暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2018年「炉開きの会」・・第1部

2018年11月30日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 公園の欅がだいぶ色づき、葉を落し始めました


2018年11月7日は暁庵の茶道教室の「炉開きの会」でした。

毎年教室の炉開きの内容は変わりますが、10月28日のN氏主催「八ヶ岳山荘の茶事」の後でもあり、第2部にサプライズ!(?)が控えていることもあって、今年は全員稽古で炉開きをお祝いすることにしました。
急用などで残念ながらお二人が欠席されましたが、折しもスウェーデンから帰国中のオーネルさん山本由香さんが特別参加してくださり、賑やかな「炉開きの会」となりました。

12時40分集合、皆さま、素敵な着物姿でいらしてくださり、「炉開きの会」らしいお目出度い雰囲気が漂います。
(暁庵は勇気を出して白梅色(薄ピンク)の無地紋付に緑の森の帯を締めました・・・)



床には
「紅葉(画)舞秋風」(こうよう しゅうふうにまう)
かつて口切の所作などを御指導頂いたN先生から贈られた御軸を掛けました。
すがれた紫蘭、南天、ツワブキを天平古瓦(写し)花入に入れ、上座に茶壺を網袋に入れて荘りました。

詰役のUさんが打つ板木の音で、最初の亭主役のKさんが白湯をお出ししました。
今回は蹲踞は使わず、茶道口から八畳の広間へ席入りして頂きました。



「炉開きの会」のご挨拶をし、すぐに「壺荘」担当のKさんに亭主交代です。
正客Fさんから茶壺の拝見が掛かり、Kさんが床前に進みます。
茶壺を持ち、定座で網袋をはずし、拝見に出しました。
茶壺は丹波焼茶壺です。
小ぶりですが引き締まった形、黒釉薬のなだれが微妙な景色を作りだし見ごたえがあります。市野信水造、口覆いは笹蔓金襴、裏地は紫の塩瀬です。
「形だけでなく茶壺の拝見を心から楽しんでくださったかしら? 来年はKさんにぜひ口切までしてもらいたい」と思いながら・・・Kさんの落ち着いた所作を見詰めました。



初炭手前はFさん、正客はN氏です。
炉縁は黒輪島塗、大きな炉釜は霰唐松真形、和田美之助造です。
炭斗は瓢(ふくべ)、茶友Wさまがユウガオから育てたという手づくりの贈り物で、私の宝物です。
風炉から炉に変わって一番感じる炭の大きいこと! 灰器(備前焼、伊部(いんべ)焼とも)にたっぷり盛られた湿し灰が目を惹きます。
他にも羽根、火箸、香合、香(練香)、灰匙などが炉用に変わります。

炉開きの初炭手前はいつも新鮮に感じ、皆で炉を囲む一体感がなんとも言えません。
香合はFさんのお持ち出しの「織部の弾き」、香は坐忘斎家元好みの「松涛」です。
(・・・これでふくべ、いんべ、おりべの三べが揃いましたが、炉開きに三べを揃えることの根拠はないそうです)
茶事のように拝見の道具を取りに出たときに、炉の前に座り、帛紗を捌いて黒真塗の炉縁をカギに清め、もう一度帛紗を捌いて釜の蓋を清めてから切ってもらいました。

初炭が終わり、濃茶の前に小休止。
待合の椅子席へ戻って頂き、餅入りのぜんざいをお出ししました。




次は「炉開き」恒例の台天目です。
四畳半の設えとし、亭主Uさん、客はKTさん(正客)、Fさん、Kさんです。
四畳半の周りに椅子席を設け、見学の方はそちらで見て頂きました。
火相、湯相よく、Uさんが天目茶碗で3人分の美味しい濃茶を練ってくださいました。
皆さま、濃茶を練るのが上手になって・・・とても嬉しいです。
濃茶は「松花の昔」(小山園詰)です。
茶入は瀬戸「河名草」(写)、仕覆は大黒屋金襴、茶杓は象牙(利休形)です。



次いで濃茶、Tさんが長緒点前で5人分の濃茶を点てる予定でしたが急用が入り、急遽KTさんに濃茶平点前をお願いしました。
客はオーネルさん(正客)、山本由香さん、Uさん、暁庵、N氏の5名、茶碗は大ぶりの李朝・井戸茶碗です。
暁庵も4客に入り、香り佳くまろやかな濃茶を堪能しました。
添えられた素敵な古帛紗が・・・う~ん!思い出せず残念です。
茶入は織部肩衝、仕覆は十二段花兎緞子、茶杓は「紅葉狩」(紫野・寛道)です。

