暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

スウェーデンからの生徒さん

2016年06月27日 | 暁庵の裏千家茶道教室


スウェーデンから来日中のOさんが帰国する日が近づいています。
それで、今日のお床はOさん仕様にしてお迎えしました。

お軸は、足立泰道師の筆で
「水上青々翠」 
読み下しは、水上(すいじょう)青々(せいせい)タル翠(みどり)です。

花の前に花入が頭に浮かんできました。
スウェーデン・コスタボダ製のガラスの花入で、
白いガラスの織のような襞が銀色を帯びて輝くお気に入りです。
花は・・・きれいなピンク色の木槿の蕾とラベンダーを入れてみました。

 
 ピンクの木槿とラベンダー

3ヶ月という短い期間でしたが、熱心に東京から通ってくださいました。
スウェーデンのお茶事情や外国でお茶をすることの大変さ・・・など、
今まで知らなかった世界を知ることができ、視野が広がった気がします。
そして何より、Oさんの茶道に対峙するアツイ心と謙虚な姿勢がステキでした。
7月2日(土)の最終稽古日まであと2回なので、再度ご希望をお尋ねしました。

 (暁庵よりOさんへ)
   22日(土)は少し早目にいらして、午前中に2科目、午後1科目でも構いませんが・・・。
   N氏は13時からで、後炭と台天目の予定です。
   薄茶なら葉蓋で洗い茶巾(または薄茶平点前で基本を復讐してもよろしいかと)、
   四ヶ伝なら宿題の台天目かしら? それとも大円草をなさいますか?
   7月2日(土)の最終稽古の科目も考慮してお決めください。
   もうじきご帰国ですね。寂しくなります・・・。

 (Oさんから)
   土曜日のお稽古は薄茶の葉蓋で洗い茶巾 それと台天目でお願いします。
   基礎からきちんとお稽古した方がいいと思いますので・・・。
   あまり多くやっても頭に入らないのではと心配です。
   7月2日は大円草か行之行をお願いします。 
   どちらにするか土曜日のお稽古の時相談してもよろしいでしょうか。

   本当に日本滞在が残り少なくなりました。 
   茶のお稽古でホッとする時間が持て 孫達との忙しい毎日が乗り越えられた様な気がします。
   先生に出会えて本当に感謝しています。
   神楽坂でお菓子屋さん見つけたので 土曜日のお稽古にはお菓子持っていきます。


 「彦星」 (神楽坂・梅花亭)

結局、その日は薄茶平点前と台天目をして頂き、基本をじっくり見させて頂きました。
午後からN氏も加わって、後炭、骨董鑑賞(後ほどあらためて・・・)、再び台天目でした。
Oさんお持たせの東京神楽坂・梅花亭の「彦星」(練きり)とお茶を味わいながら
3人で愉しく練磨した一日でした。
暁庵の茶道教室がOさんのオアシスになったようで嬉しいです。   

            
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東京教室の稽古・・・水無月 in 2016

2016年06月25日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古



6月16日は、S先生の東京教室の稽古でした。
昨年の6月は冷房なしだったので、蒸し暑さでしんどかった記憶がありますが、
今年は冷房あり、それに障子が簀戸(すど)に変わり、いかにも涼しげでした。

床のお軸は、え~と、確か昨年も掛けられていたのですが・・・
きちんとメモしているAさんが読みを教えてくださいました(いつもアリガトウ)。

森ゝ夏木杜鵑啼
読み下しは、森ゝ(しんしん)タル夏木(かぼく)ニ杜鵑(ほととぎす)啼(な)ク。
紫野伝衣(でんね、大徳寺四百八十八世・円山伝衣)筆、
読みにくいけれど、清々しくも枯れた味わいのあるお軸です。

「東京だと何処へ行けば杜鵑の啼き声が聞けるのでしょうか?」とS先生。
「明治神宮の森で聞けると思います・・・」どなたかが応えています。
そういえば我が家でも8時頃に朝刊を取りに行ったツレが
「今朝、初めて杜鵑の啼き声を聞いたよ!キョカキョクって啼いていたよ」って興奮してました。

その日の科目は、真之炭、真之行、台子で貴人清次薄茶、茶通箱(運び)、
昼食をはさんで唱和式と濃茶付花月(長緒)でした。



真之炭と真之行の正客、茶通箱(運び)の点前が担当になっていたので、
午前中は汗(冷や汗?)の掻き通しでした。

茶通箱(運び)は、茶事の日に正客Oさんから濃茶を頂戴したので、
早速、茶通箱にて濃茶二種を賞味して頂く・・・という筋書きです。
水屋でOさんと打ち合わせ、到来の濃茶は伊藤園の万歴の昔になりました。

主菓子はたしか名古屋・両口屋是清の「 ? 」名前が・・・・出て来ません。
ヒスイのような色合いが印象に残ったので、菓子銘は「翡翠(カワセミ)」としました。
久しぶりにS先生にじっくり見て頂いて、汗をかきながらもあやふやだった箇所(仕覆と大津袋の置く位置など)がクリアーになりました。



