暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

令和6年水無月の稽古だより・・・奥伝の稽古

2024年06月29日 | 暁庵の裏千家茶道教室

  (土佐ミズキ、コヒルガオ、ギボウシ)

 

水無月も早や終わり近くになりましたが・・・

水無月に入り、風炉の点前にもだいぶ慣れてきたので、今月から奥伝の稽古が入りました。

奥伝の稽古を毎月1回して差し上げたいところですが、5月に風炉に変わると、最初は平点前や初炭などの基本をしっかり稽古していただきたいので、5月は奥伝無しにしています。

6月の奥伝は行之行台子です。

暁庵自身も自主稽古や東京教室の稽古に励みながら奥伝をお教えしていますが、社中の皆さまも奥伝の稽古に楽しさや、やりがいを感じているように思えて・・・喜んでいます。

       (庭のギボウシが満開です)

現在、6人の方が行之行台子の稽古に切磋琢磨しています。

私見ですが、行之行台子は四ヶ伝の後に初めて習う奥伝ですが、奥伝の中で一番複雑で難しいのが行之行台子だと思っています。暁庵は最初に行之行台子を教わった時にあまりの難しさに壁を感じ、挫折した経験があるのです・・・(トホホ)

比較的初心者の3人の方には順番と位置と正しい所作が身に付くよう指導していますが、出来たら月2回同じ科目を稽古して頂きたいくらいです。他にも稽古する科目が目白押し(?)なので、原則として奥伝は月1回にしていますが・・・。

それで、奥伝(奥伝に限りませんが・・・)を身につけるには何といっても回数が必要なので、自宅での自主稽古をお勧めしています。月に1回の奥伝稽古の前後に1回ずつ自主稽古をすると、3回稽古したことになり、前(次の奥伝科目)へ進む事ができると思うからです。

一方で急いで先へ進まずに、習得出来ていない奥伝の科目を毎月続けるということも考えられます。生徒さんの希望や事情を伺いながらどちらにするかを判断することにしています。

 

     (或る日の行之行台子の稽古の時に・・・)

ベテランの3人の方にはいろいろな質問をすることにしています。すると、

「えっ!そんなこと考えたことがありませんでした・・・」という声が返ってきたりします。

「茶道点前の三要素」(順番、位置、所作)の他にもまだまだいくつも奥がありそうで、暁庵も質問しながら一緒に考えるのが楽しいです。

正解が無いこともありますが、考えることが重要だと思っています。答えが返ってこない時は宿題にしたり、私が答えたりしています。

暁庵も含めて今宿題になっているのは

「四ヶ伝を四畳半でする理由は?」です。

S先生が、昨年12月の東京教室の稽古で質問されたようなのですが(6ヶ月間お休みしたのであまり覚えていないのです・・・その質問だけがノートに書かれていました)、その答えはわかりません??

今、調べていますが時間が掛かりそうです・・・でも、楽しみながらゆっくりやっています。 (答えはこちらには書きませんが、悪しからず)

 

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聴雨の茶事を終えて・・・(3)薄茶を愉しく

2024年06月27日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

      (後座の花・・・夏椿と雪柳)

つづき)

湯相も火相もよろしいようで、後炭を省略し薄茶にしました。

薄茶のお点前は半東AYさんにお願いし、暁庵は半東です。

薄茶の頃には激しい雨も治まったので雨戸を開け、燭台を水屋へ引きました。すると、蝋燭の元では一眠りしていた床の花が気のせいか生気を取り戻したように思えました。

床の花は夏椿(沙羅の木)と雪柳、花入は火吹き竹です。

花はいつも直前まで迷いますし、探すのに苦労しますが、おもてなしの心意気と思って頑張っています。

夏椿を生けたかったのですが今年は咲くのが遅くハラハラしました。当日の朝になってツレが某所から数枝を採取してきてくれました(いつも助けられて・・・)。

もう1つ、コヒルガオ(雨降りアサガオ)と土佐ミズキを用意していたのですが、後座の最初が暗中なので白い夏椿にしました。

       (干菓子は琥珀糖とおちょぼ)

AYさんが煙草盆と干菓子を運び出し、薄茶点前が始まりました。半東・暁庵はすぐに茶室に入らず、AYさんの薄茶点前をじっくりお客さまに拝見してもらうようにしています。

