暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

令和5年師走の最終稽古・・「忙中閑」

2023年12月25日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

師走に入り、なんとなく気ぜわしく過ごしています。

皆で楽しみにしている令和6年初釜の濃茶席が台目席なので、台目の濃茶や炭手前に取り組んでいます。八畳に風炉先屏風や障子の結界で囲み、台目出炉の茶席をにわか作りです。

      (にわか作りの出炉台目席)

「いよいよ今年最後のお稽古ですね・・・」という御挨拶が続きましたが、いよいよ稽古もあと2日を残すところとなりました。

急に寒くなった12月21日(木)にF氏が袴姿にダウンジャケットを着込んでやって来て、初炭と台目の濃茶を稽古しました。

残念ながらF氏は仕事の都合で初釜に出れませんが、それでも台目の濃茶に熱心に取り組んでくださって、嬉しくご指導しました。

 

濃茶2碗を練って、後の1碗は自服です。各服点の濃茶を美味しく練るのは難しいですが、上手になるには自服してもらうのが一番と思っています。

中仕舞いをしてから席へ入って、菓子と濃茶を賞味してもらいました。

「お服加減はいかがでしょうか? 練り加減、濃さ、量は??」と私。

「自分で言うのもなんですが、丁度好いように思いますし美味しいです」とF氏。

いつも味わい深い茶杓銘を考えてきてくれるので楽しみにしています。

この日の茶杓銘は「魚行けば水濁る」でした。そして、何故この銘にしたのか、この銘が意味するところをご自分の体験をまじえて話してくれました。私は・・・と言えば、我が体験と重ね合わせて、ウンウン頷きながら感心して拝聴しました。

「いつもステキな銘と刺激をありがとう。来年もお茶を楽しみながら頑張りましょうね!」・・と心の中で話しかけていました。

 

   (葉が落ちてしまいましたが、これも好しかな)

12月23日(土)がオオトリでM氏の後炭と行之行台子でした。

12月半ばから御軸は「喫茶去」(足立泰道師の御筆)が掛かっていましたが、「灑雪庵」を掛けたくなって急遽取り変えました。

折しも大雪の報道が続き、土間の隙間から雪が降り込んできそうな京都「灑雪庵」の暮らしを思い出したせいかもしれません・・・。

 

最初に風炉先屏風や障子で囲んだ台目席で後炭をしていただきました。後炭は釜を上げた後の炉中の風情がご馳走です。その日はつい消し炭を入れすぎてしまい、残り火の整理が熱そうでした・・・

来年の初釜でM氏が後炭手前をするので、その時の残り火の様子をあれこれ想像しながら後炭をして頂きました・・・どんな炉中の風情になるのか、どんな炭の継ぎ方をするのか、今から楽しみです。

次いで行之行台子です。縁高で菓子2人前を運び出し、濃茶2碗をお願いしました。

最初の1碗を暁庵が頂きました。油滴天目茶碗に良く練られた緑色の抹茶が美しく映え、練り加減、量、濃さもほど好く、とても美味しかったです。

茶銘は「蓬左の昔」(名古屋の松柏園詰)、徳川茶会で使われた濃茶で、しばし徳川茶会の思い出話に花が咲きました。

茶杓(竹の元節)をお尋ねすると、「4代仙叟作ですが、11代玄々斎の銘で「閑」とあり、追筒がございます」とM氏。

1対1のお稽古でしたが、静寂の中にも温かな時間が流れていきます。

師走にふさわしく「忙中閑」の一服でございました。 

 

 

これからしばらく冬ごもり(冬休み)に入ります。

皆さま、くれぐれもお体に気を付けて、良い年をお迎えください。

 

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追伸)今日はクリスマス。でも、大人になって時が経ちすぎて、サンタクロースは来てくれそうもありません。

こんな記事はいかがでしょうか? 「他力本願のすすめ」

読んでみて、来年の示唆をいただいた気持ちになりました。      

 


準教授の許状式

2023年12月24日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

嬉しいことに許状式が続きました

T氏が目出度く準教授を拝受したので、12月2日(土)に許状式をおこないました。

T氏が暁庵の裏千家茶道教室の門を叩いてくださってから早や2年の歳月が流れました。

その間東京から熱心に稽古へ通ってくださって、この度坐忘斎お家元の御許しを頂き、とても嬉しく思っております。

許状式の立会人はM氏とKTさんにお願いしました。

       (お祝いの桜湯)

