暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

友にエールを・・・茶道会館・研究会茶会

2015年06月19日 | 茶会・香席
6月14日、茶道会館(高田馬場)で行われた研究会茶会へ出かけました。

茶道会館で学んでいる方たちの曜日ごとの研究会が毎年行う茶会で、
茶友Yさんへエールをおくりたくって、5年ぶりに出かけました。

9時半にOさんと待ち合わせです。
梅雨の最中ですが、雨も上がり凌ぎやすい日だったので二人とも着物でした。
Oさんは黒の単衣、白地に楓模様の帯、シックな装いがすっきりとお似合いです。
私は亀甲に青の絣が飛んでいる白大島、エンジ色に白格子の紬帯を合わせ、気軽な装いです。

                    
                          
茶道会館の門をくぐると、そこは別世界。
京都を思いださせる佇まいに心安らぎ、青楓に彩られた石畳が茶室へと誘います。
茶席は点心席を含めて7席、その年の歌会始の「御題」がテーマとなっています。
各研究会が身近なお道具を工夫してテーマを表現し、心豊かな茶会を目指しています。
今年の御題は「本」だそうで、茶券に次のように書かれていました。

   研究会茶会  御題「本」

 ☆ 白珪会  日本一          明々軒
 ☆ 夕月会  根本を知る       至誠軒
   華葉会  Nipponia日本の里   山茶屋
 ☆ 水交会  アンデルセン童話   真之間
   一樹会  日本橋          絵馬席
 ☆ 若竹会  山紫水明          峰春亭
 ☆ 点心席                 山里


☆はまわったお席ですが、水交会「アンデルセン童話」のお席のことを記しておきます。

正客争いでごたごたするのが嫌で、このお席は正客覚悟で入りました。
待合に燕の軸が掛けられています。
大好きな「しあわせの王子」がテーマかしら・・・と思っていると、下に絵本が置いてありました。
絵本は「おやゆび姫」、おやゆび姫がハスの葉に置き去りにされて泣いている場面です。
童話の主人公にすぐになり切れた、幼き日を懐かしく思い出しながら席入しました。

                    

当日、茶友Yさんにお会いできるかしら? と思っていたら、なんとその席の後見役でした。
煙草盆は緑のハスの葉(水交会員の手作りとか)、カエルも中に控えています。
すっかりおやゆび姫になった心地になり、嬉しくいろいろなお話を伺いました。

本床には「水潺々」(みずせんせん)・・・ここ真之間が大きな池かもしれませんね。
デンマーク生まれのアンデルセンに因んで、西洋風の洒落たお道具が散りばめられ、
フランス製の花瓶に活けられた、カンナやフトイなどの花が広い真之間の床を華やかに締めていました。

風炉先の向こうの点前座には、唐銅朝鮮風炉、桑小卓に涼しげなガラス水指(口縁からチューリップを連想)、
天板に陶器の染付風茶器(見立てで、オランダ・デルフト製)が置かれています。

                    

お点前が始まり、お点前さんのきれいな所作に見惚れていると、
「お早目ですが、お菓子をどうぞ」
メレンゲのように口融けが好く、一粒のクルミとの取り合わせが絶妙なお菓子です。
「加賀の御朱印製でございます」

美味しいお菓子の後に、金襴手の繊細な茶碗(林淡幽作)で頂いた熱い薄茶が最高でした。
「お点前、頂戴いたします」
Oさんはバレリーナが描かれた染付風茶碗で薄茶を頂いています。
Yさん、お点前さん、次客Oさん、同席の皆様のお蔭で心豊かなお席になり、
正客で心細かった自称おやゆび姫はすっかりhappyな気分になれたのでした。
加えて、茶杓の銘がとても素敵で・・・「しあわせ」です。

Yさん、拙い正客でしたがエールになったかしら?
Oさんも研究会茶会でいろいろヒントや刺激を受けたらしく
「また来年も伺いたいわ」

      

(良かった! また、ご一緒しましょう 

追伸)カメラのトラブルが解消し、写真を入れ替えました(6月20日)



庭の花でのお持て成しの茶会へ

2015年05月02日 | 茶会・香席
                
                       クマガイソウ (季節の花300)

4月26日、Tさまの「庭の花でのお持て成しの茶会」へお招き頂きました。

茶道教室のことで頭がいっぱいのある朝、ふと見た真MLメルマガ(朝刊)のお客様の募集。
「庭の花でのお持て成しの茶会」とあり、10日前のお知らせでした。
「急なお知らせにつき・・・一名様にてもお出かけ頂ければ実施いたします」
という言葉が心に留まり、その心意気に共感しました。
ちょうど私も「一人でも生徒さんが来てくだされば始動いたします・・・」
そんな心境だったのです。
予定のない日だったので、すぐにTさまの茶会へ申し込みをしました。

