暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

あこがれのJAZZ茶会(一客一亭)

2010年11月30日 | 思い出の茶事
京都・宗旦忌へ参席した翌日、姫路の茶友を訪ねました。
あこがれのJAZZ茶会(一客一亭)へお招き頂いたのです(押しかけた?)。
2年ぶりでしょうか?
姫路駅もKさん宅のある無人駅も整備され変わっていましたが、
Kさんがあの時のような笑顔で駅に出迎えてくれました。

4時過ぎに到着したので、山中を思わせる庭を楽しみながら
ベランダで自家製干し柿を頂きました。
「ちょうど一番オイシイ頃なの」
吊るし柿にして2週間だそうですが、中だけが柔らかく、
甘く、ツルッ、トロッとした食感が何ともいえない絶品でした。

                

「玄関からにじり口へ廻って茶室へお入りください」
言われるままに夕暮の茶室へ席入りすると、床に燭台が置かれています。
お軸は最初のI(アイ)しか読めませんでしたが、神父さまのお筆で英語です。
「我は人に逢い、人は我に逢う」
という意味だそうです。

花は照り葉、白い小菊、椿が丈の高い四方花入に生けられ、
野の匂いを感じます。
どっしりとした存在感のある花入に惹きつけられました。
「お花も花入もお互いがひきたてあっている・・。
 揖保川焼かしら?」

たつの市在住の陶芸家・池川みどりさんの手によるものでした。
明日、池川さんの揖保川焼展へ伺うことになっているのですが
この花入を拝見して益々楽しみになりました。

ご挨拶のあと、Kさん手作りの夕食が運ばれてきました。
お得意の魚介を使ったイタリアンで、カルパッチョ、ピザ、焼物などを
楽しく会話しながらご一緒に賞味しました。

「さぁ、お腹も一杯だし・・・あとは薄茶かしら?」
とリラックスしていると、今までとガラリと違う雰囲気で
ご亭主が現れました。
あわてて姿勢を正しました。

「席を改めとうございますので腰掛待合へお出ましください。
 満月に近いきれいな月が出ております」

庭の腰掛待合へ出ると、中空に冴え冴えとした満月が輝いていました。
「前回も月が美しかった・・・」と思い出していると、ご亭主の迎えつけです。

                

筧のある蹲を使い、にじり口を開けた瞬間に
JAZZのサウンドが聴こえてきました。
低く物悲しいサックスの音です。
床の手燭と炉縁に置かれた燭台の蝋燭だけの灯りです。

床は書から絵に変わっていて、絵は・・・えーと、抽象画のようです。
床、釜を拝見し、席へ着くと、すぐにお菓子が運ばれお点前が始まりました。
炉の流し点で二服頂き、もう一服をご自服して頂きました。

個性と魅力溢れる道具組に感心しながら
床の絵、花、花入、茶碗、水指などの会話が弾みました。
特に揖保川焼の水指は形やモダンな明るい色合が蝋燭の灯りに
映えています。
薄器は見立てで、ポルトガル土産の小物入れだそうですが
これも灯りのせいか、一段とエキゾチックでした。

でもでも・・・JAZZ茶会と銘打つだけあって
バックミュージックのJAZZが一番素敵な道具組でした。

薄茶も十分頂戴したのにいつまでもその茶室に居たい・・・と思いました。
流れるJAZZのサウンド、官能的な哀愁を帯びたサックス、蹲の筧の水音、
蝋燭の炎にほど良く照らし出された茶室の閑かなハーモニー。

魂が癒される茶会だった・・・と
一客一亭のその瞬間が愛おしく、懐かしく思い出されます。

音楽に弱い私には曲名はわかりませんが、
JAZZの演奏はジョン・コルトレーンでした。

                       




京都 宗旦忌 (2)

2010年11月27日 | 茶会・香席
次の席は、宗旦忌の式場である宗家咄々斎です。
毎年11月19日に元伯宗旦居士の遺徳を偲び、法要が行われています。

床には元伯宗旦居士の画像が掛けられ、賛は玉舟和尚です。
御家元の炭手前、お茶湯の儀などの式典は既に終了していましたが、
名誉師範親授式が始まるところでした。

お家元からご挨拶があり、淡々と始まったのですが、
次第に身が引き締まる思いがしてきました。

名誉師範・拝受者の中には足腰が不自由で、介添えの方に支えられて
お家元の前にやっとの様子で進まれた方もたくさんいらっしゃいました。
お家元も「どうぞ座らずそのままで・・・」と声を掛けられ、
賞状を読上げ、ねぎらっていらっしゃいました。

