暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

颯々の今日庵にて・・・(1)

2021年04月30日 | お茶と私

        新緑の美しい今日庵・兜門  (4月22日撮影)

目の回るほど忙しかった4月・卯月が今日で終わろうとしています。

「何故そんなに忙しかったの?」「忙しすぎて心を亡くさないように・・・、もう若くはないんだから無理しちゃダメ!」と何処かから声が聞こえてきます。

4月25日に東京都、大阪府、兵庫県、京都府で緊急事態宣言が発令されましたが、発令直前の22日と23日に京都・今日庵へ行ってまいりました。    

京都で暮らしていた時以来ですから7,8年ぶりの今日庵訪問です。

脇門からお玄関に入り、滞りなく用事を済ませると、無色軒に通されました。

 

       (四代仙叟お好みと伝えられる無色軒)

一歩中へ入ると、とても懐かしい感じがしました。

行灯の灯りだけのほの暗い座敷に座ると、障子の桟の景色が目に飛び込んできて、しばしうっとり見惚れていました。出来ることなら、ずっ~とここに座して障子の景色の変化を見ていたい・・・と。

 

 

無色軒(むしきけん、重要文化財)は、四代仙叟好みと伝えられる裏千家の茶室です。

無意識に懐かしさを感じたのは、どこか金沢の灑雪亭(仙叟好みと伝えられる)に似ていたのかも?(金沢・灑雪亭に魅せられて京都の古家を灑雪庵と名付けて3年ほど住まいしました)

無色軒は天明8年(1788)の大火で罹災後、七代最々斎が再建しています。榑縁(くれえん)張りの部分はもと寒雲亭の柳の間とつながっていたそうです。

 

    (もと寒雲亭とつながっていたという榑縁(くれえん)張りの部分)  

      

 

その日のお軸は「柳緑」、花は木蓮の白い蕾と花筏、大ぶりの魅力あふれる花入れは信楽焼でした。

お菓子が運ばれ、薄茶一服を美味しく頂戴しました。

       「うぐいす餅」 (老松製)

ちょうどその頃、同門社中のI氏が入っていらして、今日庵で会えたことが嬉しく、心強く、明日の親授式の時間などを確認し合って、一足先に失礼しました。

 

  (立派な表千家の御門ですが、脇門は開けたままでした)

        (武者小路千家)

まだ15時を過ぎたところだったので、小川通リをぶらぶら歩きながら楽美術館を目指しました。

裏千家に続いて表千家、そして更に下って行くと武者小路千家があります。

楽美術館は暁庵にとって思い出多い、大好きな美術館ですが、コロナ禍で入場制限をしながらも、「やわらかなぬくもり」展が開催中(5月9日まで)です。

 

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八重桜の花の陰で

2021年04月09日 | 暮らし

 

毎年、花見の時期は忙しいですが、今年は特別かもしれません。

とにかく、咲くのが早いのです。

つい、数日前まで「私のサクラ」が満開で、その花びらを散る風情を惜しみながら、台所の窓から眺め暮らしていました。

今日(8日)は、数日前から気になっていた八重桜のお花見に行きました。

家から10分ほどのところにある帷子川沿いに八重桜の散歩道が2キロほど続いているのです。

 

ちょうど8分咲きで「今が一番の見頃だね・・・」と、八重桜の並木道を逍遥しました。

帷子川沿いに八重桜の若木が植えられた頃から見守っていますが、あれよあれよ・・・という間に大きく育って、20年近く経ったでしょうか? どの木も枝をしっかり伸ばし、びっしり八重の花をそれはそれは見事に咲かせています。

花見には団子ならぬ花見弁当が欠かせません。いつも手軽にコンビニでランチを調達して、花を愛でながら食べることにしています。

この日も途中の公園のベンチでお弁当タイムにしました。

おにぎり、サンドイッチ、ジュース、牛乳などを買い込み、日向ぼっこをしながら花の下でいただくランチは最高! どんな豪華なレストランのランチよりも贅沢な気がします。

今年もまた花見弁当を2回も楽しめたことをツレと喜び合ったことでした。

 

     (白の八重桜を発見!です。2本だけありました)

大好きな歌(古今和歌集)を思い出しました。この歌は友人に色紙に書いてもらい、桜の頃の茶事の待合によく掛けた歌です。

 

   いざけふは 春の山辺にまじりなむ

       暮れなば なげの花の陰かは      素性法師

 

・・・もし日が暮れたら、花の他には何もない花の陰で泊まりましょうよ・・・

「春の山辺に溶け込むような一体感がいいなぁ~」と、遠い目でため息をつきながら、現実には風が冷たくなり、日向ぼっこのベンチを引き上げて帰途につきました。

 

       (人気のないベンチは春の愁いそのもののようだ・・・)

 

  彼は始めて四方を見廻しました。
  頭上に花がありました。
  その下にひっそりと無限の虚空がみちていました。
  ひそひそと花が降ります。
  それだけのことです。
  外には何の秘密もないのです。      「桜の森の満開の下で」より

 

 


2021年卯月の教室だより・・・花散らし

2021年04月07日 | 暁庵の裏千家茶道教室

    (桜の蜜を吸っているのでしょうか、ヒヨドリです)

     (真ん中が「私のサクラ」・・・毎年、記念撮影しています)

 

