暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

楽美術館・茶会  黒の魅力-その2

2013年03月27日 | 献茶式&茶会  京都編
茶碗はどれも見ごたえがあり、一入作の狂言袴写赤楽もお気に入りですが、
一番心に残ったのは黒楽水指「不識」(ふしき)でした。
これも四代一入作、九代了入極があります。
不識とは達磨大師のことで、次のような話を伺うことが出来ました。

   中国・梁の武帝は仏教を厚く信仰しており、
   天竺から来た達磨を喜んで迎えました。
   武帝は達磨にいろいろな質問をし、・・・最後に

   帝曰く「朕に対する者は誰ぞ」
   師曰く「不識(認識できぬ・・・空だから)」

   武帝は達磨の答を理解せず、達磨は去って行ったのです。
   後に武帝は後悔し、達磨を呼び戻そうとしましたが、
   再び逢うことはありませんでした。

水指は「不識」の銘にふさわしく、
堂々と大地に根付いているような形容と落ち着きがあり、
一入の特徴である赤釉を黒釉の下に垣間見ることができます。

              

棚は黒塗の高麗卓、
棗は少庵好「夜桜なつめ」(五代宗哲)、
茶杓は銘「大内山」、御所の左近桜で作られたとか。
かわいらしい蓋置ツクネは覚入作で、これも黒楽でした。

「黒ばかりになってしまいました・・・
 今日は天気が良くなったので明るいのですが、雨や曇りだったら
 黒の道具は見えにくいので、蝋燭を用意してました・・・」

黒の道具を囲む風炉先は「銀泥刷毛目」、15代吉左衛門監修と会記にあり、
柿渋を塗った和紙に当代自ら銀泥を刷毛で引いて仕立てたものでした。
その風炉先を眺めると、なぜか佐川美術館の茶室が連想されました。
風炉先は二つ作り、一つは佐川美術館茶室にあるそうです。

渋く華やぎのある銀泥刷毛目の風炉先に黒の道具が映えて、
これに蝋燭の灯りが加われば、パーフェクトかしら? それとも?
(体験してみたい・・・と密かに思いました)

             

もう一つの「黒の魅力」は「夜桜なつめ」でしょうか。
今まで数回ご縁があったのですが、一度も夜桜をこの眼で見たことがありません。
黒の漆塗に、別の黒漆で桜絵を描いてあるそうで、
一番よく見えるのが蝋燭の灯りとか・・・
この日もご縁が無く、永遠に追い求める「漆黒の桜」になりそうです。

             


今にして思えば、お点前さんが置かれた、蓋置ツクネにときめいた時から
「黒」の魔法にかけられたのかもしれません。

「黒の魅力」を知り尽くした当代ならではの道具組であった・・・!
と感嘆しながらも、黒の魅力に私めは当分嵌まりそうでございます。

                            


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楽美術館・茶会  黒の魅力-その1

2013年03月26日 | 献茶式&茶会  京都編

御所の枝垂れ桜が咲く頃に(左クリックして見てください)、
楽美術館・特別鑑賞茶会へ伺いました。

昨年の9月以来2回目で、茶友Oさんが予約してくださり、
二人で嬉しく出かけました。
いつも当代が生けられた花が出迎えてくれます。

            

正客はアメリカ・ペンシルベニア州在住の日本人男性で、
アメリカ人の奥様(?・・maybeです)が次客でした。
その男性は「よくわからないので・・・」と遠慮されていましたが、
正客となり、きっと佳き思い出になったのではないかしら?
当代と同い年というのも、何かのご縁だと思いました。

私は五客、Oさんは六客でしたが、丁度斜めに向いて正座している席主と
対峙しているような位置でして、ずーっと幸せでございました(大ファンなのです!)。

本席のお軸は「楽」と書かれた大きな一字、伏見宮貞愛親王の御筆で、
十二代弘入が拝領し、印字としても使ったそうです。
「でも今日は「たのしい」と読んでくださいね」と席主。
青銅瓢花入(九代淨益作)にピンクの椿が一枝。

            

手付きの喰籠に入ったお菓子がまわってきました。
「香炉釉手付輪花蓋鉢、覚入作で水指として作ったのかもしれません。
 蓋裏と内側に銀がはってあって、お菓子が映えるんです」
「あらっ・・・(ホント!)」
きんとんの薄桜色が銀箔に映って、上品で、はかなげな美しさです。
菓子銘は「錦春」、聚洸製です。

