暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

風炉の逆勝手平花月と謎のお言葉

2022年04月23日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

      (早や藤の花が満開です・・・散歩道の公園にて)

 

4月21日はS先生の東京教室のお稽古で、2ヶ月ぶりに東京へ出かけました。

大雨の予想が見事に外れて、気温20℃の快適な気候です。

それでも着物だとちょっと暑いです。この日は大島紬(・・だと思う)の着物に白地に藤の花が描かれている塩瀬の帯を締めました。

藤の花がまっさかりなので、今日この帯を締めないとチャンスを逃しそうな行く春の勢いです。

駅からタクシーに乗り桜並木の下を通ると、葉がふさふさと茂って今年の桜の花を見ていないことに気づきました。昨年はちょうど桜吹雪の中の稽古日だったことを懐かしく思い出します。

 

      昨年は桜吹雪の稽古日だった・・・

  (「薫風自南来」のお軸が掛けられていました)

 

その日の科目は全部風炉で、盆香合、台天目、包帛紗、流し点、午後になって且座之式と逆勝手平花月でした。

奥伝の方がお休みでしたが、風炉の最初の稽古だったせいもあり、S先生からいろいろな質問や点前の基本に関するお話がいっぱい伺えて、とても充実した稽古になりました。

S先生から発せられる鋭い質問にしょっちゅう飛び上がったり、冷や汗をかいたりしました

例えば、「初炭で下火を1つ、向うへ移すのはどうしてか?」「盆香合で釜へ水を足す意味は?」「茶筅でのの字を書くのは何故?」などなど・・・・。

そして、柄杓の扱い、袱紗捌き、茶碗の拭き方、棗の清め方などの基本動作をしっかりご指導頂きました。

青年部の講習会があったとかで、質問が無いので参加した青年部の方へあえて質問したり、参加者の点前を見ていろいろ感じたり、考えさせられたそうです。

そしてつまるところ、指導者がもっとしっかり考えて教えなくてはいけない(・・・つまり私たちが)ということで、基本から細かくご指導頂いたのでした。

青年部に限らず、S先生はいつも「どうして? 何故?」という疑問を大事にし、私たち弟子に質問を投げかけてくださいます。そして自分で考えることの大切さを気づかせてくださいます。

 

        (門の横で牡丹の花が満開でした)

さて、その日の午後、逆勝手平花月を見て頂きました。

風炉へ頭が切り替わっていない所に逆勝手平花月なので、もうもう大変でした(陰の声・・・誰っ!風炉の最初に逆勝手平花月を選んだのは・・・)。

3日ほど前に風炉を出し、逆勝手の稽古をしましたが、付け焼刃なので所作がスムースにいきません。茶碗の取り置きの手、柄杓の引き方、茶筅や帛紗の位置、水指の蓋の扱いなど難しかったです。

でも、とても新鮮でした。

「逆勝手を稽古することで本勝手の意味をいろいろ考えることができます」とS先生は謎のようなことをおっしゃいます。

これからは逆勝手の稽古を取り入れ、先生の意味することを考えてみたい・・・と思いました。

帰りにいつものカフェへいつもの5人で寄り道し、冷たい林檎ジュースとベイクドチーズケーキでリフレッシュし、こちらも2か月ぶりの充実の時間でした。  

 

 


涅槃会の日に・・・東京教室の稽古

2022年02月26日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

 

2月15日はS先生の東京教室の稽古でした。

この日はお釈迦様が80歳で入滅した日とされ、涅槃会(ねはんえ)の法要が行われます。

点前担当だったので、少し早めに到着しました。

門近くのしだれ梅が丁度見ごろです。すっかり葉を落とした大銀杏の貫禄ある裸木を横目に茶室へ急ぎます。

 

 

床に「春来草自生」(春来れば草自ずから生ず)の御軸、和かなお筆ですが筆者が・・・。

稽古が始まり、最初に暁庵が真之炭をご指導いただきました。正客はRさん、次客はIさんです。

お点前だけでなく、炭や炭斗のお話、羽箒の清め方、そして見事に整えられている炉中の灰についてもお話があり、ず~っとS先生のお話を拝聴しながらお点前をしていたい・・・と。

香合は17世紀(明末~清時代)の古染付の木瓜香合写で、お持ち出ししました。香は「〇〇〇のお祝いに茶友から頂戴した黒方(松栄堂)でございます」

・・・さてここで、真之炭に使う炭道具について調べておくのを忘れました。幸い、お尋ねがなかったので切り抜けましたが、真之炭にふさわしい炭道具を炉と風炉で勉強して臨むべきだったと反省しています・・・。

見事な白鳥の座箒を使って、久しぶりに座履きをしました。こちらも細かくご指導いただき、とても嬉しかったです。ありがとうございます!

