暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

長月の自主稽古  四ヶ伝総ざらい

2013年09月30日 | 自主稽古(京都編)&奥の細道会
                      貴船菊 (秋明菊)

長月27日は、自主稽古の日でした。

秋風に誘われて連日遊び歩いていたせいか、足首に痛みが出て、
一時は歩くのが辛いほどになりました。
どうも毎年9月は怪我や故障が多いみたいです。

自主稽古の日まで直さないと・・・
萩まつり宗偏流の茶会後はひたすら安静に努めました。
日ごとに痛みも和らいで、なんとか稽古はできそうです。

               
                 Tさん宅のホトトギス

科目は、茶通箱を除いた四ヶ伝の総ざらい。
四ヶ伝なので菓子は三種、毎回これがお楽しみなのです。
今回はYさん手づくりを堪能しました。
三種は、光琳菊(イチジク風味の白あんを道明寺で包んだもの)、
嵯峨野(浮島)、干笑果(ひしょうか。いちじくの干菓子)です。

               
                     菓子三種 by Yさん


唐物、台天目、盆点、和巾を三人で二科目ずつ、当日くじで決めました。
みなさま、それぞれ苦手があり、不思議なことにそれが当たるようです。
私は台天目かしら?

「最近、和巾をやっていないので・・・」
と言っていたYさんが和巾を二度も引き当てて、
「和巾をもっと稽古しなさい」という天の声のようです。
   Yさん  和巾と台天目
   Tさん  唐物と盆点
   暁庵   台天目と盆点

Tさんの盆点の正客になり、道具拝見の仕方と道具の返し方を
間違えました。
それで、二回目はくじ引きの唐物でなく、盆点をさせて頂きました。
二回目なのでスムーズに(疑問もなく)終わったのですが、
翌日、東京の茶友から質問が来て、飛び上がりました。  

              

「盆点で、盆を拝見に出すときは、右回しで良かったかしら?」
「え~と・・・(つい昨日のことなのに)確かそのようにしたわ」と私。
「でも、真之行では盆を左回しで拝見に出しますよね?
 伝来の確かな唐物ということでは同じなので、盆点も左回しだったかしら?
 迷いだすとわからなくって・・・」と友人。
「う~ん?」

・・・揉み手をして扱う、伝来が確かな唐物茶入をのせる盆で
扱いが違うのはなぜでしょうか? 
唐物茶入、盆、それとも点前の、格の違いなのでしょうか?
自分なりの理由づけが出来たら、迷いもなくなり忘れないと思うので、
ただ今、宿題になっています。

                            
        自主稽古  前へ    次へ

 

萩まつり茶会と宗偏流茶会  その2

2013年09月25日 | 献茶式&茶会  京都編

(つづき)
昼食後、自転車に飛び乗り、吉田山をぐるっと回って
黎明教会資料研修館((左京区吉田神楽岡町)へ向いました。

資料研修館には大文字が正面に見える茶室と立礼席があり、
Reimei Art Galleryの会期中には茶道具の設えが展示され、
目を楽しませてくれます。
でも、茶会はめったになく、「9月23日13時~15時まで呈茶します」
とHPに載っていたので、出かけることにしました。

茶券(500円)を買って、腰掛待合で待っていると、
まもなく前の席が終わって、袴姿の若い男性が案内してくれました。
茶室と立礼席の両方に茶道具が設えてありましたが、
客は四名で、なんと立礼の正客席へ座らせて頂きました。

席主は、前回もお席を持たれた宗偏流の先生でした。
私のことを覚えていてくださって、嬉しい再会です。
次客さまは席主の知人で、茶室の茶道具を担当してくださったとか。
それで、薄茶を頂いたあとでお道具の話を聴かせて頂くことになりました。

            

お点前は若い女性、オリジナルの立礼卓のお点前です。
宗偏流のことを伺いながらお点前を拝見していると、
あっという間に薄茶が点ってしまいました。
口に含むとまろやかで美味しく、細かく泡立っていて、感激しました。
きっとこの日のために一生懸命お稽古したことでしょう。

お菓子が絶品で、お尋ねすると
「虎屋の栗蒸し羊羹でございます。
 栗蒸し羊羹では一番のお気に入りなのです」と席主。
虎屋にしては甘過ぎず、
栗と蒸し羊羹の絶妙なハーモニーがさすが虎屋と納得でした。

            

隣接の茶室に荘られている茶道具について、
次客さまからお話を興味深く伺いながら拝見しました。

床の掛物は神護寺経、紺紙に金泥の経文が端麗に浮かび上がります。
どんな方がどのような願いを込めて書いたのでしょうか。
小振りの、先祖供養の日にぴったりのお軸でした。