午後の唱和式では、水無月を彩る茶花が床の花入にあふれました。
全員で花を活け、香を聞き、濃茶を頂き、お薄は花月(菓子付、4服)、
活けた花に因む和歌を詠じる唱和式が大好きなので、見学も楽しかったです。
最後に、墨をすり、短冊に和歌をしたためる姿と雰囲気が何ともたおやかで、うっとり・・・。
お読み上げの和歌も素晴らしかったのですが、ご披露できないのが残念です。

翌日(17日)に五葉会の花寄之式があったので、花をたくさん分けて頂き助かりました。
3日間お茶の日が続くので、いつものお茶飲みはなし、体力温存で急ぎ帰宅しました。    情けないです!

                                         

水無月の教室だより・・・大円草

2016年06月23日 | 暁庵の裏千家茶道教室



その日は、YさんとFさんのお稽古でした。
Yさんに許状が届いたので、大円草の稽古をしました。

大円草と書いてだいえんのそうと読みます。
今まで大円之草と書いていましたが、許状を拝見して間違いに気が付きました。
大円真(だいえんのしん)も同様でして、謹んで訂正いたします。 

茶道大辞典(淡交社)より
大円草(だいえんのそう)
  裏千家の相伝種目の一課目。十三代圓能斎が考案。
  大円盆に名物の唐物茶入、和物名物茶入をのせ、天目茶碗に茶巾、茶筅、茶杓を
  仕組んで両種の濃茶を客に呈す式。格は行之行台子と同じ。

大円真(だいえんのしん)
  裏千家の相伝種目の一課目。十三代圓能斎が考案。
  台子の上に茶入をのせた大円盆・天目茶碗・茶杓を荘り付けてはじめる点前。
  格は真之行台子と同じであるが、奥秘十二段の外である。


山百合(神奈川県の県花、季節の花300)
6月30日の誕生花、花言葉は「威厳、甘美」

前にも書きましたが、大円草って他とはちょっと違う不思議な点前です。
何が不思議か(暁庵にとって)というと、
最初の建水の持ち出し方、柄杓を二度に引いて蓋置で構えるところ、
さらに風炉では蓋置と柄杓の仮置きがあります。
相伝種目の中で台子を使わず、大円盆を茶点盆として使うこと。
和物名物茶入を使う点前は大円草だけなこと。

それから、濃茶点前や四ヶ伝・唐物で学んできた唐物茶入と和物茶入の扱い、
台天目で学んだ天目茶碗や天目台の扱い、盆点で学んだ盆の扱いなどが含まれ、
今までの総集編として考えられた点前・・・と理解しています。

「先生、どうしてこのような点前が考案されたのでしょうか?」
と生徒さんに尋ねられても困りますが・・・
「それは考案された圓能斎にお尋ねするしかわからないのですが、
自分で一つずつ丁寧に点前の意味を考えながらお稽古していくと、
わからなかったことがだんだんわかってくる実感(快感)を覚える点前だと思いますよ」


翁草(花のあと、季節の花300)

初めて挑戦されたYさん、四ヶ伝の所作をきちんと習得されているのでスムースに出来たように思いました。
少しずつ名物の唐物茶入や和物茶入の名前や伝来を覚えて、それらを扱っている意識を持つと、
さらに大円草が愉しくなることでしょう。
暁庵も茶道点前の三要素が身につくよう、大円草をもっとお稽古しなくっちゃ・・・ですが、
先ずは29日の許状式(引次)のために行之行を頑張らねば・・・です。  


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「ただ今、暁庵の茶道教室の生徒さんを募集中です」   
詳しくは、暁庵の裏千家茶道教室HP:https:akatsukiane.wordpress.com/をご覧ください。
初心者の方も大歓迎でございます。 ご縁があると嬉しいです。

清風の茶事へ招かれて・・梅雨の合間に  (その2)

2016年06月20日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                          
                                蛍袋  (季節の花300)
(つづき)

点前座は、真塗長板に切掛け風炉と、渦文のある青白磁の六角水指の設えでした。
水指の渦文が長板に映って、一瞬、水が流れているような涼やかな錯覚が・・・。
初炭になり、拝見の香合を古袱紗に乗せ、持ち帰りました。
「きっとご自作でしょうね。外の切箔の文様も雅ですが、中の金箔が豪華ですね」と次客さん。
細身の瓢を乾燥させ、種を取り、胴を切り、漆を重ね、文様を描き・・・10年近く掛けてゆっくり完成させたそうです。
お話を伺って、大事に扱ってヨカッタ!・・・胸をなでおろしました。

主菓子「紫陽花」(とらや製)を頂いて、中立しました。
再び外腰掛に4人で座っていると、林床の緑の中に白い蛍袋が点在して咲いています。
その風情に見惚れていると、さぁ~っと爽やかな清風が吹き抜けていきました。

                          

