prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「0(ゼロ)からの風」

2012年02月21日 | 映画
「危険運転致死傷罪」の新設(一般市民による初めての法改正)に尽力した女性遺族[の実話を題材に、フィクションとして描かれた飲酒運転撲滅映画(ウィキぺディアによる)。

田中好子の遺作でもあり、親子愛とか、命のかけがえのなさといったテーマに反対する理由はないのであまり言いたくはないが、被害者側だけから描く限界というのもどうしてもあると思う。

早い話、厳罰化によって飲酒運転が減るのか、という根本的な疑問は湧く。
「飲酒と運転に関する調査結果報告書」によると、飲酒運転したドライバーのかなりの割合はアルコール依存症傾向にある、つまり悪いとわかっていても飲んでしまう病気で、厳罰化したところでブレーキがかかるような理性は初めから働いていない。意思そのものをマヒさせるのがアルコールなのだから、意思の強い弱いを言っても意味がない。

物理的に飲んでいたら運転できない車の開発や、それ以上にどこでも限度なくアルコールが手に入れられる環境を変えていくことの方が実質的な効果があがるのではないか。昔はこれだけ喫煙にうるさくなるとは想像できなかったのだし、ありえないことではない。念のために言っておくと、酔っ払い運転に厳罰を課すのは当然だと思う。

厳罰化というのは、応報感情に訴える働きで、遺族の感情としては当然だけれど、それと問題の解決ないしは緩和を考えるのとは別だろう。
悪いけれど、テーマの正しさによりかかった作りの弱さは逃れていない。
30年以上前に作られた木下恵介監督の「衝動殺人 息子よ」にテーマも表現の仕方も見ている時のむずかゆさも似ている。もちろん被害者側がいかに救いがないかに気が重くなるのと同時に、加害者側、裁く側、傍観者がオミットされているのが気になるのも同じ。

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