鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

吉永小百合のライフワークとなった原爆詩の朗読、気になるその台所

2010-08-17 | Weblog
 16日は午後8時からNHK衛星第2で放送された「吉永小百合・平和への絆 原爆詩の朗読」を見た。先月10日にNHKホールにて開催されたもので、被爆者の平和への思いを綴った詩を吉永小百合が朗読し、坂本龍一、佐藤しのぶら吉永小百合ゆかりの音楽家が色を添えた。今年の広島での原爆慰霊祭には初めて英米大使らが出席し、話題となり、改めて核廃絶への運動が高まったが、被爆者の生の声を伝えていく活動の大切さを思い至った。
 被爆者の「父をかえせ、母をかえせ、子をかえせ」などと痛切に訴える生の声は切実なものがある。広島に原爆が投下された昭和20年8月6日だけでなく、その後も原爆被害の後遺症で亡くなっていく人の綴った詩は聞く人に平和への願いを訴える。吉永小百合が29年前にNHKのドラマ、夢千代日記で演じた主人公、夢千代が母親の胎内で広島の原爆に被爆した芸者であったことから、原爆詩の朗読を依頼されるようになり、毎年、この時期になるとこうして原爆詩を朗読するイベントが開かれる。
 吉永小百合は日本を代表する女優であり、白いドレスに身を包んで、落ち着いた声でエレガントに詩を朗読する姿は絵になり、テレビドラマの延長を見ているような気になる。要所で、顔をあげてカメラ目線で何かを訴えようとする表情はさすがに女優だ、と思わせる。最初に吉永小百合に原爆詩を朗読してもらおう、と考えた人はいいところを突いた、と思ったことだろう。
 ただ、単に詩を朗読するだけでは画面を1時間半も引っ張れない。最初は吉永小百合が広島、長崎を訪れたシーンを映像で流していたが、5年前に平和への集いに参加した佐藤しのぶに登場願い、「アヴェマリア」を熱唱してもらい、続いて環境や平和への活動を進めている坂本龍一が登場し、自ら作曲した曲を演奏したりした。さらにギタリストの村治佳織や歌手の平原綾香、元ちとせらが登場して、「一本の鉛筆」、「モルダウ」などを歌って、場を盛り上げた。
 最後に千羽鶴を折りながら白血病でこの世を去った佐々木貞子さんの物語がいまや小説など世界30数カ国で語り継がれている、というのは感動的な話だった。原爆詩の朗読は女優、吉永小百合のライフワークともなりつつあることがよく理解できた。
 テレビドラマとしては楽しく拝見させてもらったが、見終わってさてこの番組の台所はどうなっているのだろう、と思った。これだけ豪華なゲスト陣を迎えて通常の番組と同じような出演者の出演料を払っていたのではとてもパイしないことだろう。逆に平和への思いを込めて、出演料はすべてボランティアでというわけにもいかないだろう。一般のコンサートではないので、入場料のような形はとれないだろうし、NHKだからスポンサーをつけて協賛金を募るわけにもいかない。来場者から募金で集めたおカネをまさか出演料の一部とするわけにもいかない。
 もともとのきっかけがNHKドラマのあるのだから、結局はいつものNHKにおんぶにだっこの番組でいくことになっているのかもしれないが、いい番組をつくることと資金繰りを考えることとは別ということなのだろう。
 
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