暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

第1回花友会を終えて

2022年05月30日 | 暁庵の裏千家茶道教室

(お軸は「水上青々翠(すいじょうせいせいたるみどり)」(泰道師御筆)、

 花は青紅葉、鉄線、稚児百合、花入は手付き籠、棚は桑小卓です) 

 

5月29日(日)は第1回花友会(はなゆうかい)でした。

五葉会(2015年5月発足の七事式や花月の勉強会)がコロナウイルス禍の2年間は休会になったり、花ゆう会(2018年5月発足の七事式や花月を中心とした勉強会)は細々と断続的に続けていましたが、なかなか修練がはかどりません。(五葉会と花ゆう会は令和4年4月に終了しました)

そんな或る日、「養之如春」という座右の銘を思い出したのです。

 養之如春(これを養う春の如し)
   
   「何事であれ、もの事を為すには、春の陽光が植物を育てるように為すべきだ」
   という意味です。
   「これ」には何を当てはめてもいいそうです。
   子供を育てることも、愛情を育てることも、仕事を完成することも、
   病気を癒すことも、あせらず、時間をかけてゆっくりと、
   春の光が植物を育てるように・・・その養い方に学ぶべきだと。


「そうだわ!コロナウイルスに負けてもいられないし、口実にして甘えてもいられないわ。

 もう一度初心に戻って七事式の勉強会を社中の方と新しく始めてみよう」と思いました。

七事式の初心者もいますが、スラスラできなくっても、つまづきながらでも良いのです。

あせらず時間をかけてゆっくりと、されど続けることで確実に一歩進みます。

薄いベールがはがれるように前にはできなかったことが出来るようなり、わからないことが分かるようになっていく喜びは何物にも代えがたいと思うのです。

もう一つ、皆で集い、心を合わせて七事式や花月を習得していくことはとても楽しい!ことです。

そんな喜びを実感するには「とにかくやるっきゃない」し、科目や教え方などを工夫しながら楽しく続けることを心がけたい・・・と考えています。

 

     (皆で心を合わせて・・・修練しています)

 

前置きが長くなりましたが、花友会のメンバーはN氏、T氏、Iさん、Sさん、Aさんの5人です。

第1回の科目は、炭付花月之式、廻り花之式、平花月之式(2回)でした。

初回なので七事式の基本の科目(平花月、濃茶月花月、炭付花月)のうち平花月と炭付花月とし、廻り花之式は花が多い5月に急遽変更です。皆で花を愛で、花に元気をもらえたら・・・と。

桑小卓の天板に香炉、中板に花入を置き、花入は手付き籠です。

生けるのが難しい花入ですが、お持ちよりの花を個性を生かしてステキに生けてくださいました。

毎回、記録係としてT氏とAさんに記録をつけてもらいます。廻り花之式を第1回花友会の記念に記します。

 

  廻り花之式

    芍薬  稚児百合  鉄線        有紀枝

    矢筈薄  紫陽花            宗等

    梅花空木  山紫陽花          淳子

    金糸梅  鉄線             宗成

    青紅葉  鉄線  稚児百合     主 洋子 

 

 

  (正客から「どうぞお水を・・・」の声がかかりました)

 

(平花月を2回続けて修練しました・・・皆、薄茶を飲みすぎたみたいです)

 

  

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第35回あさひ茶花道展の茶会へ

2022年05月24日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

 

5月21日(土)に「第35回あさひ茶花道展」茶会へ出かけました。

あさひ茶花道協会の主催(横浜市旭区他が共催)で、お茶会(薄茶2席)、生け花展、区民が楽しめる体験花席があり、今年で35回を迎えるそうです。

この日は暁庵社中のN氏こと中野宗等氏が和室の薄茶席を担当し、もう一つ薄茶の立礼席(席主は石州流・村田玲月さん)がありました。N氏は2年前に薄茶席を持つ予定でしたが、コロナウイルス禍で2回も流会したので、待ちに待った茶会でした。

N氏さま、この度は「第35回あさひ茶花道展・茶会」を無事迎えられ、誠におめでとうございます!