AYさんは薄茶点前はもちろんですが、美味しい薄茶を点てて飲んでいただきたいと、職場に茶道具を持ち込み、朝夕薄茶を点てて濃さや量、温度を考えながら修練してくださったようです・・・。

お客さまから「とっても美味しいです。点てるのがお上手ですね」というお声が掛かり、私まで嬉しくなりました。薄茶は「金輪」(丸久小山園)です。干菓子は琥珀糖(桔梗屋)とおちょぼ(万年堂)をお出ししました。

薄茶では西行法師の和歌を念頭に茶碗4碗で、雨のいろいろな模様や景色を表わしてみました。

   よられつる 野もせの草のかげろひて 

       涼しくくもる 夕立の空     西行

主茶碗は義山、「白雨」と名付けました。

京焼の次茶碗は「軒の玉水」(仁清写し水玉文、桐鳳作)、三碗目は「うずまき」(神奈川焼三代井上良斎作)、四碗目は「雨過天晴」(琴浦窯、和田桐山作)です。

京都・灑雪庵以来のお付き合いなので、お話が弾み、いつまでも色々な事をお話していたい・・・そんな愉しい薄茶席でした。

 

   「うずまき」の茶碗(神奈川焼三代 井上良斎作)

     「雨過天晴」の茶碗(和田桐山作)

棗と茶杓を拝見して頂き、半東AYさんがお話しました。

近隣の公園や水場でちょうど蛍が飛び交う時期なので、早苗蛍蒔絵の大棗を使いました。

茶杓は銘「嘉祥」(紫野 藤井誠堂師作)です。茶事当日の6月16日は菓子の日で、「嘉祥の日」と名付けらえています。

   (蛍が飛び交う早苗蛍蒔絵の棗と茶杓「嘉祥」です)

こうして「聴雨の茶事」が楽しい中に終了しましたが、遠来のお客さまをいつまでもお引き止めしたい気持ちでいっぱいでした・・・。

再会を心に期してお見送りしました。「また、元気でお会いしましょう!」 

 

茶事後にAAさまから後礼のお手紙と共に素敵な和歌が届きましたので「聴雨の茶事」の記念に記します。

      夏椿 細き竹筒さわやかに 

        晴れわたる日に 雨音を聴く  

 

     

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聴雨の茶事を終えて・・・(2)濃茶のひと時

2024年06月23日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

つづき)

懐石が終わり、中立の御案内をしました。

立礼では中立でお菓子をお出しすることが多いです。・・・お菓子と濃茶が近い方が良いと思い、お菓子は別室で召し上がって頂きました。

もう1つ、初座(挨拶、初炭、懐石)が長いので、待合へ移ってそちらでお菓子を召し上がっていただく方が気分転換になるのではないかしら? ただ、その日は気温が30℃に達していたので腰掛待合は省略し、銅鑼の合図で待合から直接露地へ出て蹲を使い、後座の席入りをしていただきました。

主菓子は銘「水面」、石井菓子舗製(横浜市旭区都岡)の雪平(せっぺい)です。

菓子皿は花ぬりといい櫻井漆器(愛媛県今治市)です。次客Mさまのお茶事に招かれた時に櫻井漆器のことを知り、「再び車で四国遍路」の折に求めたものを使いました。

銅鑼を打ちました。  大・・・小・・中・中・・・大

後座は、「急に雨が強く降り出したので雨戸を閉めさせていただきました・・・」ということで茶室を暗くし、蝋燭の灯の元、濃茶を差し上げました。

 

        (茶事中の写真が無く、以前のものですが・・・)

襖を閉め、燭台の灯りの中、濃茶点前をしました。

少し緊張し呼吸を調えながら四方捌きをし茶入を清めます。帛紗をさばき直して茶杓を清め、茶碗を茶筅通しをして茶巾で拭き上げます。

いつも何回となくやっていることですが、今回は緊張感を持つこと、所作を丁寧にゆっくりと姿勢よく・・・を心がけました。濃茶点前の所作が茶事一番のご馳走になることを目指していますが、未だ道は遠しです・・・。めげずにまいりましょう。

黒楽茶碗(一入作)に濃茶2人分を掬い出し、湯を汲み入れ、練り始めました。

2人分というと約10g、練り始めると湯が足りないことがわかり、湯を足して再び練り始めます。蝋燭の灯では茶碗の中が見えませんので、手先の感触に気持ちを集中しながら練り上げていきます。茶筅の濃茶の付き方で足す湯の量を決めますが、これも手指の感触を頼りに足す量を決めていきます。

