暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

稽古納めを除夜釜にて

2016年12月31日 | 暁庵の裏千家茶道教室


  霜柱  (季節の花300)


「無事」・・・大好きな禅語です

12月28日(水)が暁庵の茶道教室の稽古納めでした。

今年こそ稽古納めは除夜釜でしたい・・・と思っていました。
京都に居る頃、暮れも押し詰まるとS先生が自宅で除夜釜をしてくださるのがとても楽しみだったのです。
その日は午後からUさんとFさんの稽古があったので、来れる方だけ16時からの除夜釜に参加して頂きました。

床の掛物は「無事」、宝山寺寛道和尚のお筆です。
「無事」はとても好きな禅語で、次のようなことをお話したような・・・。
「今年も好い事、悪しき事、いろいろな事がいっぱいあったけれど、一切の事をいったん無にしなさい。
 ・・・そして、すべてを無にしてから新年に新たなスタートを切りなさい」
花は椿と蝋梅を二重切の竹花入へ。

Uさんの唐物、Fさんの流し点、Uさんの丸卓で薄茶点前までお稽古が終わり、待合へ移動して頂き、ここから除夜釜となりました。
「皆さまがお揃いになったらお詰さんは板木を打ってお知らせください」

さて、暁庵は大忙し・・・灯火の用意をし、板木で白湯をお出し、席入のご案内をします。
庭の蹲踞ではなく玄関に簡易蹲踞(水屋甕)を設え、それを使って席入して頂きました。



茶事と同様に一人ずつご挨拶を交わすと、それぞれの方の精進や奮闘ぶりが嬉しく脳裏を横切っていきました。
ここでFさんに交代し、今年の最終稽古の後炭となりました。
すでに辺りは薄暗くなり、手燭を持って灰器を持ち出します。
釜が上げられ、初掃きで炉辺に寄ると炭がすっかり流れていました。
蝋燭の灯りの下、ほんのり浮かび上がる残火が寂しそうな炉中の風情はまた格別のものでした・・・。
胴炭を割り、輪胴から炭が左回りに置かれていき、最後に点炭が置かれました。

菓子が運ばれ、皆さまに薄茶をお点てしました。
茶碗は織部と京焼、織部は大学同期生の青木念作、京焼は人形手で初見裕作です。
皆さま、緊張して暁庵の点前を見ていらしたようですが、薄茶タイムを愉しんで頂けたかしら?



薄茶が終わると、再び待合の椅子席へ移動して頂き、埋み豆腐と一献を差し上げました。
埋み豆腐はN先生の納会でいつも出されていたので、それを真似て初挑戦です。
豆腐の上にご飯をのせ、味噌汁(白味噌と赤味噌少々)をかけ、かつお節と海苔をのせました。
向付はイワシに大根おろしです(本来はゆずり葉にうるめイワシをのせるのですが・・・)。
一献の後、ふく梅の清まし汁、炊き合せが2鉢、香の物をお出ししました。
酒は六友と一の蔵です。

生徒さんに助けられて、この1年を楽しく有意義に学ばせて頂いた私からのささやかなお礼です。
もう一つ、曜日が違ってゆっくり顔を合わせてお話しする時間がない生徒さん同士の懇親の場でもあります。




なかなかブログが書けずに、今日はついに大晦日です。
来年も相変わりませず、皆さま、宜しくお付き合いのほどをお願い致します。

どうぞ良い年をお迎えくださいませ!  



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クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・・2

2016年12月30日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)


(写真はすべて相客K様の提供です)

銅鑼が打たれ後座へ席入すると、
床には雪柳と白玉椿が煙突からサンタさんが今まさに入らんとしている花入に生けられています。

点前座には、初座の床に荘られていた種壷の水指、蓋に茶巾、茶筅、茶杓をのせ、前に茶器の入った茶碗が置かれています。
茶筅荘(ちゃせんかざり)のご趣向でした。
茶筅荘は、茶碗、茶入、茶杓以外の水指や風炉先屏風に由緒や伝来がある場合に行われるお点前なので、後ほどお尋ねするのが楽しみです。

