鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

出演者全員が男性というのも物足りないし、難解だったノーベル賞劇作家ハロルド・ビンター作の「誰もいない国」

2018-11-11 | Weblog

 11日は東京・初台の新国立劇場でノーベル文学賞を受賞したハロルド・ビンター作の演劇「誰もいない国」を観賞した。いつになく劇場前にキャンセル待ちの列ができていて、人気の高さをうかがわせたものの、内容は柄本明と石倉三郎二人の掛け合いが多くて、難解なもので、果たしてノーベル賞が万人の支持を得たうえで贈与されているのか、と疑問に思った。出演者は男ばかり4人のみで、華やかさにも欠けた素人受けしない演劇である、と正直思った次第。これまで新国立劇場の演劇なら安心して見られる、と思い込んでいたが、今後は少し考えなくてはとも思った。

 「誰もいない国」はロンドン北西部にある大きな屋敷に住んでいる作家のハーストは深夜、酒場で知り合った詩人のスブーナーを連れてくる。下僕は寝静まっているとみえ、誰も出迎えに出ず、やむを得ず、2人は手酌で、コップにウイスキーを次から次へと注ぎ、とりとめないことを勝手にしゃべりだす。お互い好き勝手なことを話し、適当に相槌をうっているうちにハーストは酔いが回ったのか、部屋の中を徘徊しだし、四つん這いになって床を這いだし、挙句の果てには連れてきたスブーナーに向かって「おまえは一体だれだ」と怒鳴り出し、ベッドに横になってしまう。そこへハーストの同居人であるフォスターとフリグスが現れ、スブーナーの相手になるが、話がかみ合わないうちにスブーナーは寝入ってしまう。

 翌朝になってフォスターの世話でスブーナーは朝食を摂り、そこへ前夜のことをすっかり忘れてしまったハーストが起きてきて、記憶を取り戻したのか、スブーナーとオックスフォード大学時代のことを語り出す。2人はオクスフォード大学の同窓で、ひとしきりその頃の思い出話に花が咲く。しかし、スブーナーの奥さんのエミリーとその友人のステラに対して、ハーストがとんでもないことをした、とスブーナーがハーストを責めたことから、2人の仲は険悪なものとなり、いまにもつかみ合いの喧嘩になりかねない雰囲気となってしまった。

 それを見た同居人のフォスターとフリグスはハーストがとてもいい人物であることを強調し、なんとかとりなそうとする。それを聞いたスブーナーは突然、ハーストに「あなたの秘書にしてくれば、あなたに誠心誠意尽くすから、ぜひ雇ってくれ」と懇願しだす。すると、ハーストは「話題はこれきりだ」と終わりにすることをつげると、同居人は「ということはこれで誰もいなくなることだ」と言明し、タイトルの「誰もいない国」だと指摘し、天井から漏れてきて池のようになった居間のソファにふんぞり返ったところで幕となり、なんともいえない終幕となった。

 振り返ってみてもなんともわかりにくい演劇で、大きな屋敷のなかになぜ雨が漏って水溜まりができているのか不思議な舞台装置でもあった。一幕の終盤に主演の柄本明がその水溜まりに倒れて全身水浸しとなったのは演出上のことか、ハプニングなのか、よくわからなかった。それとやはり出演者全員が男性のみというのも物足りない感は否定できなかった。全体を通じて作者のハロルド・ビンターは何を言いたかったのか、よくわからない。こちらの理解力が不足しているのかもしれないが、途中見ていて眠ってしまったこともあるものの演劇といおうのは見て面白いものであることが第一条件だと思う。その点、この「誰もいない国」は買えない、というのが正直なところだ。

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