暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

むらさき茶会-1

2015年10月31日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

秋冷の候、「霜降」が過ぎて、急に寒くなりました。
10月11日の「むらさき茶会」(私めの古希茶会)について書いておきたいと、
やっと重たい腰をあげました。
「茶会のアップはまだかしら?」
と首を長くして待っていてくださった方、お待たせしました。
遅筆ですが、お付き合い下さると嬉しいです。

お茶の恩師、先輩、友人たちへ次のようなご案内の手紙を差し上げることから始まりました。
ちょうど七十年目の終戦記念日に間に合うように・・・文月のおわりに。


                         
                                   「日の丸」が咲いています

暑中お見舞い申し上げます

長かった梅雨が明け、強い日差しに真夏の到来が実感されるこのころですが、
皆さまにおかれましてはご清祥のこととお喜び申し上げます。

今年は戦後七十年ということで、私も感慨ひとしおです。
私は昭和二十年八月二十九日、疎開先の茨城県取手市で生を受けました。 
太平洋戦争中、当時両親は東京住まいだったので、三度も空襲に遭いながら
都内を転々と移動し、市ヶ谷で三月の東京大空襲に遭遇。
一晩中、母は炎の中を夢中で逃げ回り、九死に一生を得て、
祖父母が疎開していた取手へ身重の体で辿り着いたそうです。
八月十五日に終戦、戦後の混乱の中、私は産まれました。

その私が七十歳、古希を迎えます。
古希とは「そんなに生きているなんてなんとまあ珍しい」という意味だそうですが、
平均年齢が男性八十才、女性八十七才の昨今では珍しくもなんともありません。
けれど、数年前から人生の区切りとして古希のお祝いだけはしよう、
それも茶会をしてお茶を通してお世話になった方、親しく茶の道を共に歩んでいる方と
お祝いすることが出来たら・・・と願っておりました。

幸い、身近な方々が茶会をサポートしてくださることになり、
本日、ご案内を差し上げる次第となりました。
未だ覚悟が足らず古希を連呼するのも恥ずかしく、古希のお祝いの色は紫だそうで、
むらさき茶会と命名させていただきます。
お忙しいことと存じますが、むらさき茶会へ御参席頂ければ、望外の喜びでございます。
拙いながら心をこめて御茶一服差し上げたく、
横浜・三溪園隣り、原三渓ゆかりの隣花苑へお出ましくださいますよう、謹んでご案内申し上げます。

     平成二十七年文月吉日         暁庵
 
                                     

                         
                                茶会が行われた隣花苑の秋の庭

手紙を投函してからは
「もう後には引けないぞ! むらさき茶会までの2ヶ月余は体調管理をしっかりしなくては。
 あせらずあわてず着実に準備をしていこうね」
と自分自身を励ます日々でした。
このような茶会は一生に一度だけ・・・準備を楽しみながら無我夢中で過ごしました。
  
                    
            むらさき茶会ー2へつづく


炉開きの支度中です

2015年10月29日 | 暁庵の裏千家茶道教室


     炉開きや 慣れぬ土方の 灰支度        暁庵
 
     灰かぶり ビオロン弾くや キリギリス      秋野 

炉開きの支度中です。
3年間しまい込んでいた炉灰を水洗い(アク出し)し、煮だしたお茶に漬けて数週間。
すぐに乾かすつもりが秋の長雨になり、記念茶会もありで延び延びになっていました。
やっと秋晴れが続きそうなので、庭に茣蓙をひろげ、灰を撒いて乾かしました。

もう少し乾かしたいところで、夜半に雨の予報です。
居間の片隅にビニールシートをひろげ、半渇きの灰を茣蓙で包んで運ぼうとすると、
「えっ何! 重過ぎ!」
一人では運べずにツレにSOS!
二人で持ち上げると、ずっしりした重さと言い、形や大きさと言い、
まるで死体を運んでいるみたい・・・もちろん未経験ですが、「刑事コロンボ」の見過ぎかも。


待合も模様替え・・・絵唐津の徳利に秋明菊

翌日も雨模様、次の日は外出、その死体(灰)は3日間、居間に置かれたままでした。
やっと数日間天日で乾かしてから湿し灰、さらによく乾かしてから炉灰を作りました。
揉んだり、篩ったり、乳鉢で砕いたり、灰をかぶりながらの作業は一度に出来ないので数日間続きました。

     12時を 過ぎても篩う シンデレラ(灰かぶり姫とも・・)      暁庵

炉へ篩った灰を入れ、釜を掛けて五徳の位置を決め、なんとか出来上がりです。ヤッタね!