お点前が始まり、客4名が一心に茶筅荘のお点前を見詰めます。
仕覆が脱がされると、これまた素晴らしい時代を感じる茶入が現れました。
茶杓は銘「つれづれ」、待合に筒が荘られていて、大亀老師の御作です。
やがて茶入から濃茶が茶碗に入れられ、立ち上る茶香が濃茶の美味しさを予感させます。

熱く、香り佳く、お練り加減よく、まろやかな濃茶を頂戴しました。
早速、水指からお尋ねすると
「桃山時代の古備前の種壷でございます」
何でも穴が開いていて水が漏れるので修理してあるそうですが、
その修理が面白く、石を穴に当てがい、そのまま再度焼成しているとか。
最後に、水指の拝見をお願いしたので、珍しい補材の石を見ることが出来ました(感謝です!)。



茶銘は初昔、上林詰です。
茶碗は高麗茶碗かしら?と思いましたが、江戸初期の対州窯とのことで、
真っ赤な地色に唐草や花などの文様のある素敵な古帛紗(道元緞子)が添えられていました。
道元緞子は曹洞宗・永平寺の開祖、道元禅師が宋より伝えた袈裟裂と伝えられていて、袈裟裂大好きな暁庵には嬉しい古帛紗でした。

対州焼(対州窯)は、江戸時代から明治にかけて対馬で作られた朝鮮風の陶器で、対馬焼とも言います。
高麗茶碗と見まごうばかりで、薄作りの上手の茶碗など茶器が主で、御本手(ごほんて)などがあり、
一般には朝鮮釜山窯の製品も含めて対州焼(対馬焼)と称します。
 
10月の韓国旅行で高麗茶碗のふるさと・慶尚南道を巡ったせいもあり、対州茶碗とのお出会いが嬉しかったです。



湯相も火相もよろしいようで、続き薄茶になりました。
次客KさんのHNの由来を伺ったり、三客Cさんの流儀遍歴のお話などが心に残っていますが、
一番驚いたのは詰のMさんでした。
和のものが大好きというMさんはお茶は全く習っていないそうですが、一人亭主のTさまをサポートして立派に詰のお役を果たしていました。
私も今度、茶歴や流儀にかかわらず、いろいろな方にお役をどんどんやって頂こう・・・と密かに思った次第です。

薄茶を十分頂き、ご亭主Tさまや連客の皆様ともいろいろお話がはずみ、幸せな時間が過ぎていきました。
「忙中閑」の旗を掲げた同じ舟に乗って、楽しく和やかに一座建立できましたことに深く感謝です。
また、皆さまにお会いできますように・・・・。

       
Merry Christmas & Happy New Year 


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クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・・1

2016年12月29日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)


(写真はすべて相客K様からです)

今年も残り3日となり、年内にどうしても書いておきたい茶事があります。

12月24日に曨月の茶事へまいりました。
ご亭主のTさまは今お茶事に燃えていて、まさに旬の方です。
毎月お茶事をやっているそうで、しかも一人亭主で懐石までなさるとか。
・・・そんなTさまの心意気に同感しながらも、同門ということで正客の指名があり、初めてのご亭主、連客3名さまとも初めての御目文字に多少の不安を覚えながらの参席でした。

暁庵のお茶サロン
で初めてのお客様をお迎えすることはあるけれど、まさに逆の立場です。
頭と心を柔らかくして、どんな事があっても受け入れること!」と自らに言い聞かせました。
・・・でも、心配は全く無用でした。

その日はよく晴れていました。
客4人は近くの駅で待ち合わせ、Tさま宅へタクシーで向かいました。
待合へ入ると、「忙中閑」の画賛、太湖に舟を浮かべた釣り人が一人、月を眺めながら悠然と釣り棹をたらしています。
その様子は、師走のクリスマスイブに集った私たちのよう、同じ舟に乗ってこれからお茶を楽しむのでしょうか?



