暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東京教室の稽古・・・五月

2015年05月29日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古
                             近くの公園の山法師が満開です

体調不良の原因はいろいろ心当たりがありますが、その一つがこれでした。
5月27日の東京教室で大円之真をさせて頂くことになっていたのです。
・・・奥伝をS先生にみて頂くのは久しぶりですし、大円之真でお尋ねしたい疑問がありました。

先ずは体が動くようにと、毎日一回だけ大円之真を稽古していた時のこと、
その朝はいつもより早く目が覚めました。4時頃でしょうか?
寝付かれずに階下へ行くと、茶室の障子が美しく、薄紫色に染まっているのが目に入りました。
明け方のほんの少しの時間、神秘的に刻々と色彩を変えていくのです。

                           
                                   友賢庵(お茶の郷博物館)

そうだ!この時間に茶室で大円之真の点前をしてみよう。
家中がまだ寝静まっていて静かです。
鳥のさえずりとバイパスの騒音が聞こえる灯火の元、ひたすら点前に没頭していきました。
特に気を遣ったのは音でした。
清澄な気配を乱したくない思いで、無用な音を出さないように・・・。
叶ったのか、叶わなかったのか、覚えていないほど集中していました。

稽古が終了した頃には朝日が昇り、障子はいつもの表情に戻りました。
ほっとして水牡丹(試作中)と薄茶を口にしたのですが、これが間違いでした。
きっと全ての神経と血液がまだ脳へ集中していたのでしょうね。
・・・急に気持ちが悪くなり、あっけなくノックダウンです。
本番の(?)稽古の日までなるべく無理せず、ぶらぶらしていました。

                           
                              素敵な障子の意匠 (我が家ではありませんが・・・)

S先生と社中の皆様の前で、あの朝のように集中して大円之真を稽古させて頂き、
疑問の箇所もすべて解決し、今はすっきりと幸せな気持ちでいます。
こんな幸せな気持ちになれるなんて、S先生とお茶に出逢ったご縁に感謝です。

その日は、真之炭手前、大円之真、台子で茶通箱、台子で薄茶点前、二人貴人且座、三友之式と真剣かつ楽しい稽古が続きました。
真之炭手前はIさん、緊張していた様子でしたが、整然とした中にもIさんらしい優しい所作で嬉しく拝見しました。

水屋担当のIさんが用意してくださった主菓子は「京かのこ」、巣鴨の駿河屋製でした。
毎回、京都ではなく東京名物の美味しいお菓子を知り、味わうのが楽しみです。
・・・こんなお茶の愉しみも好いですね。

                                    

心まかせに

2015年05月28日 | 暮らし

急に暑くなりましたね。
ちょっと体調不良で、ブログをお休みしていました。
(その間に「聴雨の茶会」が満席になりました。ありがとうございます!)

                        

待合に「心まかせに」と書かれた色紙が掛かっています。
これも親友の布絵作家・森下隆子さんに7年ほど前に作って頂いた色紙です。
茶事に無我夢中のころで、5月の初風炉の茶事だったかしら?
テーマはたしか「旅」、旅箪笥と色紙(詩)で表現したような・・・。
萩原朔太郎の大好きな詩「旅上」の色紙を作ってください」とお願いしました。
出来上がってきた色紙は、旅行鞄と菖蒲がかわいらしく布絵で描かれ、
「心まかせに」の字が躍っていて、一目で気に入りました。                   

                        
  
先日、この色紙を見て、とても感激してくれた茶友がいました。
24日にいちねん会(七事式の勉強会)のため我が家へいらしてくれたAさんです。
私が口ずさんだ「・・・心まかせに」が心に残り、
重い病床にある親類の方へ詩の一節を添えて手紙を送ったそうです。
せめては楽しかった旅の思い出を心に描いて、やすらぎの時を送ってください・・・と。

Aさんからそのお話を聞き、感動しました。
「心まかせに」の色紙を5月に選んで良かった!と思い、
朔太郎の詩「旅上」と「五月の貴公子」をブログへ掲載します。


                                       

   旅 上

   ふらんすへ行きたしと思へども
   ふらんすはあまりに遠し
   せめては新しき背広をきて
   きままなる旅にいでてみん。
   汽車が山道をゆくとき
   みづいろの窓によりかかりて
   われひとりうれしきことをおもはむ
   五月の朝のしののめ
   うら若草のもえいづる心まかせに




