prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ホテル・ルワンダ」

2006年03月16日 | 映画
主人公が恵まれた立場にいたことは否定できないだろう。さしあたって虐殺「する」側にあったフツ族の出(といっても、植民地化したヨーロッパ人の見かけに拠った恣意的な分類にすぎないが)であること、四つ星ホテルの支配人であること。経済的にも恵まれていたこと。
また、基本的に家族や親しい人間に限って助かろうとしているのであって、初めから博愛精神にあふれていたわけではない。
もちろんそれが功績を減殺するわけがないが、ただ何らかの力がなければ、人を救うことはできないかと今更ながら思わさられる。

大勢人を救ったのが立派という描き方ではなく、命を救うためならむしろ堂々と賄賂を使ったり、避難民たちに外国の知り合いに電話攻勢をかけさせたり、ついには「将軍」を虐殺の責任を問われるぞと逆にゆすったりする知恵の回り方がお見事。
ドン・チードルは、ホテルマンとしての如才なさと恐怖を押し隠しながら戦う勇気と、家族に対する愛情とをないまぜた好演。

外国人の特権で早めに脱出できる報道陣たちがバスで出発する場面、大半が後ろめたさと無力感から押し黙っているのに混じって、取り残される大勢の現地人たちに一見暢気にカメラを向けているのがいるのが見えた後、現地人たちが雨にうたれてたたずんでいる情景につながれる断絶感の深さ。

ラスト近く、無数の難民たちをかきわけてわずかに外国に脱出できるルワンダ人たちを乗せたトラックが行く場面、桁外れの悲惨さとともに、わずかな立場の違いが生死を分ける不条理もありありと感じさせる。

フランスのオーナーに電話する場面を含めて全編英語だが、妙になまりがある感じ。

国連軍の大佐(ニック・ノルティ)が我々はpeace-keeperであってpeace-makerではない、というのが皮肉に聞こえる。平和などすでに存在していないのに、どうkeepするのか。
銃を撃てない軍などナメられきっているのが、イラクにいる自衛隊ともだぶって、なんとも歯痒く見える。

あまり製作費をかけられなかったみたいで画面の仕上がりのレベルはそう高くない。虐殺の場面でも、良くも悪くも目をそむけたくなるような画はあまりない。

映画とはズレるが、緒方貞子氏の著書「難民支援の現場から」で、逃げ出した難民たちの中にも武器を隠し持っている者が大勢いてキャンプで虐殺が繰り返されかねない、それでも難民を受け入れるべきかどうか氏が判断を問われる場面がある。結局、さしあたって「命を守ること」を基準にして受け入れるわけだが、「結局こういう状況を解決できるのは、政治しかないのです」とあるのが重い。
(☆☆☆★★★)

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