暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

暑中お見舞い・・・蝉しぐれの中で

2018年07月30日 | 暮らし

納涼図屏風(部分) 久隅守景(国宝、東京国立博物館蔵)
(憧れの納涼図です・・・


   暑中お見舞い申し上げます


去る7月23日は大暑、摂氏41.1℃という観測史上最高気温が記録されました。

23日は我が家にとってもショッキングな日でした。
ベランダの睡蓮鉢に棲んでいた金魚4匹が無(亡)くなったのです。
朝起きてしばらくした頃、猫が庭を横切っているのを見て、嫌な予感が頭を過りました。
近隣で猫を見ることは滅多になく、もしや金魚を狙ったのでは・・・。
急いでベランダの鉢を見ると、金魚の姿が一匹も見当たりません。
「ヤラレタ!」
あんなにツレになついて、足音を聞いただけで金魚鉢の縁にすり寄ってきた可愛い姿がもうみられないなんて・・・。
二人ですっかり落ち込んでいました。 

・・・あれから1週間、台風12号が変なコースをとって過ぎ去って行きました。
ちょうど台風が関東地方に接近または上陸する恐れがある7月28日(土)は第3回花ゆう会でした。
早目に休会のお知らせをメールして大正解でした。
横浜でも15時頃から雨が強く降り出し、風も吹き始めてきたのです。
29日の今朝まで、雨や風が時折強く吹き付けていて、昼になってやっと青空が見え、蒸し暑くなりました。




今、我が家の庭では蝉しぐれが凄いです。
時に暑苦しく感じ、時に暑さに立ち向かう如く蝉しぐれの中に身を投じて耳を傾けます。
カナカナカナ・・・カナカナ・・ヒグラシも鳴きはじめました
18時40分、日の入りが18時50分頃ですから少し薄暗くなりかけています。
蝉が鳴きはじめる条件を調べてみると、気温と時間帯(明るさ)が関係していることがわかりました。

クマゼミ・・・ジャーンジャーンジャ~~ンと聞こえます。
       気温が関係しており、気温が高くなる(32~33℃を超える)と鳴き止みます。
       気温が下がってきた夕方などにも鳴きます。

アブラゼミ・・・ジーッ、ジッ、ジーッの大合唱、我が家の蝉しぐれ楽団の主力メンバーです。
        25℃になると鳴きだし、夜中でも鳴いていますが、25℃以下なると鳴きません。

ミンミンゼミ・・・ミーンミーンミンミンと鳴いています。
         あまり気温と連動せず、ずっーと鳴いていて、時間帯(明るさ)が関係しています。

ツクツクボウシ・・・ツクツクボウシと鳴きますが、最近聞いていないかな?
          あまり気温と連動せず、ずっーと鳴いています。明るさが第一条件みたい。

ヒグラシ・・・日暮れ近く、カナカナカナと鳴きます。
       ヒグラシの鳴き声を聞くとなぜか物悲しく、秋の訪れを感じるのは暁庵だけでしょうか。
       明るさが第一条件で、日が射して明るいときは鳴きません。
       名前はヒグラシ(日暮)ですが、25℃を下回る朝方にもよく鳴いています。


 茶箱・雪点前 (茶箱まつりで卯の花・雪・月・花点前を切磋琢磨します)


蝉に関係する茶道具といえば、すぐに思い浮かぶのが「蝉籠(久田宗全好み)」です。
もう一つ、「蝉結び」があります。
「蝉結び」は、蝉が止まっているように帛紗を竹台子の客付柱に結び付ける扱いです。
裏千家十一代玄々斎の創案で夏期に限られるそうですが、慣れ親しんだ「鶯結び」と違い、「蝉結び」を自分で使ったことがないかも?です。
早速、棚の柱に結んだり、水指の上に置いたり、いろいろ試してみたいです。