この日は真之炭、真之行台子、盆点、茶碗莊、逆勝手入子点(絞り茶巾)、逆勝手平花月、茶通箱付き花月と、充実したお稽古が続きました。

 

      (逆勝手平花月の点前座)

      (本堂へ向かう途中の庭の敷松葉が美しい・・・)

稽古途中でご住職がS先生にご挨拶に来られ、

「今日は涅槃会なので本堂横に茶席を用意しました。お稽古が終わりましたら、どうぞ皆さまでいらしてください」

・・・それで終了後、紅白の梅が咲き、敷松葉の美しい庭を見ながら本堂の茶席へご一緒させて頂きました。

 

       (涅槃会の茶席)

ご住職から涅槃会のことや茶席の設えのお話を拝聴しながら、趣のある逆勝手のお席で干菓子(熊本の「松風」)と薄茶一服を美味しく頂戴しました。

「涅槃(ねはん)」とはさとりの境地、苦しみが消滅した状態を意味しているそうで、お釈迦さまの入滅を「涅槃」と称しています。

「涅槃会」では、入滅された時の様相を描いた涅槃図を掲げ、ありし日のお釈迦さまを偲んで法要が営まれるそうで、法要後に茶席で茶をふるまわれているとか。

 

       

本堂には墨絵の大きな涅槃図が掛けられ、紅梅がお釈迦さまを偲ぶかのように満開でした。

思いがけず「涅槃会」のお茶をお相伴出来て、心温まる時間を過ごさせて頂きました。合掌!

 

 


三友之式・・・2021年文月

2021年09月20日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

     (葛の花が咲き乱れて・・・散歩道にて)

 

文月14日はS先生の東京教室のお稽古でした。

門を入ると、どこもきれいに掃き清められ、風が金木犀の香りを運んできました。

文月の稽古科目は、大圓真、長板総荘・初炭、長板総荘・濃茶(欠席)、長板総荘・薄茶、(昼休憩)、台天目、台子・三友之式、台子・貴人清次花月です。

 

 

暁庵が所属する2班は台子・三友之式(花寄せ、香、薄茶)なので、2日前に散歩がてら花を探しに出かけました。

歩いていると、葛の花の甘い薫りがしてきました。生い茂る葛の葉を分け入ると丁度好さそうな花が咲いていました。葛の花は秋の七草の一つですし、文月の三友之式にぴったりです。

    山上臣憶良 秋の野の花を読める歌二首 (万葉集)

     秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花

     萩の花尾花葛花なでしこの花をみなえし藤袴朝顔の花  

他にも八重の黄色の山吹、洋種ヤマゴボウ、角虎の尾、野紺菊を採取し、我が家の秋海棠と撫子を加えて持参しました。

コロナウイルス禍のため、研究会や他のお稽古が中止になっているそうですが、そのせいもあり(?)いつもより細かく丁寧に基本からご指導いただき、一同感謝感激でした。

 

   (大圓真のお稽古の前にパチリ・・・I氏の灰形がいつも見事です)

   (三友之式では天板中央に棗(薄器)、建水を外し蓋置を建水の位置に置いておきます)

 

「「台子で花月(七事式も)はやらないように・・・」と指導していますが、今回は三友之式も貴人清次花月も台子ですね。やらない・・・と決めつけるのではなく、先ずやってみて、ここが合わないとか、ここをどうするか・・・など実際に考えることも必要です」

