暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

十年目の茶室披き

2011年01月30日 | 思い出の茶事
1月24日に茶室披きの茶事へお招き頂きました。
茶室披きにお招き頂いたのは初めてのことで、浮き浮きと出かけました。

お宅に伺うと、玄関脇の青竹で覆われた井戸が目に入りました。
珍しさについ覗くとモーターがとり付けられ、現役のようです。
待合で、香煎の入った湯を美味しく頂きました。
あとで、湯はあの井戸水と知り、東京で今なお井戸水が
使われていることに感激したり、茶の美味しさに納得したりです。

庭へ出ると幅1メートル余の露地があり、
腰掛待合、そして枝折り戸の向こうに蹲が備えられています。
腰掛に座って、風もなく澄んだ青空を仰ぎ、鳥の声を聞き、
隣家の木にたれるカラス瓜の赤い実を眺めていると、ご亭主の迎え付けです。

席入りすると八畳の広間でした。
床は富士山の画賛で「霊峰白雲拓」、
濡れ釜が美しく、炉縁の蒔絵は青海波に水玉でしょうか?
カン付の亀が泳いでいます。、一瞬、竜宮城にいるような気がしました。

茶室のある自宅を購入されてから十年目の茶室披きでした。
ご亭主はその間に足を怪我されて、正座は無理です・・・と医者から宣言されたそうです。
それでもリハビリを頑張って、茶室披きが出来るまで回復されたのでした。

               

お一人で客三名のおもてなしをなさいました。
懐石は専門店と相談して既製品を上手に利用し、煮物椀と鶯菜のお浸しはお手製です。
湯漬けは「四つ椀がありませんので・・・」と、湯斗ではなく、
蓋付きの茶碗に温かいご飯、湯のみに熱いほうじ茶、香の物が出され、
湯漬け大好きな私には嬉しい趣向でした。

茶入は大海、濃茶は一保堂の「さやかの昔」です。
熱く、よく練れた濃茶を朝日豊斎の茶碗で堪能しました。
茶歴三十年というご亭主の手元に集まった数々のお道具はどれも持ち帰りたいほど素晴らしく、
お道具たちもご主人様のお役にたって、さぞや喜んでいることでしょう。

ご亭主のお心入れがすべてに満ち溢れていて、正直、その思いを正客として
きちんと受け止められただろうか・・・と、今になって反省しています。
ここで何故か、「エネルギー保存の法則」を思い出しました。
「ある閉じた系の中のエネルギーの総量は変化しない」という物理学の基本則です。

あまりにも力不足、エネルギー不足の正客でありましたが、
総見院ご住職に削って頂いたという茶杓の銘「今の心」を大切に
これからもお互いに切磋琢磨して、長い茶の道を歩んでいきたい・・・と思いました。

                                      

        写真は、「梅の花」(散歩道にて)
              「椿を生ける」(我が家の置き床)

瀬谷の吊るし雛と茶会のご案内

2011年01月27日 | 茶会・香席
おはようございます。今日も寒いですね。
いつも「暁庵の茶事クロスロード」へお立ち寄りくださり、ありがとうございます!

昨年はじめて友人に案内されて、瀬谷の吊るし雛を見に行き
とても素朴で素敵な雛たちに出会いました。

今年は、「暁庵の茶事クロスロード」をご愛読の皆様をお連れしたいと思い、
3月3日(木)に「瀬谷の吊るし雛と茶会」を企画しました。
参加ご希望の方は恐れ入りますが、メールでお申し込みください。

   日時     平成23年3月3日(木)  10時~16時
   集合     相鉄線三ツ境駅  10時
   募集人数   7名様 (4名様以上で催行します)
   参加費    4000円(他にレストランでの昼食代1000円位)
   内容     瀬谷の吊るし雛見学と拙宅にて楽しく茶会  (横浜市瀬谷区)                        
   応募方法   名前、住所、電話番号、簡単な自己紹介をメールにてお知らせください。
            メール: akatuki-ane@grace.ocn.ne.jp
            応募多数の場合は抽選といたしますこと、ご了承ください。
   募集締切    1月31日(月)
   最終ご案内   2月6日(日) (メールにて詳細をお知らせします)

皆様のご参加を心よりお待ちしています。

                             


追伸)茶会は、炭、香、濃茶、つづき薄茶を予定していますが、気楽な茶飲み会です。
   移動は車2台でいたします。

            
   