いつものように利休さまが描かれた画賛の御軸を掛け、灯り、香、花をかざり、薄茶とお菓子をお供えしました。花は紅白の椿です。

 

賛は鵬雲斎大宗匠の御筆で次のように書かれています。 

  今日親聞獅子吼  

          他時定作鳳凰兒      宗室(花押)

  読み下しは、

       今日(こんにち)親シク獅子吼(ししく)ヲ聞ク
    他時(たじ)定メテ鳳凰ノ兒(ほうおうのこ)ト作(な)ラン

「今日、お許しを得て親しく獅子吼(茶の道の教え)を聞くことが出来ました。いつの日かさらに修練を積んで鳳凰の児(さとりの境地)へ辿り着いてください」と。

・・・私自身も修練中の身ですが、これからも茶の道を力の続く限り歩んでいきたいと思っています。ゴールの無い茶の道ですが、ゴールが無いことが素晴らしいと思うので、鳳凰の児をめざして共に修練を積んでいきましょう・・・というようなことをお話し、坐忘斎お家元に代わり、不肖暁庵が許状をお渡ししました。

誠におめでとうございます!!

十数年前に赴任先のニューヨークで裏千家茶道に出合い、帰国後も茶の道をひたすら歩み続けてきたT氏、これからもご自分の茶の道を定めてしっかり歩んでいくことでしょう。心から応援しておりますし、私が出来ることでしたら何でもお手伝いしたい・・・と思っています。

昨年12月に準教授を拝受したM氏と、ウン十年前に準教授を拝受したKTさんからも温かいお祝いのお言葉を頂戴しました。

T氏からお礼のお言葉を頂戴し、これまでのT氏のいろいろな道程を思うと、大役を果たせたようで安堵しました。

その後、真之炭手前を暁庵がさせて頂き、炭が熾きる間に別室でささやかなお祝いの昼食と、用意した菓子7種をお出ししました。

       (菓子7種です)

午後の席ではM氏が真之行台子点前を披露してくださいました。

       (真之行台子点前)

正客はT氏、次客はKTさんです。各服点なのでKTさんの濃茶も黒楽茶碗で点ててくださいました。濃茶は蓬左の昔(名古屋の松柏園詰)です。

茶入(唐物)は珠光文琳写、仕覆は紹鴎緞子、茶杓は象牙(利休形)です。

これにて許状式が終わり、T氏のお稽古です。

台子の濃茶点前、台子の薄茶点前と続きます。

        (台子の濃茶点前)

        (台子の薄茶点前)

T氏が台子の薄茶点前で薄茶を全員に点ててくださいました。

丁寧に点てられた薄茶を美味しく頂きながら、良い許状式だったなぁ~と感無量です。

そして、今やっとその様子を書きながら、ほのぼのと思い出しています・・・

M氏、KTさん、立会人を務めてくださり、ありがとうございました。

 

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追伸)今日はクリスマスイヴ、こんな記事はいかがでしょうか? 久しぶりに読んで新鮮でした。  忘れたくない「茶の教え」

 


茶名の許状式

2023年12月17日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

特別社中のオーネル敏子さんがこの度茶名を拝受することになりました。

誠におめでとうございます!

10月24日にオーネルさんが4年ぶりに来日し、10月29日の「野月の名残りの茶事」へ参席してくださいました。

今日庵から許状が届いたのはその頃だったと思います。オーネルさんの来日中には間に合わないだろう・・・と思っていたので、今日庵許状係さまに感謝でございます。

それで、オーネルさんの稽古を予定していた11月1日に急遽許状式を行うことにしました。社中のKTさんに許状式の立会人と真之行台子の点前をお願いすると、快諾してくださって、もう一人の立会人はKRさんにお願いしました。

10時過ぎに3人がいらして、先ず待合でお祝いの桜湯をお出ししました。

いつものように三具足を飾り、床には坐忘斎お家元筆の御軸「曉雪満群山」を掛けました。本来なら今日庵で坐忘斎お家元から拝受するものと思いますが、御軸にてご臨席を賜りました。