庭の腰掛待合で蹲踞の筧の水音を心地好く聞いていると、ご亭主の迎え付けです。
初めて御目文字のご亭主Tさまと心を込めて無言の挨拶を交わしました。
庭先から八畳の茶室へ席入りするところは、我が家と似ています。
床には「今日無事」の軸、天竜寺牧翁和尚のお筆です。
そして、備前でしょうか、種壷が帛紗の上に荘られていました。
点前座にまわると、壁際にクリスマスの飾りが煌めき、炉には存在感のある釜が掛けられていました。

「なんて素敵なお釜かしら! この形はなんというのかしら? 御作は?」
戦国武将を思わせる堂々とした佇まい、天明を思わせる釜肌、乳母口、三角の尖った鐶付があり、海松貝などの地紋も見えます。
後でお伺いすると「塩屋釜」、門脇喜平作(たしか?)とのことで、
「鐶付のところに穴があり、湯が沸くとそこから湯気が出てくるのです。そこが気に入っています」
初炭が終わり、懐石の終わりころにしゅんしゅんと釜から湯気が出始めると、小さな穴からも・・・期待に応えてくれました。



手づくりの懐石が凄かった!です。
かわいらしい注連縄が飾られている雑煮碗が出ました。
「最初に注連縄を下に落として、今年の厄を落としてください」とご亭主。
なんて素敵なご趣向なのでしょう! 
皆、喜んで厄落しをしてから次々出される懐石を次々と平らげていきました。



一人で料理し、盛付けし、運び出すというのは、とても大変なことなのですが、微塵もそんなことは感じさせず、本当に料理好きで、おもてなし好きなのだなぁ~と感心しました。

もうもう満腹でしたが、伊勢土産という主菓子「宇治橋」(藤屋窓月堂製)を頂戴して中立しました。(つづく)


     クリスマスイブに曨月の茶事へ・・・・2へつづく


師走の教室だより・・・炭手前に汗して

2016年12月25日 | 暁庵の裏千家茶道教室


    水仙が咲きだしました

炉の初炭手前にほぼ全員で取り組んでいます。
一口に初炭手前と言っても、棚なし、棚あり、台子、長板、大炉、釣釜、透木釜などがあり、
奥が深いことに改めて気が付きました。

先ずは11月2日の教室の炉開き、毎年交代で初炭手前をしますが、今年はYさんでした。
吉野棚でしたが、羽根と香合は炭斗に仕組んで初炭をしていただきました。
遠方なので事前の稽古はできずに心配していましたが、見事にお役を果たされました。
きっと身体が動くようになるまで家でお稽古をしてくださったのでしょう・・・。



教室の目標として、11月と12月の間に少なくとも1回は初炭手前に挑戦してもらうことにしました。
ベテランさんも新人さんも、一からスタートで汗しています。

他所から暁庵の教室へ移っていらして、初めて炭手前に挑戦した方もいらっしゃいました。
きっと大変だったことでしょう。
でもね! 大丈夫! 失敗を恐れずに何度でも挑戦してみてください。
一度やってみると、炭手前の見学ポイントが段違いに違うことを実感すると思います。
あとは稽古をしっかり積んでいけば、炭手前が好きになり、楽しくなること間違いなしです。


懐かしい灑雪庵のクリスマス飾り

  利休百首より

  茶の湯とはただ湯を沸かし茶を点てて飲むばかりなる事と知るべし
   (言うは易し、行うは難し・・・)

茶事で炭手前はとても重要で、欠かすことができません。
茶事の初炭では、後座でお客さまに濃茶を美味しく差し上げるため、火相と湯相をぴったり合うように心がけますが、何度やっても難しいです。
炭を選び、置き方も空気の通り道を塩梅して(湯が早く沸くように、または、ゆっくり沸くように)置いていきます。

炉用の茶炭は京都から購入していますが、火のまわりが早く、いつも懐石途中で沸きすぎてしまうのが、目下の悩みです。
それで、炭の置き方や大きさを考えたり、炭を何日前に洗うべきかなど、研究中です。
一方で、茶事中にはハプニングは当たり前、うまくいかなかったことをどのように対処するか・・・が求められます。
中立で炭を足すこともできますが、後炭の風情が変わってしまうので、なるべくやりたくありませんの・・・(いつもじっ~と我慢して後炭を迎えます)。



さて、稽古の方ですが、炭手前を楽しんで稽古してくださると嬉しいです。
炭道具は変わり映えしませんが、香合や練香はいくつか取り揃えているので、
季節や年中行事についての問答を楽しんで頂けるかしら?