台子で花月はやらない方がよい・・・と決めつけていたかもです。大いに反省し、実際にやってみると・・・以下に続く。

先ず、台子に建水を飾らず、蓋置だけ建水の位置に置いておきます。棗は天板に飾ります。

亭主(Iさん)が花台で迎え付け、皆で持ち寄った秋の花であふれる花台を床の前に置きました。正客から順次花を生けていきます。花寄せが終わり、亭主が花台を持って立つと同時に、連客は袱紗を腰に付けます。

 

    (三友之式・花寄せで生けられた秋野の花たち)

 

亭主は折据が載せられ香盆を正客(Oさん)の前に運び出し、「折据をお回し」で折据を回します。亭主が札を取り握り込んで折据を膝前に置くと、一同は揃って札を見て、「月(正客:Oさん)」「花(三客:暁庵)」と名乗りました。月は香を焚き、花は薄茶(花月で四服)の初花です。

香が炊かれ、皆で香を聞き、亭主は香盆を床の上座へ置き、立ち上がると亭主は水屋へ、一同は四畳半へ入ります。

菓子が運ばれ、茶椀が点前座に運ばれ、棗と茶碗が水指前に置き合わせ、水屋から建水を運び出し、踏み込み畳敷合わせに置き、亭主は仮座へ入ります。

初花(暁庵)が建水を持って点前座に座り、先ず火箸を取り(ワンケンバシのワンケンは既に終わっているので)、扱って台子左横へ置きます。

蓋置を取り扱って置き直し、総礼。あとはほぼいつもの通りですが、茶巾で札が回り、折据が留め置かれると「月、花」が名乗り、月へ菓子が回され、月が茶を頂きます。

茶を点て茶碗を出すとすぐに初花は「松」と言って帛紗を腰につけ、仮座へ戻ります。

順番に菓子付きで4服薄茶を点てます(各服点です)。

4服点てて茶碗が戻り、総礼、座替わりです。客座の4人の座替わりの足の運びで詳しいご指導があり、盛り上がりました。

こうしてS先生と秋野の花に見守られながら、無事に三友之式が終わりました。

葉月(8月)は眩暈のためお休みしたので、2ヶ月ぶりにS先生からいろいろなことをお習いして、とても充実した一日となりました。

 


花吹雪の 逆勝手且座之式

2021年04月04日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

 

3月30日(火)はS先生の東京教室のお稽古でした。

21日に緊急事態宣言が解除され、約3ヶ月ぶりにS先生の東京教室のお稽古へ出かけました。

今年の桜はとても早く、車窓から眺める桜は、満開の桜、散り始めている桜、早や葉が出ている桜たちがそれぞれの春を謳歌しています。

「今年も綺麗に咲いてくれてありがとう・・・」と心の中でささやいていました。

 

この日の稽古科目は、大圓草から始まり、後炭、向切逆勝手・内流し、入子点、休憩(昼食)をはさんで、茶通箱、逆勝手且座、貴人清次花月と続きました。

後炭や向切逆勝手・内流しのお点前も興味も奥も深かったのですが、なにしろ、逆勝手且座之式は初めてでした。

「えっ!!且座を逆勝手でするの?」とは、連絡を受けた時の私の反響です。

3日前から2回、逆勝手の初炭(釣釜)、濃茶、薄茶のお稽古をしました。私の所属する2班の方々は逆勝手が好き(?)らしく、逆勝手の四畳半花月をその前にもお習いしています。

さて当日、水屋で札を引くと、私は二(花)でした。

木五倍子(キブシ)、あけび、射干(シャガ)、クリスマスローズ、椿などを持参し、花積もりもしたので、二の札が当たったのかもしれません。

 

花(東)はOさん、月(半東)はI氏、一(香)はIさん、二(花)は暁庵、三(炭、釣釜)はLさんでした。

「どうぞお花を」とOさん。

竹の花入に黄色い花房を3つ垂らした木五倍子と白いクリスマスローズを生けました。

みなさま、最初こそ足の乱れが多少あったものの、逆勝手と思えないほどスムースなお点前でございました。私も家で稽古して臨んだけれど、きっと皆さまもそれぞれ努力されたのでは・・・と思います。そんなお仲間が誇らしく大好きです。

