暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

初風炉の準備

2015年04月29日 | 暮らし
                杜若の群落 (京都・大田神社 2014年5月3日撮影)

東京教室の稽古の時、S先生から
「風炉の名残りはゆっくり、炉はいさぎよく・・・」
というようなお話があり、炉から風炉へ早めに切り替えることにしました。

準備は風炉灰を篩うことから始めますが、何日も天気待ちしました。
天気が良く風のない日が生憎外出日だったりして・・・。
その日(25日)は風がなく、日焼け対策(キャディ帽、山用長袖シャツ、軍手、日焼け止めクリーム、サングラス)を万全にしてとりかかりました。

すぐに日差しの強いテラスから緑の木陰へ篩う場所を移します。
新聞紙を広げ灰を小分けにして陽に当て乾燥させておくと、早く篩えます。
(湿気が強いときは電子レンジで水分を飛ばすと早いそうですが、私は未経験です)
それでも、昼休みをはさんで3時間近くかかったでしょうか。
のんびり昼休みをとっていたら、天気が急変。
あわてて残りを篩っていると、ポツポツと・・・何とか間に合いそう。

唐銅道安風炉に奉書を敷き、底土器を入れ、灰を入れ、五徳を据え、釜を掛けてみました。
初風炉の釜は畠春斉造の「波文尻張り」を選びました。
茶道を再開して間もない頃、富山県高岡市で出逢った思い出深い釜ですが、
使われずにしまわれていたので、初使いに近いです。

改めて釜を眺めると、下側にかけての曲線が美しく、穏やかな波文が刻まれ、鐶付は巻貝、
一瞬、浜辺で波の音を聞いているような気持になりました。
どんな釜鳴りかしら? ・・・楽しみです。

              

さて、ここで疑問が・・・。
尻張り釜の羽落(はおち)の位置をどう据えるか?
私のおぼろげな記憶では
「風炉より少しだけ出ている方がよろしい」ですが、
本「風炉の灰形」(山藤宗山著、淡交社)p.21で確認してみると、
「・・・諸説あります。理想としては切合風炉のように揃ったものが見よいものですが、結局は釜と風炉の釣合いによります」
(ごもっとも・・・と納得です)

実践として、尻張り釜をどうすべきか?
東陽坊のような円柱形ではありませんが長めの釜なので、羽落が風炉の肩よりほんの少し下の方が落ち着いて見えましたので、これを採用しました。
逆に、平釜のような責紐釜は羽落が風炉の肩より上の方が堂々と見栄えがします。

突き詰めれば、約束事は特になく、ご亭主の好みやバランス感覚で・・・というのも頷けます。
席入の時、風炉の灰形ばかり見ていましたが、釜(羽落)と風炉との調和という見どころが一つ増えました。

今日(29日)は3人のお客様がお見えになります。ドキドキしています・・・。
                                   


東京教室での稽古・・・卯月

2015年04月27日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古
4月21日、東京教室でのお稽古(2回目)へ出かけました。

異常気象のせいでしょうか、花の季節が早くなっています。
藤の花が描かれた塩瀬の帯を締めたかったので、帯が映るこげ茶系の大島を着て出かけました。
今年の藤の花は4月中に満開で、5月に藤の花の帯では「六日の菖蒲、十日の菊」になってしまいそうなので・・・。

床のお軸は「不識」、偶然でしょうが花も「しらん(紫蘭)」でした。
透木釜が掛かり、炉縁は花筏の蒔絵です。
卯月の科目は、真之行、後炭、炉流し点、盆点、東貴人且座、貴人清次濃茶付花月です。

真台子に唐銅皆具一式が設えてあり、真之行台子点前から始まりました。
Yさんの亭主、Kさんの正客、私は次客でした。
Yさんの真之行を拝見して、私も奥伝の稽古を頑張ろうと思います。
今は一回一回の気持ちや所作を大事にして、積み重ねていきたいと・・・。

次はOさんの後炭手前です。
透木釜があげられ、初掃きのあと五徳のない炉中を拝見して、うっとり・・・。
それはそれは炉灰が美しく風情よく仕上げられ、早くに入れられた炭がはや流れて炉との名残りが惜しまれます。
それにしても水屋を担当されているIさんの力量が凄いです。

                   
                   翁草の花のあと (季節の花300)

