暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東京教室の初釜 in 2017 ・・・・その2

2017年01月29日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古
 

(つづき)
S先生がお持ち出しくださった茶碗を初釜の記念に記しておきます。

黒楽の主茶碗は大好きな一入作でした。
手に取ってじっくりと拝見出来て、なんて幸せなことでしょう。
程よい大きさの茶碗は形や作りに一入らしい味わいがあり、内側の寂びに歴史を感じます。
一入独特の朱釉が隠れるように胴に在り、「隠れ蓑」という不休斎の命銘がニクイです。

二碗目は古萩です。
井戸形の茶碗の内側が遠目に白蝶貝のように輝いて、手に取るのが楽しみでした。
どなたの銘かわからないそうですが、銘「富士」とある箱書を見せて頂きました。

三碗目は赤楽茶碗で、当代・15代楽吉左衛門作です。
当代作と言えば、暁庵が熱望しながら、叶わぬ夢とあきらめた楽茶碗です。
近づく者を遮って聳え立つ茶碗ではなく、穏やかで飲みやすい形の茶碗でした。
赤楽ですが、黒から灰色のグラーデーションを思わせる灰釉が美しく掛かり、流石、当代の作です。
胴のヘラ目も好ましく、手に取ると驚くほどの軽さでした・・・「好いなぁ~(ため息!)」
また、初釜できっと出会えますように・・・・。



茶入と茶杓も素晴らしいものでしたが、香合について書いておきます。
炭手前が無かったので、書院に香合が荘られていました。
濃茶の最後に香合も回してくださって、手に取って拝見することが出来ました。
10代旦入作の銘「鶴のたまご」(淡々斎の花押、箱書)です。
蓋の上部にベンゼン環化合物のような亀が描かれていて、目出度く鶴亀になっていました。

濃茶が終了し、薄茶は全員が薄茶を頂き、点てる員茶之式で行いました。
毎年、当番の班が楽しいアトラクションを考えてくださるので、こちらも楽しみでした。
皆さま、素晴らしい着物と帯をお召しなので、順番に点前座に座り、薄茶を点てる様子が何とも美しく、うっとり・・・。
初釜の三番目の楽しみとは、華やかでしとやかな薄茶の点前なのです。

員茶之式では十種香札の代わりに「上毛かるた」が使われました。
「上毛かるた」とは「群馬県のかるた」です。
小学生が郷土をよく知り、愛するようになってもらいたいと作られたものだとか。
群馬県の歴史上の人物、名所、名産等が読み込まれていて、群馬県人の郷土愛を感じるかるたでした。

S先生とIB氏も参加し、亭主はTさん、札元はYさん、目付はTさんです。
群馬県人・Yさんのお読み上げで、最初にOさんの「な」の札が当たりました。

    「な」中仙道しのぶ安中杉並木  (なかせんどう しのぶあんなか すぎなみき)
       
              
    中仙道の杉並木
     安中市を通る旧中山道の両側に1㎞にわたって見事な杉並木があった。
     江戸時代、宿駅を設け、一里毎にえの木を植え一里塚と並木が作られた。

最後に暁庵の「う」が当り、仕舞い花を務めました。

    [う] 碓氷峠の関所跡 (うすいとうげの せきしょあと)


    碓氷峠
     日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の伝説に名高い峠で、関東地方の北西を押えているので、
     昔から要地として知られた。中仙道がこの峠を通り、峠の下の横川に関所があった。

「上毛かるた」を楽しみながらワイワイ過ごした薄茶の後に、松花堂弁当と吸い物を頂戴し、お開きになりました。

末筆になりましたが、S先生、皆さま、2017年もどうぞ宜しくお願いいたします。


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東京教室の初釜 in 2017 ・・・・その1

2017年01月28日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古


1月25日はS先生の東京教室の初釜でした。
東京教室の皆様と共に、この日を鶴首の思いで待っていました。

床には見事な結び柳と、「梅 雪裏春」のお軸が大徳寺棒に掛けられています。
大徳寺第512世・法谷浩明師の書です。
皆で読むのに四苦八苦でしたが、「うめ せつりのはる」とS先生に伺って、
まだ雪は降っていないけれど、折しも稽古場の外には春を思わせる陽光の中、白梅が咲き、紅梅が真っ盛りです。
その梅に雪が積もった情景が目の前に広がってくるようでした・・・。
花はツクバネと白玉椿です。

   

