暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

弥生の教室だより・・・廻り炭と花月

2018年03月31日 | 暁庵の裏千家茶道教室


 横浜市旭区「ふるさと尾根道緑道」にて  3月29日撮影
(コンビニのおにぎり2個と牛乳を持って行き、花の下でランチしました)


3月28日に廻り炭之式、平花月、濃茶付花月をしました。
3月に入り、五徳をあげて釣釜を掛けました。
できたら五徳の無い今のうちに「廻り炭之式」を体験してほしいと思い、生徒さんにお声掛けをしました。

「廻り炭之式」は七事式の一つで、炭手前の修練を目的とし、一同(東(亭主)を含め5人くらい)順に炭を炉中から上げ、再び炭を置いていきます。
一巡し正客から「炭にてお釜を」という声が掛かると、東は埋火(うずみび)を掘り起こしてその火で炭が熾きるように炭を置き、釜を掛けます。
「廻り炭之式」を一回行うことを「一回」(いっかい)といいます。

偈頌は「端的底看聻(たんてきていにみよにい)」。
意味するところは、炭を継ぐことの極意とは何か、いかに炭を置けば最も火が熾り易く、無駄が無いか、湯の沸く時間、さらに言えば継いだ炭の景色や風情、炭の選び方や掴み方もよく考えて修練を行え・・・ということでしょうか。

「廻り炭之式」だけは事前に役を決めておきました。
東(亭主)はFさん、正客N氏、次客Kさん、三客Tさん、詰Uさんです。
皆が炉辺に座って見つめる中、東から順に炭を置いていきます。
初めての方が多いので、なるべく先の客と違うように置き、炭を複数持てるように・・・とアドバイスします。




 前の客が置いた逆に、筋半田へ点炭から長火箸で上げていきます

一順すると、正客N氏から「炭にてお釜を」と声が掛かりました。
亭主Fさんは炭を全部上げ(胴炭は残したまま)、すぐに埋火を掘り起こしました。
(どうかしら? 火が残っているかしら?・・・内心、祈るような気持ちで埋火を見つめます)
・・・でも、Fさんが炭を割るとなんか黒々と見えました・・・

「先生、パチパチという音がしたので吹いてみていいですか?」
息を吹きかけてみると、赤い火が見え始めたではありませんか!
・・・そのまま吹いてもらって下火に使えるよう育ててもらいました。
とりあえず今回の埋火成功です。ヤッタね! 




   真ん中の赤く見える炭が埋火(うずみび)です

再び炉中に湿し灰が撒かれ、炭が置かれ、二度目の香が焚かれました。
薬缶が持ち出され、釜に水が注がれ、茶巾で清められ、釣り釜が掛けられました。
最後に亭主の送り礼で、廻り炭が無事(?)終了です。

それから平花月をしました。終わるとN氏から
「先生、もう一度平花月をやらせてください」と頼もしいリクエストがありました。
昼食後にもう一度平花月、そして濃茶付花月と続きます。
お茶の神様のご配慮で、濃茶付花月ではTさんが月(濃茶を点てる人)の札を引きました。
はじめて5人分の濃茶を点てましたが、とても好い経験になったみたいです。
それにKさんとUさんも花月はほとんど稽古していないのですが、よく頑張りました。

「先生、花月もいろいろあるのですね。
 濃茶付花月は始めてで、なかなか覚えられません」とUさん。
花月百回おぼろ月・・・という言葉があるくらいだからわからなくっても大丈夫ですよ。
 ゆっくり楽しく修練しながら覚えていきましょうね」
花月百回おぼろ月・・・素敵な言葉ですね・・・少し安心しました」


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炉点前の立礼席

2018年03月20日 | 暮らし

 彼岸桜と椿(源氏車?)を縄文土器花入にたっぷりと・・・
(花は散歩道の途中にある農家の無人販売所で求めたものです)


昨年11月に右膝を負傷して以来、いろいろ考えることがありました。
かねてより「立礼席の時代」と思っていたけれども、右膝の故障もなく点前座での立居ふるまいに何の支障もなかった時には「立礼席」を常時設けることにためらいがありました。

でも、右膝を負傷した時から「立礼席」の必要性を痛感し、回復したら先ず炉でも風炉でもお稽古や茶事が出来る立礼席を作りたいと決めていました。
たとえ正座困難や座れなくなってもお茶の稽古をしたい、お茶を楽しみたい・・・と願う方は、私も含めいらっしゃるのではないかしら?
奥伝は無理かもしれないけれど四ヶ伝まで立礼席で稽古をしたいという方がいらしたら喜んでご指導しよう・・・と思いました。

