暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

大型連休の或る日・・・炉から風炉へ

2019年04月30日 | 暮らし

    新緑が煌めいて・・・徒歩約15分の公園にて


世間では大型連休に突入したとか・・・
ぐずついていた天気がうそのように晴れ渡って、戸外でお昼を食べたくなりました。
でも、出かける前に、5月1日からの稽古に備え風炉の準備をしておかなくてはなりません。
その日は風もなく、絶好の風炉灰の入れ替え時でした。

ベランダに出て、風炉灰を100メッシュの篩で篩うこと小1時間。
唐銅道安風炉へ灰が入りました。
「さぁて・・・釜はどれにしようかしら?」
箱が無く、棚に置いてあった責紐釜が目に留まり、責紐釜の久しぶりの登場です。
五徳を据え、釜に合わせて高さを調整します。釜の羽が風炉の上部より少し見えるくらいが良い・・・と記憶していますが、流派によって羽の高さ(位置)については違いがあるそうです。

灰形も続いて整えたいところですが、今日はここまでにします。
一度に頑張ると腰に負担が掛かるので、少しずつ分けてやることにしています。



近くの公園の藤が満開とのことで、散歩へ出かけました。
コンビニへ寄って、助六弁当1個、おにぎり2個、牛乳と野菜ジュースの紙パックを買いました。
家々の庭の花木が美しく、木香薔薇、花水木、ジャスミンが目を惹き、クレマチスも白や紫やピンクの花を咲かせています。



向こうから自転車を引いた女性がやってきました。
荷台に大きな筍がたくさん入っています。
「筍がいっぱいありますね・・・分けていただけませんか?」
思わず声をかけました。
すると、女の人は笑顔になって
「どうぞどうぞ・・・後ろにも積んでいますので見てください。
 朝採りなので柔らかく美味しいですよ」
近所の農家の方で、朝採りの筍を頼まれて届ける途中だったようです。
中くらいの筍を2本選ぶと、小さいのを1本おまけしてくれて千円。
今年は筍に縁がないのかしら・・・と思っていたので超嬉しい出来事でした。


     満開の藤棚の下でランチを


     かわいい殿様バッタを見つけました

公園の藤棚に着くと、紫色の藤の花が満開で甘い芳香を放っています。
藤と言えば京都の「鳥羽の藤」を思い出しますが、こちらの藤は長く垂れ下がらない種類のようです。
藤棚の下のベンチでランチにしました。
大きな公園なので大勢人が来ているかしら?と思ったのですが、私たち二人だけで静かなものです。

帰ってからすぐに筍を茹でて、煮物、筍御飯、味噌汁など筍づくしが嬉しく満喫しています。


三溪園・春のクロスロード茶会・・・(5)後礼のおたよりとフィナーレ

2019年04月27日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)



(つづき)
後礼のおたよりの続きです。

 Rさまより  
暁庵様
先日は素晴らしいお天気となり 桜と新緑と春の日差しに見守られながら
お茶会を楽しませていただきました。

当日のお天気は客としてはもちろんですが、先生と社中の皆様がどれだけ喜んでいらっしゃるかしら・・・とうれしくなりました。
そして笑顔あふれるスタッフの皆様の行き届いたおもてなしに感激の一日でした。

結婚してすぐの頃 戸塚に住んでいたことがありました。
山形から珍しく父と母が遊びにきて「どこか行きたいところある?」
と私が聞きましたら父が「三渓園に行ってみたい」と言ったことを思い出します。
小さい子供を連れて行くには三渓園は遠いから・・・という理由で私が却下。
結局、鎌倉観光になりました。その時の私は近代数寄者の名前など誰も知らなかったのです。

あれからずっと訪れる機会がなくて今回 暁庵様のお茶会でようやく訪れた三渓園でした。
はじめての三渓園は思っていたよりずっとずっと美しく素敵な場所でした。
沢山の茶室はそれぞれが個性的で春草蘆の中の光のうつろい 蓮華院の土間の魅力、そこでいただくお茶の美味しさ・・・贅沢な時間を過ごさせていただきました。