新年のご挨拶を交わした後、すぐにS先生の濃茶の初点となりました。
毎年、初釜のために茶道具と主菓子を関西から運んできてくださって、
社中一同、これが初釜の二番目の楽しみなのです。
一番目はもちろん、S先生のお点前です。
そして、三番目は・・・後ほど。

最初に主菓子「菱はなびら餅」(末廣製)を頂きました。
京都から運んで来てくださった先生に感謝し、柔らかな白い羽二重餅にピンク色が美しく映え、袱紗ゴボウ、とろとろの白味噌餡に感激しながら頂戴しました。

点前座には、真塗の及台子に染付八角の皆具、中棗が置かれていました。
障子を閉め、少し室内を暗くして、落ち着いた雰囲気の中、台子濃茶点前が始まりました。
皆、固唾をのんで先生のお点前を見詰めています。
先日の教室の初釜での台子点前を思い出し、途中から先生と一緒にお点前をしているような、不思議な気分を味わいながら拝見しました。

ぷ~んと茶香が満ち、一碗目が出されました。
すると半東IB氏が袴捌きも爽やかに濃茶を正客Kさんに運びました。
Kさんが一口頂くと
「御服加減はいかがでしょうか?」
「大変美味しゅうございます」
お二人の問答の間に半東IB氏は水屋に温めて準備していた二碗目の茶碗を持ち出し、道具畳に置きました。
挨拶を終えられた先生がその茶碗を取り込み、再び点前を続けます。
こうして、三碗目まで点てられたのですが、点前座のS先生と半東IBさんの呼吸がぴったりで、もううっとり見惚れていました。



私は二碗目の古萩茶碗で頂きました。
程よい濃さでしっかりと練られた濃茶は飲みやすく、たっぷりとまろやかなお味の濃茶を吸い切りました。
濃茶は、たしか尾道の今川玉春園の「白寿」だったと思います(お二人の呼吸や所作に夢中で・・・)。

茶碗、茶入、茶杓は先生のお持ち出しです。(つづく)


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暁庵の茶道教室の初釜 in 2017 ・・・(3)

2017年01月24日 | 暁庵の裏千家茶道教室

       白梅が咲いています

銅鑼が7点打たれ、後座の席入です。
ここからお役が交代し、正客Fさん、詰N氏、半東Yさんは濃茶と薄茶の後半に四客へ入っていただきました。

床の中釘に梅と椿(関戸太郎庵)、箆筒のような竹の花入に生けられています。
はじめて御目文字する関戸太郎庵、Fさんのお持ち出しです。
大きな愛らしい桃色の蕾、今まさに開かんとする風情が初釜にぴったりでした(写真がないのが残念!)。

関戸太郎庵は江戸中期高田太郎庵という茶人が愛好した椿で、高田家から尾張の豪商関戸家へと伝わり、
現在は犬山市常満寺に古木があるそうです。

暁庵が島台茶碗で社中の皆様に濃茶を二碗練って差し上げました。
島台で濃茶を練るのは初めてなので、ちょっと心配でした・・・。
でも半東Yさんが直前まで茶碗を温めてくださったし、湯相も好く、しっかり練ることが出来ました。
1碗目は3名様、2碗目は4名様でしたが、多めだったので最後に暁庵が頂戴しました。
多少ゆるめにしたのですが、最後になるとどうかしら?
・・・心配しながら最後の一啜りまで飲み干し、安堵しました。
茶銘は松花の昔、小山園詰です。

島台は、内面に金と銀の箔を置いた大小の楽茶碗で、縁起を祝う茶事に重ね茶碗として使われます。
実は水屋に島台が三揃いもあり、金銀の箔がとれていなさそうなものを選びました。
島台には約束があって、小の茶碗の内側は銀箔、五角形の高台は鶴を表わし、
一方、大の茶碗の内側は金箔が置かれ、六角形の高台が亀を表わしているとか。

茶入は利休瀬戸写(膳所焼)、仕覆は大燈金襴、共に初めての嬉しいお出会いです。
大燈金襴は大徳寺開山・大燈国師(宗峰妙超)の袈裟裂と伝えられています(異説もあり)。
茶杓は、大亀老師作の銘「好日」でした。


 淡桃色の一重、筒咲の関戸太郎庵椿

後炭となり、釜が上げられると、思いの外炭が残っていました。
初掃きで社中一同が炉を囲み、Yさんの手元を見詰めます。
胴炭をそのまま残し、炭斗から輪胴を灰器へ除き、匙香、湿し灰が撒かれました。
あとはいつもの後炭の通り逆に炭が置かれていき、点炭が置かれても皆一緒に炉辺にいたいような・・・。