「よくぞ今まで茶の道をがんばって来られましたね!
 よくぞ親授式へ出ていらっしゃいました・・・」
その方の今日までの長い道のりを思い、
今日の日を迎えた喜びはいかばかりかと・・・
Kさんと二人で思わず涙ぐんでしまいました。

式典には参列できませんでしたが、この親授式に同席できて
本当に好かった・・と、今でも話し合っています。

その後、隣席に荘られている茶道具と箱書を見学したのですが
式典へ参列していないので、今ひとつ頭と心へ入ってきません。

帰りに出口がわからなくなり困っていると、
大宗匠が庫裏から突然現れて驚きました。
「こちらですよ」
ご親切にも案内して頂きました・・・。
本当にありがとうございました。

              
     
              

次に、茶道会館広間の本席へ行きました。
床は圓能斎の力強いお筆で
「萬里一條鐵(ばんり いちじょうの てつ)」、大好きな禅語の一つです。
家元夫人容子様のお点前で薄茶を頂く立礼席は御園棚の設えです。
桐文のある、優雅な古天命の尾垂れ釜、水指は丹波焼でした。
薄器は玉椿、茶杓は一橙で銘「はじとみ」です。

ここでもう一つ、嬉しい道具との出合いがありました。

中央に展示している茶道具の中に、
くろ谷さんに墓のある藤村庸軒の竹一重切、
銘「時雨」がありました。
京都での「時雨」との三度目の出合い。
とても嬉しく不思議なご縁でした。

       京都 宗旦忌(1)へ          

  写真は上から、「法然院の山門」
           「御所・紫宸殿(特別公開中でした)」
           「廬山寺・源氏庭の紅葉」

京都 宗旦忌 (1)

2010年11月26日 | 茶会・香席
11月19日、元伯宗旦忌へ初めて参席しました。

18日に同行のKさんと紅葉の京都へ向いました。
京都駅へ着いてから駅に貼られているJRのポスターを見て
金戒光明寺(くろ谷さん)へ行くことにしました。
たっぷり二時間ほど乗車時間があったのに
紅葉の見物先を決めるのを忘れるほど、お茶の話に夢中でした。

岡崎道でバスを降りると、雨がぱらついていました。
・・・時雨です。
バスで知り合い、くろ谷さんまで道案内してくださった男性が
「北山しぐれ」と教えてくれました。
時雨にいろいろな名前があるなんて、ステキです。

金戒光明寺では初公開中の池を巡る庭を散策しながら、
水面に映る紅葉を堪能し、花峯庵という茶室で薄茶を頂きました。
この寺に宗旦四天王の一人、藤村庸軒の墓があることを初めて知りました。

京都って歩いていると、いろいろな発見があって楽しいですね。
真如堂を経て、哲学の道を通り、法然院から銀閣寺へ歩き、
タクシーで御所近くの宿へ辿り着きました。

                  

                  

19日早朝、着物を着付け、食堂へ下りていくと、
着物姿の方がたくさんいらっしゃいました。
皆さん、宗旦忌へお出かけのようです。
先生から受付会場へ7時30分には行ってるようにと
アドバイスがありましたので、朝食もそこそこに出かけました。

7時30分には到着していたのですが
50番までの第一グループには入れず、第二グループになりました。
すぐ前の方が毎年参席しているそうで、いろいろ教えて頂きました。
最後の点心席以外は自由行動はできないこと、
指示に従ってグループ(50人)単位で行動するなど、
その方の後を追って裏千家学園の副席へ席入りしました。

三つの床にそれぞれ軸が掛かっていました。
「山水有清音」「喫茶去」「古松談般若」・・・
どの軸も素晴らしいものでしたが、
後藤瑞巌和尚の「喫茶去」に強く惹かれるものがありました。

石川先生の席主、伊藤先生のお点前で薄茶を頂戴しました。
お茶とお菓子を頂戴して、ほっと落ち着きました。
釜は涛声(とうせい)釜、釻は貝(ばい)、松ぼっくりのつまみです。
石川先生から「時雨」、特にこの時期に降る「北山しぐれ」の話を
お聞きし、「あらっ・・」と思いました。