「見えない時は心眼で練るのよ!」と何処からか声が聞こえてきます。ご指導頂いたことが実感としてやっとわかってきたような気がしました。

 

     (後座の点前座・・・実際は暗いです)

半東AYさんが取り次いで主茶碗をお正客OKさまへお出しします。

「どうぞお二人様で・・・」

「お服加減はいかがでしょうか?」とお尋ねすると、「大変美味しゅうございます」のお声に心から安堵しました。

    (蝋燭があっても暗い点前座・・・以前の写真ですが)

次茶碗は御本三島です。茶碗を清め拭き上げてから、濃茶を3杓掬ってから回し出し、2人分を練りました。

2碗目も何回か湯を足しましたが、自分の手指の感触を信じて、たとえ習い通りの湯を汲む回数でなくても、自分が納得できる濃茶を差し上げたいと、覚悟のようなものができました・・・これは茶室を暗くしたからこそ会得できた境地でしたが、明るくっても同じことだと思います。

濃茶は銘「一滴翠」(丸久小山園)です。

「お練り加減好く、美味しゅうございます」の声に安堵しながらも、濃茶「一滴翠」にも助けられた気がしました。

茶入は朝鮮唐津の胴締め、鏡山窯の井上東也造、仕覆は小真田吉野間道です。唐津方面へツレと旅行した時にこの茶入と出逢ったエピソードをご披露しました。

 

白竹の茶杓は銘「無事」、紫野・後藤瑞巌師の御作です。

「無事」は禅語でその意味するところはいろいろあるようですが、般若心経の教えの1つである「空」を表わしています。「空」とは、全ての物事が移り変わって行く、留まることがないという意味です。

全ての物事が移り変わって行く中でたとえ一瞬でも、お客様へ御茶を差し上げ、親しく言葉を交わし、その時を共に愉しむことの、なんと!幸せなことか・・・そんなお話をしたような気がします。

お茶をやっていて本当にヨカッタ!と思う濃茶のひと時でした。

 

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聴雨の茶事を終えて・・・(1)再会を喜び合って

2024年06月22日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

 

令和6年6月16日(日)に聴雨の茶事をしました。

昨年5月から始めた立礼の茶事も9回目となり、残りあと1回となりました・・・

毎回なるべく新しい趣向を入れたい、変化をつけたい・・と迷いながらやっています。いつも「道具はあり合わせで、心はあつく・・」を心がけて。

先ずは道具組、前回の聴花の茶事では花に因むものは避けようと心がけましたが、今回は「雨」をどのように表現しようか・・・どうしたら雨を聴いて楽しんで頂けるかしら・・・難しかったです。

その日は早朝まで雨が強く降っていましたが、8時には雨が上がり、白露をキラキラと輝かせて庭の緑がイキイキときれいでした。

11時半の席入りです。

板木が4つ打たれて、半東AYさんがロック氷を入れたレモングラスを運び出し、腰掛待合へご案内しました。

待合の掛物は「灑雪庵」(さいせつあん、大谷泉奏筆)、10年前京都に住んでいた時の古家の玄関土間に額に入れて掛けていたものを、横浜へ帰ってから表装しました。

 

今日のお客様は4名様、正客OKさま(山口県より)、次客Mさま(兵庫県)、詰OYさま(京都市)の3名様は京都・灑雪庵へもお越し頂き、この度も遠方から馳せ参じてくださった茶友です。三客AAさま(横浜市)はOYさまの茶友です。今回初めてのお目文字で、お会いするのが楽しみでした。

皆さま、お暑い中素敵な単衣のお着物でいらしてくださり、感謝です。

コロナもあって久しぶりの再会を喜び合ってご挨拶を交わしました。

床の掛物は「閑眠高臥對青山」(鵬雲斎大宗匠の御筆)です。

「いつの間にか年を重ねて、何をするにも面倒になったけれど、お茶だけは何とか続けています。懐かしい皆さまとお会いして無事を喜び、今日は雨に煙っている青山を、これもまた一段と好し・・・と愛でながら楽しく過ごせたら・・・」とお話ししました。

都合により朝茶事のように初炭を先にし、風炉中も拝見して頂きました。

炭斗は鵜籠、羽箒は白鳥、飾り火箸は「ひねもすのたり正午の茶事」のお正客SKさまからご恵贈頂いた龍玉頭飾火箸(当代大西清右衛門作)、香合は乾漆の菅笠香合(川瀬表完作)、香は沈香(松栄堂)です。

         (菅笠香合)

初炭を終わると、12時をかなり回ってしまい、小梶由香さんが腕まくりで作ってくださった懐石をお出ししました。お腹が空いていらしたのでより一層美味しく頂いたのでは・・・と思っていますが、お客さまにはいかがだったでしょうか?

