暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

秋雨の隣花苑へ

2015年09月26日 | 暮らし

秋の長雨の合間に隣花苑へ茶友5人で出かけました。
この前は春だったのに、時の移ろいは速く、隣花苑で催す秋の茶会まで1ヶ月になっていました。
それに9月限定(?)の名物・蓮華飯を5人共心待ちにしていました。

緑濃い樹木をくぐるように進むと、懐かしい田舎家風の玄関です。
入ると土間が広がり、天井の太い梁や柱、囲炉裏の火が暖かい板の間、黒い板戸、
どれも黒光りしてどっしりと出迎えてくれます。
玄関入り口や土間に活けられた花が豪快かつ見事で、これも楽しみの一つです。

                           

ランチコースを頼み、昔懐かしいおばんざい、ヘルシーな野菜料理、洗練された魚料理、
名物の三渓そばや蓮華飯をゆっくり味わいながら、料理やお茶の話題が花盛り。

                          
                                 お豆さんとえ~と?
                          
                           蓮の葉の器に盛られた白和え、炒め煮、甘酢和え、お浸し
                          
心配していた蓮華飯ですが、
「今年は三溪園のハスの花が少なかったのですが、なんとか茶会にお出しできそうです」
と女将・西郷槇子さん(原三溪翁のひ孫さん)。
内心ほっとし、原三渓翁が長男・原善一郎氏の追悼の茶事で蓮華飯を饗し(蓮華飯の茶事)、
参会した松永耳庵翁が三溪翁の心意気とその味の絶妙さに感動したことを思い出しながら・・・
4年ぶりかしら? わずかな苦みのある、爽やかな味と食感に満足しました。

別室で茶会をイメージしながら担当さんと打ち合わせをしました。
三溪園の三重塔が見える部屋が香席、奥の二間の和室が茶席、
さらに奥の二間が昼食用の椅子席になります。

                          
                                 レトロな雰囲気の部屋も・・・

軸や風炉先屏風は持参を考えていたのですが、大きさも部屋の雰囲気にも合わないので、
こちらのものを使うことにしました。
なんせ、母屋は600年前の室町時代の建造物・・・私のは一番古いものでも江戸時代かしら、
まして新しい茶道具たちは場所に馴染まず落ち着かないかもしれませんね。
まっ! それはそれで・・・それもよろしいかしら・・・(と開き直って思うことにしました)。

                          

雨があがり、帰りの隣花苑はなぜか物哀しい・・・。

    おしこめて秋のあはれに沈むかな
           麓の里の夕霧の底      (式子内親王)


ご近所さんと重陽の茶会

2015年09月24日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会

遅くなりましたが、9月7日の「ご近所さんと重陽の茶会」をアップします。
茶席は暁庵、余興(?)の墨絵とランチと〆の珈琲はツレ担当で、二人の共同茶会でした。

10時30分にお客様がいらっしゃいました。
お客様は茶会をリクエストしてくださった数軒隣のTさん夫妻常連のIさん、Mさんの4名さま。
Mさんは以前茶事のテーマに合った短冊や色紙を書いてくださった友人です。
数か月前に手術を受けられたとか、その快気祝いも兼ねてお招きしました。

                               

菊の節句なので、待合に菊の水墨画と京都・法輪寺の茱萸袋を飾ります。
Iさんの打つ板木の音で、冷茶に「もって菊」を数片入れてお出しし、私も相伴しました。
茶事では客が揃うと板木を打って水屋へ知らせることをお話しし、Tさん夫妻に人数分打って体験してもらいました。

「どうぞ、お席の方へお入りください」
お茶をされていない方ばかりなので、客席は立礼席です。
亭主床ですが、床前一畳を除けて点前座(丸畳一畳)を設え、初炭手前から始めました。
皆さま、緊張されて固唾を呑むように、されど興味深けに所作を見守っています。