 

 

集合の9時頃に急に一雨あり、心配しながら空を眺め、10時40分頃になると「今頃、最初のお席が終わった頃かしら?」と、家にいてもそわそわと落ち着きません。

茶友Wさまと待ち合わせ、いけばな展を拝見してから14時15分の席へ入りました。

和室は八畳(6名)、それをL字に囲むように椅子席(10名)があり、茶席スペースは広いのですがコロナウイルス対策で入場者数の制限がされていたようです。1席16名、全部で10席です。

茶友Wさまに正客をお願いできたら・・と思っていましたが、旭区・地域振興課の方々と同席になり、地域振興課の男性が正客を務めてくださり、これはこれで良かった・・と思いました。

壁床があり、古筆でしょうか? 優雅な百人一首切が掛けられていて、後ほど後見のIさんが分かり易く丁寧に説明してくださいました。和歌は三首、筆は二条中納言為相(冷泉為相)です。

百人一首切の一首を紹介すると

  来ぬひとをまつほの浦の夕なぎに やくやもしほの身もこがれつつ 

床の百人一首切のお軸、漆塗りの水次にいけられた菖蒲、そして雅な香合が茶席の雰囲気を優雅なものにし、颯々の5月を表わしていて、秘かに拍手を送りました。

 

 

点前座へ目を転じると、長板の二つ置きです。唐銅の平丸風炉に筒姥口糸目釜がかかり、堂々と力強い鍋島青磁の水指が置かれていました。

水指の深い青磁色と渦のような縞模様が水を連想させ、こちらも爽やかさを感じ、お点前が全員男性なので点前座は力強いものにしました・・・という意図にぴったりです。

社中Y氏の「薄茶一服差し上げます」の挨拶でお席が始まりました。

とても落ち着いてお点前をしていらして、所作も間合いも袴捌きも申し分ありません。何も心配せずにお茶席を楽しむことができ、嬉しいです。

間もなく後見Iさんが席へ入られ、正客様とお客様にご挨拶があり、お道具の説明に興味深く耳を傾けました。

やがてAさんとT氏がお菓子と薄茶を運んで来てくださって、喉が渇いていたのでたっぷりが嬉しく、お水屋の方々に感謝しながら美味しく頂戴しました。薄茶は「舞の白」(星野園詰)、菓子は「破れ饅頭」(虎彦製)です。

 

 

頂いた茶碗が面白い絵柄(暁庵のは若い小姓と鷹の図)で、一つ一つ物語のある大津絵だそうです。

「清風也」という鵬雲斎大宗匠の書が書かれた主茶碗(三輪休雪造)と半泥子の「水面」の替茶碗の趣きがそれぞれ素晴らしく、お客さまもきっと満足されたことでしょう。

茶杓の銘「忙中閑」(井口海仙作)が皆さまのお心に叶ったようで、しきりと頷いていたのが我が意を得たように嬉しく心に残っています。

 

 

スタッフの皆さまの茶会の随所での見事な働きぶりを垣間見て感無量でした。 

ご苦労もお疲れも大変だったと思いますが、お稽古では得られない素晴らしい経験をされたと思うのです・・・。

そして、お客さまの前でお点前がしっかり美しく出来た、お客さまに喜んでもらえた、皆で力を合わせてやり遂げたという喜びは何物にも代えがたいものだと・・・。

とはいえ、お疲れいかばかりかと思い、一日も早いご回復を祈っております。

 

 

 


2022年皐月の教室だより・・・桑小卓

2022年05月22日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

 

5月21日(土)に茶会があったので4月後半から風炉に切り換え、風炉の長板の稽古を始めました。

5月に入り、風炉の基本点前に戻り、薄茶と濃茶の平点前や初炭をしっかり見させていただきました。

久しぶりに「茶道点前の三要素」を思い出しながら、柄杓の扱い、蓋置の扱い、茶碗の正面、茶碗を取る手などが気になり、何回も細かく注意が飛びました。

 

     

稽古も2回目に入り、桑小卓(くわこじょく)を出してみました。

卓として天板に香炉を置き中板に花を生けて、茶事に使ったこともある棚ですが、お稽古に使うのは本当に久しぶりです。

桑子卓は仙叟好みの二重棚です。本来は天板と中板には穴がたくさん空けられ、矢が点てられる様になっていた矢立をヒントに造られたもので、矢筈棚(やはずだな)とも呼ばれています。

木地は桑材、天板と中板の間が長く、四本柱が細く瀟洒なので、細目の高さのある水指がお似合いです。

中板と地板の間が短く外側に少し反った脚(聖脚と言う)があり、平建水を用いるのがこの棚の特徴で、そこにしまうようになっています。

 

        (桑子卓で薄茶点前中です)

 

柄杓の飾り方は勝手付きの2本柱へ掛けるのでバランスが難しく、水次の時に一番下へ蓋置を仮置きし、最後に平建水の中へ入れるなど、いろいろ桑小卓の扱いがあって、初心者には難しい棚です。

いざ使ってみると、その扱いが新鮮で興味深かったらしく、皆さま、熱心にお稽古に励んでいました。

桑小卓を作った裏千家4代仙叟はこの棚を表千家4代江岑宗左に贈ったので、表千家で用いられるようになり、裏千家では(遠慮して?)永く用いられなかったそうです。

玄々斎が端午の節句に用い、以来裏千家でも使われるようなったと伝えられています。

5月になると5月人形と共に出したくなる桑子卓です。   

 

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風薫る昔ばなしの茶事へ

2022年05月20日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

   昨年、櫻井ファームの薔薇園で購入した花が満開です(名前が・・?)

