暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

うさぎ小屋の茶遊び-2

2014年06月27日 | 思い出の茶事  京都編
                真如堂の菩提樹の花 (写真がないので・・)
(つづき)
次いで昼食となり、四つ椀の懐石が出されました。
手をかけてくださった料理が次々と登場し、舌鼓です。
何と言っても一番は味噌汁。
揚げとミョウガ入りの味噌汁が絶品で、味噌をお持ち帰りしたい・・。

「本当に手前味噌なんですが、これだけは自慢できます。
 手造りの赤味噌を使っています」 (凄いです! 

2色(ヨモギと海老?)の真蒸に豆腐の湯葉巻きを乗せた向付は
サプライズもあり、私も作ってみたい・・・と刺激を頂きました。
材料やレシピの話も飛び交い、楽しい食事タイムが終わり、中立です。

              

後座へ席入すると、床の中釘に
花が3種(七段花、咲き終えた鉄線の花芯、もう1種白い花?)が
古びた鉈籠に活けられていました。

丸っこい形の赤味を帯びた風炉が何とも温かく、存在感を放っています。
あとで伺うと、数十年前にご亭主が陶芸家・池川みどりさんと出逢った頃に
初めて購入した風炉とのことでした。
それ以来、池川作品を愛し、使い続け、応援しているそうです。

風炉先屏風は、織物作家であるご亭主Sさんの作品です。
市松模様のブルーグレイの織物が板の間の点前座をやさしく囲っています。
風炉の隣りに渋い鉄色の水指(不識形)と茶入が置かれていました。
上品な模様の仕覆が目を惹き、「どんな茶入が入っているのかしら?」

濃茶点前が始まり、仕覆が脱がされ、茶入が清められます。
Sさんの緊張感あるお点前を、客一同、背筋を伸ばして見守りました。
美しい青灰色、背が高く角ばった肩衝が現われ、
一目で池川作品とわかりました。
古い着物裂を探して仕立てたという仕覆がお似合いです。

そんな茶入に入った濃茶を丁寧に練ってくださり、美味しく頂戴しました。
濃茶は姫路・小林松濤園、お菓子は「さくら羊羹」です。

               

薄茶になり、ご亭主も笑顔で席へ加わり、茶遊びはさらに佳境へ。
竹の盆に小服茶碗をたくさん載せて
「好きでいろいろ集めています。
 もちろん揖保川焼もありますが、他の焼物もあります。
 薄茶をお点てしますので、お好きな茶碗を選んでください」
 (・・・こんな趣向も楽しいですね)

薄茶を頂戴しながら、池川みどりさんとの出会いや、画家・熊谷守一、
好きな雑貨たちの話など、愉しゅうございました。
薄器や香合は見立てだそうですが、この茶空間に溶け込んで自然でした。

力一杯もてなしてくださったSさん、ステキな茶遊びをありがとう!
いつかKさんから
「茶室がなくても畳がなくても、心を感じる茶会をする方がいます」
と伺っていた通りでした・・・。

池川さんの個展でまたお会いしたいです。

                           やっと     

              うさぎ小屋の茶遊びー1へ戻る




うさぎ小屋の茶遊び-1

2014年06月25日 | 思い出の茶事  京都編
              「沙羅ひらく」  17日真如堂にて撮影

山賊茶会のメンバー、Sさんから茶遊びへ招かれました。

山賊茶会は、池川みどりさんを中心に、Kさん、Nさん、Sさんたちが
個性あふれる、魅力的な茶会をしていらっしゃいます。
この度は思いがけなく末席に加えて頂きました。

送られて来たご案内のカードがステキでした!  

  うさぎ小屋の茶遊び       
        おまねき

    初夏の一日茶遊びにお招きしたく
     ご案内させていただきます。          

     2014年6月16日(月)      
       正午より  S宅・・・・(後略)


  台所でいたします。どうぞお気軽に普段着でお越しください。
  私も洋服で失礼させていただきます。


「ふぅ~」・・・ため息がでました!
なんてさりげなく、心温まる案内状なのだろう。
もうもう(牛ではありませんが・・)喜んで伺いますと返信しました。
それ以来、うさぎ小屋の茶遊びの日が楽しみでした。

               

