prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ザ・コントラクター」

2022年10月14日 | 映画
冒頭、クリス·パインの軍人が家族、特にまだ小さい息子を大事にしているが息子の方が妙に遠慮がちだったり、膝の古傷にサポーターをしたり注射したりするところが描かれる。
それから軍で人員整理が行われているところに呼び出され、注射していた薬物が基準が変わって使ってはいけないものになっていたのを理由に名誉除隊処分になり、名誉とつくからいいことあるのかと思うと退職金も年金もつかない。むしろ金を節約するために名誉とつけたみたい。

そういう退役軍人の苦しい生活が丁寧に描かれ、古傷はあるが現役時に優秀な戦闘能力を見せた者に民間の警備会社のスカウトの声が旧友を介して入ってくる。
この会社のトップがキーファー・サザーランド(作物を育てたりしてエコな暮らしをしている味付けがおもしろい)というところで身構えないといけないのだが、案の定、生物兵器を研究している施設を破壊するというミッションを果たしているうちに話があれよあれよという間に悪い方に向ってドンパチが始まる。

アクションシーンを引き立てるためにそこに至る部分を抑えるというわけではなく、アクション自体もかなり突発的に始まって人もあっけなく死ぬか動かなくなるという調子で、迫力や凄みはあるがあまり派手にショーアップはしていない。

むしろ居所のない兵士とそれをどう受け止めていいのかわからない息子の関係や、兵士同士で死ぬ者と生き残る者との絶対的な断絶と後ろめたさといった感情をしっかり描き込む方が眼目で、良くも悪くもかなり文学的なテイストが強い。
中途半端という見方も出るだろうが、気取った調子ではなく本気で描いている気合が伺われて嫌いではない。