一番印象深かったのは細い円柱の香合でした。
平安時代のもので、軸先を仕立てたものだとか。
手に取ると、細かな金彩のような彫りがある金物で、
遠くインドかペルシャか、絵柄に異国の匂いがします。
香合が乗せられていた白い帛紗(龍村製)もエキゾチックでお似合いでした。
花入は唐胴の水瓶、藤袴が一輪生けられています。

           

点前座は、霰釜切合風炉、どっしりした備前耳付水指は金重陶陽造。

薄器は、朱塗りの円型の器に黒柿の蓋、
時代を経た根来塗のかすれが何とも言えず味佳く、垂涎の薄器でした。
「ちゃつ」(楪子)と言って、元は仏さまに菓子を盛る器でした。
平安時代にどこかの寺で使われていたのでしょう・・・と次客さま。

茶碗は古瀬戸とか、薄枇杷色の肌に灰釉のなだれが美しい茶碗です。
それに閼伽の建水と蓋置(陶器の灯明台)がうっとりの取り合わせでした。

一つずつ夢中でお話を伺ってから、顔を上げて「えっ!」
水屋の若いお弟子さんが出ていらして、その数の多さにびっくりしました。
・・・でも嬉しかったです。
次客さまの説明を一緒に熱心に聴いていてくださったのね。
時間をかけて集められた素晴らしいお道具で、素敵な取り合わせですもの。

次回またお伺いするのが楽しみになりました。
違う茶道具も良し、また、同じお道具に逢えるのも嬉し・・・です。

帰りにReimei Art Galleryの琳派美術展2013第Ⅱ期を観ました。
中でも第6室(光琳乾山の器物)に展示されている「黒楽鹿図花入」、
一見をお薦めです。

  琳派美術展(Ⅱ)2013年9月3日~10月20日(入場無料)

                                   
             その1へ戻る



萩まつり茶会と宗偏流茶会  その1

2013年09月24日 | 献茶式&茶会  京都編
                 梨木神社本殿

秋分の日(23日)は茶会を二つ訪ねてみようと、大忙しでした。
先ずは梨木神社・萩まつりの茶会です。

梨木神社は京都御所の東側にあり、三条実萬、実美父子を祭神として
明治18年に建立された神社です。
参道や境内には萩が植えられ、毎年秋の彼岸に萩まつりが行われています。
境内にある「染井」は、京都三名水の一つで、
茶事の時にはいつも「染井」の水を汲ませて頂いてます。

 
           
              京都三名水の一つ、「染井」

           

梨木神社へ着くと、いつもは静かな境内が萩と人で賑やかでした。
俳句をしたためた短冊が萩の枝に掬ばれていて、
風に揺れているのを捉まえて読んでみると

       雲浮かぶ 裏参道に こぼれ萩
       白萩に かたき約束 とりつけて
       あちこちに 小さき銀河 萩こぼる


           
             待合の秋の七草

待合で20分ほど待ったでしょうか? 前の席が終わったようです。
「お先でございました」と挨拶され、恐縮して頭を下げました。
いつでもどこでも自然体に挨拶できると素敵ですね・・・。

はじめて茶室・壷中庵へ入ると、八畳二間の広間でした。
床の掛物は、「無事 日々是好日」、鵬雲斎大宗匠筆です。
四方籠に風情佳く、ススキ、吾亦紅そして白い星のようなあけぼの草。
思いがけず、N先生、Fさん、Sさんと嬉しいお出会いがありました。
京都の茶会で知っている方に会うのは本当に珍しいことです。

           
                    壷中庵

挨拶ののち、水指を運び出しお点前が始まりました。
大板の中置です。
仙叟好の渦四方釜が雲華の風炉にすっきりと映えていました。
10月になると、すぐに中置の稽古が始まるので
興味深くお点前を拝見させて頂きました。

菓子は蕪の薯蕷饅頭、ススキ絵の茶碗で薄茶を美味しく頂戴しました。
抹茶は「珠の白」(大宗匠御好)小山園詰です。
正客席に座った女性は観光客の方でしたが、
萩まつり茶会なので和やかに進行して、こういうのも好しですね。
主茶碗は、大樋焼それとも楽茶碗? 六代六閑斎の手づくりとか。
薄器は平棗、茶杓は大宗匠作「即今」という銘でした。

             
               白萩がこぼれて・・

先に茶席へ入ったので、拝殿へお詣りし、
こぼれんばかりに咲く萩の花をゆっくり観賞しました。
紅萩も可憐ですが、なぜか白萩に心惹かれます。

いったん家へ帰り、午後は黎明教会資料研修館の宗偏流茶会へ・・・。
                                    
 
         その2へつづく


名月鑑賞の夕べ  京都府立植物園

2013年09月22日 | 京暮らし 日常編

     木の間より漏り来る月のかげ見れば
          心づくしの秋は来にけり     読人しらず

9月19日は、中秋の名月でした。
京都府立植物園で行われた「観月&音楽会」へ
大学時代の友人K氏を誘い、主人と三人で繰り出しました。

            

            

開園されると、人の列に従って芝生広場へ向い、
ステージがよく見える場所に陣取りました。
あっという間に広場がいっぱいになって、3千人くらいでしょうか?