申し込みが殺到し、茶会はすぐに満席になりました。
客は全員真MLの会員ですが、席順に苦慮された様子が伺えました。
正客はご亭主と同じ裏千家流で一番茶歴の長いYさま、次客は表千家流のAさま、三客Yさま、四客暁庵、お詰めSさまと裏千家流が並びました。

                

四畳半の茶室へ席入すると、床には
「放牛ニ桃林ノ埜}
読み下しは、桃林の埜(野)に牛を放つ (牛とは・・・ご亭主さまかしら?)
点前座へまわると、古武士の趣の裏鏊釜に華麗な花筏炉縁の取り合わせに思わずため息が・・・。
裏鏊釜の羽の力強さ、ごつごつした釜肌に魅せられ、古釜好きの血が騒ぎます。

ご亭主のお出ましを固唾をのむようにお待ちしていると、
Tさまのご挨拶があり、お召し物が何とも粋でびっくりです。
十徳にねずみ色系の着物、ちらりと見える裾回しが紅色のぼかしで色気が・・・。
まじめで怖い方かしら?と想像していた印象が私の中で変わりました。

全員女性客が見つめる中、初炭手前が始まりました。
暁庵を除く皆様は30年以上のベテランばかり、きっと初炭では緊張されたことでしょう。
でも、私はご亭主の緊張感が最高のもてなしと感激し、感謝しております。

主客の緊張の中の初炭、次いで別室での一献と昼食の懐石弁当、
手作りの煮物椀、向付、つぼつぼまでご用意いただき、御馳走さまでした。
次第にお互いの緊張が良い感じにほぐれてきて、庭への中立の頃には客同士もすっかりなじんでまいりました。

腰掛待合のある庭は惜春と初夏の花が咲き、中でも清々しいクマガイソウの群落が目を惹きます。
野の花でお持て成し・・・というご亭主の心を感じながら皆でしばしくつろぎました。

後座に席入りすると炭が真っ赤に熾り、裏鏊釜から湯気が立っています。
びっくりするほど暑く、すぐに障子を開け放ってくださって助かりました。
季節は確実に風炉へ移っていますね。

                
                
後座の床には飛青磁の花入のみ・・・。
クマガイソウが目に焼き付いていたので、後座の床のご趣向は絶妙でございました。
茶銘は松籟の昔、益子の作家さんの茶碗(粉引のような)で甘みのある濃茶をたっぷり頂戴し、
続き薄茶でワイワイお話しながら楽しゅうございました。
客一同、幸せな晩春のひと時を味わうことができ、お持て成しの数々に感謝しております。

ご亭主Tさまと奥様に見送られ、名残惜しく帰途に着きました。

                                

お香を聞く会  春秋香

2012年11月06日 | 茶会・香席
横浜へ1週間ほど帰っていました。
その間に茶友Iさまがお香を聞く会をしてくださいました。
喜び勇んでI邸へお邪魔し、久しぶりにお香を楽しみました。
七事式のいちねん会で共に励んだAさまとKさまとも嬉しく対面できました。

             

お香は万葉集の額田王の歌から「春秋香」と名付けられています。

   天智天皇が内大臣藤原朝臣に
   「春山の花の艶と、秋山の紅葉の色、いずれが良いか競わせよ」
   と命じた時、額田王が答えとした歌

   冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ 
   咲かざりし 花も咲けれど 山を茂(し)み 入りても取らず 
   草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉(もみぢ)をば 
   取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く 
   そこし怜(たの)し 秋山ぞ我は   

   (歌の意は) 
   (春の山は入り難くて花を取り見ることができないが、
    晩秋の山は草木も枯れ、山に入ることができるので、
    身近に紅葉を賞美できる。
    それで私(額田王)は秋山が良しと判定した)

             

香席へ入る前に、Iさまからお香の会の次第の説明があり、
前回より詳しい六国五味(りっこくごみ)のお話を伺い、
答を書く和紙の折り方や書き方を教わりました。

先ず、試の香二ちゅうを聞きます。
 試 一、万花の艶(にほひ)  一ちゅう
   二、千葉の彩(いろ)   一ちゅう

   ウ、露のいのち   (試で聞いていない香)

試の香は聞き終わると香銘「万花の艶」を言って次客へまわします。
それから、試の二香に ウ、露のいのち(聞いていない香)を打ち混ぜて、
これが本香となります。
本香は一つずつ三種焚かれるので、三回以上ゆっくり聞いて
香の特徴や印象などをメモしておくように・・・とのことでした。
本香になると、香銘ではなく「出香」と言って次客へまわします。