今日から暁庵の茶道教室は夏休みに入りました。 
暑さ厳しき折、8月29日の茶箱まつり(全員稽古)までどうぞお元気でお過ごしください。

ブログも前掲の「納涼図屏風(部分)久隅守景」のようにゆるゆるとまいりたいと思っています。



アートをめぐる旅(4)・・大塚国際美術館

2018年07月21日 | 

 (見ることはあるまい・・・とあきらめていた「ゲルニカ」(パブロ・ピカソ)を
  鎮かにゆっくり鑑賞できました)

ゲルニカ    ピカソ、パブロ(1881-1973)
1937年
レイナ,ソフィア国立美術館  マドリード


(解説より)
1937年、フランコ将軍の要請で、ナチス・ドイツ軍はスペインの古都ゲルニカを全滅させた。
これに衝撃を受けたピカソは、この作品をパリ万国博覧会の壁画としてわずか一か月で仕上げている。
直接的に爆撃を想起させるものは何も描かれていないが、ミノタウロス、母と子、曲芸師など彼が好んだ主題すべてがネガティヴに反転させられている。
それ故に、人間の暴力と悲劇に対する普遍的で去売れるな反対の意思表示が伝わってくる。


(つづき)
ツアー最終日の7月5日は宿泊地の小豆島・土庄でむかえ、朝から雨でした。
その日は小豆島の寒霞渓をロープウェイから眺めた後、オリーブ園へ寄り、土庄港から高松港へ渡りました。
高松からバスで鳴門へ行き、大塚国際美術館で約3時間過ごし、鳴門公園で鳴門の渦潮を見学し、最終便で徳島空港から羽田へ戻るという、かなりの強行軍です。




初めて訪れた大塚国際美術館、世界各地の名画が特殊な陶板技術により見事に複製され、展示されていてその数1000点を越すとか。
山の斜面を利用して建てられた美術館(5階建て)はほとんど地下に埋もれています。
正面玄関から長さ41mのエスカレーターに乗り最初のギャラりー(中世・古代)に到着すると、そこはB3Fでした。
ツアーの同行者と一緒に1時間余、美術館の見所の名画などをガイドさんが解説しながら案内してくださいました。
このガイドのお蔭で複雑な建物構造とギャラリーの関係が少し理解できたかな?
約2時間後の集合時間まで自由に館内の名画を観賞しました。
あっという間の見ごたえのある3時間でしたが、いくつか思い出に書き記しておきます。

展示方法に工夫があり、「環境展示」「系統展示」「テーマ展示」の3つからなっています。
中でも「環境展示」、古代遺跡や教会などの壁画を環境空間ごとそのまま再現した今までにない臨場感を味わえる立体展示になっているそうです。
本当に、一部分だけ切り取られた壁画や仏像を見て、この作品があった場所で拝みながら拝見したい・・・と思っていたので、我が意を得た気がしました。
写真OKというのも気に入りました。

B3(古代、中世)ギャラリーは環境展示の宝庫でした。
○ システィーナホール
  システィーナ礼拝堂天井画および壁画   ミケランジェロ   ヴァティカン



エルグレコの部屋
  三位一体
  聖アンデレと聖フランチェスコ
  聖マウリティウスの殉教
  オルガス伯爵の埋葬 など




  
スクロヴェーニ礼拝堂  
  ジョット  スクロヴェーニ礼拝堂壁画  イタリア、パドヴァ



聖テオドール聖堂    トルコ、カッパドキア
暁庵の一番のお気に入りかも・・・トルコへ行きたくなりました。 






7つのヒマワリ   ゴッホ、フィンセント、ファン
7つのゴッホの「ヒマワリ」が一堂に展示されていて圧巻です。





その中の1点、「6輪のヒマワリ」について興味ある解説が書かれていたので記します。


 「6輪のヒマワリ」
1888年  98cm×69cm
1945年兵庫県芦屋市にて焼失
調布市武者小路実篤記念館の画像写真集より再現

(解説)
ゴッホの「ヒマワリ」で有名なのは、アムステルダム、ロンドン、ミュンヘン、フィラデルフィア、それに東京(損保ジャパン日本興亜美術館)の5つの美術館所蔵の大型(90~100cm×70~75cm)の「ヒマワリ」である。
これらはいずれもアルル時代の作品だが、ゴッホはパリ時代にも何点かの「ヒマワリ」を描いている。
ただし、これらはテーブルなどの上に切り花として置かれたもので、花瓶に入った静物としての「ヒマワリ」はアルル時代に初めて描かれた。