翌日訪れた五島美術館の展示の中に 冷泉為恭筆「不老門」の軸を見た時、一入の黒楽のしっとりとした感触と豊かな表情が蘇りました。
あれは本当にいいお茶碗ですね。

暁庵様のブログを何年前から拝見していたのか思い出せませんが、遠くから仰ぎ見るようにしていた方と こうやって親しくやりとりしていることが夢のようです。
一区切りとおっしゃっていらっしゃいましたが、沢山のファンのためにもどうぞご無理のない範囲で継続してくださいますよう願っています。
お疲れになったと存じます。お片付けはゆっくりなさってください。 





 長野先生社中の山崎さまより 

桜が散りはじめ木々の若芽が目にも鮮やかにしみる三溪園の春草廬でのお席にお招き頂きまして、ありがとうございます。
築400年余、有楽斎の作と言われて障子も多く明るいお席でした。

一入の茶碗と珍しい黒薩摩の茶入ほか素敵な取り合わせの数々、お茶の楽しさ、お茶の奥深さを身に感じ入りました。
また、迎え礼送り礼の際の銅鑼の音色、打ち方、余韻は素晴らしく心に残りました。
また、お逢いするのを楽しみにしております。
     


      満開のシャガ

 Tさまより  

新緑の美しい季節となりました。
過日は三溪園でのクロスロード茶会にお招き頂き、ありがとうございました。
満開のシャガ、山吹、散り敷く花吹雪の中、春草廬に向かいました。

相客の皆さま方にご挨拶を申し上げておりましたら、思いがけず中野様が入られ、緊張も解けてお迎えを待ちました。
春草廬では、九窓の明るみの中、お点前を拝見しながら暁庵様のお話をうかがっておりますと、確かに三畳台目が拡がって行くのです。

京都の灑雪庵の扁額を軸荘されて寄付きの床に、
そしてブログをひと休みされるとのお話し・・・・
人生のある時 ふと立ち止まり 目指すところを変えて歩み出す
ゆきゆきて またゆきゆく
拘りをもたず
柔軟な御心で御茶をなさる暁庵様のお気持ちが心にしみ入る思いでございました。

蓮華院では 
F様と藤の花房のお迎えを受けました。
素敵な石の露台のある待合
裾が人に磨かれた床柱
N様の素晴らしい御道具の数々

暁庵様と社中の皆さまに心より御礼を申し上げます
どうぞお疲れがのこりませんよう くれぐれおご自愛くださいませ
ありがとうございました      かしこ   





さて、いよいよ「春のクロスロード」茶会のフィナーレです。
後片づけが終わってから駐車場へ行くと、桜吹雪がスタッフの髪や着物に舞いしきり、それはそれは美しくはかなく・・・・・


 Sさまより
宗暁先生
おはようございます。
昨日のクロスロード茶会、お天気にも恵まれ、沢山お勉強させて頂き誠に有難うございました。
当日を迎えるまでの準備を垣間見るたび、これだけの準備をするから当日の素晴らしい茶席を持てるのだと改めて感じました。

先生の心づくしのおもてなしに、最後のお別れは、桜の花びらが風と一斉に空に舞い、「いい御茶会でした・・・」と囁いているようでした。

私もお稽古の一日、一日を大切にし、一歩ずつ進んでいきたいと思いますので、宜しくご指導をお願い申し上げます。
有難うございました。
 
  


三溪園・春のクロスロード茶会  (4)へ戻る   (3)へ  (2)へ   (1)へ

      


三溪園・春のクロスロード茶会・・・(4)後礼のおたより

2019年04月26日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

      三溪園・臨春閣

(つづき)
お客さまから心温まる後礼のおたよりが届き、疲れが吹っ飛ぶ思いです。
いくつかをご紹介させて頂き、皆様に御礼申し上げます。

 五葉会・宗悦さま  
ご機嫌よろしゅうございます
この度は記念のクロスロード茶会にて素晴らしい時を過ごさせて頂き 誠にありがとうございました
曙席での皆様の凛とした気配が心地よく幸せなひとときでございました。

また帰路にては暁庵様の御縁で、これから三溪園でクロスロードするであろう皆様の、数多くの麗しいお姿が風に吹かれて集まり、また流れていく花々のように美しく感じました。
素敵な出合いをありがとうございました。      


  樋口さま 
暁庵さま
昨日はありがとうございました。
茶会は今までに体験したことのないものでした。
春草蘆という茶室、暁庵さまのお人柄、今までにたくさんの茶事茶会を経験されたであろうお客様たち。
三者が相まって醸し出すお茶会の雰囲気は、たくさんの決まりごとがあるにもかかわらずなんて自由で楽しいものなのでしょう!