坐忘斎お家元に代わり、不肖暁庵がオーネルさんへ茶名と紋許の許状をお渡ししました。

「おめでとうございます!」

この度の茶名拝受には海外在住ということもあっていろいろな方のご協力を仰ぎました。特に淡交会横浜支部には本当にお世話になりました。ありがとうございました。

・・・そしてご本人のオーネルさん、40年を超えるスウェーデン在住中に自分のルーツを知りたくなって裏千家茶道を習い始めたそうです。よくぞ茶名取得まで茶の修行を熱心に積まれたことに心から敬意を表します。

 

お稽古で真之行台子を見させていただきました。基本をしっかりと身につけられ、一緒に稽古をした暁庵社中の方も感心することしきりでした。その茶道への姿勢に大いに刺激を受けたことでしょう。私もいろいろな刺激をたくさん頂き有難いです。

久しぶりの来日でしたが、またいつでもいらしてくださいね。

 

11月末にスウェーデンへ無事帰国したオーネルさんから嬉しいメールが届きました。ホーカンさんの母上のコレクションの可愛いトムテの写真も一緒です。

 

暁庵先生へ

先日は野月の名残の茶事にお招きいただき、又私の為に茶名の手続きに骨を折っていただき本当にありがとうございました。 

私の来日中に茶事に御招きいただき、その上茶名がいただけたなんて! 本当に夢の様です。 

宗芳と言う茶名を亡夫ホーカンにちなんで提案くださり、ホーカンが喜んでくれてる様で感無量です。先生がおっしゃったようにお茶の神様がこの機会を下さったのかもしれません。本当に先生のおかげです。茶名の許状を頂いたときは先生からたくさんのお祝いを頂き、ありがとうございました。落ち着いたら棗を使い、茶友を招きたいと思っています。

立礼の「野月の名残の茶事」では懐石料理が全て最高でした。先生がフランスとスウェーデン旅行で手に入れられたお道具が使われていて、懐かしく当時を思い出していました。

と同時に濃茶では各服点でそれぞれの客にあうお茶椀を考えてくださり、とても美味しくいただきました。半東をやってくださったY氏が、私がせき込んだとき白湯をすぐ持ってきて下さり、そのお心使いに感激しました。

後座での花寄せでは以前夫が先生の茶室を訪れた時、花を入れたことが 又思い出されて夫が一緒にいる様な気がしました。先生はもちろん皆様のおかげで楽しい時を過ごさせていただき感謝しかありません。

これからもスウェ-デンで私に出来る茶の湯を広めていこうと新たに決心しています。

後から来日した娘家族と一緒に弟の住む私の故郷を訪れ、彼らがスウェ-デンへ戻ってからは 福岡の高取焼でお茶椀造りを体験させていただきました。

又唐津の先生の所へ何日か通い、茶入のお仕覆を一枚縫い上げとても嬉しいです。 

今回は皆様のおかげでお茶に関する多くの体験が出来、長いと思っていた日本滞在が早く過ぎていきました。 先生にはもっと早く御礼の手紙をと思いながら 今日になってしまい申し訳ありません。

 

 

戻ってきたスウェ-デンは暗くて雪が残っていて とても寒く 2日間はまだ外へ出ていません。でも今日は孫達を迎えに行かなければなりませんし、次の日も初心者用のお茶のコ-スがあるので外へ出なければなりません。急に夢が覚めたような現実に戻りました。

久しぶりの日本、4年半戻れなかったブランクを取り戻した様な滞在でした。 

先生、本当にありがとうございました。

これから寒くなります。どうぞお身体ご自愛ください。   オ-ネル敏子より

 

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2023年の「炉開きと口切の会」・・・(2)

2023年12月01日 | 暁庵の裏千家茶道教室

      (後座の床の花・・・菊の献上飾り)

つづき)

口切が終わり、台天目(客4人ずつで2回)で濃茶を全員が頂きます。

裏千家・今日庵の口切(初釜は間違いです)では台天目の点前で濃茶が練られると伺っており、恩師N先生の口切の会ではいつも濃茶は台天目でした。暁庵も出来るだけ濃茶は台天目で・・・と心がけています。

