鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

イチローの内野安打に込められた思い

2009-10-13 | Weblog
 12日夜、NHKテレビを見ていたら「イチロー単独インタビュー 大記録への道をすべて語る」と題したインタビュー番組で、ことし9年連続200本安打という前人未踏の記録を達成したイチローが野球をする日米の子供たちの質問に答える方式で、自らの野球人生を語っていた。子供は時として一般の大人が考えつかないような質問をしてドキッとさせることがあるが、その素直さ、率直さがそのまま野球に生かされていけばすごいことだ、と前ふりしてイチローが答えていった。
 まず、グランドで野球をする少年たちを映し、パネルに質問の内容を書いた少年がそれを見せながら走ってくる形で問いかけてくる。最初の質問は「どうしたらそんなにヒットを打てるのか」というもので、それに対してナレーションはイチローが理想のバッティングに近ずくために絶え間ない研究をしているとして、毎日自分のバッティングフォームをビデオに撮ってチェックしていることと、自宅に日本から取り寄せた特別なトレーニング機械で身体を鍛えている姿を映す。そしてイチローは「一番大切なことは小さいことの積み重ねである」と語る。シーズンのなかで何ひとつ欠けてはいけないことをいかに大事にできるかで、たとえば他の選手が打てないような球をヒットにしたりすると気持ちいいし、バンドヒットなどは相手にダメージを与える、相手チームの嫌がることをすることも大事だ、と説明した。
 イチローの米大リーグへの登場はそれまでの大リーグ選手のあり方を大きく変えた。大リーグ野球の醍醐味はベーブルースのホームランに象徴されるような華々しいもので、イチローのように内野ゴロを放って、走力でヒットにしてしまう野球はそれほど称賛されなかった。イチローは一番打者でありながら、四球が少なく必ずしも出塁率は高くないし、ヒットもクリーンヒットというより足で稼ぐいわばせこいもので、従来の大リーグ野球の通年からすれば規格外のものと受け止められていた。
 ただ、冷静に考えれば、野球は走攻守の3つにわたって勝負を競うもので、打つばかりで、走って守れなければ勝てない。平凡な内野ゴロがヒットになってしまう、ということは相手チームからすれば守りのミスでもある。なんとかバンドさせないように守りを固めているのにヒットになってしまう、ということはイチローの言うように嫌なことで、見方によってはクリーンヒットよりダメージの残るものである。守りの虚をつかれて、守備に綻びが出て、結果として負けてしまうことだってありうる。その走者がホームに還ってきて1点入って、1点差で負けてしまうことはよくあることだ。
 内野安打でもヒットであり、相手チームにダメージを与えるヒットであり、そうしたヒットを9年連続して年間200本打つ、ということは凄いことである。これまでの大リーグ選手のだれもなし得なかった快挙である。野球少年に「なぜ9年連続200本安打を達成できたのか」と聞かれ、イチローは「体調維持して野球に取り組んできたことと、なによりも野球が好きだった」と結んだ。
 イチローの快挙はまさに小さなことの積み重ねであるが、ひとつひとつのヒット、特に内野安打には込められた思いがあるのを聞いて、目を見張らされた。イチローの所属するマリナーズの監督以下、チームの選手全体にこの思想が浸透していれば、マリナーズはすごいチームとなることだろう。残念ながらイチローの思いはまだ浸透していないし、大リーグファンに理解してもらうにはまだ時間がかかりそうだ。
 
  
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