香を焚き、香合をT氏へお持ちし、拝見して頂きました。
「香合は「初雁香合」、雁は二季鳥とも言って、秋には月を慕って北から渡ってきますが、
春になるとこれから咲く花(桜)を見捨てて北へ帰っていきます。
今は秋なので雁の向きを北から飛んでくるように使っています」

                   

そんなお話がきっかけに緊張もほぐれ、いろいろな質問ラッシュが・・・。
「床のお軸はなんと読むのでしょうか?」(心清寿年長、西垣宗興師筆)
「お花は?」(ススキと吾亦紅を有馬籠へ)
「どうして床の間の前を開けているのですか?」
点前座についてT氏から鋭い質問が・・・、亭主床のことを説明し、今日は末席の方にも点前が見えやすいように、いつもと違う位置にしたことなどをお話ししました。

炭が熾る間待合へ戻り、菊の墨絵を描き(ツレが指導?)、王維の漢詩を朗読したり、しばし清遊タイムです。
遊びに時を忘れそうになって、あわてて茶室へ案内し、菓子と薄茶を差し上げました。
菓子は練きりの「玉菊」(寿々木製)、薄茶は「清浄の白」です。
「もう一服、少な目でいただけますか」
お口に合ったようで、喜んで二服目をお点てしました。

                    

拝見の薄器と茶杓を丁寧に興味津々で見ています。
薄器は菊と秋草の蒔絵がお気に入りなのですが用途不明の見立てで、江戸時代の化粧道具かもしれません。
骨董屋の女主人小林芙佐子先生の伯楽で求めたもので、ステキな仕覆付きです。
茶杓は坐忘斎家元お好みの形、銘「虫の音」です。

再び待合へ戻り、ツレの郷土料理・日向飯のランチです。
食後の珈琲を飲みながら楽しい会話と笑顔が溢れました。
・・・私たちも一緒にワイワイ楽しんだ「ご近所さんと重陽の茶会」とランチでした。

                                


柄杓と薄茶平点前

2015年09月19日 | 暁庵の裏千家茶道教室


暁庵の裏千家茶道教室
へ入門されたKさんとM氏、無事に割り稽古の難関を突破し
柄杓の扱いを学びながら、薄茶平点前の稽古へ入りました。

風炉の柄杓の扱いを教えていた時のこと、
「柄杓の扱いは持ち方などいろいろあるけれど・・・
 ①鏡柄杓・・・自分の顔(心)を映しだす気持ちで静かに向き合う 
 ②取り柄杓には二つあって、湯を汲むときの取り柄杓と
 ③もう一つは水を汲むときの取り柄杓
 ④柄杓を釜に置くときは置き柄杓

 ここで・・・・動作をしながら、扱いの名称がとっさに出てきません(ウ~~ン)
 「ねえ!Mさん、この柄杓なんて言ったかしら?(SOSすると、すぐに)」
 「切り柄杓です」
 「そうそう切り柄杓!」(1回しか教えていないのに・・・Mさんがなんと頼もしく思えたことか!)

 ⑤切り柄杓(置き柄杓の一つ)・・・茶を入れてから湯を入れるとき、切り柄杓で釜へ置きます
 ⑥引き柄杓(置き柄杓の一つ)・・・水を汲み、柄杓を釜に置くときは引き柄杓。
                  柄杓の扱いで一番難しいけれど、美しい所作の見せ処でもあります。

咄嗟に切り柄杓が出てこないずっこけ先生ですが、お二人の点前が確実に上達し、
お茶への理解が増しているのが手に取るようにわかり、喜んでいます。

 
 大覚寺大沢池に映る明月 (2014年9月) 

この日の床の軸は、「雲月去来閑」(正法山主(妙心寺)瑞枩和尚筆)、
雲が大きく、月は池に映る風情で書かれ・・・字や余白も何かを物語っていますね。
禅語は人によって解釈が違うこと、私は時と場合によっても解釈が違い、その日の解釈は、
「人生、暗雲もあれば明月が爽やかな時もある。
 良いこと、悪いことが雲月のように去来し過ぎていくのを閑かに受け止める心」かと。