アルル時代にはこれら5点に加え、さらに2点の「ヒマワリ」が描かれている。
しかも、そのうちの1点、「6輪のヒマワリ」はかつて日本にあったものである。
芦屋の実業家・山本顧弥太氏が1920年(大正9年)に購入したもので、作家の武者小路実篤と親しかった氏は、武者小路が温めていた白樺派の美術館構想に共鳴し、ゆくゆくはこれに寄贈するつもりであった。
そうこうするうちに第二次大戦が勃発、絵はそのまま芦屋の山本邸に飾られていたが、1945年、終戦直前の空襲で灰燼に帰した。
他の大型の「ヒマワリ」ともサイズ的に遜色なく、構図(花の数、配置)、背景の色などの点で独自の作品であり、5点の大型の「ヒマワリ」の原点ともなった作品である。
この幻の「ヒマワリ」が今回、東京の武者小路実篤記念館の全面的なご協力のもと、ここに原寸大で見事によみがえった。



・・・・キリが無いのでこの辺で終わりに致します。
今回の「アートをめぐる旅」はとっても疲れたけれど、とっても充実していました。
お茶漬けの日常から離れて、いつもと違う頭の部位が刺激を受けて活性化されたような・・・そんな旅でした。

 
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アートをめぐる旅(3)・・直島の家プロジェクト

2018年07月19日 | 


(つづき)

直島(香川県香川町)の「家プロジェクト」は今回の旅で初めて知りました。

「家プロジェクト」のある本村地区をツレとぶらぶら歩くと、愛媛県西予市にあるツレの生まれ故郷にそっくりでした。すぐそばに海や漁港があり、山が迫ってそこには神社が祀られ、狭い平地に焼き板壁の民家が集まり、縫うように細い路地が走っていました。



本村は直島でも古くからある集落です。かつては塩造りで栄えていましたが、過疎化や高齢化が進み、空き家や廃屋が次第に増えてきたそうです。
1997年、使われなくなった家屋を改修して現代アートにしようという「家プロジェクト」がスタートしました。
人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものを作品化しています。
古民家大好きな暁庵としてはコンセプトを伺っただけで胸が高鳴り、興味津々の「家プロジェクト」でした。


    公園側から見た「南寺」(建築設計 安藤忠雄)

    公園のトイレも建築設計は安藤忠雄による


南寺  ジェームス・タレル  (建物の建築設計は安藤忠雄による)

今回最初に訪れたのが「南寺」、光を体感する衝撃的な作品でした。

かつて「南寺」という寺があった場所に新たに安藤忠雄氏設計の建物が建てられました。
周囲の景観に溶け込むように、コンクリート打ちっぱなしの建物の外側を焼杉板で覆っています。

16名定員で8名ずつ2つのグループに分けられ(所要10分、15分ごとの予約制)、無言で入室します。
中へ踏み込むと、そこは鼻をつままれても分からないような暗闇、左手を少し前に出し左壁を伝って進みます。
ゆっくり一歩ずつ直角に曲がっていたり・・・。
この暗闇の中を不安、恐れ、期待を感じながら進んでいくうちに、身体に染みついた常識や不要な感情がそぎ落とされて、本来の人間の持つ感覚だけが研ぎ澄まされていくように思われます。

