prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「スノーデン」

2017年02月06日 | 映画
海兵隊に入隊したころのスノーデンが愛読書としてアイン・ランドの「肩をすくめるアトラス」を挙げていたのが意外だった。もうアメリカのリバタリアン御用達の小説のはずだから。紀伊国屋で見た邦訳を見るとまあ枕になりそうなとんでもなくぶ厚い本(1270ページ!)なので手を出す気はないが。
政府は個人のやることに口を出すべきではない、という点では思想的に実は変わっていないのかもしれない。

「フルメタル・ジャケット」調の訓練シーンや、モニターの文字列が顔に投影されている「2001年宇宙の旅」みたいな処理、HALの目のようなモニターのレンズのアップなどキューブリックばりの映像が散見する。一種冷ややかな世界の感触を出そうとしてか。

スノーデンの育ての親のようなトム・ウィルキンソンが突然大きなモニターに映って現われる時、あまりモニターが大きいので現実に現れたように見え、それが次第に「モダン・タイムズ」のサボるチャップリンを怒鳴りつける社長のように巨大化して恫喝するシーンが、映像の威圧性を端的に見せて印象的。

政府にとっての安全保障とは「テロリスト」に限ったことではなくて全国民、というより全世界の情報を握ることに他ならず、日本が同盟国でなくなったらただちにインフラを停止できるというあたりは、正直知っていることではあるけれど改めて気持ち悪くなる。
アメリカの一種の中国化というのが今に始まったことではないということか。

スノーデンがてんかん持ち(というのは事実らしい)でテグレトールを服用しなくてはいけないのを頭の働きが鈍るのがイヤだとやめてしまい何度か発作を起こすのが、昔この病気が悪魔が憑いたとも聖性を表すものとも考えられたのと、スノーデンの立場とが結びついてくる感じ。

オリバー・ストーンとすると前ほどせかせかカメラを動かしたりカットをむやみと割ったりせず割とじっくり見せるようにしているのはありがたい。毎度のことながら単純化が過ぎる感じはするが、この場合ストレートに監視社会に対して反発するのは当然と思える。

ドローンによるミサイル攻撃で巻き添えをくっている人がいるのがはっきり写っているのにぞっとする。見えているはずなのにいないことにされている人と、メディアに現れる人間との落差というものを考える。
(☆☆☆★★)

スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」

スノーデン 公式ホームページ

スノーデン|映画情報のぴあ映画生活

映画『スノーデン』 - シネマトゥデイ



本ホームページ

2月5日(日)のつぶやき

2017年02月06日 | Weblog