 

GW最後の令和4年5月8日(日)に茶友TIHOさまの正午の茶事へお招きいただきました。

TIHOさまは昨年5月に開催された「薔薇の茶会」「再会の薔薇」薄茶席(小堀遠州流)の席主さんです。

お声掛けを頂きながら、コロナウイルス禍や体調不良などでお伺いできず、4年ぶりの茶事へいそいそとお伺いしました。

今回は、昨年11月に口切の茶事をされた暁庵社中のM氏をお招きくださって、正客はM氏、次客が暁庵、詰はIさまで、嬉しいお相伴にあずかりました。

「風薫る昔ばなしの茶事」と名付けてお礼の手紙(抜粋)を忘備録として記します。(茶事の写真が無いので櫻井ファームの薔薇園などの写真を貼り付けました)

 

 

 TIHOさまへ

立夏が過ぎ 若葉が色濃く感じられる季節となりました。

一昨日は正客M氏、詰Iさまと共に正午の茶事へお招き頂きまして厚く御礼申し上げます。

4年ぶりでしょうか? TIHOさまのお茶事へお伺いすることが出来、ご趣向の妙とそれらを表現するお道具の数々に魅せられました。まさに「茶楽知己喫」(うろ覚えで間違っているかも??)を実感しながら楽しい時を過ごさせて頂きました。

寄付でご亭主さまから小堀遠州流の茶事について説明を受けたので、私ども客3人は少し安堵しました。

寄付に掛けられた画は「浦島太郎」の乙姫さま、待合の優雅な雉の絵と「桃太郎」一行の可愛らしい土人形の置物に続いていき、謎解きのような不思議な昔話の世界へ導かれていきました。

羽箒を手にしたご亭主の迎え付けで、蹲を使い、席入りしました。

裏千家流とは全く異なる小堀遠州流のお点前がとても新鮮で、先ずは炭手前に目が釘付けになりました。風鈴を連想させる古釜に再会したのも、古釜が江戸初期の伊予松山あたりの産と伺ったのも嬉しく、炭の大きさや形、置き方が異なる風炉中を特別に拝見させて頂き、興味津々でした。

 

銅鑼の音で再び蹲を使い、後入りすると、床にはご亭主が丹精された花が黒い南蛮を思わせる花入にすっきりと生けられていました。花は伊勢撫子と庭藤、その日は藤が描かれた塩瀬の帯を締めていたので、庭藤が殊更嬉しく映ります。

萩焼の井戸茶碗(波多野善蔵作)と繊細な陰刻のある青磁茶碗で、心を込めて点ててくださった濃茶と薄茶が爽やかにのどを潤していき、美味しゅうございました。 

昔ばなしの猿蟹合戦はすっかり忘れていたので ご亭主さまが語ってくださったお話は幼き日の祖母の昔話を懐かしく思い出し、物語に因むお道具やお話が興味深く、一つ一つ謎解きがされるような楽しいお席となりました。

見事な螺鈿が施された蟹香合(蓋物?)と三猿の蓋置が書院に飾られ、牛が描かれた栗の香合(・・だったと思う)が面白く、栗が何やら他のものに見えました・・・。臼と蜂も登場して物語もお茶事も楽しく大団円を迎えましたね。

 

 

形よく堂々とした古瀬戸茶入やご自作の白と黒の対杓が素晴らしく、いまだに頭をよぎって行きます。

TIHOさまの茶の湯の世界に心地よく浸っていましたが、飛行機の音が早やお別れの時間になったことを知らせてくれました。

音と言えば、蹲の水琴窟が奏でる水音が忘れられません。後座の静まった茶室に水音の響きがいつまでも耳に残り、今も聴こえるような・・・。

一人亭主でお料理からすべてお一人で見事にやり遂げられて、心から敬服し感謝申し上げます。M氏とIさまもたくさんの感動と刺激を受けられて、きっと今後のお二人の茶事に活かされることでしょう。

本当にありがとうございました!