さらに進んでいくと、ベンチのような物があるらしく
「腰かけて静かにお待ちください」・・・と案内人の声がします。

「入室してから5分経ちましたので、最初に入った方にはそろそろ見えてくるのではないでしょうか」
(えっ! この暗闇の中で何かが見えるのかしら?)
目を凝らして暗闇を見詰めること数分(または数十秒だったか?)
白っぽい光のようなものが前方に見えだすと、やがて映画館のスクリーンのように白い帯となり、左右の壁にも淡い光でしょうか? 白い影のような物が帯状に浮かんできました。

それから、さらに数分経つと、案内人の声が掛かります。
「どうぞ立って前の方にゆっくりお進みください」
スクリーンのような壁の下を覗くと、小さな小さな穴が並んでいて、光が射していました。
でも、最初は確かに真っ暗闇でした。
その闇の中で身体や機能が全身全霊で光を捉え、体感していく過程が、ジェームス・タレルの作品なのです。

ツアーのお仲間が薄暗闇の中で話しかけてきました。
「これで終わりですか??」
「そうです。なんせアートですから、ご自身で体感したことが全てです」と私。
評価や感想は人それぞれでしょうが、私は大満足!でした。
・・・それにモネの「睡蓮」と同じく、暗闇の中の「光」が茶事のテーマとして浮かんできたのでした。


  本村で出合った街中アート

はいしゃ 大竹伸朗
かつて歯科医院兼住居であった建物をまるごと作品化しています。


  アート作品「はいしゃ」の建物と入口


   外も中も凄いです


石橋  「ザ・フォールズ」 千住博
約100年前に建てられた母屋と蔵を改修し、襖絵と滝を描いた千住博の作品を展示しています。
蔵の床に漆を塗ってあって、床に滝が映って見事な景を生み出していました。


    石橋家


  「ザ・フォールズ」 千住博


  見ごたえある床に映った滝 

角屋 「Sea of time’98」 宮島達男
「家プロジェクト」の作品第1号。
暗い室内に水が張られ、125個のLEDデジタルカウンターが1~9の数字を刻む作品です。
その各デジタルカウンターのスピードは島の人たちによって決められたそうです。
不思議で魅力的な空間作品ですが、刻々変化する色鮮やかな数字が点滅するので長くは見ていられないかも?




○他にも「碁会所」「きんざ」「護王神社」があります。
今回時間がなく見れなかった「護王神社」と「きんざ」、残念ですが、また直島を訪れたい・・・と思っています。
訪れたい場所が出来て、楽しみになりました!
  

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アートをめぐる旅(2)・・・直島のベネッセハウス・ミュージアムへ

2018年07月16日 | 

  直島行きのフェリー乗り場(宇野港)

(つづき)
瀬戸内海にある「直島」へ行きたい!
なにやら現代アートを代表する作品が島中にちりばめられているらしい・・・。
個人で行くのは大変だから先ずはツアーで行った方が良いらしい。

だいぶ前から「直島」の現代アートに多少の関心はあったものの、半ばあきらめていたので「直島」について知っていることは上記が全てでした。
何も予備知識が無かったのがヨカッタのかもしれません。


  「南瓜」  草間弥生

7月4日の早朝にバスで倉敷を出発です。
夜中に物凄い雨が降ったそうですが、疲れていて爆睡。
朝には晴れ上がっていて「4日だけは晴れてほしい」という願いが届いたらしい!
この日は宇野港へ行き、そこからフェリーで観光バスごと直島・宮浦港へ渡り、次の順序で現代アートを観賞しました。
①ベネッセハウス・ミュージアム、②家プロジェクト ③宮浦港付近のアート作品

  
  「赤かぼちゃ」 草間弥生  宮浦港にて
フェリーが直島の宮浦港に近づくと、真っ先に目に入るアート作品でインパクトが凄いです。
「太陽の『赤い光』を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった」とご自身で語っています