                           
葛(クズ)の花と尾花(ススキ)を加茂川籠に入れ、床柱に掛けました。
「この花はどちらで?」とM氏。
「すぐ近くのバイパス沿いに何か所か、葛の花を見つけておいたの」
「先生はいろいろな花の場所をご存じなんですね」
「頭の中に花マップがあって、葛の花だったらあそこかここ・・・。
 葛はいっぱい生い茂っているけれど、採取できる花を見つけるのが難しいの。
 散歩の時に採取時期を見ておくのだけれど、少し遅かったみたい・・・KさんもMさんもそのうち自分の花マップを作ってね」


残花を野趣豊かに生けてみました・・・

菓子は「月見うさぎ」(薯蕷饅頭)と季節外れの「道明寺」、小ぶりなので2種にしました。
薄茶は、薄茶「又玄」と濃茶「金輪」(いずれも小山園詰)のブレンドです。

KさんとM氏で薄茶を平点前で点てあい、味わう・・・亭主となり客となる、二人稽古の良さを味わってもらえたかしら。
もう一つ、二人稽古の良さは点前だけでなく、学ぶ姿勢にもお互いに好い刺激を授受すること。

「この調子で、ゆっくり確実に稽古を重ねていきましょうね!」
                            

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ツレが検査入院しまして・・・

2015年09月17日 | 暮らし

ブログを少しだけお休みしていました。

理由は目先のやるべきことに追われていたのと、ツレが検査入院しまして・・・。
検査入院は1ヶ月以上前から決まっていましたし
「心配しているより精検した方が安心だから・・・」
「そうね。このへんで一度検査しておくのもいいかもね」
と二人とも平常心でした。

ツレは入院支度を一人で黙々としています。
この先、もし一人になって何処に何があるかもわからないと困るだろうし、
今回は検査なのだから、できるだけ一人でやってもらおう・・・と見て見ぬふりを決め込みました。

病院まで車で送り、その足でN先生宅へ10月開催の茶会のご挨拶へ伺いました。
先生が淹れてくださった珈琲を飲みながら、久しぶりに積もるお話を・・・。
帰りに今度の茶会へ使うようにと、ステキな建水を持たせてくださいました。
N先生の茶室開き、喜寿のお祝いに使ったおめでたいものだからと。
・・・先生、大事な思い出のこもる建水、有難く嬉しく使わせて頂きます。

                   

その夜、ツレから電話がありまして
「○○と××を明日、持ってきて。
 それから手術は10時半からで、家族の付添人が必要なので9時半までに病室へ来てほしい・・・」
なんか、心細さそうな声に聞こえました。

検査ではなく手術というのも気になります。
聞けば、今回の検査は麻酔をかけ、手術と全く同じ手順で精密検査用の組織を採取するので、手術というのだそうです。
「大丈夫、必ず9時半までに行くから。○○と××も持っていくからね」
冷たく一人で入院支度させたのを内心反省しながらやさしく応えます。





手術は30分位で無事終わりました。
術後1時間は絶対安静で、その後は少しずつ動いてよいそうですが、
動いた途端、吐き気があり、もうしばらく安静にしていてもらいました。
・・・落ち着いたので2時過ぎに帰宅しました。

翌日、9時半に行くと、経過がよいので2泊3日の予定通り退院できるとのことで安堵しました。
ベッドの横にはすぐ帰れるように持ってきた物が紙バッグに収まっていて、
少しでも早く家へ帰りたい・・・という気持ちをしっかり受け止めましてございます。
病棟の待合には既に次に入院する方とその家族が何組か待っていました。

「病気って気の病とはよく言ったものだね。
 入院すると病人になってしまうのを実感したよ」
清々しい秋の陽を浴びて、病人から元のツレに戻ったようで、私も一安心です(ほっ!!)。 



                                 


長月の稽古  Happy Birthday !