当日近くの駅で、山賊茶会のメンバー(池川さん、Kさん、Nさん)と
待ち合わせ、車でSさん宅へ。
「正客は初めての方がすることになっています」とKさん。
正客(というか、一番目に入る客の意)を仰せつかり、
・・・ドキドキしながら自称・うさぎ小屋のドアを開けました。

玄関を入った廊下に腰掛が4つ用意され、荷物入れの籠が置いてあります。
そして壁に俳句を画いた色紙が掛けられていました。

    欲しいもの
      ことさらになく
        沙羅ひらく
             翠


すぐに池川さんの句とわかり、今日の茶遊びにぴったりです。
「欲しいもの ことさらになく」
・・・に同調あり、反論ありで楽しく話していると、
冷たい麦茶とおしぼりが出され、嬉しい気遣いでした。
これからの季節にインパクトあるご馳走かもしれません。

            

廊下の先のドアを開けると、そこが今日の茶室でした。
約10畳の板の間に、鉈目のある木のテーブルが置いてあります。

一方の壁を床に見立て、軸が掛けられ、香合が荘られていました。
反対側の壁側に点前座があり、丸っこい風炉に釜が掛けられています。
床と点前座を拝見し、木のテーブルを囲んで4人が座りました。
向こうに台所があるようですが、スクリーンで上手に隠されていました。

我が灑雪庵の四畳半と同じで、食堂であり、家族がくつろぐ居間であり、
客間でもあり、しかもフローリングです。
畳が無くても見事なお茶空間の創出にワクワクしてきました。
ご亭主が出てこられて、改めて挨拶を交わしました。

「一日  一生」
と書かれたお軸のことを伺いました。
「今の私は、一日が一生という思いを胸に暮らしていますので
 このお軸を掛けたいと思いました」
短く、言い得ている語句に一同深く頷いた次第です・・・。
                                  

           うさぎ小屋の茶遊び-2 へつづく



播州播磨の旅

2014年06月22日 | 京暮らし 日常編
              「思い出」  たつの市・ギャラリー池川にて

水無月の茶事の後、親友Kさんと播州播磨の旅へ出かけました。

一番の目的は、6月6日の「どくだみ茶会」なので
姫路に一泊して気ままな旅のつもりでしたが、
「どくだみ茶会」のご亭主Kさんが訪問先を考えてくださって、
姫路と龍野を急ぎ足で廻りました。

主なコースは
姫路城~好古園にて薄茶~(姫新線)~本竜野駅~ギャラリー池川~
~Nさん宅にて濃茶と薄茶~(姫新線・新幹線)~帰宅

                

                
姫路は、NHK大河ドラマ「官兵衛」ゆかりの地で興味津々です。
黒田家の時代に小さな城があり、「官兵衛」はここで生まれました。
その後姫路城は、羽柴(豊臣)秀吉、池田、本多、松平、榊原、酒井など城主を変え、
築城や拡張などを繰り返し、現在の姫路城となりました。
切支丹だった官兵衛(洗礼名:シメオン)ゆかりの十字紋の鬼瓦が
「に」の門の櫓に残されています。

現在、姫路城はまだ修復中、城の覆いははずされましたが、
天守閣のある本丸へ攻め込むことはできず、
西の丸の千姫ゆかりの化粧櫓や長局(百間廊下)を見学しました。
1993年12月、姫路城は法隆寺とともに、日本初の世界遺産に登録されました。

               
               

姫路城に隣接した好古園へ行き、池泉回遊式の庭園を散策しました。
御屋敷の庭、苗の庭、茶の庭など9種類のテーマの違う庭があり、
見応えがあります。
鵬雲斎大宗匠が監修された茶室・双樹庵にて薄茶をなぜか2服も頂戴し、
再び姫新線に飛び乗り、「本竜野」駅へ向かいました。

               
                      好古園・御屋敷の庭
               
                      好古園の茶室・双樹庵

出迎えのKさんが車で「ギャラリー池川」へ。
「折角、龍野へいらしたのだから・・・」
茶友Kさんをステキな空間へ案内してくださいました。

6月の庭は苔と楓が一際美しく、雪ノ下の花が風に揺れ、
「思い出」の字が目に飛び込んできました。
葎庵で行われた茶事個展を思い出し、陶芸作品も大好きな池川邸も
当分見納め・・・・泪が出そうになりました。