五事式の会 松樹千年翠

2011年01月25日 | 茶事
1月21日は辛卯年の第1回五事式の会でした。
毎年、亭主、半東、客を六人で持ち回り、席は翠晶庵でしています。

亭主を引き受けてくださった方が正月に足と胸を痛めて参加できなくなり、
急遽、私が亭主を務め、半東が三客を兼ねて五人ですることになりました。

ところが、肝心な亭主の私が体調不良でダウンしてしまい
半東なしでは無理と思い、茶友SさんにSOSしました。
「・・・という事情なので、三客に入ってもらえませんか?」
「私でよろしかったら伺わせて頂きます」
「あ、ありがとうございます・・・助かりました!」

当日、水屋手伝いのIさんが早めに来て、埋み火に備え炉を温めてくださいました。
二人で支度をしていると、半東のMさんも到着し、火入や巴半田の準備を始めました。
MさんもIさんも動きの鈍い私に代り、テキパキと頼もしい限りです。

                

床に足立泰道老師筆「松樹千年翠」を掛けました。
1月にふさわしい、おめでたい禅語と思い、選びましたが、
改めてその意味するところを考えてみました。

対句になっていて
   松樹千年翠 (しょうじゅせんねんのみどり)
   不入時人意 (ときのひとのこころにいらず)
松の樹の翠は千年も万年も変わらずに美しい。
けれどもそのことにその時代の人が気が付かなければなんの意味もないことだ・・・

対句の意味を知り、はっとしました。
この「五事式の会」こそが「松樹千年翠」だと思いました。
病気、老親介護などいろいろな事情を乗り越え、助け合い、信頼し合って
五事式のために集う仲間は何物にも代えがたい存在だと、気が付いたのです。
みんなにいろいろ心配をかけたけれど
「不入時人意」
体調不良が教えてくれた、素晴らしい仲間に感謝の一日でした。

                              

今年も廻り炭では埋み火から炭を熾すことに挑戦しました。
・・・が、残念ながら埋み火を割ると真っ黒で、
半東に巴半田を運んでもらい、残り火を一つ使いました。

もう一つ、「熱い濃茶を差し上げる」を課題にしてみました。
炉の時期は寒いので覚めてしまうのは仕方がない・・・
と半ばあきらめていたように思います。
半東のMさんと相談し取り組んでみました。
先ず火相と湯相です。
中立で炭を継ぎ、釜へ水を足しました。
後入り、廻り花、香と続き、いよいよ濃茶です。
直前まで楽茶碗を熱い湯で温めてもらい、さらに茶巾も温めてもらいました。

湯相も丁度よく、たっぷりの濃茶を素早くしっかり練っておだししました。
「おふく加減いかがでしょうか?」
「おいしゅうございます。
 お練り加減も好く、アツアツをたっぷり頂戴し、シアワセです」
正客のIさんが全身で表現してくださって、こちらにも美味しさが伝わりました。
詰のSさんまで熱い濃茶が渡ったようで良かったです。

一二三之式では、月の札が2枚も入り、過大な評価を頂戴しました。
「体調不良を押してがんばったご褒美の評価だと思いますよ」と言われましたが、
「ううーん、私一人じゃない。心を合わせて乗り切った全員への評価よね」
と、また「松樹千年翠」が脳裏を横切ったのでした。  

                                


                               

稽古でダウン

2011年01月22日 | 閑話休題
   いつも「暁庵の茶事クロスロード」へお立ち寄りくださり
   ありがとうございます。

   風邪かもしれませんが、体調不良につき、しばらく休養します。
   治りましたら再開したいと思いますので
   また、お立ち寄りください。

・・・ここまで書いて投稿する元気もなく、ブログを離れて
ひたすら体力回復に努めました。
原因は疲れと自立神経失調なので
ぶらぶらしてぼっーとしているのが一番のクスリなのです。

引き金は一酸化炭素でした。
18日に先生宅へ稽古へ伺った時のことです。
Kさんが盆香合から始め、客をつとめました。
ここまでは良かったのですが、かなり炭が匂っていて
窓を開けたのですが、遅かったようです。

続いて盆点が行われたのですが、お菓子(花びら餅)も濃茶も
喉を通らない状態だったので、母屋の別室で休ませて頂きました。
帯を解いてホットカーペットに横になりましたが、何度も吐いてしまいます。
先生とKさんが毛布や白湯を持ってきて心配してくださいましたが、
ひたすら静かに寝ているしか手段がないのです(何度も経験していますので・・)。

しばらくして吐き気もおさまり、少し眠りました。
あとで伺うと、私が眠っている間も茶室の稽古は続いていて
台天目さらに唐物まで見て頂いたそうです。 凄い!
Kさんは念願かなって2月末に今日庵で行われる冬期講習会へ参加するので
先生もKさんも気合いが違います。
症状が落ち着いたので、Kさんに付き添われてタクシーで自宅へ戻りました。