干菓子が運ばれ、薄茶になり、座は少しくだけて賑やかになりました。
干菓子は、打出庵大黒屋製の干梅煎餅と雪華、こちらもお勧めです。
濃茶の労をねぎらって、Yさんが点ててくださった薄茶をゆっくり味わいました。
濃茶の後の薄茶って、すっきりと爽やかで、本当に美味しいですね。

主茶碗は唐子が独楽で遊んでいる絵が描かれた、正月らしい華やかな京焼、真葛香斎造です。
替は粉引でしょうか、ユニークな形状の味わい深い茶碗で、作者は田村耕一(人間国宝)です。
二碗ともN氏のお持ち出し、茶碗を代えてYさんとKさんのお点前で薄茶タイムが和やかに過ぎていきました。

こうして、2017年の初釜が目出度く終了しました・・・皆様、ありがとうございます。
頂いたメールですが初釜の記念に記します。


    紅梅がきれいです・・・

 Tさんより
本日は初釜&初稽古に参加させて頂きまして、誠にありがとうございました。
また、途中退席してしまい申し訳ございませんでした(おかげさまで娘のお迎えも間に合うことができました!)
本日は、暁庵先生を始め、社中の皆さまのお点前の美しさに大変感激いたしました。
またお茶室のしつらえやお料理、お道具等の素晴らしさに、お茶の知識がほとんど無い私ではございますが、大いに感性を刺激されることがたくさんありました。
お茶を学び始めて本当によかったと思える1日でございました。
本当に未熟な私ですが、今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。


 Kさんより
昨日は、お初釜の席で皆様と新年をお祝い出来たことを大変嬉しく思いました。
又、薄茶のお点前をあの場所でさせて頂いて貴重な経験を持つことも出来ました。
本当に有難うございました。
先生からの手作りの楊枝入れも大事に使わせて頂きたく思います。
今回特に懐石をあの様なやり取りで進んでいるとは全く知らなかったので、各々の所作がとても勉強になりました。
このような経験が今は小さな点でしかありませんが、いつかひとつに繋がる事を目標に、
日々のお稽古を大事にしていきたいと思いますので、本年もご指導宜しくお願いいたします。


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暁庵の茶道教室の初釜 in 2017 ・・・(2)

2017年01月23日 | 暁庵の裏千家茶道教室

     青漆爪紅の及台子

(つづき)
点前座には青漆爪紅(せいしつつまぐれ)の及台子、紫交趾七宝紋の皆具、天板に松喰鶴蒔絵の大棗、初炭のための香合と羽箒がかざられています。

全員が一堂に会し、新年のご挨拶と年の初めに思うことを述べてもらいました。
皆様の茶道へのお気持ちや抱負を伺うと、何やらずっしりとしたものを肩に感じますが、
暁庵としてはやるべきことをしっかりやって、社中のお一人お一人と誠実に向き合いたい・・・と。

新年のセレモニーの後、もう一度席入後の茶事に戻り、
「どうぞお入りを」から始まりました。

初炭になり、香合のことを書いておきます。
初釜のために骨董好きのN氏がお持ち出しの香合は古染付の開扇、インパクトがあって素敵でした。
古染付は、17世紀の明時代末期に日本の茶人たちの注文によって中国・景徳鎮民窯で焼かれたものですが、
開扇香合は少し大ぶり、蓋につまみがあるので蓋向うの注文だったかもしれません。

蓋表にはのどかな山水画、胴には花が散りばめられています。
虫食いのある白い陶肌の青の色合い、茫洋とした味わいが何とも言えません・・・。
江戸初期から茶人に愛玩されてきた香合に敬意を感じ、古帛紗(江戸時代の打掛裂)を出して拝見しました。
香は松涛(松栄堂)です。


     書院に飾られた古薩摩の水注ぎ 

いよいよ懐石になりました。
茶席「K」に決めたのは、前回、こちらでN氏が名残の茶事をした折に懐石が好評だったことと、
客方には本懐石の食事作法、亭主方には給仕や挨拶を経験してもらいたいと思ったからです。
期待通りの懐石を美味しく有難く頂戴しました。

縁高が運ばれ、主菓子は菱はなびら餅(横浜・日ノ出町の打出庵大黒屋製)です。
打出庵さんは京都・川端道喜で修行されたそうなので、だいぶ小さめですが、
餅が薄く柔らかく白味噌餡がとろけるよう、その絶妙な美味しさに感激!しました。