               
                     青苔と雪ノ下  ギャラリー池川にて

たつの市近辺には陶芸家・池川みどりさんを中心に茶事仲間がいらして、
その一人Nさんから思いがけず、お声掛け頂きました。

「古いだけで、部屋数が多く、お掃除が大変なの・・・」
と伺ってはいましたが、玄関を入ると、
黒く太い梁が見える天井、広々と板敷の土間が広がっていて、
立礼席や囲炉裏を囲んだ席もあり、もうびっくり!
築300年を経た古民家だとか・・・素晴らしいお茶環境です。

「立礼席で薄茶を・・・と思っていましたが、
 茶室にて一服差し上げたく思います」とNさん。
(別棟の茶室をご主人と一緒に設計・監理して建てられたそうです・・

               
                ギャラリー池川にて(N邸の写真がないので・・・)

二人のKさんと一緒に庭の腰掛待合へ。
ご亭主Nさんは表千家流です。枝折り戸でつくばって挨拶を交わしました。
蹲踞で身心を浄め、にじり口から席入りすると、
茶室の床に「浄心・・・」とあるのを、「洗心・・・」と読んでしまい、
「洗心」が3つ続いたので、驚きました。

するとご亭主から、
「家にあった古いお軸で読み方はわからないのですが、
 身心を浄め、清らかな心をもって何事にも接し、受け入れる
 ・・・という意味だと伺っています。
 茶室にはいつもこのお軸を掛けることにしています」

火相、湯相もよく、主菓子を頂き、濃茶を三人で頂戴しました。
菓子銘も茶銘もメモしなかったので忘れていますが、
とても練り加減よく、まるく甘みのある濃茶でした。ご馳走さま!
水指は一目で池川みどり作とわかりました。
ゆったりと存在感があり、灰釉の緑青色が実に味わい深い水指でした。

するとご亭主から、
「この水指は池川さんの個展で、主人が気に入って求めたものです。
 炉にも風炉にもぴったりなので、茶室の水指はこれに決めています」

              
                      ギャラリー池川にて
お話を伺って、
Kさん同様にNさんもまた、自分のお茶に徹していらして
「潔く、シンプルなスタイルがなんてステキなんだろう!」
と感激し、刺激をたくさん受け取りました。

濃茶の後は、母屋の屏風の前に設えられた立礼席でくつろいで
干菓子と薄茶を楽しみました。
お茶をやっていてこそ、思いがけない出会いがあり、茶談義が尽きず、
「思い出」というお土産を旅行カバンへいっぱい詰め込みました。

またいつか訪れる日が来ると嬉しいです・・・。

                               &    

どくだみ茶会-2

2014年06月18日 | 思い出の茶事  京都編
                どくだみの花 (季節の花300)
(つづき)
ご挨拶のあと、夕食をご馳走になりました。
Kさんの茶会は「家のご飯と薄茶」が基本です。
でもね! その中にKさんならではエッセンスが凝縮されていて、
センスと個性が輝いている・・・と思うのです。

シンプルな献立ですが、こだわりが半端ではありません。
自家製野菜、野菜の栄養と旨味を引き出す切り方や調理、
直前に焼いて供される出し巻き玉子など、
より美味しく、見た目も好く、探求する姿勢に感動すら覚えます。
そんなエッセンスの話を伺いながら、Kさんちの夕食を平らげました。

ここで中立し、先ほどの外腰掛へ。
再びご亭主の迎え付けがあり、席入りすると、
ほの暗い茶室には燭台が置かれ、蝋燭が灯されていました。

             
              (写真がないので我が家のどくだみですが・・)

床にどくだみの花が生けられていました。
そこだけ白い花が浮き立って、十字架のようにも見え、
敬虔な修道女のようにも見えてきます。
花入は揖保川焼、池川みどり作。
古色ある敷板は、扁額を応用したお手製で、垂涎ものです。
友人が描いたという抽象画が掛けられていて、雨雲をイメージした絵だとか。

席入の時から音楽が雨の音のようにも聞こえ、
時に軽快であったり、時に物寂しかったり・・・聴衆のこころのままに。
炉には手取り釜がシュンシュンと湯気をあげていました。

「一年中、炉の流し点で薄茶をさしあげています」
・・・Kさんの諸事情でこのようなスタイルに完結したそうですが、
ゆるぎない信念がそれを後押ししていて、大拍手です。