開演前に・・と、ありあわせで用意した月見弁当をひろげました。
K氏奥様のM子さんのお手製も加わって、豪華な夕食になりました。
おにぎりをほおばりながら
「遠足みたいで、月を待ちながらのお弁当も楽しいわね」

            

音楽会が始まり、最初の演奏者「Drakeskip(ドレクスキップ)」
が登場し、賑やかにスエーデンの民謡3曲を演奏しました。
3曲目の終盤に「ブスッ!」という音がして、突然音楽が聞こえなくなりました。
照明も一部を残して消えてしまい、予期せぬ出来事です。
・・・でも、いつも感心することですが、京都人は辛抱強いです。
ブーイングもなく静かに復旧を待っていました。

            

ちょうどその頃、
ステージの後の大きな木の間から月が見え始めました。
芝生広場の人たちは漏り来る月の輝きを固唾をのんで見守りながら
月の出を待ちました。
・・・そして、歓声と共に、月が顔を出しました。

            

            

            

偶然とはいえ、停電のアクシデントに秘かに感謝です。
3千人の人たちと心を合わせて、月の出を「今か今か・・・」と待ちこがれ、
名月を心ゆくまで鑑賞できたのですから。 

月が出終わった7時30分頃に電気が復旧しました。
続くゴスペルライブのコーラスに元気をもらい、
藤田恵美さんの透き通った歌声を堪能して、
名月に見送られながら植物園を後にしました。

       秋の夜の月の光し明かければ
            くらぶの山も越えぬべらなり    在原元方
  

                            


            

はつ風の茶事ーその2

2013年09月19日 | 茶事  京都編
(つづき)

初炭となり、炭斗(松山籠)を運び出しました。
羽箒と香合は四方棚に荘りつけです。
羽根はシマフクロウ、香合は「秋草蒔絵琵琶」、中村孝也造です。

風炉の茶事で一番気を使うのが火相(ひあい)と湯相(ゆあい)です。
今回は始まる2時間前に種火を熾し、風炉を暖めておき、
席入前に、再び下火を多めに入れました。

早めの火入れのおかげでしょうか?
初炭をしてまもなく、真っ赤に火力がつき、一安心です。
正午の茶事ですが、都合によりつづき薄で後炭を省略するので、
初炭で風炉中拝見をして頂きました。

きんとんを縁高でお出ししました。
銘は「里の秋」(自家製)、まだ紅葉はてっぺんだけです。
お菓子を食べてから中立して頂き、銅鑼を打って後入りの合図としました。

             
             風を感じる、矢筈ススキと河原撫子

後座では先ず花寄せで、初秋の野山を逍遥して頂きたいと思いました。
どの花入を選び、どの花を入れるのか、興味深い処ですが、
手際よく、風情佳く、花が入れられてゆきます。
最後に釣り花入へ花がおさまると、花野を漂うような空間が出現しました。
床に花一輪も好きですが、この醍醐味はなんとも言えません。

             
                 山芍薬の実、女郎花、吾亦紅

             
              洋種山ゴボウ、犬蓼(赤まんま)、ベルテッセン

熱い湯で濃茶を練りました。
ふくいくとした濃茶の香が漂います。
濃茶は「青雲」(一保堂詰)です。
静かな、平和な時間が流れていって・・・とても幸せでした。

続いて薄茶になり、煙草盆は省略させて頂き、干菓子をお出ししました。
薄茶となったので、あれこれとお話が弾みます。
棗の置く位置について
「先生のご指導では火窓前、ここでしたね」
・・・なんて、同じ社中ならではのお話が出たりしました。

「どうぞ、ご自服を・・・」
の声が掛かり、自服をしてみると、美味しい薄茶でした。
銘「月影」(一保堂詰)、今季特別限定の抹茶です。

             

京都へ来て初めて、止め炭をさせて頂きました。
少しでも長くお引き止めしたい、またいらしてください
・・・そんな気持ちの一炭でした。                         

何回やっても不足や、失敗ばかりで、お恥ずかしい次第です。
終了直後は、何とかやり遂げたという達成感と、
反省やら後悔やらがどっと押し寄せ、そのはざまで揺れ動いています。
そんな状況から立ち直るきっかけは、お客様のお手紙でしょうか。

優しく見守ってくださった三人の先輩方に心より御礼を申し上げます。


          はつ風の茶事-その1へ戻る