最後は員茶之式、全員で薄茶を点てて全員で薄茶を頂きます。
員茶之式では十種香札を使います。
十種香札は初めてというオーネルさんと山本由香さんに香札(客と一)8種を選んで準備してもらいました。


  干菓子の「栗ひろい」と「砧」(長久堂)

亭主N氏、札元KTさん、目付Fさん、客はUさん(正客)、Kさん、山本由香さん、オーネルさん(詰)、暁庵でした。
京都土産の干菓子(「砧」(長久堂)と「栗ひろい」)を用意したので、三役(亭主、札元、目付)にも賞味して頂きました。
全員が茶を点てるので緊張感もあり、全員が干菓子を食べ薄茶を賞味し、員茶之式ならではの和やかで楽しい時間が過ぎていきました。

第2部は、サプライズ!の○○○ーです。(つづく)

      2018年「炉開きの会」・・・第2部へつづく


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ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その2

2018年11月27日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)




(つづき)
菓子が運ばれ、濃茶点前が始まりました。
菓子器は金継をした白磁、こちらも李朝のもので祭器とか。
主菓子は「愛信堂」の「栗きんとん」・・・超!絶品でした。
(忘れないように住所も調べました。京都市上京区元誓願寺通り堀川西入ル南門前町426)必ずまたご縁がありますように・・・。

薄暗い茶室ですが、風炉先窓からの明かりがご亭主をほんのりと照らしだしていました。
茜色の無地の着物がとてもお似合いで、自主稽古を思い出しながらしっとりとしたお点前を嬉しく見詰めます。

席入の時から気になっていた茶入の仕覆が脱がされ、染付の茶入が現われました。
帛紗を捌き、茶入、続いて茶杓が清められ、美味しい菓子の後なので濃茶への期待が高まります。
茶碗に濃茶が掬いだされるとすぐに馥郁とした香りが満ちてきました。
一口含むと思わず感激して
「なんて香り佳くまろやかな味の濃茶なのでしょう! お茶銘は?」
「「天授」といい、丸久小山園の詰でございます。お口に合ったようで嬉しいです」
(何でも全国茶品評会で受賞を重ねている抹茶で、3倍以上のお値段らしい・・・)
相客のKMさんとTYさんも濃茶「天授」の滋味を堪能したようでヨカッタ!です。



侘びた趣き深い茶碗は高麗三島、ご亭主が三島が大好きとのことで粉青沙器(ふんせいさき)やお会いしたことはありませんがタライ(盥?)ラマさまのお話が伺えて楽しゅうございました。
添えられた古帛紗は、青の織地に格子縞のグラーデーションが繊細かつモダンで、高麗三島茶碗にぴったりです。(志村ふくみさんのお弟子さんの作とか、お名前が・・・)

つづき薄茶になりました。
優雅な蒔絵のある三段引出の干菓子器が出され、一段ずつ違うお菓子が入っていて開けるたびにワクワクしました。

ご亭主好みの茶碗が3つ出され、暁庵は二徳三島(利休所持、三井記念美術館蔵)を思わせる三島茶碗で薄茶を頂きました。
あとの2つは、歪みのある筒形の古染付と、噴出口(こぶ)が2つあるので「吹上」と命名された茶碗です。どちらも個性的で心惹かれる茶碗でした。
最近、歪み、こぶ、虫食い、金継などの綻びのある茶碗がいとおしい・・・と思うようになりました。

拝見に出された茶入、茶杓、仕覆、薄茶器について書いておきたいと思います。
茶入は、小さな湯呑を転用したようなかわいらしい古染付、象牙蓋がついています。
仕覆は、赤い花が染められた印度更紗、新しく作られたそうで、古い仕覆も見せてくださいました。萌黄色の地色に段々模様があり、こちらも上品でステキです。


  脇山さとみさんの作品だと思う・・・玄関の間にて

薄茶器を手に取って、やっとやっと跡見の茶会テーマに確信が持てました。(陰の声・・・遅いぞ!) 
薄茶器は汐汲棗(圓能斎好み)で宗悦作、黒塗の金輪寺で胴に波文があり、蓋に「枩風(まつかぜ)」の文字がありました。
能「松風」が茶会のテーマだったのです。
時雨を思わせる茶杓は、表千家12代・惺斎作で銘「村雨」でした。
この茶杓に出会って、茶能「松風」がご亭主の中で完成したそうです。



最後にあの黄茶色の四方水指を拝見に出してくださいました。
良寛さまのような像が蓋の摘みになっていて穴が開いているではありませんか。。
穴が開いているので「風通し」と名づけられ、作者はご贔屓の女性陶芸家・脇山さとみさんでした。
底を見ると、緑の松と握手しているような雲が描かれていて、能「松風」に登場する海辺の松でしょうか。

Sさまらしい能「松風」に因む愉しい茶会で御茶を頂き、感無量でございます。 
お誘いしたKMさんとTYさんもきっといろいろな刺激を受け、楽しまれたことでしょう。
ありがとうございました!