最初の御膳に一番力を入れているそうで、いつも感心したり・・・納得したり・・・美味しいです。

    (最初の御膳・・・一文字、汁、向付)

亭主と半東も水屋でお相伴させて頂きました。白身魚(今回は鯛)の湯引き(梅醤油添え)、煮物椀(碗盛)、そして炊き合せに舌鼓し、今でも心と舌に残っている懐石でした。

     (煮物椀・・・はも真蒸水無月仕立て)

  (預鉢・・・穴子・長芋・モロッコいんげんの炊き合わせ)

 

聴雨の茶事の献立   小梶由香作成

 飯   一文字

 汁   小芋 じゅんさい

 向付  白身湯引き 梅醤油

 椀盛  はも真蒸水無月仕立て

 焼物  米茄子の鳥味噌餡

 預鉢  穴子 長芋 モロッコいんげん 炊き合わせ

 箸洗  デラウェア

 八寸  豆腐味噌漬のバケット 万願寺焼

 湯斗

 香の物 沢庵 水茄子 茗荷甘酢

 酒   美しき渓流 楯野川  山形県酒田市産

 

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      聴雨の茶事の支度中です

 


聴雨の茶事の支度中です

2024年06月14日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

 

6月半ばに今年3回目の立礼の「聴雨の茶事」をするので、茶事支度にせっせと勤しんでいます。

6月は水無月といい、「水の月」を表わしていて雨が多い月です。

雨が好きです。

朝から雨だと尚良し・・・です。
心が落ち着いて(つまりあれこれ忙しく動く必要も外出する気もなくなり)、「今日はのんびりしよう」と自分自身に言い聞かせ、時間がゆっくり流れだします。

 

 (立ち蹲に紫陽花が涼しげで・・・豊橋公園三の丸会館にて)

「聴雨」と名付けたものの、テーマと想いと表現がなかなか意にかなわず苦戦しています。

関東地方はまだ梅雨入り宣言は出ていませんが、晴天で暑いかと思っていると、翌日は曇り空になって急にパラパラと雨が降り出したり、とても不安定な昨今です。でも、雨の観察にはもってこいです。

夕方、急に風が吹き出して冷たい風に変わると俄雨が降りだします。そのような夕立前の微妙な変化の様子を詠んだ西行法師の歌があります。

   よられつる 野もせの草のかげろひて 

       涼しくくもる 夕立の空(新古263

歌の意は、もつれ合った野一面の草がふと陰って、見れば涼しげに曇っている夕立の空よ。

【補記】夕立の雨に先立って強い風が吹く。草を乱したのはその風であり、その風が運んで来た巨大な雲によって野原一面が陰ったのである。白雨が降り出す直前の景を大きく捉えている。西行晩年の丈高い自然詠。(「千人万首」より)

この歌のように刻々と変わる空や雨の様子、雨の色、雨を待っている草木や人々の様子、そして雨の後の空の青さ・・・など、雨にかかわる事象が次々と浮かんでは消えていきました。

 

    (雨に濡れた苔庭・・・豊橋公園三の丸会館にて)

聴雨の茶事のお客さまは遠方の方が多いこともあり、今から緊張して胸がドキドキしています。

昨日、お客さまのMさまから電話が入りました。

「ここのところ30℃を越す暑さですけれど、お着物で迷っています。まだ6月だけれど絽でもよろしいかしら?」

「どうぞ何でも良いと思ったものを着ていらしてください」と私。

Mさま、ありがとう! 頂いた電話のお陰で、もう一段スイッチが入りました。

懐石の小梶由香さんから献立が届いているし、半東AYさんとの最終稽古と打ち合わせも済んでいるし・・・。

さあ~! 気合を入れて、これから買い物と花を探索に行かなくっちゃ・・・ 

 

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