席順のご配慮や名前を呼んでお声をかけてくださるなど、暁庵さまのお心づかいも大変嬉しゅうございました。

私はこの雰囲気をもっと味わいたくて目をつむって深呼吸をしてしまいました。
そして、お濃茶のまったりとした味わいは今でも舌に残っております。

お薄席に移ったころには、お客様たちともう何度もお会いしているような和やかな気持ちになりました。
終わってからも、なんだか去りがたくお一人お一人ともっとお話ししたい、そんな気持ちになりました。
そして、ああ、楽しかったと思わず声に出しておりました。
一期一会とはこんなことかしらと思った次第でございます。

それもこれも暁庵さまとスタッフの皆様のご尽力があってのこと。深く感謝申し上げます。
本当に参加してよかったねと同行の高橋さまとも語りあいました。

ブログはしばらくお休みとのこと。
とても残念ですが、今までの記事をもう一度読み返してみようと思っております。
いつかまたお会いできる日を楽しみにしております。    




 三日月さま 
暁庵様
先日は、好天に恵まれた素晴らしい御茶会に御招きいただき ありがとうございました。
この度は母も入院中でしたし、妹が仕事を休んで母の面倒を見てくれたので気の合う御仲間とご一緒に三渓園にお伺いすることができました。

それにしても春草蘆での御濃茶の美味しかった事!
絵唐津のすっきりした、それでいてどっしりと風格のある御水指。
きりっとされた若者の御点前がとても緊張されているのですが、綺麗な御捌きとお練加減で大変結構でございました。

御軸「灑雪庵」から始まり暁庵様のおもてなしが、きっと三日月には敷居が高いものであろうと考えておりましたが、御人柄そのままに、気品高いのですが、どこか?アットホームで嬉しかったです。
御道具類は、もとより素晴らしいものでしたが、大樋さんの飴釉の御茶碗の形がすっきりとしていて印象深い物でした。
できればずっと、あの小間で暁庵様とゆっくりとお話がしていたいと、いつまでも身をゆだねていたいほどの素晴らしい空間でした。

又、蓮華院のお薄席もたくさんの御茶碗でのおもてなし。
大きなお部屋にぴったりの御香合や可愛らしい御水指、金地の山水や滝が正面に見える大棗や七宝透かしの蓋置など咽喉から手が出そうなものばかりでした。

きちんとお仕事をこなされる御手伝いの生徒さま達にもどうぞ宜しくお伝えくださいませ。
心に残る春の遠征し甲斐のある御茶会でございました。
どうぞ早くお疲れが癒えますように!
又、御来阪の折には是非ご一報くださいませ。あばら家ですけれどお立ち寄りいただければ幸甚です。
         





 Rさまより    
暁庵様
桜は色々な形で楽しませてくれますが、やはり舞っている桜吹雪が私は一番好きです。
先日は春の一日ゆったりとお招きをいただきましてありがとうございました。
ブログを教えて頂いてから私も毎回更新を楽しみにしておりました。
御同席の樋口様のように茶室の中で亭主とお客様が初対面、「初めまして」と言うのもとても新鮮で、まさにクロスロード。

南北東西どちらの方角にでも楽しみ醍醐味を見つけられる暁庵様のお茶の世界に、また参加させて頂けて新たな刺激を受けました。
九窓亭ならではの、どこか華やかなお茶室に再会が嬉しい不老門。
どっしりとした黒薩摩の茶入と大樋の茶碗、鮮やかな山吹、竹の炉ぶちも初めて拝見いたしました。