釜は裏甲釜、西村九兵衛造、炉縁は真塗高台寺蒔絵です。
お点前さんがちょこんと置いた、蓋置の愛らしさと存在感に見惚れていると、
すぐに蓋が乗せられて、見れなくなりました。

お点前さんが二椀点てられ、あとは水屋から運ばれました。
主茶碗は半筒のような狂言袴写赤楽ですが、詫びた風情のある茶碗です。
作者は四代一入、実は最近、五代宗入とともに注目している方の作でした。

私は団子絵黒楽茶碗、都をどりで茶席菓子皿に使われる団子絵が鮮やかで、
楽しい茶碗です。団子は漆絵で最近、塗り直したそうです。
内側にも団子絵があり、こちらは三個でグレーでした。
Oさんは桜絵赤楽茶碗、共に十四代覚入作で、この二つは一双になっているそうです。
仲良く、一双の茶碗で薄茶を頂き、大喜びしました。
薄茶は一保堂の丹頂の昔です。

           

客一同、薄茶を頂いてから、六個の茶碗が中央に並べられ、
当代が一碗一碗、丁寧に解説されるのが、楽しみであり、勉強になります。

九代了入作の茶碗が替として三碗使われました。
一碗目は、二条内筆洗赤楽
二椀目は、黄瀬戸写 唐和七種之内
三碗目は、赤絵写 唐和七種之内 

了入は隠居後、信楽で自由に愉しみながら、いろいろな作品を作ったそうです。
唐和七種もその一つで、黄瀬戸、赤絵(安南写?)、志野、三嶋、珠光青磁、
古清水、あと一つは何だったかしら??
隠居印もいろいろあって、使い分けて愉しんでいたみたいです。
轆轤は使っていないが、轆轤目のようにヘラを入れて楽しんだ話なども・・・。

隠居後の了入のお話をする時に、ちょっぴりうらやましげに感じたのは
私だけでしょうか?
(柵を離れて、山にこもって自由闊達な作陶の日々・・・好いですよねぇ~)

                                       

            楽美術館・茶会 黒の魅力-その2へつづく


桜だより  ただ今、メール不通です。

2013年03月24日 | 京暮らし 日常編
今日、京都御苑(御所)へ行きましたら、しだれ桜が見ごろでした。
(左クリックして見てください)

手違いがありまして、しばらくメールが通じません。
復旧の手続き中ですが、まだ時間が掛かりそうでご迷惑をおかけします。
御用の方はメールではなく、電話またはコメントにて宜しくお願いいたします。

季節の移ろいは早く、書く方が追いつきませんが
どうぞ懲りずにお付き合いくださいまし。

                               




五事式-2 雪間の草の春

2013年03月23日 | 思い出の茶事  京都編
             (季節はどんどん移ろい、春一色の鴨川べり)

廻り炭が終わると、懐石です。
京遊庵さんの懐石を賞味しながら
茶談義や京都の暮らしなど、久しぶりの再会につい話が弾みました。
主菓子は亀屋万年堂の「下萌え」、白い雪に若緑が顔を見せています。

ここで、中立をさせていただきました。
銅鑼の音で後座の席入りです。
床には花器が五つあり、花寄せのようです。
山里棚に落ち着きのある単瓢の水指(ぜぜ焼)が荘られていました。

                

花台が運び出され、すぐに花寄せが始まりました。
1週間前の茶事で花寄せを考えていたのですが、
花屋さんに相談したところ、
「花が少ない時期なのでご用意できるか、お約束できません・・」
と言われて断念した経緯があり、お花が揃うかしら?と案じていました。

・・が、花台には選ぶのを迷うほどたくさんの花がありました。
早春の歓びに溢れる花は茶花の先生と相談しながら調えてくださった、
ご亭主心づくしの花でした。

中釘の竹花入へ辛夷の芽の枝と紫の苧環を入れました。
次客Iさんは織部の花入に万作とうす雪さくら・・・・
最後に、ご亭主が備前の花入に寒あやめを入れると、
春の女神が広間へやってきて、春爛漫の華やかさとなりました。

           

香盆が運ばれ、香を焚かせて頂きました。
香包を開けると、たくさんの香が入っていたので
大きめを選んで雲母に乗せたとたん、上品な香りが満ちて行きました。
香銘をお尋ねすると「淡雪(あわゆき)」、香木は伽羅です。

残香を楽しみながら、濃茶点前が始まりました。
ご亭主が心をこめて点てる濃茶なので、特別にお声を掛けて
半東のKさんにも席へ入って頂きました。
七事式を研鑽する同志が心静かに喫む濃茶のひととき・・・
井戸茶碗で、緑濃く、薫り高く、よく練られた熱い濃茶が回され、
まろやかですっきりした味わいでした。
茶銘は坐忘斎家元お好 「花香(かこう)の昔」、詰は松江の中村茶舗です。