  「赤かぼちゃ」の中がステキ!でした

観光バスのガイドさん(お名前が・・・思い出せずごめんなさい)が面白い方で
「ベネッセハウス・ミュージアムや家プロジェクトの見所などを簡単にご紹介しますが、私に「これは何?」「どうして?」などと決して聞かないでください。
私には「は~ん? ふ~ん? へぇ~?」の世界なので聞かれても困ります。
なんせアートなのでございますから。
どうぞご自身の「感性!」で作品を体感し楽しんでください」


   ベネッセハウス・ミュージアム

先ずはベネッセハウス・ミュージアムへ。
1992年にオープンし、直島で最初に出来たミュージアムで、建築家・安藤忠雄の作品でもある。
地形を利用し、ギャラリー部分はほとんどが地下に埋まっていますが、所々に瀬戸内海の雄大な景色が広がり、個々のアート作品の展示空間(見せ方)に興味を持ちました。
たしかに「は~ん? ふ~ん? へぇ~?」の世界なのですが、斬新なアイディアに満ちた心惹かれる作品も多く、バスガイドさんの見所の予備知識がしっかり役立ちます。
お気に入りの作品を揚げると・・・

「天秘」 安田侃
打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた四角い空間があり、天に開けている。
その空間に大きな平らな楕円形の大理石の彫刻が2つあり、作品「天秘」。

ガイドさんはまだ濡れているかもしれないけれど、是非その上で寝てみてくださいと・・・。
ちょうど人が居なくなったので、よじ登り凹みの上側に大の字に横たわり、天を見上げてみた。
大理石の丸みとひんやりした感触が心地好く、見上げると青空ならぬ薄鼠色の空。
夜だったら星が無数に瞬き、広大無辺の宇宙と秘かに交信を交わしているような気になるかもしれない。
目を閉じると、ウグイスの鳴き声が聞こえ、安らかな微睡に・・・。

「バンザイ・コーナー1996」 柳幸典
バンザイをしているウルトラマンの人形がびっしり並び、90度に張り合わせた鏡に映り、円を描いている作品。
鏡を使ったアイデァが素晴らしく、お茶事で応用できないかしら?
ウルトラマン人形の赤と銀の色調が華やかでシックな空間を生み出している。
とてもかわいらしい作品で、一番のお気に入りかも。



「雑草」 須田悦弘
「ベネッセハウス・ミュージアムは入口から地下のギャラリースペースへ下りるようになっていて、その途中の左側の壁に小さな草のようなものが生えているのを見逃さないでください。
草ではなく「雑草」という作品なのです」とバスガイドさんに伺っていたのですが、
何処にあるかわからず、案内の方に尋ねてやっとわかりました。
小さな小さな草がコンクリートの壁の上方の窪みにあり、鑑賞できてヨカッタ!
「雑草」は本物の草のように見えるのですが、木彫りの作品だそうです。

「瀬戸内海の流木の円」  リチャード・ロング
とても素朴で親しみやすさを感じます。
流木は直島で拾ったものだそうですが、いつ何処から流れてきた物でしょうか。
長い時間をかけて波に洗われた流木は一つ一つ個性的ですが、集められ、大きな円に再構築されるとアートになるんですね。
流木の中で船板のような板切れが何度も目に留まり・・・困りました。


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アートをめぐる旅(1)・・・倉敷・大原美術館へ

2018年07月15日 | 

   大原美術館本館

平成30年7月、台風7号に伴う豪雨は西日本の各地に未曾有の災害をもたらしました。
ニュースを見るたびに死者や行方不明者の数が増加していき、胸を痛めておりました。
被害にあわれた皆様に 謹んでお見舞いを申し上げます。
一日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。

