暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「颯々の茶事」(立礼)・・(3)

2023年06月25日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

つづき)

緊張しながら濃茶茶碗を持って点茶盤の円椅に座りました。

曇り空なので茶室の障子はほの暗く、お客さまがいらっしゃるのか、どうかわからないくらい閑かでした。

帛紗を四方に捌きながら呼吸と心を調え、茶入を浄め、茶杓を清めていくひと時が大好きです。

他流の点前を拝見してから、裏千家流点前の素晴らしさをやっと理解できるようになり、大好きになりました。余計な所作は全て削ぎ落し、けれど濃茶が美味しく点てれるように、無駄のない点前です。

無駄がないからこそ、一つ一つの所作を丁寧に美しく、しかも流れるような調和のとれた点前・・・そんな点前を目指して私も生徒さんも修練を重ねています。

でも、そんなことを考える余裕はありませんで、各服点なので濃茶が少なくならないように4g以上を茶杓で掬い、水を少しだけ釜に入れ、湯を汲んで一心に練りました。

「お服加減はいかがでしょうか?」

「大変美味しいです。久しぶりにしっかり練れた濃茶を頂きました」と御正客I氏。

胸を撫で下ろして次客O様、次いで詰Iさまの濃茶を心こめて練り、お出ししました。

茶碗はいつも同じで、黒楽と御本2碗です。浄めてからゆっくり拝見して頂きました。

 

 

「立礼の茶事」でお客さまをお招きするにあたって、いくつか決めたことがあります。その一つが「道具は有り合わせで行う」でした。

   茶はさびて心はあつくもてなせよ

      道具はいつも有合(ありあわせ)にせよ

利休さまのお言葉(利休百首)ですが、これがなかなか難しく、テーマや季節に合わせて「あれがあったら・・・」と凡人はつい考えてしまいます。でも、有り合わせで考える工夫の楽しさを示唆してくださっているので、「立礼の茶事」をやっていく上で大きな課題になっています。

茶入は朝鮮唐津の胴締め(鏡山窯、井上東也造)、仕覆は織部緞子です。

茶杓は銘「寧(ねい)」、茶友の陶芸家・染谷英明氏の御作です。

濃茶は坐忘斎家元お好みの「延年の昔」(星野園詰)です。

 

  (コヒルガオ・・・季節の花300提供)

中立で床に花を生けました。(写真を撮り忘れ・・・トホホ

中立では時間が足りないので、朝のうちに花を決めておくのですが、なかなか決まらず・・・コヒルガオか、夏椿か、直前にコヒルガオに決めました。

コヒルガオを摘むと雨が降ると言われ、「雨降り花」と呼んでいたのですが、私だけでしょうか?

花入は蔓が絡みやすい鉄灯明台にしましたが、蔓の扱いが難しく大苦戦でした

鉄灯明台は白洲正子さんのお好みです。20年前に旧白洲邸・武相荘(東京都町田市)でこれに生けられた花を見て以来魅せられ、茶事や稽古でしばしば使っています。

後炭をし、風炉中、釜、炭斗などを拝見して頂きました(御正客I氏に風炉中を見て頂くのには勇気がいります。ふぅ~っ)。

 

薄茶になり、半東Y氏と交代して薄茶を点てて頂き、暁庵が半東です。

御正客I氏の茶碗は黒釉に白い橋の絵が描かれています。風の話をしました。

四国遍路中の思い出の風はそよ風ではなく、ごうごうと凄まじい嵐のような強風でした。宇佐大橋を渡ろうとしても遍路笠や荷物が抵抗となって、這うようにして前へ進んだ風の思い出をお話ししました。

宇佐大橋は高知県土佐市の宇佐漁港と横浪半島を結ぶ全長645mの大橋です。

 

次客Oさまの茶碗は銘「うずまき」、神奈川焼三代・井上良斎が「十五世市村羽左衛門」を偲んで創った茶碗で、久しぶりの登場です。雨の話をしました。

初めて遍路に出た時のこと、雨が降れば遍路宿で停滞するものと思っていたら、朝7時には皆雨の中を出立するではありませんか。・・・仕方なく遍路笠を被りポンチョを着て雨の中を歩きだすと、田圃にうずまきが生じ、笠を叩く雨のダンスの音が耳に残っています。