           

「薄茶は花月で」の挨拶に応えて、帛紗を付けて四畳半へ入りました。
干菓子(薄氷と梅花)が運び出され、花月が始まりました。
茶碗は備前焼、還元炎で発色した青磁色合が魅力的な一碗でした。
全員が服したところで隅かけとなりました。
茶入は備前火だすき、
茶杓は銘「たまきはる」、
仕覆は若草色の双鶴二重蔓牡丹唐草、
薄器は、胴に土筆、蓋裏にスギナの蒔絵がかわいらしい中次でした。

次いで、一二三之式となり、高得点が入り、嬉しゅうございました。

最後に、ご亭主からの宿題は、冒頭に掲げた和歌でした。
     花をのみ待つらむ人に山里の
         雪間の草のはるを見せばや    藤原家隆


素晴しいお仲間と共に、奥深きテーマの五事式を愉しむことができまして、
一首浮かんでまいりました。御礼かたがた・・・

        雪深き奥の細道分け入れば
           雪間の草のはるや爛漫     暁庵   

                           やっとできて「ふぅ~!」 

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五事式-1  雪間の草の春

2013年03月22日 | 思い出の茶事  京都編
               


   花をのみ待つらむ人に山里の
       雪間の草のはるを見せばや    藤原家隆


2月17日(日)、いちねん会(第2次?)の五事式に嬉しくも正客として
お招き頂きました。
ご亭主はSさん、半東はKさん、席は汲古庵です。
昨年2月のいちねん会五事式(暁庵の涙の卒業式)を懐かしく思い出しながら、
連客の皆さま(次客Iさん、三客Sさん、詰Aさん)と待合へ。

床には・・ネコヤナギでしょうか?
早春の芽吹きが描かれた色紙が掛けられていました。
「トーン・・トーン・・トーン・・トーン」
詰のAさんが打つ板木が音好く間合い抜群です。

               

春とはいえ、如月の冷え込みはさすがにきつく、
大地を持ち上げている霜柱を横目に見ながら露地を進むと、
先ほどは何もなかった庭に緋毛氈を敷いた腰掛が設えてありました。
Kさんのご主人の協力の賜物・・・感謝しながら迎え付けを待ちました。

渋い若草色の着物、色とりどりに織られた帯のご亭主が現われ、
冷気の中、張りつめた気配を感じながら無言の挨拶を交わしました。
蹲には湯の入った釣瓶が用意され、配慮と工夫が嬉しかったです。

八畳広間に席入りすると、床には
「謝茶」
よどみのないすっきりした筆は紫野孤篷庵の卓厳和尚です。
「謝茶」に寄せるご亭主の思いはそのまま客一同の思いでもありました・・。

ご亭主と挨拶を交わした折、宿題を頂戴しました。
「今日の五事式には何かテーマがあったら・・と思い、
 ある和歌をテーマにしてみました。
 クイズと思って愉しんでいただければ幸いです」
 (あらら・・どうしましょう!)

               

廻り炭になりましたが、皆さま、七事式で鍛錬されているので
手前はすらすら、炭を上げるのも、置くのも早く、
一番もたもたしていたのは、稽古不足の正客でした。
三客のSさんが枝炭を真ん中に立てるように入れて
「京都からいらした歓迎の冬の花火・・・」

以前に五事式の会で、「春の小川」「竜田川」「鳥居」「花」などの置き形を
廻り炭で勉強したことがあったのですが、すっかり忘れていました。
やって宜しいのかしら?・・という迷いもありましたが、
Sさん曰く、
「七事式は修練なので遊んではいけないけれど
 五事式はそのような趣向があっても好いそうですよ」

その言葉に大いに納得です。
「Sさん、歓迎の冬の花火をありがとうございます!
 今度の五事式では、置き形を楽しみたいです」

              

廻り炭が一巡し、ご亭主が埋み火を掘り出しました。
みんな我がことのように、一挙一動を見守っています。
残念ながら割ると黒く、埋み火から火を熾す難しさを痛感していると、
すぐに半東が種火を運んできて、流石の連携プレーでした。

釜は真形(敬典造)、炉縁は真塗・唐松蒔絵、
香合は志野焼の「早わらび」、
香銘は「雪ノ下」、香元は鎌倉・天薫堂です。

                              

    五事式-2 雪間の草の春 へつづく