   
             

いよいよ香席へ入りました。
香炭団が入っている香炉が二つ並べられ、灰手前が始まりました。
灰をかき上げ、灰押さえで灰を押さえながら円錐をつくり、
羽箒で際を整え、羽箒を人差し指で打ちました。
それから細い香火箸で五面に十本づつ小筋を入れていきます。
正面に聞き筋を1本入れ、火窓があけられました。
火勢、客の人数などを考慮して、火窓の大きさを加減します。

Iさんの凛とした姿勢、確かな手の動き、茶道とは違う所作に魅せられ、
みんなで息を詰めるように見つめました。
香を聞く機会が少ないので、このように香炉の灰を調える点前から
拝見できることは本当に嬉しいことです。

             

試の香、「万花の艶」と「千葉の彩」を順番に聞きました。
メモしたのですが、前と明らかに違うのはわかるのですが、
香の特徴や印象を表現するのが今回も難しかったです。
墨をすりながらも迷い、最初の印象とは違う答えを用意した和紙に書きました。

   万花の艶   千葉の彩   ウ    (暁庵)

幸運にも全当りでした。
六国五味を参考に木所(伽羅、羅国など)を推理しましたが、
これは全く大はずれで、香の奥深さ、面白さにやみつきになりそうです。

             

               
香席が終わると、Iさまお心づくしの昼食が用意されました。
薫り高いマツタケご飯はお香の邪魔をしてはいけないので、
延長コードを庭へ引いて焚いてくださいました・・・。
マツタケご飯、土瓶蒸し・・・、そして楽しい語らい付の大ご馳走。

香席から茶席へ変わり、客三名で初炭、濃茶、薄茶を交代して、
Iさまをみんなでねぎらいました。
こちらもまさに「賓主互換」、愉しゅうございました。
またの御目文字が今から待ち遠しい思いです。

Iさま、みなさま、ありがとうございました!

                             


初点の茶会

2012年02月03日 | 茶会・香席
1月29日(日)に〇〇支部の初茶会へまいりました。

会場は、支部研究会が行われている龍口寺(りゅうこうじ)(藤沢市片瀬)です。
龍口寺は、鎌倉時代・文永8年(1271年)9月12日に
日蓮上人が処刑されそうになった、龍ノ口刑場跡に建つ日蓮宗の本山です。
大書院は信濃国(長野県)松代藩の藩邸を移築したそうで、
風雪に耐えた堂々たる佇まいです。こちらで、濃茶席と薄茶席がありました。
研究会会場に使用している龍口会館が立礼席と点心席となっていました。

                   
                            (龍口寺大書院)             
                  

大書院の濃茶席へ座ると、どこからともなく銅鑼(?)の音が・・・。
座が静かになり、いよいよ石川先生の初点が始まります。
毎年、先生が席を設え、濃茶を点ててくださるとのことで、
とても愉しみに初茶会へ伺いました。

床は、円能斎筆の「柳緑花紅」。
大書院の大床に負けない、力強く、艶やかな字で書かれた横物です。
柳が緑に芽吹き、花が美しく咲く春の慶びを身いっぱいに感じながら拝見しました。

花は、寒牡丹。
ぴーんと張りつめた緊張感があり、姿が好いですね。
後ろにあるのは老木でしょうか。
花入は・・・先生からご説明があったのですが・・・。
                  
                  
                  
                  
書院の飾りも珍しかったです。
お家元の初点で飾られたヒカゲノカズラの輪飾りをかざってくださったのです。
ヒカゲノカズラは古生代に栄えた珍しいシダの一種で、
古代人は神事の時に髪に飾ったそうですが、貴重なお飾りを初めて拝見しました。

点前座は及台子、ここにも輪飾りが・・・。
青交趾渦文の皆具が映えています。棗は淡々斎お好みの朝陽棗です。

静かに嶋台(金)が運び出されました。
真剣なまなざしが一挙一動を見守るなか、石川先生はゆったりとした自然体で
お点前を進めていきました。
正面の席でしたので四方捌きでは先生の間合いに呼吸を合わせ、
蟻腰の茶杓の清め方や柄杓の扱いに見とれているうちに、濃茶が練り上げられました。
「五名様でどうぞ・・・」

                  
                         (書院に飾られた、龍の伏見人形)

残念ながら五名様には入れず、水屋で点てられた銀の嶋台で、
艶やかな緑の濃茶をたっぷり三口半頂戴し、幸せでございました。
濃茶は小山園の松花の昔、練加減よく、甘くまろやかなお味です。
嶋台は弘入作、手に取った記憶では比較的薄作りだったように思います。