   五月の貴公子
 
   若草の上を あるいてゐるとき
   わたしの靴は 白い足あとを のこしてゆく
   ほそい すてつきの 銀が草でみがかれ
   まるめてぬいだ手ぶくろが 宙でおどつて居る
   ああ すつぱりと いつさいの憂愁を なげだして
   わたしは柔和の羊になりたい
   しつとりとした 貴女(あなた)のくびに手をかけて
   あたらしい あやめおしろいの にほひをかいで居たい
   若くさの上をあるいてゐるとき
   わたしは五月の貴公子である。



       

お茶サロン 「聴雨の茶会」へのお誘い

2015年05月28日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会
               「雨を聴こう・・・茶席のサウンド・スケープを楽しもう・・・」

緑風が心地よい季節になりました。
今日はお茶サロン(第1回)のお誘いです。
なかなかお茶事とはいきませんで、年2回(風炉と炉の時期に)自宅で気軽なお茶サロンを開きます。

第1回お茶サロンは6月28日(日)に「聴雨の茶会」を開催します。
のんびりほっこりした茶席で雨を聴きながら御茶一服差し上げ、後半は薄茶を楽しみ、
親しく茶論(さろん)に花を咲かそう・・・という趣旨です。
少人数の茶会ですので、お出かけ下さると嬉しいです。
詳しくは下記をご参照ください。

                       
                           「そろそろ田植えですね」

                                                                

第1回お茶サロン「聴雨の茶会」

日時:平成27年6月28日(日) 11時席入  16時解散予定
茶席:拙宅 横浜市旭区今宿(参加の方に詳しいアクセスを別途お知らせします)

会費:7000円
内容:11時席入~炭手前~別室(椅子席)にて昼食(吸物、八寸、一献、懐石弁当)
~(天気なら中立・席入)~濃茶一服~薄茶とサロン~16時頃解散予定

参加人数:7名様まで
参加資格:初心者の方でも大丈夫です。お茶をご一緒に楽しみましょう!

応募方法:メールにてお申込みください(氏名、住所、連絡先電話、簡単な茶歴)
      メールアドレス:akatuki-ane@grace.ocn.ne.jp
応募期間:6月7日(日)まで

その他:満席になりましたら、この欄の追伸にてお知らせいたします。


   
                        ご参加を楽しみにお待ちしています   



追伸)聴雨の茶会の残席が2名様となりました。
    ご参加をお待ち申しております。(5月23日)


追伸)5月28日、聴雨の茶会が満席となりました。
ご検討して頂いた皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました!
またのお出逢いの機会がありますことを願っております。
  
                                 


畠山記念館・・・畠山即翁の大師会茶会へ

2015年05月19日 | 美術館・博物館
アップが遅くなりましたが、4月のある日、茶友Yさんと3年ぶりに会うことになり、畠山記念館で待ち合わせです。

                        
                                久しぶりの品川駅前にて

品川駅前から目黒駅行きのバスに乗り、高輪3丁目で降りて
「高輪台駅」前を経て畠山記念館を目指しました。
強い日差しを浴びながら庭先の晩春の花が咲き乱れる道を歩むと、
大樹が重なり合う記念館の門が見えてきました。
平日のせいもあり、静まりかえった木洩れ日の小道と大きな石灯籠のある庭の佇まいが懐かしく、心を揺さぶります。

                         
                         畠山記念館が近づいてきました・・・ 
                        
                              緑陰が恋しい日でした
                     
「畠山即翁の大師会茶会」が4月4日~6月14日まで開催中でした。
昭和12年4月21日に音羽護国寺で開催された大師会茶会で、即翁は初めて茶席を担当したのです。
その時の道具組をできる限り忠実に再現していました。
78年を経てなお、大師会茶会記が再現できることに記念館の心意気を感じ、
大師会創設者・益田鈍翁ゆかりの茶道具を併設しているのに敬意を表します。

大師会茶会記が畳のある展示ケースの片隅にありました。
Yさんと二人で展示品と照らし合わせて茶会の様子をあれこれ想像をめぐらし、
大師会へ参席した気分になったり、取り合わせを批評したり、メッチャ楽しいひと時でした。
特に花入(本席の「古銅象耳」と広間の「砧青磁 瓢 浮牡丹」)に自分だったらどんな花をどのように入れたいか・・・をそれぞれ熱く語り合いました。

茶会記のメモを見ながら薄れゆく記憶から茶道具をポツポツ思い出しています・・・
戦国武将(即翁)が戦陣の合間に束の間のやすらぎを得、戦友(茶友)との送別を表現した茶会のように私めには思われました。