ご亭主のご趣向を理解するのが遅い正客でしたが、奇しくもこの日の暁庵は大好きな「業平さま」が描かれている帯を締めていました・・・。
松風・村雨の悲恋の相手の「行平さま」ではありませんが、弟の「業平さま」が一緒にSさまの茶会を愉しんだと思い、どうぞご勘弁くださいまし。
近々またの御目文字がありますように心から願っております。 


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ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その1

2018年11月26日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)



11月4日、京都在住の折、共に自主稽古に励んだ茶友Sさまの茶会にお招き頂きました。
(だいぶ時が経ってしまい記憶が朧ですが、書き留めたく・・・がんばります )

「急なことですが、薄茶一服またはランチを御一緒にいかがですか?」
とメールを差し上げたところ快諾してくださって、京都在住のKMさんとTYさんをお誘いして伺わせて頂きました。
KMさんは大学時代の同級生の奥様、京都滞在の折にはしばしばこちらにお世話になっています。
TYさんは京都住まいの折、京都で初めてお友達になってくださった方です。

Sさまのメールによると1週間前に茶事を催すので、その跡見風で濃茶薄茶をさしあげたいとのことでした。
跡見の茶事は茶事七式の一つですが、未だ経験した事がありません。
どのようなご趣向の茶会かしら?・・・とても楽しみでした。



12時頃に玄関を開けると、侘びた大籠に生けられたススキが秋の野を思わせます。
我が家の威勢の良いススキに比べると、秋風になびく風情が京風のはんなりでした。
垂涎の李朝箪笥(バンダチ)が置かれた玄関の間で身支度を整え、懐かしい奥の待合へ。
京都を離れるとき、送別の茶会を催してくださったSさま、はや4年近くの歳月が過ぎてしまいました・・・。

待合の床に御軸があり、水面に映っている月の画のようです。
波が描かれているので海なのか湖なのか・・・月のさやけさを感じながら拝見しました。
それに、やんごとなき方々は空ではなく水面に映る月を愛でたとか・・・そんなお話も思い出します。
待合でご挨拶をして白湯(菊の花びら入り)を頂き、かわいらしい瓢弁当と吸い物をご亭主と一緒に頂戴しました。
私たちはのんびり味わって頂いたのですが、ご亭主の食べるのが早いこと・・・きっとお支度が気になっていたのでしょうね。
「お食事が済みましたら、どうぞ腰掛待合の方でお待ちください」



ここからが本格的な茶会となります。
待合の広間から庭へ出ると、腰掛待合があり、そこから外露地、枝折戸の向こうに蹲踞と内露地があり、その向こうに三畳上げ台目のステキな茶室があります。

腰掛待合で3人が待っていると、伽藍石のある露地の苔が露に濡れて青々と目に入ります。
折しもツワブキが満開でした。
腰掛待合に置かれた行李蓋の煙草盆、古伊万里の火入の灰形を拝見していると、ご亭主が現われ蹲踞の水を改めています。
枝折戸が開けられ、無言の挨拶を交わしました。

蹲踞で心身を清め、席入りしました。
床を拝見すると、淡々斎の穏やかな御筆で
「秋風一声雁」

床柱に籠花入が掛けられ、時候の花が・・う~ん?・・・思い出したら書きますね。
(追加・・・ススキ、茶の花、もう一つが・・・)
あとで籠花入は李朝の民具と伺いましたが、とてもステキでご亭主の李朝好みが窺えます。
炭手前がないので、「冠」香合(鵬雲斎お好み)が荘られていました。
(う~ん・・・水面に映る月、冠・・・光源氏または源氏物語のテーマかしら? それともお能のなにか?)