お正客様との和やかな会話もですが、お手伝いをしてくださっている社中の方々が皆さま上品でしっかりしていらして、暁庵様の周りの方々はやはり流石・・・と感心致しました。ご人徳でいらっしゃいますね。

蓮華院では可愛いお嬢様とお隣の席になりました。
私が初めてお茶会に参加したのもちょうど同じ頃、叔母に連れられて三溪園ででした。
懐かしさと、又新たに感動をいただいた春の一日、本当にありがとうございました。

何とか13日の茶会が終わるまで待って頂いて、今入院中です。
検査をしなくてはならないポリープが有り、簡単な手術をいたしました。
点滴をしながらなので こんなお手紙で気持ちの半分も伝わらず申し訳なく思います。
どうぞお疲れがでませんように・・・・。
またお目に掛かれますのを楽しみにしています。     


(お手紙を拝読して飛び上りました。
検査のことを伺っていたのに忙しさに紛れて忘れていたのです。
入院を伸ばして茶会へ駆けつけてくださったRさまの御気持に感謝しながら、どっぷり涙して読みました・・・・暁庵)


三溪園・春のクロスロード茶会  (5)へつづく  (3)へ戻る  (2)へ   (1)へ



三溪園・春のクロスロード茶会・・・(3)蓮華院の薄茶席と会記

2019年04月25日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 ・・・やっと蓮華院へ着きました(蓮華院の歴史などはこちらへ

(つづき)
蓮華院の薄茶席のことをいろいろ書きたいのですが、春草廬(濃茶席)に缶詰状態だったので全く様子がわかりません。
それで、席主のお二人、中野宗等氏と藤田宗厚さんから頂いたメールを掲載します。


  「古筆百人一首切」 冷泉為相卿筆・・・蓮華院・本席
     おうけなく浮世の民におほふかな
         わが立つ杣(そま)にすみぞめの袖

     花さそう嵐の庭の雪ならで 
         ふりゆくものは我が身なりけり

     こぬ人をまつほの浦の夕なぎに
         やくやもしほの身も焦がれつつ



  中野宗等氏より

蓮華院・薄茶席のことを思い出すまま書いてみました。
竹巻煎茶葉盆に花筏の干菓子が運ばれてきます。薄茶席は濃茶席と違って明るい雰囲気です。
6畳の席に7~8名ゆったりと座り、歓談され、たいへん和やかな席になったと思っています。
濃茶席のあの凛と張りつめた小間の雰囲気から、蓮華院の土間待合のほの暗い世界から解き放たれるような茶席になったのでは・・・と。



  琵琶床に高麗狂言袴香炉、床に古染付の扇面香合

外では竹林が葉を揺らし、かろうじて残った桜が舞い、日頃の精進をほめるがごとく天気に恵まれました。
そして多くのお客様に接し、お話しし、お茶のご縁をつくづく感じ、感謝した・・・そんな三渓園での茶会でした。    合掌   




   薄茶席の芦屋釜と煙草盆

  藤田宗厚さんより
宗曉先生へ      
先日の「春のクロスロード茶会」蓮華院薄茶席の報告をいたします。
が・・・なんとまだ10日しか経っていないのに 
「あ~何とか無事に終わった」と思った途端に記憶が定かではなくなってボ~としています。
でも印象深いことは、本当に皆一丸となって、お客様に美味しい薄茶を差し上げるべく、それぞれの担当することをしっかりやり遂げたことと思われます。
幸い大きなアクシデントもなく、和気藹々と各席が進み、帰って行かれるお客様の顔や話し声も弾んでいたように思いました。
会話を交わす双方に、春の佳き日を賞で合いたいという気持ちが呼応して どのお席も「この時こそが一期一会なんだ・・・」と思いました。



薄暗い待合の土間席で少しの時間ですがお過ごし頂き、本席に入られた時の床の間や琵琶床の設えに感動される方もいられて、土間席の扉を閉めて良かったです・・・。


       点前座の設え

薄茶茶碗の数々もそれぞれに面白味があり、種類が違うのにもかかわらず、何故か不思議な調和が取れていたようです。
社中一同で成し遂げた経験をこれからも活かして、益々茶道に精進して行きたく思いました。      

 