後座の席へ入ると、
丁子、花筏、蛍袋、未央柳、破れ傘、捻り花などが飴色の掛け花篭に生けられていました。
茶花は御主人の担当で、種から丹精込めて育てているとか(いいなぁ~・・・)。
その花を愛でながら、香りよき濃茶・長松の昔(柳桜園)を黒楽茶碗(大樋年朗作)で美味しく頂戴しました。
続いて薄茶となり、愉しく語らいながら、それぞれ異なる茶碗で二服ずつ頂きました。
私に選んでくださった茶碗は、青、群青、海鼠、茶などのコンプレックス、現代作家さん(名前が・・?)の作品でした。
二服目は、YさんとFさんが代わって点前し、Tさんも輪に入って薄茶を楽しんで頂きました。

お道具ですが、どれもTさんのお目に叶ったステキな御品、伺うと思い出が詰まった宝物でした。
是非またそれらと再会したいので、茶杓のことだけ書いておきます。
ご自作ですが、とても趣のある茶杓で銘が「無事」。
昨今、この銘が心に響くようになりました。
体調不良でドタキャンの恐れがあったのですが、五葉会のお仲間と集えたことが嬉しく、
「無事」にお茶をやっている喜びを皆で噛みしめたのでした。

                          

最後に宿題が・・・茶事の前に次のようなメールを頂いたのです。
 
   さてご案内ですが、少し古い重硯を10客手に入れました。なかなか硯は無いのです。
   以前の桑とは違いますので、使いたくなりまして、皆様にはご迷惑かと思いますが、
   最後に短冊に、何でもしたためて頂きたいなーと思っております。   Tより


・・・山水、松、梅など雅な蒔絵が描かれた重硯がまわされ、墨をすり、筆を取り、
短冊に思い思いに書きましてございます(なんとか和歌を絞り出しました・・・)。

    よひら咲く梅雨の合間のひと休み
           古雅の硯に心合わせて      暁庵


                             

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清風の茶事へ招かれて・・・梅雨の合間に  (その1)

2016年06月19日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                           
                                     「 寅 清風生八極 」

6月11日、五葉会(七事式の勉強会)のお仲間Tさんから茶事へお招き頂きました。
客は全員五葉会のメンバーで、正客は不肖・暁庵、次客Fさん、三客Yさん、詰Kさんです。

待合は1階のリビング、壁床に大きな水墨画のお軸が掛けられています。
上部に芭蕉が茂り、下方に蛙が一匹描かれていて、水無月にぴったりの掛物でした。
蛙と目があって、おもわずギクリとしました。
冷たい白湯で喉を潤し、庭の腰掛待合へ。
一枚板を敷いた工夫の腰掛に座ると、目の前に水槽のビオトープ。
蓮や珍しい水生植物を眺めていると、ご亭主の迎え付けです。

蹲で身を浄めてから2階へ上がり、八畳の茶室へ席入りしました。
床には横物のお軸が「え~と・・・う~ん・・・」、あとでお読み上げ頂くと、
「寅 清風生八極」 (とら せいふうはっきょくにしょうず)

紫野大梅(大徳寺四百八十九世、太田大梅)筆、
「清風生八極 老虎出南山」が出処、寅は竹を表わす意もあるそうです。
八極とは、東・西・南・北・乾・坤・艮・巽の八方のことで、
竹林から寅が現れ、清らかで爽やかな風(仏の教え)が八方(世界の隅々)に吹き渡っている・・という意味でしょうか。

                           

五葉会で月に一度切磋琢磨しているのですが、ご自宅の茶事へ伺うのは初めてで、嬉しく挨拶を交わしました。
実はご亭主Tさんは私が茶事へのめり込む(?)きっかけをくださった、一人なのです。
Tさんと8年(?)ほど前にお目に掛かった時だったと思います・・・。
「今、私(Tさん)はお茶事に精出しています。
 母がやはりお茶をしていて、お茶事をやりたい一心で道具を揃えだしたのですが、
 茶事の道具が揃った時には年を取りすぎて、お茶事をやる気力が無くなっていたのでした。
 それで今、出来るときに出来る茶事をやっていこうと・・・」

本当にそうですよね!・・・この言葉に心から賛同し、大きな勇気を頂戴したのでした。
挨拶の時にそのことを申し上げ、当時のことを懐かしく語り合いました。

                           
                                 
次々運ばれるTさん手づくりの懐石に皆で舌鼓を打ち、ステキな器の鑑賞も楽しく、ついお話も弾みました。
特筆は黒漆塗の煮物椀でしょうか。
大きめの碗形も好ましく、一つ一つ絵柄が違います。
暁庵のは青楓、数個の楓がプラチナで描かれていて、一層の趣と豪華さを添えています。
知人の工芸デザイン作家さんへ1年に1個ずつ注文し、10年掛けて10碗作って頂いたというお話にびっくりするやら、感動するやらの客一同でした・・・。 -continue -


      清風の茶事へ招かれて・・梅雨の合間に  (その2)へつづく