点前座には陶器の風炉に筒釜が掛けられていました。
陶器の風炉に見覚えが・・・韓国の陶芸家・全日根(故人)造の白磁の大ぶりな鉢です。
2014年葵祭の日、「川口美術」の片庇(かたひさし)の茶席で薄茶を点ててくださったご亭主を懐かしく思い出し、実はあの時から心惹かれる全日根さんの大鉢でした。

筋筒釜は大西浄林作とか。
大西浄林は大西家(江戸時代初期から京都・三条釜座において釜作を続ける釜師の家系、千家十職の一家)の初代です。
筋の入った筒釜はたっぷりとして力強く、古釜の魅力と存在感が溢れていました。
その横にこれまた個性的な四方水指、あとでゆっくり伺うことにしましょう。(つづく)


      ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その2へつづく


東寺の畔・炉開きの茶事へ・・・その2

2018年11月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

    仁和寺の紅葉をパチリ (2018年11月5日撮影)

(つづき)
懐石の後に主菓子を頂き、待合へ中立しました。
主菓子は手づくり、下から水色、緑、ピンク色に染まる竿もので、銘「竜田川」・・・頂戴するのが惜しいような風情でしたが、しっかり頂きました。

銅鑼が打たれ、後座へ席入りすると、床の御軸「壽」は炉開きの花に変わっていました。
掛け花入に紅色の嵯峨菊とツワブキが清々しくいけられています。
飴色と黒が混じりあう景色の花入は醤油壺、膳所焼とのことでした。



点前座に廻ると素敵な棚があり、初めて見る表千家流の旅卓(たびじょく)です。
中棚に優美な赤絵の小壺、下段に灰青色の水指、「あらっ!大好きな虫明焼かしら?」と眺めていると、唐津焼とのことでした。
白い象嵌の2匹の鶴が前向きと、裏に後向きで居るのも炉開きにぴったりです。


  旅卓・・・水指と薄器の取り合わせがステキ!です

火相も湯相も好く、いよいよ濃茶点前がはじまりました。

 「(前略)・・・茶事でお迎えするのは5年ぶりでしょうか
  懐かしく思い出しております
  相も変わりませず進歩しておりませんが
  心を込めて御茶一服差し上げます・・・(後略)」


頭の片隅で頂いたお手紙を思い出しながら、お点前を見詰めます。この緊張感ある時間が大好きです。
仕覆を脱がし、袱紗を捌き、茶入や茶杓が清められていくと、お点前するご亭主も見詰める客も共に清浄無垢な世界へ浄化されるような心地がします。

Yさまが心を込めて練ってくださった濃茶、茶碗から匂い立つ豊饒な香りを味わいながら口に含むと、なんとまろやかな濃茶なんだろう!
口の中に甘みと旨味と僅かな苦みが広がっていきました。
最近は薄めの濃茶に慣れ親しんでいたけれど、しっかりと濃い、濃茶らしい濃茶を久しぶりに堪能した気がします。
炉開きの時季にのみ特別頒布の抹茶、銘「無上」(柳桜園詰)をご用意いただいたそうで、恐縮でした。

茶碗は懐かしい高麗呉器茶碗、添えられた古帛紗がう~ん?・・・思い出せません。
呉須染付の茶入にぴったりの緑地着物裂の仕覆、
大徳寺形の貝先、時雨を思わせる茶杓は、大徳寺高桐院住持であった上田義山の銘「松風」でした。



濃茶が終わり、後炭です。
炉の炭の残り具合で、いつのまにか時が過ぎてしまったのを知り、
手際よく胴炭を寄せ、大きな輪胴から炭を置いていくYさま、頼もしくもあり日頃の修練の様子がうかがえました。

煙草盆、干菓子が運ばれ、薄茶になりました。
干菓子も全部手づくり、果物3種(栗、イチジク、葡萄)を煮たり、コンポートして乾燥したり、琥珀糖に漬けたりされたそうで、個性的でオシャレな干菓子でした。

時代のある茶箱が運び出され、茶箱・月点前で薄茶を頂きました。
炉の茶箱点前は初めてですが、何やら風流な炉開きとなりました。
それもそのはず、ヘギ目の茶箱の蓋裏に
  月雪花・・や
   三乃友      圓能斎

とありました・・・。

今回は幸運にも炉開きの御茶を賜り、心から御礼申し上げます。
ありがとうございました!
「相も変わりませず進歩しておりませんが・・・」とんでもございません。
Yさまらしい渾身のお茶事で、完成度が凄い!です。
相客のOさんとFさんもきっといろいろなことを学び、刺激を受けたことでしょう。
正客としてご亭主の思いをどれほど受け止められたか疑問ですが、これに懲りずに月雪花の時季にもお声掛け下さると嬉しいです。

遠いですが、暁庵の茶事や茶会へもお運びくださると望外の喜びでございます。
これからもどうぞ宜しくお付き合いくださいませ。 


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東寺の畔・炉開きの茶事へ・・・その1

2018年11月19日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

   仁和寺の紅葉をパチリ (2018年11月5日撮影)