 

詰Iさまは赤楽の馬上杯、見込みに鈴の絵が描かれています。鈴の音の話をしました。

鈴の音には霊力があると言われます。金剛杖を突く度に鳴る鈴の音は辺りを清浄にお払いして守ってくださるので、昼なお暗い山中を1人で歩いていても怖くなかったことをお話しました。

棗は早苗蛍蒔絵の大棗(宗しゅん作)、茶杓は銘「好日」(玉瀧寺・明道和尚作)で、前回と同じです。

 

・・・こうして、3人のお客さまをお迎えし、第2回・立礼の「颯々の茶事」が無事に楽しく終わりました。

馳せ参じてくださった3人のお客様I氏、Oさま、Iさま、そして茶事を支えてくださった半東Y氏、懐石の小梶由香さん、ツレに心から感謝いたします。 

(4)後礼の手紙へつづく

 

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「颯々の茶事」(立礼)・・(2)

2023年06月22日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

          

          (立礼席の点茶盤)

つづき)

初炭になり、恐る恐る下火の様子を見ると、前回の「初風炉の茶事」より一層下火が残っていない状況でした。じょうを取り小さくなった下火を集めて炭を置きました。(初炭後の中立でもう大変! 火相と湯相を調え直し、濃茶に間に合い安堵しました・・・

風炉は唐銅道安、釜は伊予芦屋釜の写しで糸目桐文車軸釜(長野新造)です。

 

 (釜師・長野新氏に特注した糸目桐文車軸釜)

灰形は二文字押切ですが、御正客I氏のいつも素晴らしい灰形を拝見しているので、プレッシャーを感じながら作りました。

灰形をつくりながら耳元でS先生の「風炉の火床は浅くしてください。そうしないと、なかなか煮えががつきません・・・」という声が聞こえて来るようでした。

上手に綺麗に火床を浅く作りたい・・という気持ちが邪魔をして、灰匙がスムースに動かず、手数ばかり多い灰形となりましたが、これが今のありのままだとも思います・・・。

炭斗は鵜籠、羽根はフクロウ、火箸は杓立の菊頭四方透かし(清五郎造)です。

香合は屋形船、近江堅田にある浮御堂古材で作られていて、作者は誠中斎です。京都在住の頃、恩師・長野先生から頂戴した思い出のある香合で、香は沈香(松栄堂)を焚きました。

 

         (鵜籠の炭斗)

半東Y氏が主菓子「青梅」を縁高でお出ししました。

青梅の菓子銘は「十郎」(石井菓子舗製)、神奈川県では小田原の曽我梅林の梅が有名で、曽我は仇討ちで名高い曽我十郎・五郎の生まれ育った土地です。美味しいと評判のブランド梅「十郎梅」から「十郎」と命名しました。

「十郎(青梅)」の果肉が入った梅餡が特に美味しいと好評で嬉しかった!です。

馴染みの石井菓子舗(横浜市旭区都岡)に茶事でお出しするので・・・と、もう一回り大きい「青梅」を頼んでみました。すると、いつも店番をしているお嫁ちゃんがポンと一つ「青梅」を手渡して、「食べてみてください」というのです。今年になって初めての石井菓子舗の「青梅」でした。

  (味と言い、大きさと言い絶妙な青梅は、菓子銘「十郎」)

ゆっくり味わうと、甘みと酸味が絶妙で、梅の果粒が一層美味しさを引き立てていて、正に適量と納得しました・・・聞けば、家族総出で吟味し話し合って、この大きさに決めたそうです。

「ありがとう! この大きさが丁度よいですね。これでお願いします」

お菓子を召し上がってから、先ほどの待合へ中立をしていただきました。

中立の間は半東Y氏と手分けして大忙しでした・・・。

(その日は腰掛待合と露地は使いませんで・・・)

  (本当に久しぶりに喚鐘を打ちました・・・雨もまた好し)

雨(陰)上がりだったので喚鐘(陽)を5つ打って後座の席入りの合図としました。

さぁ~いよいよ濃茶です。深呼吸して心を静め、緊張感を覚えながら襖を開けました。(つづく)

