prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「スーパー30 アーナンド先生の教室」

2022年10月09日 | 映画
インドの理数系の学力がものすごく高いことは有名だけれど、その教育も金持ち階級に独占されている状態で予備校産業として金儲けに利用されている背景がある。
それに対抗してずば抜けた学力を持っていてケンブリッジ大学に入学を許されたが金がなくて断念せざるを得なかった男が貧しい子供たち30人を無償で教えてインド(というより世界)最高峰のインド工科大学に入学させるという実話もの。

郵便配達として働く父のこぐ自転車のチェーンのアップが繰り返し挿入されるのだが、それが息子を学ばせるための父の労働の過剰さの表現になって、あるドラマチックな瞬間に切れてしまう、それを修理してつなげることが父の遺志と学ぶ意思をつなげることの表現になっているといった小道具の使い方が上手い。

貧しい子供は英語は話せず、英語劇の途中で立ち往生しかけて嘲笑わられるのだが、決然と文字通り自分たちの言葉で歌い踊る、ラップのようなリズムと反骨精神をこめて盛り上がるシーンがインド映画らしい歌と踊りをアップデートして見もの。

インド映画とはいってもマサラ・ムービーのようなえんえんたる歌と踊りは割と少ないのだが、歌で物語を盛り上げて、かなりの長尺(2時間34分)になるのは一緒。途中で「休憩」と出るのだが、日本ではスキップして一気に通して上映する。そのせいか、かなり途中でおそらくトイレに立つ人がいた。

実話ネタとあって一応リアル志向みたいだけれど、あちこち濃ゆい、盛り過ぎだとツッコミを入れたくなるところはあちこちにある。
商売をジャマされた予備校経営者から殺し屋を送られたというのは実話というのは恐れ入るが。

主演のリティク・ローシャン が体形も顔も阿部寛に似ていなくもないので、「ドラゴン桜」がちょっとかぶって見えたりする。

作劇の都合とはいえ、名門大学に合格すること自体と学問的な業績をあげるのと社会的な貢献をあげるのとは近いけれど同じではないのは無視されているのは少しひっかかる。

ここでも賞の名前として19世紀インドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの名前が出てくるのだが、彼はケンブリッジに留学を認められて渡英したが戦争中で栄養不良がたたって早逝している。
「奇蹟がくれた数式」という映画にもなっている。