京都在住の折
、共に自主稽古に励んだ茶友Yさまの茶事にお招き頂きました。

播磨・コルトレーン茶会の後にスウェーデンから帰国中のOさんとFさんをお連れしたく茶事をお願いしたのです。
月釜の開催でお忙しいにもかかわらず快諾してくださり、心から感謝しています。
京都を離れてからYさまの茶事は4年ぶりでしょうか

11月3日(土)、京都駅からタクシーで東寺の畔にあるYさま宅へ向かいました。
広い道からの曲がり角は覚えているのですが・・・心細い思いをしながら玄関横に置かれている水桶を見つけ安堵しました。
そこはYさまが小さな家を改築なさった素敵なお茶空間・・・茶事や茶会で人をもてなすだけでなく、茶の湯の修練の道場であり、ほっとする癒しの空間であり、きっとYさまにとって特別な場所なのだろうと思います。

玄関を入ると三畳の待合があり、壁床に掛物がありました。
「紅葉に山鳥」というような日本画ですが、色とりどりの紅葉が緑楓の中にひときわ鮮やかです。
一瞬、京都の大好きな紅葉名所(真如堂、栄摂院、南禅寺と塔頭・・・)が頭をよぎって行きました。


 「紅葉に山鳥」(・・・と勝手に名付けました。掬水画)

詰Fさんが喚鐘を3つ打つと、白湯が運ばれ、腰掛待合へご案内がありました。
染付汲み出しの白湯を頂くと、見込みに寿の字を発見・・・もしや炉開きのご趣向かしら? 期待に胸が膨らみました。
炉の準備だけは済ませて旅へ出ましたが、11月初めの茶事は風炉か炉か微妙なところです。

腰掛待合で待ちながら、最初に伺った茶事から歳月が経っていることを実感しました。
露地の様子は変わりませんが、杉苔が青々と伸び、フトイが太く長く成長していました。
ご亭主が向い付けに出られ、一同、無言の挨拶を交わします。


 待合の煙草盆・・・火入の灰形が美しく調えられて

4畳半の茶室に席入りすると、炉にどっしりと大きな釜が掛けられ、濡れた釜肌が目に飛び込んできました。
炉の時季の一番の御馳走です。
「きっと炉開きのご趣向だわ!」はやる心を落ち着かせながら床を拝見すると、「う~ん・・・」一目で魅せられました。
   
の一字、余計なものが全てそぎ落とされた清々しさを感じる御筆、紫野 八十六翁 大綱とありました。
「表装は元のものではありませんが・・・」とご亭主。
紺地揉み紙、簡素な押風袋が寂びた御軸にぴったりと寄り添っていました。

点前座に廻ると始めて見る棚(こちらの道具組は濃茶の時に詳しく・・・)があり、麗しき濡れ釜をじっくり拝見して席へ着き、Yさまへお招き頂いた喜びを伝えます。


   阿弥陀堂釜と古材の炉縁

初炭が始まり、客3人がそれぞれの事情で目を皿のようにしてYさまの炭手前を見詰めました。
下京するとすぐに暁庵の教室の炉開きの会があり、Fさんが炉の初炭を担当、暁庵もまだ炉の炭手前の稽古をしていません。
スウェーデンへ帰国前にOさんは今日庵の講習会で炉の初炭を見て頂くことになっているとか・・・。

すらすらと炭手前が進み、釜は阿弥陀堂、炉縁は松(?)の古材です。
炭斗は瓢、鐶は初めての釘鐶、羽箒は白鷹でした。
皆で炉を囲み、湿し灰の撒かれる様子、炭の置き方、羽箒の清め方をしっかり目に留めます。
香が焚かれ、すぐに薫りが部屋を馥郁と満たしていきます。
香合は丁寧な造りの萩焼・分銅亀、十二代田原陶兵衛作、香は黒方(薫玉堂)でした。


 乾山色絵竜田川図向付 (MIHO MUSEUM提供)

初炭のあと、Yさま手づくりの懐石が出され、どれも期待通り美味しく頂戴しました。
器も素敵でした・・・鯛昆布締めを乾山写の鮮やかな色絵竜田川図向付で頂き、こちらもまさに京都の秋です。
本職が作ったような京風懐石に舌鼓を打ち、特に蟹真蒸の煮物椀と炊き合せ(いもぼうと菊菜)が絶品でした。
御馳走さま! (つづく)


      東寺の畔・炉開きの茶事へ・・・その2へつづく