2015年09月09日 | 暁庵の裏千家茶道教室


長月最初の稽古日、9月2日はFさんの誕生日でした。
   Happy Birthday !

床のお軸は「心清寿年長」。
花は、くるくるした動きと虫食いの葉が面白い紅水引を虫篭へ。
水引だけでは少し寂しい気がして「日の丸」を入れると目出度くなりました。

この日はFさんとI市からのYさんの二人がいらっしゃいました。
それで、Fさんの誕生祝いにツレアイの郷土料理「日向飯(ひゅうがめし)」を御馳走したいと思ったのです。
(稽古に専念したいので・・前回に続いてランチをお願いしちゃいました)




「心清寿年長」(前大徳・宗興師)

日向飯は愛媛県西予や南予地方に伝わる素朴な料理で、一説によると漁師さんのまかない食がルーツとか。
タレに漬け込んだ真鯛の刺身を温かいご飯に乗せ、薬味(大葉、青ネギ、イリゴマ、ミョウガなどお好みで)を添えて出来上がりです。
ただ、卵の入ったタレにコツがあるらしく、日向飯を食べ慣れていない私が作ると今一つなのです。
焚き合せ(茄子の水晶煮、オクラ、鳥の丸)、胡麻豆腐、みそ汁をお出ししましたが、お口に合ったかどうか心配です・・・。

さて、肝心の稽古ですが、11時近くにYさんが着物姿で到着。
午前中に染付腰捻水指を置いた更好棚で濃茶と薄茶点前をして頂きました。




午後はFさんの茶碗荘があるので、茶事を前提にした初座の設えに変えました。
床の間の花を除けて、白い御物袋に入った茶碗を荘ってもらい、午後の稽古始めの挨拶です。


   
初座で床の間に茶碗を荘る


初炭手前はYさんでした。
足の運びや建水の運びをご指導したので、来年風炉の時季にもう一度拝見したいです。
たくさん入れておいた炭がすっかり落ちていましたが、火が熾り一安心。
香合は桑木地が美しい「初雁香合」・・・月を慕って、最初の雁がそろそろ北から渡ってきます。

初炭が終わり、頭を後座に切り替え(床の間の茶碗を下げて)、Fさんの茶碗荘です。
水指は瀬戸一重口、塗蓋上に茶巾、その上に茶筅、茶杓を蓋上横に置きます。
茶碗に茶入を入れて水指前に荘りつけてから点前が始まります。

濃茶平点前と違うところは茶碗の扱い、由緒や想い入れのある茶碗なので両手扱いです。
濃茶が点つと、茶碗を両手で持って客付きへ回り、茶碗を膝前に置いて、古帛紗を拡げ、茶碗を回して出し、膝退して手を突いて控えています。
茶碗が取り込まれると膝行し、手は膝上に置き、いつも通り茶銘などの問答が続きます。

・・・茶碗が古袱紗にのったまま返されると、亭主は客付きに回ります。
ここで茶碗についての問答があり、この点前のハイライトです。

「立派なお茶碗でございますが、お茶碗のご由緒は?」
「曾祖父が大事にしていました茶碗で、○○焼というだけで作者もわかりません。
 曾父の代に割れを金継しまして、その風情から「花すすき」という銘をつけ、
 我が家に伝わっております」
「金継が繊細で美しく、お茶碗の好さを一段と引き立てておりますね。
 今日はご伝来のお茶碗で御茶を美味しく頂戴し、ありがとうございました」

・・・というような問答が交わされ、茶碗だけを両手で取り込み、古帛紗をしまいます・・・(後略)。


「もう萩が咲いているかしら?」 (京都・迎称寺にて)

茶碗荘のあとは四ヶ伝と続きました。
曲水指に変えてYさんの台天目、Fさんの盆点です。
盆点の途中でYさんが退席されました。
着物を着換えたYさんを玄関でお見送りし、稽古は続きます。

7時過ぎだったでしょうか? 雲間に輝く下弦の月を眺めました。
充実した稽古の後の気持ちの良い晩でした。
                        

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