                

それからはひたすら安静にして回復につとめました。
早く回復しなくてはならないワケがありました。
21日から始まる五事式の会で、トップバッターの亭主になっていたのです。

前日の20日に先生宅近くの駐車場へ車を取りに出かけました。
ふらつきが残っていましたが、外へ出て身体を動かして様子をみたかったのです。
バスや電車に乗り換えながら少しずつ自信を取り戻していました。

「そうだ!せっかく来たのだから楽しいこともしなくっちゃ・・。
 リサイクル店へ寄ってみよう」
仕覆用の古布と洋食器を買いました。
不思議ですね。
買い物をしたら、とても元気が出てくるのを感じたのです。

「これなら明日の五事式の亭主、何とかなる出来るかもしれない。
 きっと出来るよ! みんなに助けてもらって何とかやってみよう」・・・と。

                                  

       写真は、「梅の花」 (散歩道にて)
             「春を待つ花芽がびっしりの白モクレンの大木」



前田酒店お別れ茶会

2011年01月17日 | 茶会・香席
渋谷にある前田酒店が1月で閉店することになり、
そのお別れの茶会へおじゃましました。
店主はインターネットの真ML茶の湯コミュニティのお仲間ですが
まだお会いしたことはありませんでした。

2年前渋谷店を開店した時から一度伺いたいと思いながら
今まで足を向けなかったことが悔やまれました。
せめて最後の席へ馳せ参じて枯れ木も花の賑いになれば・・・
と申し込みました。

客五名で2時間半の茶会ということでしたので、
不調法な私では役不足と思い、お酒大好きな茶友のIさんを誘いました。

店はすぐにわかりましたが、四畳半(京畳)の茶室で占められていて
酒屋さんの奥に茶室があるらしい・・・という私の想像とは大違いでした。
客5名が集まり、お正客はBさん、席順もスムースに決まりました。
床、花、炉、釜、煙草盆を拝見すると、お詰さんが白湯を用意してくれました。

間合い好く襖が開いてご亭主が現れ、挨拶を交わしました。
床のお軸は表千家即中斎筆で、ご亭主の心を表しているようでした。
 年々歳々花相似 (ねんねんさいさい はなあいにたり)
 歳々年々人不同 (さいさいねんねん ひとおなじからず)
 (ねんねんさいさい時は流れても花は同じように毎年美しく咲くけれど
  さいさいねんねん時が移ろえば人は変わり同じではないのだ ) 

しみ竹の一重切に赤い椿が生けられています。
黄瀬戸の深向に入った甘酒がだされました。

                 

初炭手前が始まりました。
大西浄本(八代)造の雲龍文様の釜、ご自作の備前平鉢の灰器が目を愉しませ、
南山焼の鶉香合は大きさといい、繊細な羽根の色模様といい、ご亭主にぴったりでした。

このあとすぐに濃茶になるので、お詰さん(同門?)が炭の置き方を心配しています。
でもご亭主は
「大丈夫でしょう。煮えがつくまでいろいろ用意してありますので・・」
と泰然自若です。
・・・確かに、それからが大変でした。

順不同ですが、甘酒、栗羊羹、あんことみたらしの団子、花びら餅、
それから三種の干菓子で、計8種類の菓子のおもてなしを受けました。
お酒は越乃寒梅ともう一種がだされ、茶友Iさんの幸せそうなこと。

ちょうど湯相も良く、六人で炉を囲みながら頂戴した濃茶のなんと美味しかったことか。
濃すぎず薄すぎず、アツアツの濃茶を一入造の黒楽で堪能しました。

「今までのお客様に褒めて頂くのは道具ばかりでして・・・」
「とんでもございません。久しぶりにアツアツの濃茶を美味しく頂戴しました」
続き薄茶で頂いた薄茶も美味しく、二服めはおもあいでした。

イヌワシの羽根と勇壮なモンゴルの鷹匠の話、
水は千葉県の酒の仕込み水で横井戸から汲んできたとか、
越乃寒梅を飲んだあとのもったり感は好い酒だけが持つ味わいだとか、
はじめて茶会に参加した合気道のお仲間の感想など
素晴らしい茶道具とともに席中で飛び交ったお話が興味深く、楽しい茶会でした。

アッという間の2時間半でした。
お心こもるおもてなしの数々に深く感謝申し上げます。ありがとうございました!
前田酒店さまが年々歳々素敵な花を咲かせてくださるよう、祈念しております。
またご縁がありますように。

                                

      写真は上から、「散歩道の梅の木」
                「赤い椿」 (我が家の置き床です)