風炉になると点茶盤のある本来の立礼席で良いと思いますが、今はまだ炉の時期です。
それで、早速いろいろ工夫してみました・・・あれこれ試行錯誤が楽しかった! 
もちろんお金さえ出せば、畳付きの炉点前・立礼卓が売っていますが、現在手持ちの置炉、点茶盤、喫架、椅子などを利用して創ってみたかったのです。

近くのブックオフの家具コーナーで桐製の箪笥引出2個を購入し、炉を置く台としました。
かかった費用は計3000円也。


  現在の炉点前の立礼席・・・・まだ試行錯誤の最中です

なんとか炉の立礼の形が出来たので、茶友を呼んでお茶を点てて喫んで頂き、感想を伺いたくなりました。

「真ん中のテーブルのある部屋で立礼のお点前が炉でも風炉でもできるように工夫しました。
 よろしかったら、3月○○日12時頃に遊びがてらお茶飲みにいらっしゃいませんか? 大歓迎です。
 炉の立礼席はまだ試行錯誤中ですので、実際に使ってみることが大事という段階ですが・・・。
 簡単な昼食を用意して楽しみにお待ちしています・・・暁庵より」





YさまとKさまが茶飲み会へいらしてくださいました。
ちらし寿司、味噌汁、和え物、香の物などをお出しし、昼食後も近況報告などの御話が弾みました。
あまりの楽しさに肝心の薄茶点前がすっかり後になってしまいました。
お菓子は一期(苺)大福(寿々木製)、薄茶は清浄の白(小山園)です。

一服ずつお点てした後に亭主を交代し、Kさまが小堀遠州流のお点前で薄茶を点ててくださいました。
背もたれのある椅子にゆったりと座って、お点前を拝見し、幸福感に包まれながら薄茶を頂戴しました。
このくらいのゆったりさが好ましく思い、もし茶事をするとしたらお客さまは2~3名さまがよろしいかしら・・・。
客席に座ってみると、一際立礼席の有難味や好さが身に染みるようでした。

「Yさま、Kさま、今日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました!」 



「花月の会」のお仲間を募集しています・・・終了いたしました

2018年03月18日 | 暁庵の裏千家茶道教室



「花月の会」(仮称)のお仲間を募集しています
                
「五葉会」(七事式の勉強会)とは別でして、花月を初歩から修練する会です。
会の概要が整いましたので、初歩(足の運び)からお稽古する方を若干名募集いたします。
特に資格はありませんが、楽しく回数を重ねて花月を修練して参りましょう。
初めて出逢うお仲間と、初歩から花月之式を学ぶのもまた新鮮で楽しみにしています。 
先ずはメールにて暁庵までお申込みまたはお問い合わせくださいませ。
メールアドレス:akatuki-ane@grace.ocn.ne.jp


                
「花月の会」の概要をお知らせします。
会の名称:花月の会(仮称)
不肖暁庵がご指導させて頂きます。 (参考:暁庵の茶道教室のHP)
暁庵社中(花月経験者と初心者)もご一緒させて頂き、5~6名で修練します。

募集人数: 3名様

日時:1年間(5月~翌4月)に全9回、原則第4土曜日(第3土曜日に変更有) 
13時集合~17時
初回は5月26日(土)6月16日(土)、8月、11月、2月は休会予定)
    
場所:暁庵宅 (横浜市旭区今宿 相鉄線二俣川駅下車)

内容:花月の研鑽(毎回3科目)
○ 平花月から基礎をしっかり勉強していきましょう。
○ 平花月、炭付花月、濃茶付花月、貴人清次花月、軸荘花月、香付花月、
  投げ込み花月、結び帛紗付花月など
 (2年目に四畳半花月、貴人清次濃茶付花月、茶通箱付花月、茶箱付花月を予定)

会費:1回4千円(内訳:会費3000円+水屋料1000円)
   
期間:5月より翌年4月まで
  (1年ごとの更新:1年後に継続するかを確認いたします)

募集期間:3月10日~3月31日まで(決まり次第、募集を終了させて頂きます)
     
追伸:募集終了についてはこの追伸欄にてお知らせいたします。
   
追伸:あと1名様になりました。ご参加をお待ちしています(3月18日)
 