台天目の亭主KTさんが餅入り汁粉(暁庵製)を運び出し、茶道口で「どうぞすぐにお召し上がりください」

しばらくしてKTさんの台天目の点前が始まりました。

台天目は四ヶ伝という伝物のひとつで、天目茶碗と天目台の扱いが眼目のお点前です。

水指は曲げ、茶入は和物、茶杓は象牙を使います。

()

下の写真は袱紗を真に捌いて、天目台を清めるところです。

 

天目台は和物なので、濃茶は天目台の上で練られます。心を込めて練ってくださった濃茶(各服)を正客が頂きました。お服加減のお尋ねの後、次客の濃茶を練ってお出しし中仕舞をします。三客と四客(詰)は水屋からお出ししました。

暁庵は三客でした。甘味を控えめにしたつもりですが、汁粉の後の濃茶は格別な美味しさです。熱く練り加減もよく、緑の濃茶が喉を潤していきました。

濃茶は「松花の昔」、丸久小山園詰です。

ここで昼食・休憩となりました。

テーブル席へ移り、なだ万の弁当とAYさんが腕まくりの煮物椀を全員で賞味しました。

   (南天の実が赤くなりました)

後座の亭主T氏が銅鑼を7つ打ち、後座の席入です。

  大・・小・・大・・小・・中・中・・大  

あらっ! 我が家の銅鑼かしら?と一瞬思うような響き、好い間合いでございました。

後座はAYさんの後炭から始まります。

初炭で皆が炉辺へ寄るところも好きですが、後炭で炉辺へ寄るといつも息を呑んで炉中の残り火の美しさに見惚れます。匙香が焚かれ、湿し灰が撒かれました。

細めの胴炭を選んだせいか、胴炭が簡単に割れて輪胴、丸ギッチョ、割ギッチョを継いでいきます。稽古で苦戦していた丸管・割り管・枝炭1本を一緒に逆手で持てるかどうか、私も内心ドキドキしながら見守ります・・・わぁ~凄い! 持てましたし、落とさずに上手に思うところへ置くことが出来、感動しました。

薬缶を持ち出し、釜へ水を次ぎ、濡れ茶巾でポンポンポン・・と釜を浄めると、釜が湯気を上げて嬉しそうです。

 

 

次は2回目の台天目の濃茶、お点前はKRさんです。

KRさんは十数年のブランクがあったとは思えない、端正な美しいお点前で油滴天目茶碗と萩茶碗で2碗の濃茶を練ってくれました。

仕舞付けが終わり、釜と曲水指に蓋がされると、正客から「茶入、茶杓、仕覆の拝見をお願いします」と声が掛かりました。

「台天目はかかあ天下の点前」と言われていますが、茶入を拝見に出す前に天目台が曲げの水指前に置かれます。実に堂々とした置き形なので「かかあ天下」の所以なのでしょう。茶入が清められ、茶入、茶杓、仕覆が拝見に出されました。

茶入は織部の肩衝(美濃焼、佐々木八十二作)、仕覆は十二段花兎です。

茶杓は利休形の象牙です。 

 

薄茶になり、客は4名ずつ2回に分かれて薄茶を頂きました。

1回目はY氏、2回目はF氏が点前をしました。

炉に入って初めての稽古がこの「炉開きと口切の会」なので、暁庵は少々心配でもありました・・・が、内心はわかりませんが、実に堂々とよどみなく薄茶点前をしてくださいました。

これもY氏とF氏が普段の稽古をしっかり励んでいる賜物ですし、姿勢よく基本の所作がきちんとできていることが嬉しいです。

 

きっとお二人も先輩方に見守られて、緊張しながらも点前を楽しんでいたのではないかしら?

Y氏とF氏の点前に見惚れているうちに薄茶が水屋から出されました。

箕に盛られた紅葉やイチョウの和三盆(京都永楽屋)を頂戴し、熱い薄茶をゆっくり味わいます。薄茶は金輪(丸久小山園)です。

棗と茶杓が拝見に出されました。

棗は雪月花蒔絵の大棗、山中塗の中村孝也作です。茶杓は同じものですが、銘や茶杓に因むお話がそれぞれ違っていて興味深く伺いました。これはこれで良きかな・・・と思います。

 

・・・こうして「炉開きと口切の会」が愉しく進行し、後座の亭主T氏の挨拶で幕となりました。

皆様、ありがとうございました! 楽しく充実した会でした・・(ため息)

 

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