一服目は濃茶のように緊張して、
二服目は薄茶独特のくつろいだ雰囲気で頂戴しました。

               

・・・そして、お茶を味わいながら、
「こんな素敵な茶会へもう二度と来ることはないだろう・・・」
と思い、なぜ何度も来たくなったのか、自問しました。

Kさんの茶会を、ひそかに「清貧の茶会」と呼び、敬愛しています。
余計なものを全て削ぎ落とし、必要かつfavoriteなものへ見事なまでに
昇華なさって、そこにお茶本来が持つ精神の高みを感じるのです。

もう一つは工夫の面白さです。
今回はどくだみの花が主役でしたが、毎回胸ときめく工夫やら
Kさんならではの茶会次第があり、無限の広がりを楽しめます。

決して高価なものを使わず、無理せず「清貧」の茶に徹している、
そんな茶会が大好きで、心地好い刺激とともに
「私も私の茶事をしよう!」といつも勇気づけられるのです。

今回も親友のKさんと一緒に風雅を味わい、善い気を一杯あびて、
「どくだみ茶会」を堪能しました。

後日、やさしい親友から電話があり、
「あれから、どくだみがKさんに見えてしまい、抜けなくなりました・・・」

                         
                        & 

              


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「どくだみ茶会」-1

2014年06月17日 | 思い出の茶事  京都編
            (写真がないので、我が家のどくだみですが・・・)

某家庭茶事の会・Kさんの「どくだみ茶会」へ招かれました(押しかけた?)。

Kさんの茶会が大好きで、何回か(4回目?)伺っていますが、
京都滞在中に親友Kさんと一緒に、もう一度行きたくなりました。
(何故何度も行きたくなるのか・・これについては後ほど書きます)
1回目2回目3回目・・・そして4回目)

・・・お願いすると、Kさんはしばらく考えてから
「折角いらっしゃるのなら、どくだみが咲く6月初旬にいらしてください。
 大好きな「どくだみ茶会」でお迎えしたいので・・・」

「どうして「どくだみ茶会」なのかしら?」
不思議に思っていると、Kさんから次のようなメールが届きました。

 
   数年前、憧れの聖フランチェスコに献茶をしたくて
   友人と2人でアッシジを訪れました。
   帰国後、畑の片隅に咲いていた「どくだみ」の花が
   急に「十字架」に見えはじめたのに驚きました~^0^

   「どくだみ」は昔から大好きだったのですが
   茶席では「禁花」とされていましたので
   ま、こっそり活けて楽しんでいたのですが(笑)
   茶友が宮城まり子さんが茶席で「どくだみ」を使われたという
   エピソードを教えてくれて以来
   私も堂々と茶花として愛用しています

   では大好きな「どくだみ」が主役のお茶会でお待ちしています  

           
              

6月6日、K邸へ伺うと、広い庭にたっぷりと水が撒かれています。
空気までひんやりと感じられる緑のアプローチを通り、玄関へ。
ご亭主のKさんが、最初に訪れた時と同じ、あの笑顔で迎えてくれました。

少し時間が早いそうで、待合でおしゃべりしていると、
5時を告げるサイレンが鳴りました。
「どうぞ、こちらから出て、ベランダの腰掛でお待ちください」

その日は天気が不安定で、時折雨が降ったそうです。
それで、全天候型の準備をしてくださって、今回はベランダの鉄の椅子が
外腰掛でした・・・こちらも重そうだけれどステキです!
夏椿が緑の枝を伸ばしている、山荘のような佇まいのベランダで、
樹木の気をいっぱい浴びながら迎え付けを待ちました。

                 

ご亭主が現われ、いよいよ迎え付けです。
無言で挨拶を交わしました(伺うのもこれが最後・・かも)。

正客のKさんに続いて、茶室へ入ったとたん、
床のお軸に圧倒されました。
白い和紙に大きく書かれた墨書が静かに力強く我が心に迫ってきます。

「洗心」
昨日、我が茶事で掛けたのと偶然同じ語句でしたが、印象が全く違いました。
書は書き手の全てを具現しているので、比較しても仕方の無いことですが・・・。
座に着いてからも、シンプルで神々しい墨書を何度も見つめました。
とても素直な気持ちになる、不思議な書です。


             「どくだみ茶会」-2へつづく