忘備録として濃茶席と薄茶席の会記を記します。

濃茶席(春草蘆)
待合(広間)
床  「灑雪庵」(さいせつあん)   泉奏筆 
花   イチハツ 山吹
花入  天平瓦写
敷板  ミャンマー古寺古材
主菓子   銘「さくら前線」(金団) 石井製(旭区都岡)
菓子器   漆器蓋物   
   
本席(春草廬)  
床   「點笑」(てんしょう)   清水公照師筆
香合  「一蓮弁」  東大寺大仏殿修復古材  鉄光造
棗    鵬雲斎好 三景棗  幸斎造     
釜    霰唐松真形釜  美之助造
炉縁   東大寺二月堂松明竹張  
水指   絵唐津  12代中里太郎左衛門(無庵)造
茶入   帖佐焼 銘「翁」  
仕服   裂地「シマモール(19世紀、東南アジアの縞)」  
主茶碗  黒楽 一入作 藪ノ内流7代桂陰斎銘「不老門」 
 替   大樋焼飴釉  6代朔太郎作 認得斎銘「松山」 
茶杓   後藤瑞巖和尚作銘「無事」
蓋置   古竹 
建水   古瀬戸沓形
御茶   坐忘斎家元好「松花の昔」 丸久小山園詰


薄茶席(蓮華院)

待合(土間)  鉄地透かし彫り観音菩薩像

本席(広間)
床    古筆百人一首切 冷泉為相卿筆95、96、97  
脇床   高麗狂言袴香炉     
花    藤
花入   竹尺八
香合   古染付 扇面

釜    芦屋 甑口 遠山桜菊地文
炉縁   輪島塗 七宝蒔絵 前志芸男造
風炉先  桜金砂金張
棚    淡々斎好在判 丸卓 宗哲造
水指   楼閣城桜花文 葉山有樹造 
    
棗    金地山水大棗 清瀬一光造
茶杓   又玅斎作銘 「寶船」
茶碗   古唐津  玄々斎銘「鳴海」
 替   絵唐津  川喜多半泥子作銘「水面」
     安南 ほか
蓋置   萩七宝透 13代陶兵衛造
建水   淡々斎好 モール
薄茶   「金輪」  丸久小山園詰
干菓子  「桜」(和三盆)「花筏」(煎餅) 打出庵大黒屋製(中区日ノ出町)
菓子器  鎌倉彫葉盆


三溪園・春のクロスロード茶会 (4)へつづく  (1)へ  (2)へ


三溪園・春のクロスロード茶会・・・(2)春草廬で濃茶を

2019年04月23日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)


 風が吹くと大きな声を発しながら、春の香りを届けてくれるかしら?


茶道口で一礼すると「どうぞお入りを」の声が・・・第4・浅黄席

(つづき)
第1席・曙席、第2席・萌黄席、第3席・若緑席、第4席・浅黄席、第5席・藤紫席、第6席・山吹席そして最後の第7席・牡丹席はスタッフ席で総勢48名様(スタッフ含む)をお迎えしました。

半東O氏のご挨拶から第1席・曙席がスタートしました。

三溪園・春のクロスロード茶会へお出まし頂き、誠にありがとうございます。
ブログ10周年を記念する茶会ですが、暁庵先生はこの伝統ある春草廬で濃茶をお点てして、お客さまと共に春の一日を楽しみたい・・・ということで茶会を開く決意をされたそうです。
朝一番の曙席では九つの窓から清々しい朝の陽光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえてくるかもしれません・・・。
どうぞ春草廬で濃茶をごゆっくりお楽しみ下さい。



   O氏の稽古中の写真です・・・

曙席と牡丹席の濃茶は不肖暁庵がお点てしましたが、濃茶点前はO氏とT氏、半東や案内はスタッフ全員(O氏、T氏、池さん、稲さん)で交代でして頂きました。
皆、一生懸命のおもてなしで・・・それが何より嬉しかったですし、2席目の正客I氏のお言葉が印象に残っています。
「緊張感のあるお点前を拝見していると、若き日の自分を見ているようです・・・」と。

