鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

日本語オペラ「黒船」の高い完成度

2008-02-24 | Weblog
 23日は東京・初台の新国立劇場で山田耕筰作の日本語による本格的オペラ「黒船ーー夜明け」を観賞した。新国立劇場10周年を記念して企画されたもので、NHKニュースでも報道されるなど前景気をあおったせいか、会場はほぼ満員。出演者はいずれも日本人で、歌も触れ込み通りすべて日本語だが、両側の字幕に表示されるので、ついつい見てしまう。いつも見慣れているヨーロッパのオペラと比べて時代劇の裃、着物姿で出てきて、すり足で動き回る姿は優雅で、演技力も素晴らしくまるで時代劇映画を見ているような錯覚にとらわれた。
 時は幕末、所は伊豆・下田。幕開けは下田のお祭りの場面で、港の広場で民が歌や踊りに興じている。そこへ現れたお吉と尊王攘夷を唱える浪人が通りがかり、町奉行が宴会を開くなか、黒船が入港し、町は大混乱に陥る。下田に上陸した領事はお吉に道を尋ね、その後お吉は通りかかった浪人から領事を暗殺するように短刀を渡される。
 しかし、一向に領事の暗殺が果たされないまま月日は過ぎ、米国政府と幕府の交渉もうまくいかない。時間かせぎに奉行は領事の相手にお吉をあてがおう、とするが、お吉は応じないため、牢に繋がれる。
 それを知った領事はお吉を釈放するように取り計らい、お礼に訪れたお吉に領事は自分に仕えてくれるよう要請する。浪人から暗殺するよう頼まれていることもあって、お吉は承諾する。ところが、暗殺を果たせないうちに1年経ち、領事と海に出掛けた折りに暴風雨で島に取り残されてしまい、お吉は領事の機転で命を救われる。
 で、流石に良心の呵責に耐えかねて、領事に事の仔細を打ち明けるが、領事は笑うばかりで、むしろお吉への愛を打ち明ける。そこへ、浪人が来て、お命頂戴とばかりに切りかからんとする。が、京都からの密書が届き、暗殺中止の命が下り、己の非を悟った浪人は切腹し、領事はこれで日米両国の交渉が成り、平和が訪れる、と宣言したところで幕となる。
 途中、セリフが単調になるようなところもあったが、若杉弘指揮の音楽も素晴らしかったし、なによりも出演者の演技が群集シーンから、宴会の場面や海上の場面など舞台装置もよく出来ていて、見ごたえがあった。特にこれまで見慣れた時代劇のせいか、出演者の所作、演技が自然で、すっと場面に入っていけた。これまでオペラといえば、すべて欧米の話で大袈裟な演技が鼻についていたが、日本の昔の物語なので、日本人が演じるにみピッタリという感じであった。歌そのものでは欧米人に敵わないかもしれないが、細やかな演技力では日本人の方が優れているのではないか、とも思った。
 以前に中国を舞台とした瀬戸内寂聴作のオペラ「愛怨」を見たが、それよりもずっと日本のオペラである、と感じた。やれば出来ることが証明されたのだから、もっと日本を舞台とした日本のオペラがでてきてもいい、とも思った。
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