 軸は「平常心是道」
   
その時は夢中でしたが、左の足首に違和感が・・・。
あわてて作業を中断しましたが、軽いねん挫でしょうか。
歩くと痛みが走り、今は安静にしています。
足首が伸びるので、特に正座が駄目みたいです。


 猫(?)もいる隣花苑の囲炉裏ばた


急に寒くなったと思ったら、暦は「霜降」、初冠雪の便りも聞こえます。
寒くならないうちにやっておこうと、炉の炭をせっせと洗っています。
炉の胴炭の大きく頼もしいこと! 
赤々とした炭火の温もりが恋しくなり、早く炉に火を入れて炭手前をしたくなりました。
出来たての湿し灰も使ってみたいです。
あとはねん挫の回復次第でしょうか。なんかムズムズしています・・・

11月4日の炉開きまであと1週間。 

              
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神無月の稽古  真之行・台子点前

2015年10月25日 | 暁庵の裏千家茶道教室

10月21日は風炉の稽古の最終日でした。

5月に教室を開いてから馴染んできた風炉の稽古も今日が最終日、終わり次第、開炉の準備にかかります。
最終日の科目は奥伝、真之炭手前と真之行・台子点前です。
京都の自主稽古以来久しぶりに、菓子七種を用意して生徒さんを迎えようと思いました。

床の軸は「平常心是道」、清水音羽山・良慶和尚の筆、
庭の片隅で一輪だけ咲いていた秋明菊(貴船菊とも)を古銅花入へ入れ、茶壺を荘りました。

                        

菓子七種は、栗の乗った大納言、月兎(薯蕷饅頭)、芋羊羹(以上、さくらや製)、
香果餅(京都老松製)、ピリ辛蒟蒻、里芋の含め煮(以上、暁庵製)、あんぽ柿です。

                        
                        

13時少し前にFさん、続いてAさんがいらっしゃいました。
この日の利休百首はFさん、
   「目にも見よ耳にもふれよ香(か)を嗅ぎて
       ことを問ひつつよく合点せよ」

好いことがいろいろあったらしく、お茶への意欲が一層高まったみたい・・・です。

真之炭手前はFさん、続いてAさんとFさんに真之行・台子点前をして頂きました。
奥伝なので詳しく書けませんが、
「奥伝の稽古が楽しみになりました」というAさんの言葉が頼もしいです。
風炉と炉と一回ずつの真之行のお稽古なので、神仏に御茶を点て奉るという気持を忘れず、
丁寧にしっかりと、回を重ねて所作や気持を学んでいくことが大切と思っています。
それに・・・真之行・台子点前をさせて頂くと、一本真(芯、心)が通ったような気がします。

                        

稽古後、別室に移り、残りの菓子を味わいながら皆で薄茶を頂きました。
濃茶は「慶知の昔」(小山園)、薄茶は「千代昔」(奥西緑芳園)です。

11月の炉開きや長屋門公園・紅葉の茶会の打ち合わせを終えると、秋の陽ははや暮れかかっています。
暖かそうなコートやショールで身を包んだお二人を玄関で見送りました。  
                                      

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横浜うかい亭へ

2015年10月22日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会
                  
                  

「ご近所さんと重陽の茶会」へお招きしたT氏から
「横浜うかい亭へ是非お招きしたいのですが・・・」
嬉しいご招待があり、10月20日にT氏夫妻とツレと4人で出かけました。

「困ったわ・・・何を着ていこうかしら?」
適当な洋服がないので着物にし、白羽二重に茶屋辻模様を染めた着物を選びました。
帯は花(芙蓉?)が描かれた薄レンガ色の塩瀬にしました。
初めての横浜うかい亭ですが、T氏が常連さんらしく、大勢のスタッフに出迎えられびっくりしたり、
高尾や八王子店と全く違う佇まいについ珍しくキョロキョロしたり・・・。

          
                                    ステキなガラスのコレクション

建物は金沢から移築したという和風建築ですが、一歩中へ入ると外国のホテルみたい。
ゴージャスな内装は和洋折衷で、アールヌーボー風な設えです。
最初に窓際の椅子席へ案内され、日本茶を頂きました。
これは茶事で最初に待合でお出しする汲み出しに相当するのかしら?