「北山しぐれ」は京都・北山の方から降ってくる時雨をいい、
晩秋から初冬にかけての京都の風物詩だそうです。

                        
     (2)へつづく                 

    写真は上から、「金戒光明寺の庭」
             「金戒光明寺の花峯庵」
             「真如堂にて」




正午の茶事 舞秋風 (5)

2010年11月24日 | 茶事
濃茶が終り、「炭を直させていただきます」と後炭が始まりました。
釜をあげると
「炭がすっかり流れていますね・・」と先生。
炉中を整え、匙香、湿し灰を撒きました。

「どうぞ輪胴止めでなさってください」
胴炭の左上に輪胴を置き、左回りに炭を置いていきました。
ここで失敗・・・釜を元の位置へ引くのを忘れ
灰器を持って下がってしまいました。
後炭で一番風情のある、濡れ茶巾で釜を清めるところがモタモタして
とても残念です・・(シュン・・・)。

煙草盆と干菓子を運び、薄茶となりました。
薄茶は京都・松籟園の「颯々の昔」です。
干菓子は竹箕に吹き寄せ(翆晶庵製)を盛ってお出ししました。

薄茶はお客さまとのご縁のある茶碗でお点てしました。

目出度い祥瑞の茶碗は、親身のご指導に感謝を込めて
先生(お正客さま)と三客のKさまに喫んで頂きました。
次客のSさまには大好きな「うずまき」茶碗
Yさまは、なぜか夏期講習会を思い出す黄瀬戸の「練成」です。

四国・松山とご縁があるNさまは高知の尾戸焼「松竹梅」、
母のことをよく語り合ったYさまは形見の志野茶碗「おもかげ」で、
最近、韓国へ行かれたMさまには十数年前に韓国で購入した茶碗「洛東江」、
詰のIさまはただお一人の男性なので、色気を感じる赤楽「玉三郎」でした。

いつのまにか私の元に集まって来た茶碗を総動員したのですが、
お客さまに喜んでいただけたようで、茶碗たちも嬉しそうでした。

                

こうして和やかに正午の茶事が終了しました。
最後の挨拶の時に先生から
「あなたのお心をしっかり受け止めることができたように思います」
というお言葉を頂戴し、感激いたしました・・(涙)。

先生、お客さま、半東のHさま、水屋のYさま、
懐石の佐藤さまとお手伝いの皆さま、
本当にありがとうございました。

反省も多々ありますが、私にとりまして原点に戻る茶事となりました。
お心こもる後礼の手紙を読み返しながら
10日も経っているのですが、その余韻に今も浸っています。


     前へ       正午の茶事 舞秋風(1)へ      




正午の茶事 舞秋風 (4)

2010年11月24日 | 茶事
後座の床には西王母を一輪、竹花入に入れました。

点前座には紹鴎水指棚を据え、平戸焼・色絵の水指を置き、
溜塗の棗と茶入を荘りました。

後ほど先生から
「お床のお花は西王母でしょうか、いいですねぇ・・
 好い頃合の椿がよく見つかりましたね・・」

花をお褒め頂いたのが嬉しく、
先日の茶会で茶花に心を入れられた先生の姿勢を見習って
野に花を求めて本当に良かった・・・と思いました。             

さて、茶事の主題の濃茶ですが、重茶碗で二碗練りました。
水屋のYさんが温めてくれた茶碗のぬくもりが
応援歌のように伝わってきます。
でも、緊張して茶筅通しの手が震えました。
「大変美味しゅうございます」
という先生のお言葉にほっとしました。

濃茶は京都・松籟園の「豊松の昔」です。
前席の主菓子は、翆晶庵製の「山の恵み」です。
横山和子さんに作って頂いた、栗餡が絶妙な栗きんとんです。

主茶碗は長次郎「喝食(かつじき)」の写しの黒楽で、
私の茶事で一番使われている茶碗です。
替茶碗は安田道雄造の井戸茶碗、夏期講習会の折に
今日庵より頂戴した「刻石天象虎文」の古袱紗をお出ししました。

               

茶入は井上東也造の朝鮮唐津の胴締め。
しふくは織部緞子です。
今年五月の旅行の折、唐津で出合った茶入です。

茶杓は後藤瑞巌和尚の「無事」です。
この茶杓一本に諸々の思いを託しました・・・。

     前へ       正午の茶事 舞秋風(5)へ