 

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「颯々の茶事」(立礼)・・(1)

2023年06月20日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

  (ボロボロになって風格を増した遍路笠と金剛杖・・・なかなか処分できません

   (仁王さまに「喝! 何しに参ったのか」と問われるようでした・・・)

 

令和5年6月11日(日)に「颯々の茶事」をしました。

5月27日(土)の「初風炉の茶事」に続いて2回目の立礼の茶事です。

約20年前のこと、途中で放り出していた茶の道を再び歩み出した頃に四国八十八カ所の歩き遍路へ出かけました。その後も茶の湯と四国遍路は続いていて、いつかその2つが私の中で密接に結びつき、大事なものになっています。

今回の茶事を「颯々の茶事」と名付けたのは、四国遍路中に聴こえてきた「颯々」(風が高らかに音を出して吹くさま)や「自然のサウンド」が今なお心に残っているからです。

時に風の音であったり、雨の音、波の音、台風、そして遍路杖をつくと鳴る鈴の音でした。それらの音はその時の心の持ちようによって、厳しくも、寂しくも、愉しくも、嬉しくも・・・聞こえて来るのでした。

そんな「颯々」を聞きながら御茶一服差し上げ、梅雨のひと時を愉しんでいただければ・・・と、S先生の東京教室で共に切磋琢磨しているI氏、Oさま、Iさまをお招きしました。

席入りは11時半、半東は暁庵社中のY氏、懐石は小梶由香さんにお願いしました。

 

 

待合いの掛物は雨に濡れる紫陽花と「滴翠」の画賛、玉瀧寺明道和尚の賛です。

蛍手の汲出しに白湯を入れてお出ししました。

席入りの頃には雨が上がっていましたが、びしょ濡れの腰掛待合や露地はあきらめて、玄関脇の蹲を使って心身を浄め、席入りして頂きました。

床の御軸は「洗心」、紫野・寛道和尚の御筆です。

長い歳月、波に洗われた流木を配してみました。幽かにでも潮騒が聴こえてくると嬉しいです・・・。

5年ぶりに再訪してくださったお正客I氏、いつも暁庵や社中の方の茶事を温かく応援してくださるOさまとIさま、嬉しくご挨拶を交わし、お茶と四国遍路のこと、なぜ四国遍路へ出掛けたくなるのか・・・などをお話ししたように思います。

 

 

梅雨の最中でもあったので、懐石は伏傘(ふせがさ)です。

十数年前に伏傘にはまったことを思い出したのですが、細かい点はもうすっかり忘れていました。それで、茶友に尋ねたり、ネット検索をして調べてみました。

伏傘は、梅雨時のうっとおしい時に懐石をできるだけ簡素にして、一番の眼目である濃茶へスムースに導く・・・と言う目的の他にも、亭主の負担の軽減策でもあります。

伏傘懐石の給仕や料理の説明は半東Y氏にお任せし、水屋で小梶さんの邪魔をしたり、美味しい懐石の御相伴を楽しみました・・・。 つづく

 

    (飯椀に2回分の飯を盛り、汁椀を蓋にして折敷に載せて出します)

 

 

懐石献立 (小梶由香作成)

 

飯   二回分

汁   豆腐 じゅんさい 辛子  ・・・2回分を鍋で出す

向付  讃岐サーモン 穂紫蘇 水玉きゅうり

椀物  枝豆真蒸 板蕨 青柚子

焼物  米茄子の鳥味噌餡

預鉢  炊き合わせ

    とり水無月 細竹 季節の青味 

飯器

(箸洗 ・・・省略)

(八寸 ・・・省略)

湯桶

香の物  沢庵 水茄子漬 長芋梅漬

酒   熊澤(茅ヶ崎市香川 熊澤酒造)

 

   (炊き合わせ・・・とり水無月 細竹 季節の青味)

 

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初風炉の茶事(立礼)・・(3)

2023年06月15日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

       (蛍袋、ウツボ草、アケビを鉄灯明台花入へ生けました)

つづき)