「どうぞお菓子をお召し上がりください。
 お菓子をお召し上がりになりましたら、席を改めますので
 先ほどの腰掛待合へ中立をお願い致します」
「それでは中立をさせて頂きますが、用意が整いましたらお鳴物でお知らせを・・・」
「ことによりましてはそうさせていただきます」
(日頃の稽古の甲斐があり、会話もスムースでヨカッタです・・・ 


初釜の茶事の懐石献立 (平成29年1月18日)
  福茶   結昆布梅
  つぼつぼ 紅白なます
  向付   鯛昆布〆細造り赤貝添え 黄菊 岩茸 山葵 
  汁    白味噌仕立て  小豆麩  青菜細々
  煮物   蛤真蒸  芽蓮草 椎茸 紅白短冊  柚子
  焼物   鰤辛子幽庵焼き
  炊合せ  海老芋  鶉団子  青菜
  預鉢   春菊の胡麻和え
       五色和え  蓮根 人参 軸蓮草 水前寺のり 蟹 金糸卵
  小吸   のし梅  松の実
  八寸   伊勢海老  ちしゃとう
  湯香   こがし湯  沢庵 白菜 しば漬



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暁庵の茶道教室の初釜 in 2017 ・・・(1)

2017年01月21日 | 暁庵の裏千家茶道教室


       シンプルな正月飾りが素敵でした・・・          

1月18日(水)は暁庵の裏千家茶道教室の2回目の初釜でした。
昨年は我が家でしたが、今年は横浜市中区の茶席「K」にて茶事形式で行いました。
今まで茶席を使用した初釜を何度か経験していますが、主催者としては初めてです。
掃除は勿論のこと、正月用の床飾りや茶道具、懐石、抹茶、菓子まで用意されていて、なんて楽ちんなのでしょう・・・!
それでも、茶事なので問答ができないのは如何なものかと、亭主役のN氏が愛蔵品をいくつかお持ち出ししてくださって、社中一同、楽しみにしていました。

席入は11時です。
我が晴れ着ですが、地紋のある藤色に扇面模様の色留袖、銀箔に葵祭の牛車行列を刺繍した帯、いずれも母の形見です(書いておかないとすぐ忘れるので、お付き合いください)。
一張羅の晴れ着をまとい、9時に車で出発したのですが渋滞もあり、9時50分にやっと到着。
一足先に到着していたFさんに心配をお掛けしたみたい・・・。



半東役のYさんが福島県いわき市から到着、社中全員も揃って待合へ入られたようです。
濡れ釜、島台茶碗のあたため方などを水屋で指示してから待合へ合流しました。
皆さま、素敵な晴れ着をお召しで、お正月らしい華やいだ雰囲気に包まれています。
この平和でかけがえのない幸せなひと時に、一瞬、胸がキュンとなりました。

初釜の茶事は初稽古でもあるので、なるべくお役を交代してやって頂きました。
初座では、正客暁庵、次客Aさん、三客Uさん、四客Tさん、五客Kさん、詰Fさん、亭主N氏、半東Yさん。
後座では、正客がFさん、詰N氏、濃茶は暁庵が務め、後炭はYさん、薄茶はYさんとKさんです。

板木が6回しっかり打たれ、茶事のスタートです。
白湯の代わりに梅干と結び昆布の入った福茶を頂きました。
待合の掛物はおめでたい「宝珠」画と「寿」賛の色紙、宗興と読めましたが・・・。
腰掛待合で筧の水音を聞きながら待っていると、袴姿に着替えた亭主N氏の迎え付けです。



頃合いを計って蹲踞を使い、広間(八畳)へ席入しようとすると、お釜が掛かっていません・・・
「お釜が掛かっていませんよ」
襖を閉め、しばし待ってから席入すると、床荘がシンプルで素敵でした。
青々とした「結び柳」と千歳盆に炭飾り、そしてN氏お持ち出しの掛物。
初日の出、海の上に蓬莱山があり、亀が泳ぎ、数羽の鶴が飛んでいて、お正月にふさわしい雄大な景色が画かれていました。
後ほど、「娘の結納の時に掛けて以来です」と伺って、N氏の教室や社中への親心のようなものを感じ、
「今年もいろいろお世話になります・・・」と深く感謝です。
作者を伺ってもうびっくり! (ナイショです・・・)

釜は芦屋の写しでしょうか、松の文様、鬼面の鐶付、味わいのある蓋、とても惹かれるお釜でした。
しっかり濡らしてくださった釜肌のなんと美しく、存在感を主張していることか!
久しぶりに味わう茶事の醍醐味の濡れ釜でした。


    暁庵の茶道教室の初釜 in 2017 ・・・(2)へつづく

         
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