透木と扱いの話を興味深く伺いました。
歴代の好みとしては、利休好みの厚朴(ホオ)、宗旦好みの桐、 七代最々斎竺叟好みの桜、十三代円能斎鉄中好みの梅があります。
透木の材によって硬さが違うので炉壇に影響が出ることもあるとか。
扱いは蓋置と違い、左から右への一方だけです。

炉の流し点は淡交会研究会に続いて二度目ですが、
間近でAさんのきれいな所作を拝見できて嬉しく、研究会で見えなかった箇所が確認できました。
主客が親しく交流する薄茶にぴったりなので、来シーズンは我が家のおもてなしに炉の流し点を取り入れたい・・・と思いました。

                  
                     カラスノエンドウ (季節の花300)

昼食をはさんで、東貴人且座と、私が参加する貴人清次濃茶付です。
貴人点の二つが並んでいたので、頭の切り替えがもう大変でした。
両方ともきちんと整理されて頭に入っていないせいかしら?
どちらももっともっとお稽古したい科目です。

お役によって動きも働きも違う七事式って奥が深く、楽しいです。
途中「あれっ?」って立ち止まることもありますが、S先生がわかり易くご指導してくださって、前へ進むことができます。

裏千家流は点前も七事式も数が多くって覚えるのが大変・・・ずっーと思っていましたが、その奥深さや複雑さをやっと楽しめるようになりました。
今は裏千家流を選択して大正解と思っています。

                              楽しく   「継続は力なり」                      

淡交会研究会へ

2015年04月24日 | 暮らし
淡交会の研究会へ行きました。

会場は藤沢市片瀬にある龍口寺・龍口会館、
小田急ロマンスカーに乗り、ちょっとした小旅行気分です。
片瀬江ノ島駅でグレイの背広姿の男性が先を歩いています。
京都のお家元または献茶式でお会いしたような・・・
「ご指導の先生かしら?」

龍口寺へ着くと、その日は第3日曜日で骨董市が立っていました
骨董市好きの血が騒ぎましたが、横目で会場へ急ぎます。
早く到着したつもりが、9時半から総会があるそうで会場ははや人が溢れていました。

総会では長年淡交会の会員として尽くされた方々の表彰がありました。
以前、宗旦忌へ伺った時の名誉師範親授式の感激を思い出しながら、
その方たちの長き茶の湯の道程を思い、大拍手をおくりました。

                 

唱和した利休道歌は
「稽古とは一より習い十を知り 
     十よりかえるもとのその一」

科目は初炭、盆点、炉流し点、軸荘付花月の4つでした。
K業躰先生からたくさんの熱心なご指導を頂きましたが、
次のことが強烈に心に残っています。

花月の偈頌
「互換機鋒看子細」(ごかんのきほう しさいにみよ)
を会得するためには平花月を15分でやることを目指せ・・・というものでした。
それには15分でやるための修練や工夫の数々が必要で、いろいろなことが見えてくるそうです。

折据の中の札の把握、動くタイミング、動作の的確さ、
湯や茶の量をきちんと量り、短時間で茶を点てること、
無駄な動きを無くし、先を読む、
他者と呼吸を合わせ、動作を合わせる
・・・・などなど、考えただけでクラクラしてきました。
同時に、このような花月の稽古があることを知り、大いに刺激を受けたのです。

もう一つは「茶碗の座」についてでした。

有難い教えの数々に遠い存在と思っていたK先生がとても身近に温かく感じられ、
次回の研究会が楽しみになりました。

                                   「お茶がおいしい・・・」



茶道具の探し物

2015年04月17日 | 暁庵の裏千家茶道教室
         ケヤキの新緑・・公園にて

桜と椿が終わると、庭の擬宝珠、蝋梅、木蓮の若葉がぐんぐん伸びて、
新緑の美しさに見惚れ、発散するエネルギーに圧倒されています。

茶道教室が始まる5月が迫ってきたのに、準備が進まずあせってきました。
押入れなど一か所ずつ整理したので時間はかかりましたが、
3月中に引っ越しの荷物はそれなりに収まった筈でした。


  矢指谷戸の菜の花畑 (横浜市旭区)

いざ自分の稽古を始めると、大事な茶道具がいくつも行方不明なのに気が付きました。
先ずは茶杓(元節、金物、ダイヤ入りなど)を入れた紙箱が見つかりません。
それから水次、稽古着、清水焼の香炉、瀬戸の水指も・・・。

