いがすっきりとお似合いです。
私は亀甲に青の絣が飛んでいる白大島、エンジ色に白格子の紬帯を合わせ、気軽な装いです。

                    
                          
茶道会館の門をくぐると、そこは別世界。
京都を思いださせる佇まいに心安らぎ、青楓に彩られた石畳が茶室へと誘います。
茶席は点心席を含めて7席、その年の歌会始の「御題」がテーマとなっています。
各研究会が身近なお道具を工夫してテーマを表現し、心豊かな茶会を目指しています。
今年の御題は「本」だそうで、茶券に次のように書かれていました。

   研究会茶会  御題「本」

 ☆ 白珪会  日本一          明々軒
 ☆ 夕月会  根本を知る       至誠軒
   華葉会  Nipponia日本の里   山茶屋
 ☆ 水交会  アンデルセン童話   真之間
   一樹会  日本橋          絵馬席
 ☆ 若竹会  山紫水明          峰春亭
 ☆ 点心席                 山里


☆はまわったお席ですが、水交会「アンデルセン童話」のお席のことを記しておきます。

正客争いでごたごたするのが嫌で、このお席は正客覚悟で入りました。
待合に燕の軸が掛けられています。
大好きな「しあわせの王子」がテーマかしら・・・と思っていると、下に絵本が置いてありました。
絵本は「おやゆび姫」、おやゆび姫がハスの葉に置き去りにされて泣いている場面です。
童話の主人公にすぐになり切れた、幼き日を懐かしく思い出しながら席入しました。

                    

当日、茶友Yさんにお会いできるかしら? と思っていたら、なんとその席の後見役でした。
煙草盆は緑のハスの葉(水交会員の手作りとか)、カエルも中に控えています。
すっかりおやゆび姫になった心地になり、嬉しくいろいろなお話を伺いました。

本床には「水潺々」(みずせんせん)・・・ここ真之間が大きな池かもしれませんね。
デンマーク生まれのアンデルセンに因んで、西洋風の洒落たお道具が散りばめられ、
フランス製の花瓶に活けられた、カンナやフトイなどの花が広い真之間の床を華やかに締めていました。

風炉先の向こうの点前座には、唐銅朝鮮風炉、桑小卓に涼しげなガラス水指(口縁からチューリップを連想)、
天板に陶器の染付風茶器(見立てで、オランダ・デルフト製)が置かれています。

                    

お点前が始まり、お点前さんのきれいな所作に見惚れていると、
「お早目ですが、お菓子をどうぞ」
メレンゲのように口融けが好く、一粒のクルミとの取り合わせが絶妙なお菓子です。
「加賀の御朱印製でございます」

美味しいお菓子の後に、金襴手の繊細な茶碗(林淡幽作)で頂いた熱い薄茶が最高でした。
「お点前、頂戴いたします」
Oさんはバレリーナが描かれた染付風茶碗で薄茶を頂いています。
Yさん、お点前さん、次客Oさん、同席の皆様のお蔭で心豊かなお席になり、
正客で心細かった自称おやゆび姫はすっかりhappyな気分になれたのでした。
加えて、茶杓の銘がとても素敵で・・・「しあわせ」です。

Yさん、拙い正客でしたがエールになったかしら?
Oさんも研究会茶会でいろいろヒントや刺激を受けたらしく
「また来年も伺いたいわ」

      

(良かった! また、ご一緒しましょう 

追伸)カメラのトラブルが解消し、写真を入れ替えました(6月20日)



七事式の勉強会 五葉会

2015年06月13日 | 暁庵の裏千家茶道教室

6月12日、水無月の五葉会が行われました。

五葉会は、「七事式のお仲間を募集しています」と、
3月にブログでお呼びかけした七事式の勉強会です。
N先生のご指導の下、縁あって5人の同好の士が集結しましたので
「一華開五葉」より五葉会と名付けました。

5月15日が初会でしたが、N先生がご都合で欠席のため、
若葉マークの五葉だけで、且座、平花月、貴人清次濃茶付花月を勉強しました。
一人一人が責任を自覚し、知恵を出し合って進め、これはこれで愉しかったのですが・・・。



6月12日はN先生が五葉会へお出まし下さいました。
その日の科目は、花寄之式、炭付花月、茶通箱付花月でしたが、
時間の余裕があったので最後に平花月を見て頂きました。

花寄之式ではN先生にも参加して頂き、なんと!最初の札が当たりました。
七事式の偈(げ)のお軸の前、中央に置かれた唐銅薄端(うすばた)へ
柏葉紫陽花、雪柳、ツボサンゴが入れられました。
難しい花器なのにさらさらと「色即是空」、ため息が出るほど素敵です。
それから五葉がN先生に習って五つの花入へ思い思いに生け、
床と書院が雨中に咲く花の風情に彩られていきました。



記念に花寄之式の会記を書いておきます。
      
    花寄之記    平成二十七年水無月十二日

     紫陽花 木萩                宗悦
      小岱
     蛍袋 未央柳 縞葦            宗澄
      スウェーデン・ガラス
     十薬(ドクダミ)               宗曉
      吊り花入
     柏葉紫陽花 壺珊瑚 雪柳       宗広
      薄端
     紫陽花 蛍袋 矢筈薄 楓 桜蓼    宗里
      駿河千筋籠
     撫子 尽抜忍冬 縞葦          宗智
      加茂川籠
      
N先生がいらしゃると全てが違いました。
足の運び、きちんと所作を揃えることの大切さ、そのポイントとタイミング、
各人が今まで気が付かなかった細かいことまでご注意くださり、
五葉会の若葉一同、緊張の中にも感謝感激の一日となりました。

先生のご都合で毎回いらしていただけないのは残念ですが、
ご注意されたことを宿題として、みんなで気持ちを揃えて頑張ります。
みんなで・・・というのが、七事式の素晴らしいところですね。
                          みんなで 
ところで、
五葉会を文字変換してたら五妖怪ですって・・・こうならないようにしなくっちゃ!  



  (カメラのトラブルにより写真はすべて前会のものです・・・)

                            その日は  のち 

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