「どうか茶入、茶杓、仕覆の拝見を・・・」
「今年は辰年だから辰に因むものをと思ったけれど、龍口寺だけでもう十分とも・・・。
 そう思いながら、茶入はたつの焼(兵庫県竜野市)
 茶杓は玄々斎のお作で「輪かざり」
 仕覆は国司間道、本歌は藤田美術館にございます」

                  
                            ( 延寿の鐘 )
                  
                            ( 龍口寺本堂 )
大書院での初点は、慈愛あふれるお話しと共に温かく心に響いたのですが、
先生のお点前に合わせるかのように趣ある鐘の音が
「ごぅぉーん・・・・ごぅぉーん・・・」

「水屋の誰かが撞いているのかしら?」と思っていましたが、
後で寺を訪れた観光客が撞いていることがわかり、びっくりです。
鐘声とともに思い出に残るひと時を過ごさせて頂き、感謝いたします。

帰りに一つ鐘を撞いてから本堂へお参りし、龍口寺を後にしました。

                            


新・釜師長野家の初釜 (3)

2012年01月13日 | 茶会・香席
中立のあと、後入りのお知らせは喚鐘でした。
表千家流では広間の時に喚鐘、小間の時は銅鑼となっているそうです。
紹鴎棚の前に藍染の仕覆に入れられた茶入が置かれ、濃茶へと誘います。

点前が始まると、皆の気持ちが一つになって静寂に包まれました。

・・・すると、鶴首釜から心地よい音が聞こえてきました。
耳を澄まして音に集中すると、
松林に風が吹き、梢をやさしく鳴らして通り過ぎてゆくようでした。
松風とはよくぞ名付けたものと聴き入っていると、
柄杓が汲み入れられて松風がやみました。
今度は柄杓から流れる水音、茶筅通しのサラッサラッ、そして再び、やさしい松風が・・・。
めったにないサウンドスケープの一コマです。

「緊張して茶筅通しの手が震えてしまいました・・・」とご亭主。
そのようには見えませんでしたが、客冥利なこと!と嬉しく受けとめました。
緊張しながらもしっかり練ってくださった濃茶を三人でたっぷり、
マイルドな味わいを愉しみました。
濃茶は柳桜園、前席のお菓子は「松の緑」です。

                   

お茶碗がどれも素敵でした・・・。
主茶碗は了入作、拝見すると楽の印があり、隠居印だそうです。
小振りの黒楽で、無作為のかろやかさを感じる、親しみやすい茶碗でした。
昨年11月に根津美術館の茶席で出会った了入の赤楽に続いて、
了入の黒楽で濃茶を頂いたシアワセとご縁を噛みしめました。

替茶碗は、大野鈍阿作の赤楽、捏ね上げられた手なりのままのような茶碗に
かわいらしさを感じたのは私だけでしょうか?

もう一碗は、川瀬忍作の「なみだ」。
気に入ったあまり、二代長野垤志氏が川瀬氏の茶席から黙って持ち帰り、
毎日この茶碗で茶を点ててのんだそうです。
ある日、川瀬氏を招いて茶碗を見せると、
「よくぞここまで育ててくれた・・・」
と言って、「なみだ」という銘を付けられたそうです。
「なみだ」はうれし涙でした・・・(ステキなお話しでした)。

エキゾチックな出し帛紗に嘆声を上げました。
赤地に金のモールは、インド産でしょうか?
手に取るとずっしり、「くさり帷子」を連想する触感と重さです。
二枚目は、ダマスク金襴。
ダマスカス(シリアの首都)で織られた金襴は青地に眩しいほどの金でした。
三枚目は、タイ製の銀モール。魅力的な紫の絹布に銀が渋く映えています。

               
                   ( 一富士二鷹三なすび・・・富士遠景 )

続き薄茶になり、奥様の珠己さんのお点前でした。
お二人に代わる代わる濃茶と薄茶を点てて頂き、感激でした・・・。

薄茶の主茶碗は、惺入作の銘「大神楽」、伊勢神宮に因む銘だそうです。
見込に美鶏が描かれ、お茶を頂くとあらわれてきました。
この茶碗もよく育てられていて、細やかな白磁の貫入が美しく、
鶴首釜に続くお気に入りかも。

薄茶席になり、多彩な顔ぶれのお客様のこと、茶談義、漫談?など
和やかにお話ししながら薄茶を愉しみました。

お心こもる初釜のおもてなしに厚く感謝申し上げて、
もうしばらく余韻に浸っていますね。 
そうそう・・・最後に「落ち」がありましたが、ナイショです。

                           

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