4月3日(土)は卯月に入って初めての稽古日でした。

5月29日(土)に「薔薇の茶会」を開催するので、今年は早目に炉を塞ぎ風炉へ移ろう、4月の2回目の稽古は風炉でしたい・・・と思っています。

春の女神にその声が届いたのでしょうか? 今年の桜もそのほかの花も咲くのが早く、朝な夕なに眺め暮らしていた「私のサクラ」も散り急いで葉桜になりつつあります。(3月28日満開宣言)

散歩道には早や風炉の花が咲きそろっていてビックリです。

公園の躑躅が満開ですし、花水木、藤、モッコウバラも咲き出しています。

 

 

その日は午後からSYさんとAさんがお稽古にいらっしゃいました。

お花が好きなSYさんは時々家に咲いているお花を持って来てくれます。茶花を生けるお稽古になるので、花入を選んで生けてもらっています。

この日は4種持参の内の2種、モミジとラナンキュラ(花金鳳花(はなきんぽうげ))を旅枕に生けました。モミジが小さな赤い花を沢山つけていて、ラナンキュラはまるで薔薇のようです。

  (モミジとラナンキュラ(花金鳳花(はなきんぽうげ))

先に鉄製燈明台(白洲正子好み)に春蘭を生けていたのでこの日の床は華やかになりました。

お軸は、「春水満四澤」(しゅんすい したくにみつ」、足立泰道老師の御筆です。

 

 
炉での最後のお稽古なので、3月に続いて台天目、濃茶と薄茶を吉野棚でお稽古しました。
コロナウイルスのため2ヶ月のブランクがあったにもかかわらず、お二人とも唐物(炉)に続いて台天目(炉)を習得してくださって嬉しいです。
 
  (黒楽茶碗、一入作「徒然」写しの拝見中です)
 
窓を開けてお稽古をしていると、一陣の風が桜の花びらを運んできて、思わず歓声を上げました。
既に葉桜となっている庭の彼岸桜の最後の花散らしでしょうか。もしかしたら、「私のサクラ」のしばらくお別れの挨拶でしょうか。美しくも物悲しい春の一コマです。
 
 

 (拝見にお出しした茶入、茶杓、仕覆について問答中です)

3月は釣釜でしたが、4月は透木釜にしました。

暁庵の透木釜は「又陰」の鋳込みがある、一燈好み・又陰口透木釜です。透木釜の四方口は「又陰」の躙口を表しているそうです。作者は菊池政光、透木は宗旦好みの桐です。

「又陰(ゆういん)」は裏千家今日庵に現存する茶室(重要文化財)です。宗旦が隠居屋敷を四代仙叟に譲って再び隠居する際に建立したと伝えられる四畳半の茶室で、再び隠居することから名付けらた「又陰」がユーモラスでシャレています。

毎年、使うのが楽しみな、存在感のある又陰口透木釜です。

 

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花吹雪の 逆勝手且座之式

2021年04月04日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

 

3月30日(火)はS先生の東京教室のお稽古でした。

21日に緊急事態宣言が解除され、約3ヶ月ぶりにS先生の東京教室のお稽古へ出かけました。

今年の桜はとても早く、車窓から眺める桜は、満開の桜、散り始めている桜、早や葉が出ている桜たちがそれぞれの春を謳歌しています。

「今年も綺麗に咲いてくれてありがとう・・・」と心の中でささやいていました。

 

この日の稽古科目は、大圓草から始まり、後炭、向切逆勝手・内流し、入子点、休憩(昼食)をはさんで、茶通箱、逆勝手且座、貴人清次花月と続きました。

後炭や向切逆勝手・内流しのお点前も興味も奥も深かったのですが、なにしろ、逆勝手且座之式は初めてでした。

「えっ!!且座を逆勝手でするの?」とは、連絡を受けた時の私の反響です。

3日前から2回、逆勝手の初炭(釣釜)、濃茶、薄茶のお稽古をしました。私の所属する2班の方々は逆勝手が好き(?)らしく、逆勝手の四畳半花月をその前にもお習いしています。

さて当日、水屋で札を引くと、私は二(花)でした。

木五倍子(キブシ)、あけび、射干(シャガ)、クリスマスローズ、椿などを持参し、花積もりもしたので、二の札が当たったのかもしれません。

 

花(東)はOさん、月(半東)はI氏、一(香)はIさん、二(花)は暁庵、三(炭、釣釜)はLさんでした。

「どうぞお花を」とOさん。

竹の花入に黄色い花房を3つ垂らした木五倍子と白いクリスマスローズを生けました。

みなさま、最初こそ足の乱れが多少あったものの、逆勝手と思えないほどスムースなお点前でございました。私も家で稽古して臨んだけれど、きっと皆さまもそれぞれ努力されたのでは・・・と思います。そんなお仲間が誇らしく大好きです。

ただ、床の間の位置関係が我が家と違うなど、最後の最後まで自分の頭の中の地図(?配置図)と違和感があって、私ひとり迷子になっていたような・・・二の花でヨカッタ! (ホッ・・)

 

 

7科目の充実したお稽古が終わり、花吹雪の中、皆で歓声をあげながら帰途につきました。

S先生のお稽古はもちろんのこと、稽古後の喫茶タイムもとても貴重な時間です。

その日は7人で30分ほど寄り道し、いろいろな情報交換をしながら「林檎ジュース」とケーキ「ミゼラブル」をいただき、こちらも大満足でした。