ただ、床の間の位置関係が我が家と違うなど、最後の最後まで自分の頭の中の地図(?配置図)と違和感があって、私ひとり迷子になっていたような・・・二の花でヨカッタ! (ホッ・・)

 

 

7科目の充実したお稽古が終わり、花吹雪の中、皆で歓声をあげながら帰途につきました。

S先生のお稽古はもちろんのこと、稽古後の喫茶タイムもとても貴重な時間です。

その日は7人で30分ほど寄り道し、いろいろな情報交換をしながら「林檎ジュース」とケーキ「ミゼラブル」をいただき、こちらも大満足でした。   

 

 


逆勝手上げ台目の薄茶

2020年12月27日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

(孤高の大欅・・・葉を落とし、逞しい裸体の彫像みたいに堂々と立っている)

 

12月22日はS先生の東京教室の今年最後のお稽古でした。

3つの班に分かれていて、暁庵の属する2班が個人点前をご指導いただきました。

その日の科目は、真之炭手前(Oさん)、大円真(Rさん)、台子の濃茶(暁庵)、台子の貴人清次薄茶(Iさん)、昼食をはさんで、逆勝手上げ台目で薄茶(I氏)、貴人清次濃茶付花月(3班)、壷莊付花月(1班)でした。

・・・そして、いつもいろいろな刺激を頂いています。

 

(白椿の大木・・・炉開きの頃から咲き始め、いつもお世話になっています)

 

その1つ、Rさんが大円真をなさいました。

Rさんの大円真をうらやましく思いながら拝見していました。というのも奥伝はどれも長く、途中で左膝が悲鳴を上げそうなので遠慮しています。

コロナウイルス対策で客は一人、Iさんです。縁高でお菓子が運ばれ、お点前が始まりました。

いつも美味しいお菓子が用意されていますが、この日は練り切りで銘「紅歌(こうか)」(浅草・千茶製)でした。

大円真の菓子は7種なので、Rさんは「紅歌」の他に6種のお菓子を用意していました。6種は主にドライフルーツで、プルーン、デーツ(DATE)、ピーカンナッツ、ナッツ、クルミ菓子、林檎(生)です。中にはRさんの故郷のアメリカから持ち帰ったものや自家製も含まれていました。

今までに何度も奥伝をご指導頂いていましたが、お菓子の持ち出しは思いつきませんでもうびっくりし、 同時にS先生のお稽古に対するRさんのお気持ちがひしひしと伝わってきました。

お茶の稽古とは先生から一方的に学ぶものではなく、教わる方もそれなりの努力をしてこそ良い稽古になる・・・と思っていたので、Rさんに大いに刺激を受け、とても感動したのです。

 

(青空に映える五葉松・・・大好きな木だが2本あったのが1本になってしまった)

 

もう1つは、逆勝手上げ台目薄茶の客をしました。

上げ台目という設定も珍しいですが、逆勝手も新鮮でした。

台目切は、茶室の炉の切り方(八炉)の1つで、出炉の形で点前畳が台目畳のことを言い、点前畳が丸畳の場合は上げ台目切と言います。

興味深いお話をS先生から伺いました。台目構え(台目切炉・中柱・釣棚からなる点前座の構えをいう)について南方録に興味ある記述「台目構えには台子が封じ込められている」があるそうです(詳しくはこれから南方録を調べますが・・・)。

それで、水指、茶入、茶筅などを置く位置が台子と同じなのだ・・・と大いに納得です。

お点前さんはI氏、逆勝手を感じさせないようなすらすらと美しいお点前で、薄茶を点ててくださいました。大海を薄茶器にしたご趣向に目を奪われ、割り高台の萩茶碗や唐津焼水指に魅せられました。

茶杓をお尋ねすると、能がお好きだったという玄々斎作で銘「幽清」と応えられ、一瞬、「ここが能舞台でI氏のお茶事に来たみたい・・・」と思ったほどです。

「どうぞお仕舞を・・・」のタイミングを逸して困っていたら、さりげなく白湯を入れてくださいました。「薄茶も白湯も美味しゅうございました。ありがとうございます!」

 

・・・・S先生と素敵なお仲間とお稽古できることに感謝して、足腰が痛くっても頑張って続けていけたら・・・と願っています。