あと1週間で新年を迎えますが、1月18日に「初釜」を茶席K邸でいたします。
客、初座の亭主(初炭、懐石)、後座の亭主(暁庵が濃茶)、半東、後炭、薄茶点前など、社中で交代して初稽古を兼ねています。
N氏が初座の亭主を務め台子で初炭手前、台子の後炭手前は半東Yさん、たぶんお二人とも自宅で猛(?)稽古中でしょうか。
N氏の古染コレクションから香合のお持ち出しを頼んだので、こちらも皆で楽しみ!にしています。 


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師走の教室だより・・・Merry Christmas !

2016年12月22日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 
   雪景色 (2016年11月24日撮影)

 


 皆さま Merry Christmas !
                          
もうじき~楽しい~クリスマス~ですね。
昨年は、ご近所さんとクリスマスの茶会を楽しみましたが、今年は諸事情により自重しています。

12月17日(土)、Tさんが娘のSちゃんを連れてお稽古にいらっしゃいました。
Sちゃんは幼稚園の年中組なので5歳、暁庵へ2回目の来庵です。
「娘のSも先生宅へ伺うのをとても楽しみにしています」というメールを頂き、
クリスマスも近いので、どんな趣向でお迎えしようかしらと、こちらも楽しみでした。

20年前にアメリカのサンアントニオで買ったメキシカンツリーを玄関に吊るし、
待合に「聖夜」の色紙と手製のリースを飾り、長年出番のなかったサンタさんにも登場してもらいました。
主菓子は、きんとんのクリスマスツリーです。
それから、鳥、うさぎ、オルゴール付香合などを並べ、中にお菓子(金平糖、マーブルチョコ、飴)を少しずつ入れておきました。
ささやかなプレゼントです。




当日、Tさんがお稽古をしている間、お点前の真似をしながら遊んでもらえば・・・と思い、
小さなお盆に盆略点前の一式を用意しておきました。
ところが、小さな扇子を前に置いてきちんと挨拶するではありませんか。
そして、Tさんの盆略点前の稽古が始まると、横目で見ながら一緒に手を動かし始め、
帛紗の代わりにハンカチを取り出し、棗や茶杓を拭き始めました。

「むむっ! これは本当にやる気だわ」・・・びっくりするやら嬉しいやらです。
「お母さんのお点前が1回終わったら、帛紗さばきを教えますからね。
 それまでハンカチを使って一緒にお稽古していてね」

Tさんは11月から入門し、今日が3回目のお稽古でした。
割り稽古が終わり、盆略点前で初めて薄茶を点ててもらい、Sちゃんと暁庵が頂戴しました。
主菓子はクリスマスツリー、ふくろうが描かれた小服茶碗でゆっくり飲んでもらいました。
「熱いけれど美味しい・・・」



Tさんが2回目の支度をしている間に、袱紗捌きの稽古です。
基本の基なのできちんと姿勢から教え、棗と茶杓の清め方まで教えました。
手が小さいので思うようにいかず、何度もやり直しました。
2回目の稽古の間も熱心に袱紗捌きに取り組んでいて、終わるころにはとてもきれいに帛紗が畳めるようになりました。
う~ん・・・子供ってスゴイ!ですね

Sちゃんのやる気と一生懸命さが伝わって来て
「月に1回で良いからお母さんと一緒にお稽古にいらっしゃい」と言いました。
Sちゃんはニッコリして頷き、Tさんも嬉しそうでした。

あの言葉が耳元でささやきます。
「養之如春 (これを養う春の如し)」
ゆっくりでいいから楽しくお稽古をしてくれたら・・・と思います。


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