                    
                        窓際の椅子席で一休みし日本茶を

T氏は5年前から何度も手術をされ、病気と闘って来られたそうですが、
横浜うかい亭の料理にとても元気づけられ、そのおかげで体も一時より回復したとか。
今は美味しいものを食べること、奥様と旅行へ行くことが楽しみだそうです。

そんなT氏のために横浜うかい亭ではどのようなランチをお出ししたらよいか?
大勢のスタッフが話し合ったそうです。
大きな鉄板のある個室へ通され、準備された食材や料理の説明が丁寧に行われ、
聞けば聞くほど、料理に対する心くばりがスゴイ!と思いました。

         

今、手に入る最高の食材で美味しいものを目の前で調理してお出しする、
しかも調理しながらお客様と会話し、香りや音を楽しませ、出される料理のイメージをより豊かなものにしていく・・・スゴイ技術の持ち主がT氏ご指名のシェフSさんでした。
次々と出される吟味された料理を舌鼓を打ちながら味わい、堪能しました。
(繊細な料理の表現が難しく・・・栗スープ、北寄貝、牛ランプ、ホアグラのソテーなどでご勘弁ください)
器もマイセン、ロイヤルコペンハーゲン、ウェッジウッド、京焼の現代作家など素敵なチョイスでした。
ごちそうさま!

食後、二階へ席を移し、庭を眺めながらデザート3種(柿のシャーベット、絶品のモンブラン、特製プリン)と珈琲とおしゃべりを愉しみました。

            

うかい亭のおもてなしと茶の湯のおもてなし、料理と茶の湯と切り口は違っていても、
お客様のことを考え、今できる最高のおもてなしをする・・・その心意気に深く感じ入り、
一方で、今できる最高のおもてなしとは程遠い、未熟な自身のお茶を反省しています。

とっても素晴らしく、とっても刺激になった横浜うかい亭のランチタイムでした。
そして、何より茶会の疲れが出ていた心身が心地よく癒されたのです。
Tさんご夫妻、ありがとうございました・・・。


紅い椿  神奈川現展2015

2015年10月03日 | 暮らし


静岡県大井川の近くに住む、大学時代からの親友Mさんから葉書が届きました。
Mさんは仕事を続けながら米や野菜を作り、布絵の制作を愉しんでいます。

   お元気ですか?
   パソコンの調子が悪くてしばらくブログを拝見できません。
   布絵4点ほど、神奈川現展に出品しました。
   22日と28日に当番で会場にいます。
   合間の連休は稲刈です・・・・。


それで、伊藤庸庵の旧住所(神奈川区高島台)を探索した後、「神奈川現展」へ駆けつけました。
会場は横浜市民ギャラリー(横浜市西区宮崎町)、桜木町駅から徒歩15分くらいでしょうか?
紅葉坂の途中から左手の坂道を登っていくと、奥に横浜市民ギャラリーがありました。
その日は坂道がついていたみたいです。

                        

約1年ぶりの再会です。
広い会場に展示された作品はどれも大きく、Mさんの布絵も50号が2点、20号が2点です。
魚の画、花ショウブ2点、椿の画をゆっくり鑑賞しました。
4点も出品するなんて、凄い!
なんか、彼女の内面に燃え盛っている創作エネルギーを感じます。

椿の画は制作途中で見た時からどんな布絵に仕上がるのか、楽しみに待っていたのでした。
紅い椿の画(50号)が気に入り、お持ち帰りも考えたのですが、
京都を去る時にツレの先生から記念に購入した水墨画(20号)でさえ、
我が家では飾る場所の確保に四苦八苦したことを思い出し、断念しました・・・・

                         

16時を過ぎたので、作品を搬送業者へ委託し、ツレと3人で駅近くの喫茶店へ。
作品のこと、稲刈りなど農作業のこと、同窓会のこと、頂いた銀杏のレシピ・・・
サンドイッチをぱくつきながら夢中でおしゃべりし、短い再会の時を過ごしました。
11月の同窓会でまたお会いしましょうね!  


追伸
数あるブログの中から「暁庵の茶事クロスロード」をご愛読いただき、ありがとうございます。
10月に行う茶会準備に集中したく、しばらくブログをお休みさせていただきます。