そのうち出てくるだろう・・・と1ヶ月が経ってもダメでした。
何としても今日中に探そう・・腕まくりして、押入れの箱類や引き出しを引っ掻き回しました。
思いがけなく、懐石道具の段ボールから茶杓の箱と稽古着が出てきました。
(きっと透き間があったので突っ込んだ・・・)


      エビネ

これに気をよくして探すこと2時間、
パソコンを置いた机の横の本棚から水次、香炉、水指をついに発見。
「えっ!ずっ~と足元にあったの!」
まさに「看却下」ですね。
引っ越しがまだ終わっていない気持ちでいたのですが、
4月16日にやっと終了宣言です。
これで5月から生徒さん、奥の細道会七事式のお仲間を安心してお迎えできそうです。

暁庵の茶道教室は引き続き生徒さんを募集しております。
4月18日、25日、29日(いずれも13時より)に教室見学ができますが、その他の日はご相談ください。
気楽にお越しくださいませ。初心者の方大歓迎です。
詳しくは下記HPをご覧の上、メールまたは電話でお申し込みください。
お茶のステキなご縁がありますように・・・。 

   暁庵の裏千家茶道教室HP:https://akatsukiane.wordpress.com/




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梅若の涙雨・・・京都から茶友を迎えて

2015年04月15日 | 暮らし

ここのところ、よく雨が降りますね。
3月15日から4月15日ころにかけて雨が降ると
「梅若の涙雨」(雨の名前より)を思い出します。

3月15日(陰暦)は、能「隅田川」の主人公梅若丸の忌日だとか、
この日降る雨のことを「梅若の涙雨」というそうです。

能「隅田川」では、
隅田川の渡しに人買いにさらわれた我が子・梅若丸を探して、
都から狂女が足取り重くたどりつきます。
船頭は人買いに捨てられて病死した幼子の物語をし、
今日はその一周忌の弔いであることを狂女に語ります。
それが我が子と知り、嘆き悲しむ母・・・。
墓の前に連れてこられた母は、念仏を唱え、我が子の姿を懸命に追い求めます。
すると、墓の中から我が子の声がし幻が・・・。
一瞬のうちに幻は消え、深い闇の中に立ち尽くす母の悲痛さにいつも涙が止まりません・・・。

                        

そんなこともあって能「隅田川」のお軸を床に掛けてみました。

4月8日雨の中、上京の折に京都の茶友Yさんが我が家へ寄ってくださいました。
薄茶一服差し上げながら久々に茶談義するのが楽しみです。
茶室八畳に客お一人では寂しく思い、近所のHさんにお声掛けしました。

今回は炭手前と薄茶でおもてなしです。
待合には和歌の色紙を選びました。

    いざけふは 春の山辺にまじりなむ
       暮れなば なげの花の陰かは    素性法師



床のお軸は「隅田川」、野沢蓼州画です。
花はシャガ、白蘇芳、朴半を、大ぶりの竹筒にいけました。
棚は利休好の桐丸卓、水指は見立てで芥子画のある白磁です。
元はワインクーラーではないかと思うのですが・・・
10年ほど前に入手したものを探し出し、やっと初使いです。

炭手前ですが、炉の準備ができず京都で使っていた置炉を使いました。
それに湿し灰・・・なんと!3年前に作った湿し灰を使いました。
恐る恐る出してみると、色と言い、団粒がさらさらと撒き具合よくびっくりです。
炭を入れておいたせいか、カビも嫌な臭いもありません。

薄茶は松柏(小山園)、主菓子は3種。
桜葉を練りこんだきんとん・銘「私のさくら」(自製)、月餅(桜餡、崎陽軒)と苺です。
別室で干菓子とコーヒーをお出ししました。
干菓子は桜花と蝶。ハワイ在住のSさまから送って頂いた嬉しい貴重品です。

                        

                        
                          干菓子(サクラと蝶) by Sさん (ピンボケですが・・)

雨の中、何とか散らずに踏みとどまっている「私のさくら」を思いながら、
棗は雪月花蒔絵、茶碗は京焼の「しだれ桜」と「御所の桜」。
茶杓はひな祭り茶会でも登場した銘「はるさめ」(太玄和尚作)です。

桜尽しの茶会(茶飲み会)はお話が弾み、時を忘れる楽しさでした。
Yさん、Hさん、来てくださってありがとう!
お蔭様で、だいぶ支度や点前に慣れてきたみたい・・・です。