                         
                          4月4日~6月14日まで開催
メモより
本席 
  床  国宝「南楚墨跡」 蒲生氏郷所持 雲州家伝来
  花入 名物「古銅象耳」 遠州箱   雲州家伝来
  花  侘助
  釜  芦屋 瓢   信長所持  紹鴎拝領
  炉縁 久以作  利休在判
  炭斗 竹紐丸  遠州所持
  水指 木地曲
  茶入 名物「瀧浪」 本箇 雲州家伝来
            袋  白地長楽寺金襴
  茶器 名物「信長井戸」  京極家伝来 
  茶杓 利休 銘「落曇」  豊公所持  庸軒箱 同写添
  建水 南蛮横縄
  蓋置 竹  利休在判  原叟箱  紀州家伝来
  御茶 初音 升半詰
  菓子 卯の花  越後屋製
               
熱き語り合いにのどが乾いたので、省庵でのんびり薄茶を頂きました。
床の花は薄雪芥子(たしか?)、竹筒にどこかはかなげです。
辻村史朗作の粉引茶碗で美味しく頂いた薄茶は池田市にある三丘園詰、
畠山即翁が能登の出身に因み、干菓子は金沢・諸江屋の落雁でした。

Yさんと佳い時間を過ごしました・・・またご一緒しましょうね!  

                               


奥の細道会  第2回は二人で・・・

2015年05月17日 | 自主稽古(京都編)&奥の細道会
5月8日は我が家で初めて行う奥の細道会(第2回)でした。
「他の方の都合が悪く5月は二人だけれど、どうしましょう?」と私。
「二人でやりましょう。なんでも一度決めたことはやっていきましょう!」
Kさんの力強い言葉に背中を押され、勇気百倍です。

久しぶりに二人っきりで、奥伝やその他の意見交換ができる・・・と楽しみでもあり、
Kさんも全く同じように考えていたみたいです。
私は真之炭と大圓之真、Kさんは行之行と早合点し、竹(行)台子を用意したのですが、
急遽真之行をして頂くことになりました
竹台子を調べだすと、台子と茶湯成立との関係が面白く、台子の項を記しておきます。

                     

台子(だいす)・・・茶道大辞典(淡交社)より
点前用の棚物の一種。書院広間で使われ、風炉釜・水指などを飾り置く。
江戸時代中期までに確立した茶の伝承では、文永4年(1267)に南浦紹明が宋より将来し、のちに室町将軍家での茶会に使われ、点茶の規矩作法の根源をなすものとされる。
ただし、室町将軍家にあった台子は小机のことで、台子の茶会があった形跡はない。
そのため茶湯所の茶湯棚が小型化されて、茶湯成立期になって点前座に置かれた日本独自のものと現在は考えられている。杓立に柄杓と火箸が差されるのもその名残りである。

台子には真塗りの真台子の他、竹(行)台子や及台子があり、高麗台子、爪紅台子と合わせて五つ台子と称する。珠光好みとされる竹台子が古く、黒塗りの台子へ発展したらしい。
利休の時代になると、茶会で台子が使われることは稀になり、台天目と唐物茶入を使う台子点前が秘伝化していくことになった。

                    
                           庭の露草を小代焼の花入へいけて

先ずは、風炉・真之炭手前。
風炉用の神折敷、諸羽が揃ったばかりで、初使いが嬉しいです。
香合は唐物がないので根来の一文字、白檀を三枚入れ、諸羽と天板に飾りました。
羽箒を始め清めの所作が多いのですが、稽古を重ね、敬虔かつ優雅な清めの所作を身に着けたい・・・と願っています。

数年前、朔日稽古へ伺った時の教えを今頃になって思い出しています。
T先生の言われた
「かねをはずしてかねにもどる」(・・・と記憶していますが?)
難しくも含蓄のある言葉が有難く、耳元に鋭く聞こえてくるようです。

続いてKさんの真之行台子点前、急だったにも関わらず、すらすらと間合い佳く優雅に点前が進み、流石Kさん!
どの奥伝を指名されても臨機応変、基本を押さえてできるようになること・・・奥の細道の目標の一つでもあります。
ふくみ帛紗の扱い方について、お互いのやり方を確認し合いました。

最後に大圓之真をさせて頂き、迷いがあった茶杓の扱いを確認です。
次回もたぶん二人ですが、ますます楽しみになりました。

                          二人で