prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「悪徳」

2014年04月30日 | 映画
クリフォード・オデッツ原作、ロバート・アルドリッチ監督と、ともに赤狩りにひっかかった人が関わっている。

原作戯曲が上演されたのは1949年。オデッツが非米活動委員会で証言したのが1947年だから、その直後に近い。
作られたのが1955年でハリウッドの内幕ものといっても赤狩りに関すると思える描写は特に見られない。まあ赤狩り真っ只中で描くのはとてもムリだったろうと思える。

この後アルドリッチは同じジャック・パランス主演で「攻撃」を作って、これでアメリカ国防省を本気で激怒させることになる。そりゃそうでしょう、あれだけ軍隊と政治と結びつきによる腐敗と、それがどれだけ一般の兵隊=国民に犠牲を強いるか正面から描いたのだから。
アルドリッチはしばらくアメリカを離れてこの「悪徳」にグランプリを与えたヴェネチアのあるイタリアに渡って仕事することになる。

アルドリッチはれっきとしたロックフェラー一族で、祖父は共和党の上院議員、従兄弟が副大統領というかなりとんでもない家柄の出で、それなのにというか、だからというか、よくもまあと思うほど徹底してアメリカのエスタブリッシュメントに牙をむき続けた。

ここではロッド・スタイガー扮する映画会社の社長がしきりとマッカーサーが戦艦ミズーリで日本の降伏文書に署名した時の万年筆を持っていることを自慢しているわけだが、実はマッカーサーはこの時万年筆を十本近く持っていって後であちこちの有力者に配って後年の政界進出の布石としたわけで、ありがたみがあるのかないのかよくわからなかったりする。
微妙に政治的要素を入れて、それとわからせない、単に悪役が威張っている色づけみたいに見せる策略とも見える。

アメリカの男性映画の作り手たちが野卑で荒っぽく見える映画を作る一方で、しばしば凄いインテリであったり名門の出であったりするのはどういうわけかな、と思う。ハワード・ホークスが映画界入りした当時は大学出そのものは少なかったし、ペキンパーはアメリカ開拓史上に名を残す名門の出、ドン・シーゲルはケンブリッジ大学卒といった具合。なんでしょうね。




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