茶事で一番大事な濃茶が無事に終わって安堵しながら後炭をしました。

胴炭が割れると良いのですが、細目の胴炭を選んだにもかかわらず、すぐに割るのは諦めました。丸ギッチョ、枝炭1本と丸管を一緒に入れ、点炭を置きました。

月形に藤灰を埋め、香を焚き、釜を引き寄せ鐶を置くと、

「どうぞ風炉中の拝見をお願いします」と正客Yさま。

ありのままを見て頂こうと覚悟を決めていた灰形と、車軸釜や炭道具も見て頂きました。

立礼では濡れ茶巾を載せた薬缶の置き場がとても狭いので、少し真ん中に薬缶をずらして置き、水を釜に注いでから濡れ茶巾で釜を浄めました。あれこれ試行錯誤が楽しいです。

 

 

後炭が終わり、「薄茶は半東Y氏がお点て致します」と挨拶し、Y氏とお点前交代です。

Y氏のお点前をお客さまにじっくり見て頂きたくって、茶を掬う頃に替茶碗を持って半東の席へ座りました。

次客Nさまは裏千家茶道の入門コースでY氏を指導され、その後暁庵の教室へ紹介してくださったY氏の最初の先生でもあります。

きっとNさまはY氏が半東のお役をしっかり務めていらっしゃることを喜んでくださったことでしょう。Y氏の基本に乗っ取った美しい所作はNさまの厳しいご指導の賜物で、私もそのご縁が嬉しく感謝しています。

ふっくらと美味しそうに点てられた薄茶を3人のお客さまに運びました。

正客Yさまは青楓に杜鵑の画が描かれている平の楽焼茶碗です。何度も青楓と杜鵑が登場しているので恐縮ですが、「今日使わないと、この茶碗がかわいそう・・・」と。

次客Nさまも平茶碗、牡丹が描かれていて暁庵のお気に入りの一つです。

詰Mさまは青いガラスの茶碗、細かな銀の水玉が散りばめられていて、すぐに訪れるであろう梅雨空を連想しながら選びました。

同じお茶碗で2服ずつ、和やかにお話が弾みながら飲んでいただきました。

拝見で棗と茶杓のお話はY氏に一任しましたが、いろいろ考えてお話してくださったようで、今後のご活躍が楽しみです。

棗は早苗蛍蒔絵の大棗(宗しゅん作)、茶杓は銘「好日」(玉瀧寺・明道和尚作)です。

 

薄茶は坐忘斎家元好みの「舞の白」(星野園)、干菓子は金沢・諸江屋から取り寄せた「抹茶落雁」と季節の干菓子を蛍籠の菓子器に入れお出ししました。

・・・こうして、3人のお客さまをお迎えし、第1回の立礼の茶事が無事に楽しく終わりました。

3人のお客様Yさま、Nさま、Mさま、そして茶事を支えてくださった半東Y氏、懐石の小梶由香さん、ツレに心から感謝いたします。

 

 

いつまでできるわかりませんが、先のことをあれこれ心配しても仕方が無いので、出来る限り立礼の茶事を続けていきたい、暁庵とご縁があった方をできるだけたくさんお招き出来たら・・・と願っています。

そして自分自身を奮い立たせるために、大好きなサムエル・ウルマンの詩「青春」を再々掲します。
新しい「立礼の茶事」行脚の旅立ちのエールに・・・          

           

    青春      
          サムエル・ウルマン (作山宗久訳)

  青春とは人生のある期間ではなく、
  心の持ち方を言う。
  薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
  たくましい意志、ゆたかな想像力、燃える情熱をさす。
  青春とは人生の深い泉の清新さをいう。


  青春とは臆病さを退ける勇気、
  安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。
  時には二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある。
  年を重ねただけで人は老いない
  理想を失うとき初めて老いる。
  歳月は皮膚にしわを増すが、情熱は失えば心はしぼむ。
  苦悩・恐怖・失望により気力は地に這い精神は芥にある。


  六十歳であろうと十六歳であろうと人の胸には、
  驚異に惹かれる心、おさなごのような未知への探求心、
  人生への興味の歓喜がある。
  君にも吾にも見えざる駅遍が心にある。
  人から神から美・希望・喜び・勇気・力の
  霊感を受ける限り君は若い。