山形・鈍翁茶会のあと7月3日~5日までアートをめぐる旅へ出かけたのですが、西日本豪雨の被害地が近かったこともあり、ブログになかなか書けずにいました。


 羽田から岡山へ、徳島から羽田へ、往復空の便でした


 白い雲の向こうの青暗い帯状の雲が台風7号の雲です

右膝がようやく回復してきたので、今のうちに行きたいところへ行ってみたいと、「大原美術館・大塚国際美術館・小豆島・直島 芸術のせとうち4つのアートめぐり3日間」の旅(日本ツーリズム主催)へツレと参加しました。

7月3日、折しも日本海を北上する台風7号に向かうように羽田から岡山桃太郎空港へ飛び、バスで倉敷へ。
大原美術館や倉敷民芸館などを自由見学し、倉敷アイビースクエア泊でした。




 ムーア作「横たわる母と子」 分館にて

20代に2回ほど大原美術館を訪ねたことがありますが、当時本館だけだった大原美術館はアメーバ―の様に分館、工芸館、東洋館と増殖し、コレクションも充実していました。


工芸館
(元は大原家の米蔵で、染色家芹沢銈介によって展示室として改装されたそうです)

ウン十年ぶりに絵の前に立つと、エルグレコの「受胎告知」に出合った時の感動が蘇ったり、ルオーの「呪われた王」や「道化師」を見て、その当時と好みが同じなのを確認したり、評価が違ったり・・・新たな素晴らしい作品に出合ったり、3時間ほど素敵な時間を過ごしました。
音声ガイドの解説がとても好く、鑑賞ポイントや作者の作品への思いを知るしるべとなり、新たな作品の発見にもつながりました。
特に次の作品が心に残っています。




クロード・モネ作「睡蓮」
今回音声ガイドを聞いて、一番心を捉えたのがこの作品でした。何度も解説を聞きながら「睡蓮」を観賞しました。
 睡蓮の咲く池の様子を何枚も描いている作品の一枚ですが、朝、昼、夕と刻々と変化する光りの微妙な移ろいを描きだし、さらに池に映り込んでいる周辺の状況やその変化をも広く巧みに描き出している・・・。

なぜかお茶事を思いました。茶室が池で、睡蓮はお客さまでしょうか?
床に御軸や花を生け、その日の亭主(作者)の心持や茶室(池)の外の季節や景色を写し出し、伝えます。
限られた空間ですが、障子が刻々と変化する光の移ろいを微妙にとらえ、障子の色を変化させています。また、障子に映る影絵の世界はその時でなくては味わえぬ最高のご馳走です。
朝、昼、夕の光の移ろいだけでなく、夜の灯りが生み出す千変万化の空間も素敵です。
・・・ここまで妄想(?)すると、「光」や周辺の景色や季節をいかにシンプルかつ趣深く伝えるか、お茶事で心掛けるテーマが見えてきたように思いました。


(この睡蓮はパリ近郊のモネの家から贈られた株です)

エル・グレコ作「受胎告知」
ウン十年前、この絵の前で釘付になり、しばし対峙しました。
マリアの表情が気になりました。喜びよりむしろ、驚愕、当惑、悲愴のようなものを感じたからです。
再会して、またまた崇高な「受胎告知」に魅せられましたが、今回はマリアより天使ガブリエルの描き方や位置関係(構図)に興味を持ちました。
「受胎告知」は多くの画家によって描かれていますが、マリア、天使ガブリエル、鳩の三点セットがお約束のようです(解説による)。

フレデリック作「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」
今回新たに出合った作品です。
音声ガイドがなかったら見逃すか、または作品の内容を理解できずに見過ごしてしまったことでしょう。
人々が死に絶えているシーンから始まり、神の愛によって人々が再び生と希望を取り戻すシーンが一大スぺクタルのように描かれていて圧巻です。
厳しいテーマですが、明るい色調と柔らかなタッチの画風で救われる思いがします。
第一次世界大戦で亡くなったフレデリックの愛娘が絵の中に描かれているそうです。


 夜の散策の途中で雨がポツリ・・・


  アートをめぐる旅(2)・・・直島のベネッセハウス・ミュージアムへつづく