茶香がぷう~んと薫り立ち、
「お服加減は如何でしょうか?」
「まろやかで大変美味しゅうございます」
・・・・その度に自分がお点てしたように胸を撫で下ろしました。
主茶碗は一入作黒楽、藪ノ内流7代桂陰斎銘「不老門」、替の飴釉茶碗は6代大樋朔太郎作、10代認得斎銘「松山」です。


 「灑雪庵」(さいせつあん)の御軸と花・・・待合(広間)

席中の特等席(九つの窓が見える)に座り、茶道具や春草廬のことをお話しさせていただきました。
待合(広間)の軸は「灑雪庵」(泉奏筆)、かつて3年ほど住んでいた京都・町家の土間に掛けていた額を軸荘しました。
床にイチハツと山吹を天平瓦写の花入に生けました。我が家は板床なので敷板が無く、京都で購入したミャンマー古寺古材らしき板切れを敷きました。


   「點笑」(てんしょう)の御軸 (自宅にて撮影)

本席の御軸は、「點(点)笑」(てんしょう)、「笑いを絶やさないこと」という意味だそうです。東大寺別当であられた清水公照師の御筆です。
なんて素敵な言葉でしょう! 
クロスロード茶会も、そして皆さまも私もこれからの人生がかくありたいものです。

床に東大寺大仏殿修復古材で作られた「一蓮弁香合」を桜の紙折敷に載せて荘りました。
原三溪翁が好きだったという蓮の花・・・、三溪翁を敬愛しておりますので三溪園の茶会では迷わず「一蓮弁香合」を使うことにしています。

後ほど会記を掲載します。詳しくはそちらをご覧ください。



一席ごとにお客さまが違いますので、同じようなことをお話しているのですが微妙に反応や空気感が違い、それが興味深く面白かったです。
特に初めて茶会で御目文字する6名様、きっと胸をドキドキされているのではないかしら? よくぞ勇気を出して参加してくださいました・・・と感謝です。
お正客さま、連客の皆様が盛り上げてくださっての一座建立。
どの席ももうもう楽しくて、少しでも長く春草廬に居てほしい・・・と思うほどでした。



もう一つ、春草廬の中から眺める窓の景色が素敵でした。
春草廬は古くは九窓亭と呼ばれ、九つの窓がある桃山時代の茶室(重要文化財)です。
窓を2か所少し開けておきました。
木々の新緑が美しく、花もいっぱい咲いていますので、吹き抜ける風が季節の香りを届けてくれるかもしれません・・・。
刻々と窓からの光量や桟が生み出す陰影が美しく変化し、前にも書いたのですが、春草廬の息遣いのようなものを感じながら、茶会は進行していきました。(つづく)


参考に春草廬の概要を以前にブログに書いた記事から抜粋します

古くは九窓亭(くそうてい)と呼ばれ、大正7年(1918年)京都宇治の三室戸寺・金蔵院から譲渡されています。
桃山時代の建築と推定され、織田信長の弟・織田有楽の作と言われていますが、確証はないそうです。

三室戸寺にあった時は、伏見城遺構の客殿(現三渓園・月華殿)に付随する茶室でした。
原三渓はこれを切り離し、月華殿には茶室・金毛窟を建てました。
大正9年(1920年)三渓は、夫人と二人で住む白雲邸を建て、白雲邸に付随する形で春草廬を移築して、広間を新しく付け足しています。

大正11年(1922年)4月19日に春草廬披きの茶事を催しています。
客は益田鈍翁、益田夫人、田中親美、野崎幻庵、梅澤鶴曳。
その翌年、大正12年(1923年)9月1日に関東大震災がおこり、園内のたくさんの建築物が倒壊しました。

春草廬が再び茶会記に登場するのは昭和12年になってからです。
昭和14年(1939年)8月16日、原三渓翁が逝去(享年70歳)。

第二次世界大戦に際して解体保存されていた春草廬ですが、
戦後、三渓園を寄贈された横浜市は蓮華院を現在地へ移し、昭和33年(1958年)12月その跡地に春草廬が再築され、今に至っています。



 三溪園・春のクロスロード茶会  (3)へつづく   (1)へ戻る   (4)へ