お疲れいかばかりかと存じますが、一日も早いご回復を祈念しております。 かしこ  暁庵より

 

 


風薫るみどりの茶事へ

2022年05月16日 | 社中の茶事(2018年~)

        (大山蓮華が咲き出しました)

 

令和4年5月4日(みどりの日)に初風炉の茶事へお招きいただきました。

ご亭主は暁庵社中のT氏、不肖暁庵が正客、相客はT氏の茶友S氏でした。

T氏から小間の茶室があることを伺ったので、持てる環境を生かして家庭茶事をぜひ・・と勧めました。

待合の部屋がないとのことで、「茶花を育てている屋上庭園を待合にしてみてはどうかしら?」と提案してみると、すぐに「その方向で考えてみます」というご返事があり、お招きを楽しみに待っていました。

それで、この度のお招きがとても嬉しく、「風薫るみどりの茶事」と名付けてお礼の手紙(抜粋)を忘備録として記します。(茶事の写真が無いのでみどりをイメージする写真を貼り付けました)

 

 

  Tさまへ

薫るみどりの日に初風炉の茶事にお招きいただき、誠にありがとうございました!

数日経ちましたが、茶事のあれこれが浮かんでは消え、消えては浮かび、しばらく余韻を楽しむことにします・・・。

ワクワクしながら初めて東京のご自宅を訪れましたが、茶室(1階)、リビングの待合(2階)、屋上の露地、蹲、腰掛待合という変化にとんだ茶事空間が新鮮で心に残りました。

1ヶ月前のメールに「創意工夫していますが、時間が無くって・・・」とありましたが、障子や壁紙の張替え、屋上のタイル取り替えなどをご自身でされたと伺い、大いに納得した次第です。

ご心配頂いた(実は私も内心心配だった・・・)屋上への階段は両手で身体をカバーでき、快適に上り下りすることができました。

屋上の腰掛待合ではT氏の愛情が感じられる茶花や草木を鑑賞しながら、爽やかな風が心地よく吹き渡り、屋上庭園をお勧めしてヨカッタと思いました。相客S氏が「Tさん、凄い! 丹精の茶花が素晴らしい!」を連発していたのも大いに頷けます。

 

      

二畳中板の落ち着いた茶室の床に掛けられた「無 有花有月有楼台」のお軸は、宋代の詩人・蘇東坡の漢詩に由来していると伺い、「何もない中でも花や月や酒を酌み交わす楼台があれば、これに勝るものはない」・・・・ご亭主様の茶事への思いが伝わってまいります。

何もないと言いながら、「無」の中にこれまでの茶の湯の遍歴がしのばれるお道具の一つ一つに魅せられ、さりげない中にもお好みのセンスがステキでした。

初風炉の炭手前を拝見し、阿弥陀堂釜や繊細なカンに心惹かれ、古材香合に廬舎那仏を拝みました。小間の座掃きが新鮮で軽やかで、何度も拝見したい・・・と。

 

 

銅鑼の音に導かれて後入りすると、壁床の鉈籠に生けられた姫射干、立波草、京鹿子が目に飛び込んできました。はっと息を呑むほど清々しく爽やかで、初風炉の妙を味わいました。

心を込めて練られたまろやかな濃茶(雲門の昔、一保堂)を大好きな一入の黒茶碗で頂戴し、地元・菓子店の柔らかな金団「岩根躑躅」、そして粽や都鳥の干菓子に京都を懐かしく思い出しました。

    名にし負はばいざ(こと)問はむ都鳥

        わが思ふ人はありやなしやと    在原業平

伊羅保や絵唐津の茶碗、青磁三島の菓子鉢などを印象深く手に取らせていただきました。

ご自作の繊細な茶杓にふと戦国武将に想いを馳せ、伊勢物語の和歌からの命名も嬉しく、いろいろな連想やお話が楽しく広がって・・・これぞ茶事の醍醐味でしょうか。

  さ月の(つごもり)に、ふじの山の雪しろくふれるを見て、よみ侍りける

    時しらぬ山は富士の嶺いつとてか

        かのこまだらに雪の降るらむ    在原業平

 

 (カキツバタならぬアヤメを生けました)

相客のS氏はステキな方ですね。たくさんの感動を素直に体現して下さり、座が盛り上がり楽しゅうございました。

いろいろなことを良くご存じで、さりげなく拙い正客をサポートしてくださり、心から感謝しています。またお会いできれば・・・と思います。

ご亭主さまにはお疲れいかがか・・と思いますが、きっと「自分の茶事」をやり遂げた達成感でお疲れも吹っ飛ぶことでしょう。

本当にありがとうございました・・・。  

                   かしこ  暁庵より  (やっと