  霊感が絶え、精神が皮肉の雪に覆われ
  悲嘆の氷に閉ざされるとき、
  二十歳であろうと人は老いる。
  頭を高く上げ希望の波をとらえる限り、
  八十歳であろうと人は青春にして已む。


         「青春とは、心の若さである」角川文庫より

 

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初風炉の茶事(立礼)・・(2)

2023年06月09日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

   (「遠山無限碧層々」・・・58番札所・仙遊寺にて、2022年6月撮影

 

つづき)

初炭になり、炭斗は立礼の茶事の初回を記念して玄々斎好み松唐草炭斗にしました。

唐銅道安風炉に糸目桐文車軸釜(伊予芦屋の写しで、長野新造)を掛けました。

この風炉だと火床を広く取れるので、火相が心配な風炉の茶事によく使います。

切掛風炉ではないので灰器を使い、月形を切りました。

灰器は鵬志堂イサム作の信楽茶碗を選びましたが、大きさといい雰囲気といいピッタリです(自分で言うのも何ですが・・・)。

香合は裏千家八代一燈好みの「つぼつぼ香合」(宗しゅん作)、香は松栄堂の沈香です。一つは熱灰に・・・と言いますが、火に近すぎたようで燃えだしてしまい、大いに反省しています。

さて肝心の火相ですが、懐石が1時間半かかりますので、下火3本の奥に大きい丸ギッチョを1つ足しましたが、もうギリギリでした。炭を置くと、パチパチと言う音が勢いよく聞こえてきて安堵しました。(風炉の茶事では火相と湯相がとても難しく、いつも中立でもう一度最終チェックをします)

初炭を終え、縁高でお菓子をお出ししました。浅緑の金団に小さな杜鵑が一羽飛んでいて、菓子銘は「一声」、製は石井菓子舗(横浜市旭区都岡)です。

 

 (厄払いの盤(鐘)・・・23番札所・薬王寺にて、2022年6月撮影)

銅鑼を打ちました。

後座の席入りの合図は銅鑼、久しぶりに打った銅鑼の音は何か今までと違っていました。銅鑼の音色はとても恐ろしい(?)です。

上手とか下手とかの評価とは別に、銅鑼を打つ亭主の心の内を表わしている気がするからです・・・恐れ、ためらい、心配、恥、高揚、慢心、悲しみなどの心のあり様を・・・。

なかなか無心で打つのは難しく、「上手に打てた!」と思った時は我が出ているそうで、お点前と同じですね。

    (86番札所・志度寺にて、2022年6月撮影)

濃茶の茶碗を持って緊張しながら席へ入りました。

水指の前に茶入と茶碗を置き合わせ、建水を勝手付きに置き、蓋置を建水の位置に置いて総礼。

大好きな濃茶点前ですが、点茶盤と円椅だと少しだけ感じが違います。それでも四方捌きをしながら点前に集中していきました。ただひたすら今日のお客さまに美味しい濃茶を練って差し上げたいと・・・。

無駄をそぎ落とした裏千家流の点前が大好きです。点前をしていると、心も所作も美味しい濃茶一服のために無心となり、研ぎ澄まされていきます。一方で、同門社中の方に見詰められながら、静寂の中にもあたたかなものを感じました。

黒楽茶碗に濃茶を茶入から4杓すくい、湯を少しずつ塩梅しながら注ぎ、練り始めました。

ぷぅ~んと茶香が立ち昇り、練っている茶筅の穂先が滑らかになって来ると、さらによく練ってから茶筅を茶碗に預け、ほんの少しずつ湯を足していき、再び混ぜ合わせるように練ってからお出ししました。

「お服加減はいかがでしょうか?」

「美味しく頂戴しています」という正客Yさまの一言に安堵して、次客Nさまと三客Mさまの濃茶に掛かりました。

濃茶茶碗の3碗ですが、これからも同じ茶碗で差し上げると思うのでナイショにします。ご想像ください。

茶入は薩摩焼の胴締めで15代沈壽官作、仕覆は能衣装の裂地でお仕立ては小林芙佐子先生です。

茶杓は銘「颯々」、京都瑞光院の前田宗源和尚の御作です。 つづく)

 

   (「颯々」の風が・・・8番札所熊谷寺にて、2022年6月撮影

 

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