素敵なご縁がありますようにお待ちしております
きっときっと・・・新しい世界が広がると思いますよ・・・   


追伸)
先ほど3名様のお申し込みを頂き、募集終了いたします。
ご検討中の皆様には大変申し訳ございません・・・
。(3月23日22時記)



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能「泰山府君」と桜の命

2018年03月16日 | 歌舞伎・能など

 横浜能楽堂の舞台にいけられた「桜と松」

ここのところ暖かいですね! 
5月の陽気だそうで、今年の桜の開花が大幅に早まりそうです。
4月8日に”さくらの茶事”を予定しているので、その頃には桜花がどうなることかしら?・・・とやきもきしています。

そんな折、3月10日(土)に「能の花 能を彩る花」第5回「桜」・能「泰山府君(たいさんぷくん)」を見に横浜能楽堂へ行きました。
泰山府君は、道教の聖地である「五岳」の一つ、生死を司る「泰山」への信仰から生まれた神です。
能「泰山府君」は、桜花爛漫の季節を舞台に、万物の生命を司る道教の神・泰山府君に、桜の命を永らえさせてもらおうという願いを歌い上げた曲となっています。
我が願いも同じで、泰山府君に今年の桜の花の命をどうか永らえさせ給え・・・と。


  横浜能楽堂 (横浜市西区紅葉ヶ丘27-2)

2017年(平成29年)は、華道・池坊の開祖と呼ばれる池坊専慶がいけばなの名手として文献に登場してから555年に当たるそうです。
これを記念し、横浜能楽堂では花に関係する5つの能を上演し、次期家元の池坊専好が舞台を花で彩るという企画公演を催しました。

  第1回「菊」 平成29年10月28日(土) 能「菊慈童 酈縣山」(観世流)梅若玄祥
  第2回「紅葉」平成29年11月23日(木・祝) 能「紅葉狩 紅葉ノ舞 群鬼ノ伝」(金春流)金春安明
  第3回「牡丹」平成30年1月13日(土) 能「石橋 大獅子」 (観世流)片山九郎右衛門
  第4回「梅」 平成30年2月10日(土) 能「東北」     (観世流)大槻文藏
  第5回「桜」 平成30年3月10日(土) 能「泰山府君」   (金剛流)金剛永謹

最終回の「泰山府君」は、シテ方五流の中で唯一上演曲としている金剛流でも長らく演じられなかったそうで、1960年に復興されました。
私にとって「泰山府君(たいさんぷくん)」という能の名前も観るのも初めてでした。

既に横浜能楽堂の舞台正面には桜と松が活けられていて、どうやら池坊專好さんが舞台で活けるというパフォーマンスはなさそうです。
第3回「牡丹」の時には白と紅の牡丹を1本また1本と丁寧に石橋の前に活けられていた姿が心に残り、能「石橋 大獅子」への期待がいや増して、能といけばなの新たなコラボレーションを実感したのですが・・・残念!


  京都の紫雲寺頂法寺(六角堂)の白牡丹 (平成30年1月末撮影)

さて気を取り直して、能「泰山府君」のあらすじを記します(パンフ参考)。

桜町中納言(ワキ)は桜の花の命が7日と短いことを惜しく思い、ものの命を司る泰山府君を祀り、延命を祈念しています。
そこに天女(前シテ)が降り立ちました。
天女は、あまりの桜の美しさに、どうにかして一枝持って帰りたいと思います。
しばらく待っていると月が入り辺りは暗くなりました。それに乗じて天女は桜に立ち寄り、ひそかに手折ると、胸に抱えて天上へと帰ります。

そのことに気づいた花守(間、アイ)は、急いで中納言に告げ、泰山府君へ祈るように促します。

やがて、泰山府君(後シテ)が現われました。
泰山府君は通力で天女が桜を折ったことを知ると、天上から天女を呼び寄せます。
すると、天女(ツレ)が桜の枝を持って再び姿を現し、天女之舞を舞い、枝を樹へ戻します。
泰山府君は天女が戻した枝に命を吹き込み、元の通りに接ぎます(舞働)。
そして、花の盛りを愛で、花の命を二十一日まで延ばすのでした。





春になると、美しく絢爛豪華に咲き競う桜に誰でも心奪われます。
けれどもあっという間に散ってしまうはかなさは桜を愛でる人の心を妖しくかき乱します。
桜を一枝折って持ち帰ってしまう天女に大いに共感したり、天女が戻した桜の枝に命を吹き込む泰山府君のおどろおどろした舞にびっくりしたり、21日の延命をうらやましく思ったり、のどかな春を謳歌する舞台を堪能しました。

泰山府君が左右の袂で接いだ桜の枝を覆い、命を吹き込む所作に、思わず「アッ!」と声が出てしまいました。
接いだ枝が再び折れてしまうのでは・・・と心配だったのです。そのくらい舞台と一体になっていました。
大鼓の「イヤッ」という掛け声とともに太鼓や音曲が鳴り止み、泰山府君が舞納めました。



シテやツレの床に吸いつくような足の動きに見惚れ、自分が舞っているようで楽しかった。
ただ、いくつか違和感も感じました。
前シテの天女は金剛永謹、ツレの天女(後半の)は金剛龍謹が演じたのですが、面も衣装も雰囲気もまったく違っているので同じ天女と思えず、何度もパンフを確かめました。
物語的には天女を同じ方が演じた方がわかり易く、二人の天女の違いが違和感として残りました。

それもこれも「桜」の持つ妖気の成せることかもしれませんね・・・・
そう思うと違和感ありもまた良し・・・でしょうか。


  横浜能楽堂近くからランドマークタワーをパチリ


(忘備録)
横浜能楽堂企画講演  能の花 能を彩る花 第5回「桜」
           平成30年3月10日(土) 午後2時開演  
                
  能 「泰山府君」  シテ(天女・泰山府君) 金剛永謹
            ツレ(天女)     金剛龍謹 
            ワキ(桜町中納言)  森 常好
            間(花守)      高野和憲    
        
            囃子方  大鼓  國川 純   太鼓  林 雄一郎
                 小鼓  曽和正博   笛   竹市 学
                 


弥生の五葉会 in 2018

2018年03月15日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 床に「隅田川」(蓼洲画)を掛け、釣釜(雲龍釜)にしました

3月9日(金)は弥生の五葉会でした。
廻り炭之式、結び帛紗花月、昼食をはさんで三友之式の順でお稽古しました。
10時頃に集合し、手分けして炭台、巴半田、筋半田などの準備をします。

廻り炭から始めるので、先ず全員で巴半田の巴の灰形に挑戦しました。
初めて・・・という方もいましたが、こればっかりは実際にやるっきゃない! 
失敗しても火箸で灰をならせば何度も挑戦することができます。
毎日数回ずつやってみると、お好みの巴の灰形が常時できるようになるかも・・・。

もう一つ、2月になると毎年泥縄でやりだすことがあります。
それは左右の手の運動、開いたり握ったり、トレーニング用機器(握り込む)を手元に置いて、握力をつけることを心がけます。
通年で心がければよいのですが、怠け者の悲しさで2月から4月頃、つまり廻り炭が近づくと頑張ります。



札で花(東)が当たりましたが、巴半田や筋半田を持って点前座に座る自信がなく、Hさんに交代してもらい、月(正客)をさせて頂きました。

廻り炭では、点前の順番や炭の取り置きも難しいですが、一番の難関は埋火(うずみび)を成功させることです。
毎回、いろいろ工夫しますが、今回は8時頃(2時間以上前)に炉灰を掻き起して空気を入れてから炭火を置き、湯釜を掛けて灰を温めておきました。
その後、廻り炭の点前が進み、東が埋火を掘り起こし割ってみると、残念!火が消えて黒くなっています。
昨年第1回五事式で成功)した時とほぼ同じようにしたつもりでしたが、炭が少なかったのかしら?
今回失敗したことがとても好い刺激になりました。
もう一度3月末に廻り炭をする予定なので、いろいろ考えて再挑戦したいと思っています。

三友之式は全員で花を生け、香を聞き、花月で薄茶(4服点)を優雅に楽しみました。
まだまだ花が少ない時期ですが、持ち寄ってくださった花が床を華やかに彩り、春爛漫の風情です。


  

  

  


  三友之式

  侘助椿 雪柳       唐銅尊式   一  宗里  三

  こでまり 雪柳 侘助椿  染付扁壺   二  宗悦  四

  木蓮 相模侘助       小岱焼    四  宗厚

  満天星つつじ 白玉椿   備前蹲    三  宗曉  二

  金龍花 雪柳       萩耳付    主  宗智  一 



  
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